令和2年度 下期 午後 第二種電気工事士 筆記試験 解答と解説
2020年10月4日(日)午後に実施された令和2年度 下期 電気工事士 筆記試験の解答と解説です。
【注】本問題の計算で $\sqrt{2}$,$\sqrt{3}$ 及び円周率 $\pi$ を使用する場合の数値は次によること。$\sqrt{2}=1.41$,$\sqrt{3}=1.73$,$\pi=3.14$
次の各問いは4通りの答え(イ,ロ,ハ,二)が書いてある。それぞれの問いに対して答えを1つ選びなさい。
なお,選択肢が数値の場合は最も近い値を選びなさい。
受験者 | 合格者 | 合格率 |
---|---|---|
104,883 名 | 65,144 名 | 62.1 % |
No. 1 直流回路
図のような直流回路で,a-b 間の電圧 [V] は。

- 10
- 20
- 30
- 40
回路に流れる電流は,次式で求められる。
a-b 間の電圧は,次式で求められる。
No. 2 抵抗
A,B 2 本の同材質の銅線がある。A は直径 1.6 mm,長さ 100 m,B は直径 3.2 mm,長さ 50 m である。A の抵抗は B の抵抗の何倍か。
- 1
- 2
- 4
- 8
銅線 A の抵抗 $R_\text{A}$ は,次式で求められる。
\[ R_\text{A}=\rho\frac{4l_\text{A}}{\pi {D_\text{A}}^2}=\rho\frac{4\times 100}{\pi 1.6^2} = 156.25 \times \frac{\rho}{\pi} \]銅線 B の抵抗 $R_\text{B}$ は,次式で求められる。
\[ R_\text{B}=\rho\frac{4l_\text{B}}{\pi {D_\text{B}}^2}=\rho\frac{4\times 50}{\pi 3.2^2} = 19.53125 \times \frac{\rho}{\pi} \]よって,A の抵抗は B の抵抗の 8 倍である。
No. 3 熱量
電線の接続不良により,接続点の接触抵抗が 0.2 Ω となった。この電線に 10 A の電流が流れると,接続点から 1 時間に発生する熱量 [kJ] は。
ただし,接触抵抗の値は変化しないものとする。
- 72
- 144
- 288
- 576
接続点から 1 時間に発生する熱量 [kJ] は,次式で求められる。
No. 4 負荷の力率
図のような交流回路で,電源電圧 204 V,抵抗の両端の電圧が 180 V,リアクタンスの両端の電圧が 96 V であるとき,負荷の力率 [%] は。

- 35
- 47
- 65
- 88
負荷の力率 [%] は,次式で求められる。
No. 5 Y 結線の線間電圧
図のような三相負荷に三相交流電圧を加えたとき,各線に 15 A の電流が流れた。線間電圧 $E$ [V] は。

- 150
- 212
- 260
- 300
線間電圧は,次式で求められる。
No. 6 配線における電圧降下
図のように,電線のこう長 12 m の配線により,消費電力 1 600 W の抵抗負荷に電力を供給した結果,負荷の両端の電圧は 100 V であった。配線における電圧降下 [V] は。
ただし,電線の電気抵抗は長さ 1 000 m 当たり 5.0 Ω とする。

- 1
- 2
- 3
- 4
配線に流れる電流は,次式で求められる。
配線における電圧降下は,次式で求められる。
No. 7 電線路の電力損失
図のような単相 3 線式回路で,電線 1 線当たりの抵抗が 0.1 Ω,抵抗負荷に流れる電流がともに 20 A のとき,この電線路の電力損失 [W] は。

- 40
- 69
- 80
- 120
抵抗負荷に流れる電流がともに 20 A であるので,中性線には電流は流れない。よって,電線路の電力損失は,次式で求められる。
No. 8 許容電流
金属管による低圧屋内配線工事で,管内に断面積 3.5 mm2 の 600 V ビニル絶縁電線(軟銅線)4 本を収めて施設した場合,電線 1 本当たりの許容電流 [A] は。
ただし,周囲温度は 30 °C 以下,電流減少係数は 0.63 とする。
- 19
- 23
- 31
- 49
断面積 3.5 mm2 の 600 V ビニル絶縁電線(軟銅線)の許容電流は 37 [A] であるので,管内に 4 本収めて施設した場合の許容電流は,次式で求められる。
No. 9 低圧幹線の許容電流
定格電流 12 A の電動機 5 台が接続された単相 2 線式の低圧屋内幹線がある。この幹線の太さを決定するための根拠となる電流の最小値 [A] は。
ただし,需要率は 80 % とする。
- 48
- 60
- 66
- 75
電動機等の定格電流の合計に需要率を乗じる。
電動機等の定格電流の合計が 50 A 以下であるので,電線の許容電流は,次式で求められる。
No. 10 低圧屋内配線の分岐回路
低圧屋内配線の分岐回路の設計で,配線用遮断器,分岐回路の電線の太さ及びコンセントの組合せとして,適切なものは。
ただし,分岐点から配線用遮断器までは 3 m,配線用遮断器からコンセントまでは 8 m とし,電線の数値は分岐回路の電線(軟銅線)の太さを示す。
また,コンセントは兼用コンセントではないものとする。

- 過電流遮断器の定格電流が 20 A であり,コンセントの定格電流は 20 A のものでなければならない。
- 過電流遮断器の定格電流が 30 A であり,電線(軟銅線)の太さは直径 2.6 mm 以上でなければならない。
- 適切
- 過電流遮断器の定格電流が 30 A であり,コンセントの定格電流は 20 A 以上 30 A 以下のものでなければならない。
No. 11 電気工事用材料
多数の金属管が集合する場所等で,通線を容易にするために用いられるものは。
- 分電盤
- プルボックス
- フィクスチュアスタッド
- スイッチボックス
プルボックスは,多数の金属管が集合する場所で使用し,電線の接続や電線の引き入れを容易にする。

No. 12 絶縁物の最高許容温度
絶縁物の最高許容温度が最も高いものは。
- 600 V 架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル(CV)
- 600 V 二種ビニル絶縁電線(HIV)
- 600 V ビニル絶縁ビニルシースケーブル丸形(VVR)
- 600 V ビニル絶縁電線(IV)
- 600 V 架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル(CV)・・・常時許容温度 90 °C
- 600 V 二種ビニル絶縁電線(HIV)・・・常時許容温度 75 °C
- 600 V ビニル絶縁ビニルシースケーブル丸形(VVR)・・・常時許容温度 60 °C
- 600 V ビニル絶縁電線(IV)・・・常時許容温度 60 °C
No. 13 工具
ねじなし電線管の曲げ加工に使用する工具は。
- トーチランプ
- ディスクグラインダ
- パイプレンチ
- パイプベンダ
パイプベンダは,金属管を曲げるのに用いられる。

No. 14 三相かご形誘導電動機の同期速度
定格周波数 60 Hz,極数 4 の低圧三相かご形誘導電動機の同期速度 [min-1] は。
- 1 200
- 1 500
- 1 800
- 3 000
低圧三相かご形誘導電動機の同期速度 [min-1] は,次式で求められる。
\[ \frac{120f}{p}=\frac{120\times60}{4}=1 800 \]No. 15 零相変流器の役割
漏電遮断器に内蔵されている零相変流器の役割は。
- 不足電圧の検出
- 短絡電流の検出
- 過電圧の検出
- 地絡電流の検出
零相変流器(Zero-phase-sequence Current Transformer)とは,貫通形 CT のひとつで,環状鉄心に三相ごとケーブルを貫通させて地絡故障時に流れる零相電流を検出する変流器である。
No. 16 材料の名称
写真に示す材料の名称は。

- ユニバーサル
- ノーマルベンド
- ベンダ
- カップリング
材料の名称はノーマルベンドであり,金属管が直角に曲がる箇所に使用する。
No. 17 器具の用途
写真に示す器具の用途は。

- 回路の力率を改善する。
- 地絡電流を検出する。
- ネオン放電灯を点灯させる。
- 水銀灯の放電を安定させる。
器具の名称は 40 μF の低圧進相コンデンサで,回路の力率を改善するのに使用する。
No. 18 測定器の名称
写真に示す測定器の名称は。

- 周波数計
- 検相器
- 照度計
- クランプ形電流計
測定器の名称は照度計で,昼光などの自然の光及び一般照明用光源(白熱電球,蛍光ランプ,HID ランプなど)の照度を測定する。
No. 19 絶縁テープによる低圧絶縁電線の被覆の方法
600 V ビニル絶縁ビニルシースケーブル平形 1.6 mm を使用した低圧屋内配線工事で,絶縁電線相互の終端接続部分の絶縁処理として,不適切なものは。
ただし,ビニルシースは JIS に定める厚さ約 0.2 mm の電気絶縁用ポリ塩化ビニル粘着テープとする。
- リングスリーブ(E 形)により接続し,接続部分を自己融着性絶縁テープ(厚さ約 0.5 mm)で半幅以上重ねて 1 回(2 層)巻いた。
- リングスリーブ(E 形)により接続し,接続部分を黒色粘着性ポリエチレン絶縁テープ(厚さ約 0.5 mm)で半幅以上重ねて 3 回(6 層)巻いた。
- リングスリーブ(E 形)により接続し,接続部分をビニルテープで半幅以上重ねて 3 回(6 層)巻いた。
- 差込形コネクタにより接続し,接続部分をビニルテープで巻かなかった。
自己融着性絶縁テープを用いる場合,自己融着性絶縁テープを半幅以上重ねて 1 回以上巻き(2 層以上),かつ,その上に保護テープを半幅以上重ねて 1 回以上巻く必要がある。
No. 20 屋内配線の施設場所による工事の種類
使用電圧 100 V の屋内配線の施設場所による工事の種類として,適切なものは。
- 点検できない隠ぺい場所であって,乾燥した場所の金属線ぴ工事
- 点検できない隠ぺい場所であって,湿気の多い場所の平形保護層工事
- 展開した場所であって,湿気の多い場所のライディングダクト工事
- 展開した場所であって,乾燥した場所の金属ダクト工事
- 金属線ぴ工事は,点検できない隠ぺい場所には不適。
- 平形保護層工事は,点検できない隠ぺい場所,湿気の多い場所には不適。
- ライディングダクト工事は,湿気の多い場所には不適。
- 適切
No. 21 電路の対地電圧の制限
店舗付き住宅に三相 200 V,定格消費電力 2.8 kW のルームエアコンを施設する屋内配線工事の方法として,不適切なものは。
- 屋内配線には,簡易接触防護措置を施す。
- 電路には,漏電遮断器を施設する。
- 電路には,他負荷の電路と共用の配線用遮断器を施設する。
- ルームエアコンは,屋内配線と直接接続して施設する。
住宅の屋内配線(電気機械器具内の電路を除く。)の対地電圧は,150 V 以下であること。ただし,次の各号のいずれかに該当する場合は,この限りでない。
- 定格消費電力が 2 kW 以上の電気機械器具及びこれに電気を供給する屋内配線を次により施設する場合
- 屋内配線は,当該電気機械器具のみに電気を供給するものであること。
- 電気機械器具の使用電圧及びこれに電気を供給する屋内配線の対地電圧は,300 V 以下であること。
- 屋内配線には,簡易接触防護措置を施すこと。
- 電気機械器具には,簡易接触防護措置を施すこと。
- 電気機械器具は,屋内配線と直接接続して施設すること。
- 電気機械器具に電気を供給する電路には,専用の開閉器及び過電流遮断器を施設すること。ただし,過電流遮断器が開閉機能を有するものである場合は,過電流遮断器のみとすることができる。
- 電気機械器具に電気を供給する電路には,電路に地絡が生じたときに自動的に電路を遮断する装置を施設すること。
- 当該住宅以外の場所に電気を供給するための屋内配線を次により施設する場合
- 屋内配線の対地電圧は,300 V 以下であること。
- 人が触れるおそれがない隠ぺい場所に合成樹脂管工事,金属管工事又はケーブル工事により施設すること。
No. 22 接地工事を省略できる場合
機械器具の金属製外箱に施す D 種接地工事に関する記述で,不適切なものは。
- 一次側 200 V,二次側 100 V,3 kV·A の絶縁変圧器(二次側非接地)の二次側電路に電動丸のこぎりを接続し,接地を施さないで使用する。
- 三相 200 V 定格出力 0.75 kW 電動機外箱の接地線に直径 1.6 mm の IV 電線(軟銅線)を使用した。
- 単相 100 V 移動式の電気ドリル(一重絶縁)の接地線として多心コードの断面積 0.75 mm2 の 1 心を使用した。
- 単相 100 V 定格出力 0.4 kW の電動機を水気のある場所に設置し,定格感度電流 15 mA,動作時間 0.1 秒の電流動作型漏電遮断器を取り付けたので,接地工事を省略した。
水気のある場所では,接地工事は省略できない。
No. 23 電磁的不平衡
電磁的不平衡を生じないように,電線を金属管に挿入する方法として,適切なものは。

電磁的不平衡を生じないようにするには,1 回路の電線全てを同一の金属管に挿入する必要がある。イ 以外では,電磁的不平衡を生じる。
No. 24 回路計(テスタ)
回路計(テスタ)に関する記述として,正しいものは。
- アナログ式で交流又は直流電圧を測定する場合は,あらかじめ想定される値の直近上位のレンジを選定して使用する。
- 抵抗を測定する場合の回路計の端子における出力電圧は,交流電圧である。
- ディジタル式は電池を内蔵しているが,アナログ式は電池を必要としない。
- 電路と大地間の抵抗測定を行った。その抵抗値は電路の絶縁抵抗値として使用してよい。
回路計は,主に電路の通電状態などを調べるときに使用する測定器で,テスタとも呼ばれる。
No. 25 低圧の電路の絶縁性能
単相 3 線式 100/200 V の屋内配線において,開閉器又は過電流遮断器で区切ることができる電路ごとの絶縁抵抗の最小値として,「電気設備に関する技術基準を定める省令」に規定されている値 [MΩ] の組合せで,正しいものは。
- 電路と大地間 0.2,電線相互間 0.4
- 電路と大地間 0.2,電線相互間 0.2
- 電路と大地間 0.1,電線相互間 0.1
- 電路と大地間 0.1,電線相互間 0.2
単相 3 線式 100/200 V の屋内配線は「対地電圧(接地式電路においては電線と大地との間の電圧,非接地式電路においては電線間の電圧をいう。)が 150 V 以下の場合」に該当し,絶縁抵抗値は 0.1 [MΩ] 以上でなければならない。
No. 26 直読式接地抵抗計(アーステスタ)
直読式接地抵抗計(アーステスタ)を使用して直読で接地抵抗を測定する場合,補助接地極(2 箇所)の配置として,適切なものは。
- 被測定接地極を端とし,一直線上に 2 箇所の補助接地極を順次 10 m 程度離して配置する。
- 被測定接地極を中央にして,左右一直線上に補助接地極を 5 m 程度離して配置する。
- 被測定接地極を端とし,一直線上に 2 箇所の補助接地極を順次 1 m 程度離して配置する。
- 被測定接地極と 2 箇所の補助接地極を相互に 5 m 程度離して正三角形に配置する。
接地極より 10 m 離れた場所に補助接地極(電圧極)を打ち込み,さらに 10 m 離れた場所に補助接地極(電流極)を打ち込む。

No. 27 導通試験の目的
導通試験の目的として,誤っているものは。
- 電路の充電の有無を確認する。
- 器具への結線の未接続を発見する。
- 電線の断線を発見する。
- 回路の接続の正誤を判別する。
電路の充電の有無は,検電により確認する。
No. 28 電気の保安に関する法令
電気の保安に関する法令についての記述として,誤っているものは。
- 「電気工事士法」は,電気工事の作業に従事する者の資格及び義務を定めた法律である。
- 一般用電気工作物の定義は,「電気設備に関する技術基準を定める省令」において定めている。
- 「電気用品安全法」は,電気用品の製造,販売等を規制することなどにより,電気用品による危険及び障害の発生を防止することを目的とした法律である。
- 「電気用品安全法」では,電気工事士は,同法に基づく表示のない電気用品を電気工事に使用してはならないと定めている。
一般用電気工作物の定義は,「電気事業法」において定めている。
- 一般用電気工作物
- 600 V以下の電圧で受電し,受電の場所と同一の構内で使用する電気工作物で,小出力発電設備を設置しているものも含まれる。
No. 29 電気用品安全法
「電気用品安全法」において,特定電気用品の適用を受けるものは。
- 外径 25 mm の金属製電線管
- 定格電流 60 A の配線用遮断器
- ケーブル配線用スイッチボックス
- 公称断面積 150 mm2 の合成樹脂絶縁電線
No. 30 一般用電気工作物
一般用電気工作物の適用を受けるものは。
ただし,発電設備は電圧 600 V 以下で,同一構内に設置するものとする。
- 低圧受電で,受電電力の容量が 40 kW,出力 15 kW の非常用内燃力発電設備を備えた映画館
- 高圧受電で,受電電力の容量が 55 kW の機械工場
- 低圧受電で,受電電力の容量が 40 kW,出力 15 kW の太陽電池発電設備を備えた幼稚園
- 高圧受電で,受電電力の容量が 55 kW のコンビニエンスストア
一般用電気工作物は, 600 V 以下の電圧で受電し,受電の場所と同一の構内で使用する電気工作物で,小出力発電設備を設置しているものも含まれる。下表に小出力発電設備(600 V 以下)を示す。
発電設備 | 出力 |
---|---|
太陽電池発電設備 | 50 kW 未満 |
風力発電設備,水力発電設備(ダムは除く) | 20 kW 未満 |
内燃力発電設備,燃料電池発電設備 | 10 kW 未満 |
以上の設備を複数設置 | 合計 50 kW 未満 |
- 出力 15 kW の非常用内燃力発電設備が不適
- 高圧受電が不適
- 適切
- 高圧受電が不適