平成22年度 第1種 法規

2022年8月13日更新

問1 使用前安全管理検査

  1. 受電電圧 70 000 「V] の需要設備を設置する者は,経済産業省令で定めるところにより,その使用の開始前に,当該事業用電気工作物について自主検査を行い,その結果を記録し,これを保存しなければならない。
  2. 上記 a. の検査(以下「使用前自主検査」という)においては,その事業用電気工作物が,届出した工事の計画に従って行われたものであること,及び経済産業省令で定める技術基準に適合するものであることを確認しなければならない。
  3. この使用前自主検査を行う事業用電気工作物を設置する者は,使用前自主検査の実施に係る体制について,経済産業省令で定める時期に経済産業大臣が行う審査を受けなければならない。
  4. 上記 c. の審査は,事業用電気工作物の安全管理を旨として,使用前自主検査の実施に係る組織,検査の方法,工程管理その他経済産業省令で定める事項について行う。

電気事業法第50条の2「使用前安全管理検査」からの出題である。事前届出を要する工事の種類は下表の通りである。

表 事前届出を要する工事の種類
工事の種類 事前届出を要するもの
発電所 設置の工事
  1. 発電所の設置であって,次に掲げるもの
    1. 水力発電所の設置
    2. 火力発電所であって汽力を原動力とするものの設置
    3. 出力 1 000 [kW] 以上の火力発電所であってガスタービンを原動力とするものの設置
    4. 出力 10 000 [kW] 以上の火力発電所の設置であって内燃力を原動力とするものの設置
    5. 火力発電所であって汽力,ガスタービン及び内燃力以外を原動力とするものの設置
    6. 火力発電所であって二以上の原動力を組み合わせたものを原動力とするものの設置
    7. 出力 500 [kW] 以上の燃料電池発電所の設置
    8. 出力 500 [kW] 以上の太陽電池発電所の設置
    9. 出力 500 [kW] 以上の風力発電所の設置
  2. 1以外の発電所の設置であって送電電圧 170 000 [V] 以上のものに係る送電線引出口の遮断器(需要設備と電気的に接続するためのものを除く。)の設置
変電所 設置の工事

電圧 170 000 [V] 以上(構内以外の場所から伝送される電気を変成するために設置する変圧器その他の電気工作物の総合体であって,構内以外の場所に伝送するためのもの以外のもの(以下「受電所」という。)にあっては 100 000 [V] 以上)の変電所の設置

需要設備(鉱山保安法が適用されるものを除く。) 設置の工事 受電電圧 10 000 [V] 以上の需要設備の設置

問2 電気の使用制限等

経済産業大臣は,電気の需給の調整を行わなければ電気の供給の不足が国民経済及び国民生活に悪影響を及ぼし,公共の利益を阻害するおそれがあると認められるときは,その事態を克服するため必要な限度において,次のaからdまでの方法により,使用電力量の限度,使用最大電力の限度,用途若しくは使用を停止すべき日時を定めて,一般電気事業者,特定電気事業者若しくは特定規模電気事業者の供給する電気の使用を制限し,又は受電電力の容量の限度を定めて,一般電気事業者,特定電気事業者若しくは特定規模電気事業者から受電を制限することができる。

  1. 使用電力量の限度又は使用最大電力の限度を定めてする電気の使用制限は,500 [kW] 以上の受電電力の容量をもって電気を使用する者について行うものでなければならない。
  2. 用途を定めてする電気の使用制限は,装飾用,広告用その他これらに類する用途について行うものでなければならない。
  3. 使用を停止すべき日時を定めてする電気の使用制限は,1 週につき 2 日を限度として行うものでなければならない。
  4. 受電電力の容量の限度を定めてする受電の制限は,3 000 [kW] 以上の受電電力の容量をもって電気の供給を受けようとする者について行うものでなければならない。

電気事業法第27条「電気の使用制限等」からの出題である。

電力需要を調整する方法は,現在,電気料金制度を利用する方法と電気の使用制限を利用する方法の二つがあり,電気の使用制限を行うには,電力会社が消費者(需要家)に使用の節減を依頼する,いわゆる自主的使用制限と,電気事業法に基づいて行う法的使用制限の二つがある。

問3 特別高圧を直接低圧に変成する変圧器の施設制限

  1. 特別高圧を直接低圧に変成する変圧器は,次の各号のいずれかに掲げる場合を除き,施設してはならない。
    1. 発電所等公衆が立ち入らない場所に施設する場合
    2. 混触防止措置が講じられている等危険のおそれがない場合
    3. 特別高圧側の巻線と低圧側の巻線とが混触した場合に自動的に電路が遮断される装置の施設その他の保安上の適切な措置が講じられている場合
  2. 特別高圧を直接低圧に変成する変圧器は,次の各号のいずれかに掲げるものを除き,施設しないこと。
    1. 電気炉等電流の大きな電気を消費するための変圧器
    2. 発電所又は変電所,開閉所若しくはこれらに準ずる場所の所内用の変圧器
    3. 使用電圧が 15 000 [V] 以下の中性点接地式の特別高圧架空電線路であって,地絡遮断装置を有するなど一定の条件を備えるものに接続する変圧器
    4. 使用電圧が 35 000 [V] 以下の変圧器であって,その特別高圧側巻線と低圧側巻線とが混触したときに自動的に変圧器を電路から遮断するための措置を設けたもの
    5. 使用電圧が 100 000 [V] 以下の変圧器であって,その特別高圧側巻線と低圧側巻線との間に一定の条件を備えた B 種接地工事を施した金属製の混触防止板を有するもの
    6. 交流式電気鉄道用信号回路に電気を供給するための変圧器

電気設備に関する技術基準を定める省令第13条「特別高圧を直接低圧に変成する変圧器の施設制限」および電気設備の技術基準の解釈第34条「特別高圧を直接低圧に変成する変圧器の施設」からの出題である。

問4 架空電線路による感電及び通信障害の防止

  1. 特別高圧の架空電線路は,常時静電誘導作用により人により感知のおそれがないよう,地表上 1 [m] における電界強度が 3 [kV/m] 以下になるように施設しなければならない。ただし,田畑,山林その他の人の往来が少ない場所において,人体に危害を及ぼすおそれがないように施設する場合は,この限りではない。
  2. 特別高圧の架空電線路は,電磁誘導作用により弱電流電線路(電力用保安通信を除く)を通じて人体に危害を及ぼすおそれがないように施設しなければならない。
  3. 電力保安通信設備は,架空電線路からの静電誘導作用又は電磁誘導作用により人体に危害を及ぼすおそれがないように施設しなければならない。
  4. 特別高圧架空電線路は,次の各号により,かつ,架空電話線路に対して常時静電誘導作用により通信上の障害を及ぼさないように施設すること。ただし,架空電話線が通信用ケーブルであるとき,架空電話線路の管理者の承諾を得たときは,この限りではない。
    1. 使用電圧が 60 000 [V] 以下の場合は,電話線路のこう長 12 [km] ごとに誘導電流が 2 [μA] を超えないようにすること。
    2. 使用電圧が 60 000 [V] を超える場合は,電話線路のこう長 40 [km] ごとに誘導電流が 3 [μA] を超えないようにすること。

電気設備に関する技術基準を定める省令第27条「架空電線路からの静電誘導又は電磁誘導による感電の防止」および電気設備技術基準の解釈第102条「誘導障害の防止」からの出題である。

電気設備技術基準の解釈第102条「誘導障害の防止」には「特別高圧架空電線路は,地表上 1 [m] における電界強度が 3 [kV/m] 以下となるように施設するほか,静電誘導作用により人に危険を及ぼすおそれがないように施設すること。」と謳われている。これは電気的知識のほとんどない一般大衆に,心理的な不安感や不快感を与えないためである。

問5 一般電気事業者における電力需給計画

  1. 電力需要計画は,電力の安定供給と設備の経済的開発,経済的運用を図ることを目的として策定されるもので,将来の電力需要を想定し,その需要に対する供給力が主なものとなっている。また,その計画には,至近年を対象とした短期計画と,10 年程度先を対象とした長期計画とがある。
  2. 供給力の検討に当たっては,一般水力の河川流量の豊・渇水の影響,発電設備の定期検査や計画補修による一定期間の停止,発電設備の計画外停止などを考慮して,最大電力バランスと電力量バランスを策定している。
  3. 最大電力バランスは,短期計画では月別に,また長期計画では年間最大電力発生月の需要と供給力を対比させる。供給力の算定のうち,一般水力は,河川流量に左右されるので,過去の実績可能発電力をもとに月ごとに毎日の持続曲線を求め,その最低 5 日平均出力を供給力として採用している。供給力が需要を上回る分を供給予備力と呼び,安定供給を維持するためには,離島などの単独系統を除き一般に需要の 8~10 [%] 程度が必要とされている。この必要な供給予備力は,わが国では一般に,月の最大 3 日平均需要に対して見込不足日数が 0.3 [日/月] 以下となることを目標値としたものである。
  4. 電力量バランスは,各発電設備の発電可能電力量から定期検査や計画補修等による一定期間の停止による発電電力量(停止電力量)を差し引き,短期計画では各月別,また長期計画では年度別に策定している。

電気事業者は,電気事業法第29条「供給計画」の定めに基づいて,毎年度,電気の供給や電気工作物の設置および運用に関する計画を「供給計画」として経済産業大臣に届け出ている。

問6 電力系統の信頼度

  1. 電力系統の信頼度を評価する場合,事故による供給支障の確率を用いることがある。供給設備からみた場合,$n$ 台の同一仕様の発電機からなる電源で,発電機 1 台当たりの事故停止確率が $s$ であるとき,同時に発電機 $k$ 台が事故停止している(残りの $(n-k)$ 台の発電機は健全である)確率 $p_k$ は,下式で表される。

    \[ p_{k}=_{n}C_{k}\cdot s^{k} \cdot (1-s)^{n-k} \]

    これによれば,発電機 3 台の電力系統において,発電機 1 台当たりの事故停止確率が 0.05 であるとき,同時に発電機 2 台が事故停止している(残りの 1 台の発電機は健全である)確率は,0.00713 である。

与えられた式に $n=3$,$s=0.05$,$k=2$ を代入する。

\[ p_2 = _3 C_2 \times 0.05^2 \times (1-0.05)^{3-2}=7.125\times10^{-3} \]

電力不足確率(LoLP : Loss of Probability)

電力不足確率 = Σ停電時間/考察期間の時間

電力量不足確率(Loss of Energy Probability)

電力量不足確率 = Σ(供給支障電力 × 停電時間)/考察期間の負荷電力量
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