平成23年度 上期 第二種電気工事士 筆記試験 解答と解説
平成23年度 上期 第二種電気工事士 筆記試験の解答と解説です。
次の各問いには4通りの答え(イ,ロ,ハ,ニ)が書いてあるので,その中から一つを選択し,解答と解説を表示 をクリックしてください。
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本問題の計算で $\sqrt{2}$,$\sqrt{3}$ 及び円周率 $\pi$ を使用する場合の数値は次によること。$\sqrt{2}=1.41$,$\sqrt{3}=1.73$,$\pi=3.14$
No. 1 銅線の抵抗
A,B 2 本の同材質の銅線がある。A は直径 1.6 [mm],長さ 40 [m],B は直径 3.2 [mm],長さ 20 [m] である。A の抵抗は B の抵抗の何倍か。
【答え】ニ.8
銅の抵抗率を $\rho$ [Ω·mm2/m] とすると,A の抵抗 $R_\text{A}$ は,
\[ R_\text{A}=\rho\times\frac{4\times40}{\pi\times1.6^2} \]同様に B の抵抗 $R_\text{B}$ は,
\[ R_\text{B}=\rho\times\frac{4\times20}{\pi\times3.2^2} \]B の抵抗 $R_\text{B}$ を A の抵抗 $R_\text{A}$ で除すると,
\[ \frac{R_\text{B}}{R_\text{A}}=8 \]No. 2 端子間の電圧
図のような回路で,スイッチ S を閉じたとき,a-b 端子間の電圧 [V] は。
【答え】ハ.50
スイッチ S を閉じたとき,30 [Ω] と 30 [Ω] の抵抗 2 つによる直列回路が形成される。a-b 端子間の電圧は,一方の 30 [Ω] の抵抗にかかる電圧と等しく,次式のように計算できる。
\[ \frac{30}{30+30}\times100=50 \]No. 3 電熱器の発熱量
消費電力が 300 [W] の電熱器を,2 時間使用したときの発熱量 [kJ] は。
【答え】ニ.2 160
発熱量 $Q$ [kJ]は,
\[ Q=3600Pt=3600\times300\times2/1000=2160\text{ [kJ]} \]No. 4 交流回路の力率
図のような交流回路の力率 [%] を示す式は。
【答え】イ.$\displaystyle \frac{100R}{\sqrt{R^2+X^2}}$
$RL$ 直列回路の力率は,次式で求められる。(ただし,インダクタンス $X$ [Ω] は,$X = \omega L$ である。)
\[ \frac{R}{\sqrt{R^2+(\omega L)^2}} \times 100 = \frac{100R}{\sqrt{R^2+X^2}} \]No. 5 三相 3 線式回路の断線
図のような電源電圧 $E$ [V] の三相 3 線式回路で,×印点で断線すると,断線後の a-b 間の抵抗 $R$ [Ω] に流れる電流 $I$ [A] は。
【答え】イ.$\displaystyle \frac{E}{2R}$
a-c 間にかかる電圧は $E$ [V] であるので,a-b 間の抵抗 $R$ [Ω] に流れる電流 $I$ [A] は,次式で求められる。
\[ \frac{E}{R+R}=\frac{E}{2R} \]No. 6 電線 1 本当たりの許容電流
金属管による低圧屋内配線工事で,管内に直径 1.6 [mm] の 600 V ビニル絶縁電線(軟銅線)4 本を挿入して施設した場合,電線 1 本当たりの許容電流 [A] は。
ただし,周囲温度は 30 [°C] 以下,電流減少係数は 0.63 とする。
【答え】ロ.17
単線の直径 1.6 [mm] 以上 2.0 [mm] 未満の銅線又は軟硬銅線の許容電流は 27 [A] に,同一管内の電線数 4 のときの電流減少係数 0.63 をかけると,許容電流は 17.01 [A] となる。
No. 7 電圧降下
図のような単相 2 線式回路で,c-c' 間の電圧が 100 [V] のとき,a-a' 間の電圧 [V] は。
ただし,$r$ は電線の電気抵抗 [Ω] とする。
【答え】ロ.103
a-b,a'-b' 間の電圧降下は,
\[ 0.1\times(5+5)\times2=2 \]b-c,b'-c' 間の電圧降下は,
\[ 0.1\times5\times2=1 \]a-a' 間の電圧は,
\[ 100+2+1=103 \]No. 8 電線路の電力損失
図のような三相 3 線式回路で,電線 1 線当たりの抵抗が 0.1 [Ω],線電流が 20 [A] のとき,この電線路の電力損失 [W] は。
【答え】ニ.120
電線路の電力損失 $W_\text{l}$ [W] は,次式で求められる。
\[ W_\text{l} = 3rI^2 = 3 \times 0.1 \times 20^2 = 120 \]No. 9 配線用遮断器
低圧電路に使用する定格 20 [A] の配線用遮断器に 40 [A] の電流が継続して流れたとき,この配線用遮断器が自動的に動作しなければならない時間 [分] の限度(最大の時間)は。
【答え】ロ.2
電気設備技術基準の解釈【低圧電路中の過電流遮断器の施設】によると,過電流遮断器として低圧電路に使用する配線用遮断器は,定格電流の区分 30 A 以下,定格電流の 2 倍の電流を通じた場合において,2 分以内に自動的に動作することと定められている。
定格電流の区分 | 時間 | |
---|---|---|
定格電流の 1.25 倍の電流を通じた場合 | 定格電流の 2 倍の電流を通じた場合 | |
30 A 以下 | 60 分 | 2 分 |
30 A を超え 50 A 以下 | 60 分 | 4 分 |
50 A を超え 100 A 以下 | 120 分 | 6 分 |
100 A を超え 225 A 以下 | 120 分 | 8 分 |
225 A を超え 400 A 以下 | 120 分 | 10 分 |
400 A を超え 600 A 以下 | 120 分 | 12 分 |
No. 10 低圧屋内配線の分岐回路の設計
低圧屋内配線の分岐回路の設計で,配線用遮断器の定格電流とコンセントの組合せとして,不適切なものは。
【答え】ハ.配線用遮断器の定格電流:30 A,コンセント:15 A 2 個
電気設備技術基準の解釈【分岐回路の施設】からの出題で,定格電流が 20 A を超え 30 A 以下の過電流遮断器で保護される低圧屋内電路では,定格電流が 20 A 以上 30 A 以下のコンセントに限られている。
分岐回路を保護する過電流遮断器の種類 | 軟銅線の太さ | コンセント |
---|---|---|
定格電流が 15 A 以下のもの | 直径 1.6 mm |
定格電流が 15 A 以下のもの |
定格電流が 15 A を超え 20 A 以下の配線用遮断器 | 定格電流が 20 A 以下のもの | |
定格電流が 15 A を超え 20 A 以下のもの(配線用遮断器を除く。) | 直径 2 mm |
定格電流が 20 A のもの(定格電流が 20 A 未満の差込みプラグが接続できるものを除く。) |
定格電流が 20 A を超え 30 A 以下のもの | 直径 2.6 mm |
定格電流が 20 A 以上 30 A 以下のもの(定格電流が 20 A 未満の差込みプラグが接続できるものを除く。) |
定格電流が 30 A を超え 40 A 以下のもの | 断面積 8 mm² |
定格電流が 30 A 以上 40 A 以下のもの |
定格電流が 40 A を超え 50 A 以下のもの | 断面積 14 mm² |
定格電流が 40 A 以上 50 A 以下のもの |
No. 11 住宅で使用する電気食器洗い機用のコンセント
住宅で使用する電気食器洗い機用のコンセントとして,最も適しているものは。
【答え】ハ.接地極付接地端子付コンセント
No. 12 組み合わせて使用する機器
組み合わせて使用する機器で,その組合せが明らかに誤っているものは。
【答え】イ.ネオン変圧器と高圧水銀灯
ネオン変圧器は,ネオン管を点灯させるために使用する変圧器である。磁気漏れ変圧器を使用し,高い無負荷電圧によってランプを点灯させる。
No. 13 三相かご形誘導電動機の同期回転速度
定格周波数 60 [Hz],極数 4 の低圧三相かご形誘導電動機の同期回転速度 [min-1] は。
【答え】ハ.1 800
定格周波数 $f$ が 60 [Hz],極数 $p$ が 4 の低圧三相かご形誘導電動機の同期回転速度 $N_\text{S}$ [min-1] は,次式で求められる。
\[ N_\text{S} = \frac{120f}{p}=\frac{120\times60}{4}=1800 \]No. 14 電気工事の種類と,その工事で使用する工具の組合せ
電気工事の種類と,その工事で使用する工具の組合せとして,適切なものは。
【答え】イ.金属管工事とリーマ
リーマは,クリックボールに取り付けて,金属管内側のバリを取って滑らかにする。
No. 15 器具の識別
写真に示す器具の名称は。
【答え】ロ.漏電遮断器
漏電遮断器は,漏電(地絡)・過電流を検出し,回路を遮断する。高速形漏電遮断器は,定格感度電流における動作時間が 0.1 秒以下である。高感度形漏電遮断器は,定格感度電流が 30 mA 以下である。また,漏電遮断器には,動作を確認するテストボタン(漏電電流を模擬したテスト装置)がある。
No. 16 材料の識別
写真に示す材料の用途は。
【答え】ニ.ねじなし電線管と金属製アウトレットボックスを接続するのに用いる。
材料の名称は「ねじなしボックスコネクタ」である。
No. 17 工具の識別
写真に示す工具の用途は。
【答え】ハ.VVF ケーブルの外装や絶縁被覆をはぎ取るのに用いる。
写真の左に示す工具がワイヤストリッパで,電線の絶縁被覆をはぎ取る。写真の右に示す工具がケーブルストリッパで,ケーブルの外装や絶縁被覆をはぎ取る。
No. 18 器具の識別
写真に示す器具の用途は。
【答え】ニ.周囲の明るさに応じて街路灯などを自動点滅させるのに用いる。
器具の名称は「自動点滅器」である。
No. 19 硬質塩化ビニル電線管による合成樹脂管工事
硬質塩化ビニル電線管による合成樹脂管工事として,不適切なものは。
【答え】イ.管相互及び管とボックスとの接続で,接着剤を使用したので管の差し込み深さを管の外径の 0.5 倍とした。
電気設備技術基準の解釈【合成樹脂管工事】によると,管相互及び管とボックスとは,管の差込み深さを管の外径の 1.2 倍(接着剤を使用する場合は,0.8 倍)以上とし,かつ,差込み接続により堅ろうに接続することとなっている。
No. 20 単相 3 線式 100/200 V 屋内配線工事
湿気の多い展開した場所の単相 3 線式 100/200 V 屋内配線工事として,不適切なものは。
【答え】ロ.金属ダクト工事
電気設備技術基準の解釈【低圧屋内配線の施設場所による工事の種類】によると,金属ダクト工事は乾燥した場所でのみ使用できる。
No. 21 ルームエアコンを施設する屋内配線工事の方法
店舗付き住宅に三相 200 [V],定格消費電力 2.8 [kW] のルームエアコンを施設する屋内配線工事の方法として,不適切なものは。
【答え】ニ.ルームエアコンは屋内配線とコンセントで接続する。
No. 22 雨線外に施設する金属管工事の末端
図に示す雨線外に施設する金属管工事の末端 A 又は B 部分に使用するものとして,不適切なものは。
【答え】ロ.A 部分にターミナルキャップを使用した。
エントランスキャップは,電線管から露出配線に移るときに,雨水浸入防止に用いる。ターミナルキャップは,金属管端に取り付けて雨水浸入防止に用いる。
No. 23 ネオン放電灯の工事
屋内の管灯回路の使用回路が 1 000 [V] を超えるネオン放電灯の工事として,不適切なものは。
ただし,人が容易に触れるおそれがない場所に施設するものとする。
【答え】ロ.ネオン変圧器の二次側(管灯回路)の配線を,点検できない隠ぺい場所に施設した。
No. 24 ネオン式検電器
ネオン式検電器を使用する目的は。
【答え】ハ.電路の充電の有無を確認する。
低圧検電器は,低圧電気回路の充電の有無を調べるのに用いる。
写真の上はネオン式,写真の下は音響発光式である。
No. 25 電気計器の記号
電気計器の目盛板に図のような記号があった。記号の意味として,正しいものは。
【答え】ハ.可動鉄片形で目盛板を鉛直に立てて使用する。
左図が可動鉄片形を示し,右図が目盛板を垂直に立てて使用することを示す。
No. 26 低圧電路の使用電圧と電線相互間及び電路と大地との間の絶縁抵抗の最小値
次表は,電気使用場所の開閉器又は過電流遮断器で区切られる低圧電路の使用電圧と電線相互間及び電路と大地との間の絶縁抵抗の最小値についての表である。
A・B・C の空欄にあてはまる数値の組合せとして,正しいものは。
【答え】イ.A 0.1,B 0.2,C 0.4
電気設備に関する技術基準【低圧の電路の絶縁性能】からの出題である。
電気使用場所における使用電圧が低圧の電路の電線相互間及び電路と大地との間の絶縁抵抗は,開閉器又は過電流遮断器で区切ることのできる電路ごとに,次の表の左欄に掲げる電路の使用電圧の区分に応じ,それぞれ同表の右欄に掲げる値以上でなければならない。
電路の使用電圧の区分 | 絶縁抵抗値 | |
---|---|---|
300 V 以下 | 対地電圧(接地式電路においては電線と大地との間の電圧,非接地式電路においては電線間の電圧をいう。)が 150 V 以下の場合 | 0.1 MΩ |
その他の場合 | 0.2 MΩ | |
300 Vを超えるもの | 0.4 MΩ |
No. 27 回路計(テスタ)
一般に使用される回路計(テスタ)によって測定できないものは。
【答え】ハ.漏れ電流
漏れ電流の測定には,クランプメータ(クランプ形漏れ電流計)を使用する。
No. 28 電気工事士法
電気工事士法において,第二種電気工事士免状の交付を受けている者であってもできない工事は。
【答え】ハ.自家用電気工作物(500[kW]未満の需要設備)の非常用予備発電装置の工事
電気事業法によると,電気工作物とは,発電,変電,送電若しくは配電又は電気の使用のために設置する機械,器具,ダム,水路,貯水池,電線路その他の工作物(船舶,車両又は航空機に設置されるものその他の政令で定めるものを除く。)をいう。
- 一般用電気工作物 600 V 以下の電圧で受電し,受電の場所と同一の構内で使用する電気工作物で,小出力発電設備を設置しているものも含まれる。
- 自家用電気工作物 電気事業の用に供する電気工作物及び一般用電気工作物以外の電気工作物をいい,次のものが該当する。
- 600 Vを超える電圧で受電するもの
- 小出力発電設備以外のものを設置しているもの
- 構外にわたる電線路を有するもの
発電設備 | 出力 |
---|---|
太陽電池発電設備 | 50 kW 未満 |
風力発電設備,水力発電設備(ダムは除く) | 20 kW 未満 |
内燃力発電設備,燃料電池発電設備 | 10 kW 未満 |
以上の設備を複数設置 | 合計 50 kW 未満 |
No. 29 住宅の屋内電路に使用できる対地電圧の最大値
特別な場合を除き,住宅の屋内電路に使用できる対地電圧の最大値 [V] は。
【答え】ロ.150
No. 30 一般用電気工作物
一般用電気工作物の適用を受けるものは。
ただし,いずれも 1 構内に設置するものとする。
【答え】イ.低圧受電で,受電電力 40 [kW],出力 15 [kW] の太陽電池発電設備を備えた幼稚園
電気事業法によると,電気工作物とは,発電,変電,送電若しくは配電又は電気の使用のために設置する機械,器具,ダム,水路,貯水池,電線路その他の工作物(船舶,車両又は航空機に設置されるものその他の政令で定めるものを除く。)をいう。
- 一般用電気工作物 600 V 以下の電圧で受電し,受電の場所と同一の構内で使用する電気工作物で,小出力発電設備を設置しているものも含まれる。
- 自家用電気工作物 電気事業の用に供する電気工作物及び一般用電気工作物以外の電気工作物をいい,次のものが該当する。
- 600 Vを超える電圧で受電するもの
- 小出力発電設備以外のものを設置しているもの
- 構外にわたる電線路を有するもの
発電設備 | 出力 |
---|---|
太陽電池発電設備 | 50 kW 未満 |
風力発電設備,水力発電設備(ダムは除く) | 20 kW 未満 |
内燃力発電設備,燃料電池発電設備 | 10 kW 未満 |
以上の設備を複数設置 | 合計 50 kW 未満 |