令和5年度 第1種 法規

2023年9月2日作成,2023年9月16日更新

令和5年度 第一種電気主任技術者試験一次試験 法規科目の合格基準は,80 点満点換算で 48 点以上,受験者は 854 人,合格者数は 755 人で,合格率は 88.4 % だった。

  1. 問題文中に「電気設備技術基準」とあるのは,「電気設備に関する技術基準を定める省令」の略である。
  2. 問題文中に「電気設備技術基準の解釈」とあるのは,「電気設備の技術基準の解釈における第1章~第6章及び第8章」をいう。なお,「第7章 国際規格の取り入れ」の各規定について問う出題にあっては,問題文中にその旨を明示する。
  3. 問題は,令和5年4月1日現在,効力のある法令(電気設備の技術基準の解釈を含む。)に基づいて作成している。

目次

  1. 事業用電気工作物の自主的な保安
  2. 地中電線路の施設
  3. 電動機の過負荷保護装置の施設
  4. 低圧電路の絶縁監視
  5. 常時監視をしない発電所の施設
  6. 電力需給

問1 事業用電気工作物の自主的な保安

次の文章は,「電気事業法」及び「電気事業法施行規則」に基づく事業用電気工作物の自主的な保安に関する記述である。ただし,本問において,事業用電気工作物から小規模事業用電気工作物を除く。

a)

事業用電気工作物を設置する者は,事業用電気工作物の工事,維持及び運用に関する保安の監督をさせるため,主務省令で定めるところにより,主任技術者免状の交付を受けている者のうちから,主任技術者を選任しなければならない。

b)

事業用電気工作物を設置する者は,主任技術者に二以上の事業場又は設備の主任技術者を兼ねさせてはならない。ただし,事業用電気工作物の工事,維持及び運用の保安上支障がないと認められる場合であって,経済産業大臣(監督に係る事業用電気工作物が一の産業保安監督部の管轄区域内のみにある場合は,その設置の場所を所管する産業保安監督部長。)の承認を受けた場合は,この限りでない。

c)

事業用電気工作物を設置する者は,事業用電気工作物の工事,維持及び運用に関する保安を確保するため,主務省令で定めるところにより,保安を一体的に確保することが必要な事業用電気工作物の組織ごとに保安規程を定め,当該組織における事業用電気工作物の使用(使用前自主検査又は溶接自主検査を伴うものであっては,その工事)の開始前に,主務大臣に届け出なければならない。

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(1)

正解は(イ)監督である。

(2)

正解は(ヘ)主任技術者免状の交付である。

(3)

正解は(ロ)事業場又は設備である。

(4)

正解は(ニ)承認である。

(5)

正解は(カ)一体的である。

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問2 地中電線路の施設

次の文章は,「電気設備技術基準」及び「電気設備技術基準の解釈」に基づく,地中電線路の施設に関する記述である。

地中電線路を施設する場合は,地中電線(地中電線路の電線をいう。)には,感電のおそれがないよう,使用電圧に応じた絶縁性能を有するケーブルを使用しなければならないとともに,以下によること。

a)

地中電線路は,管路式,暗きょ式又は直接埋設式により施設すること。なお,管路式には電線共同溝(C. C. BOX)方式を,暗きょ式にはキャブ(電力,通信等のケーブルを収納するために道路下に設けるふた掛け式の U 字構造物)によるものを,それぞれ含むものとする。

b)

地中電線路を管路式により施設する場合にあっては,高圧又は特別高圧の地中電線路には,次により表示を施すこと。ただし,需要場所に施設する高圧地中電線路であって,その長さが 15 m 以下のものにあってはこの限りでない。

  1. 物件の名称,管理者名及び電圧(需要場所に施設する場合にあっては,物件の名称及び管理者名を除く。)を表示すること。
  2. おおむね 2 m の間隔で表示すること。ただし,他人が立ち入らない場所又は当該電線路の位置が十分に認知できる場合は,この限りでない。

c)

地中電線路を暗きょ式により施設する場合にあたっては,防火措置として地中電線に耐燃措置を施す,又は暗きょ内に自動消火設備を施設すること。

d)

地中電線路を直接埋設式により施設する場合は,所定の技術的規定により施設する場合を除き,地中電線の埋設深さは,車両その他の重量物の圧力を受けるおそれがある場所においては 1.2 m 以上,その他の場所においては 0.6 m 以上であること。ただし,使用するケーブルの種類,施設条件等を考慮し,これに加わる圧力に耐えるよう施設する場合はこの限りでない。

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(1)

正解は(ヌ)感電である。

(2)

正解は(リ)直接埋設である。

(3)

正解は(ヨ)電圧である。

(4)

正解は(ト)自動消火設備である。

(5)

正解は(ヲ)0.6 である。

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問3 電動機の過負荷保護装置の施設

次の文章は,「電気設備技術基準の解釈」に基づく,電動機の過負荷保護装置の施設に関する記述である。

屋内に施設する電動機には,電動機が焼損するおそれがある過電流を生じた場合に自動的にこれを阻止し,又はこれを警報する装置を設けること。ただし,次のいずれかに該当する場合はこの限りでない。

  1. 電動機を運転中,常時,取扱者が監視できる位置に施設する場合
  2. 電動機の構造上又は負荷の性質上,その電動機の巻線に当該電動機を焼損する過電流を生じるおそれがない場合
  3. 電動機が単相のものであって,その電源側電路に施設する過電流遮断器の定格電流が 15 A(配線用遮断器にあっては,20 A)以下の場合
  4. 電動機の出力が 0.2 kW 以下の場合
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(1)

正解は(リ)警報である。

(2)

正解は(ニ)常時である。

(3)

正解は(チ)巻線である。

(4)

正解は(ホ)単相である。

(5)

正解は(ヲ)0.2 である。

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問4 低圧電路の絶縁監視

次の文章は,低圧電路の絶縁監視に関する記述である。

「電気設備技術基準」の規定により,原則的に,電路は大地から絶縁することとなっている。高圧受電の自家用電気工作物の低圧電路については,その絶縁状態を監視する技術が実用化され,経済産業省の告示及び内規にもそれを使用した場合の点検頻度が規定されたことから,以降広く活用されている。

この低圧電路の絶縁監視技術の代表的な方式として,主変圧器の二次側低圧電路の B 種接地工事の接地線に流れる漏洩電流($I_0$)を検出することにより常時絶縁監視を可能とする $I_0$ 方式がある。

しかし,対地静電容量が大きい場合,対地静電容量による電流 $I_\text{0c}$ が大きくなり,電路に絶縁不良がなくとも,漏えい電流 $I_0$ が大きくなるという課題がある。このため,漏洩電流($I_0$)のうち,絶縁抵抗による電流成分($I_\text{0r}$)のみを検出する $I_\text{0r}$ 方式も実用化されている。

なお,$I_0$ 方式も $I_\text{0r}$ 方式も,① 接地相の絶縁劣化が検出できない,② 複数の非接地相の漏洩電流が打ち消し合う場合に検出できない,という共通の課題がある。これらの課題に対しては,$I_\text{gr}$ 方式という絶縁監視技術が開発されている。これは,商用周波数に対して異なる周波数の監視電源電圧を B 種接地工事の接地線を介して加え,電路と対地間に流れる漏洩電流のうちから監視電源による電流($I_\text{g}$)を取り出し,さらに対地絶縁抵抗による電流成分($I_\text{gr}$)のみを検出する方式である。

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(1)

正解は(ヨ)B 種である。

(2)

正解は(ル)対地静電容量である。

(3)

正解は(ワ)接地相である。

(4)

正解は(ニ)打ち消し合うである。

(5)

正解は(ト)異なる周波数である。

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問5 常時監視をしない発電所の施設

次の文章は,「電気設備技術基準の解釈」に基づく,常時監視をしない発電所の施設に関する記述である。

技術員が当該発電所又はこれと同一の構内において常時監視をしない発電所の監視方式には,随時巡回方式,随時監視制御方式及び遠隔常時監視制御方式の 3 方式がある。このうち,内燃力とその廃熱を回収するボイラによる汽力を原動力とする発電所に認められている方式は随時監視制御方式である。また,出力に制約なく全ての監視方式が認められている発電所は,風力発電所,太陽電池発電所及び燃料電池発電所である。逆に,ガスタービン発電所は遠隔常時監視制御方式であっても出力が 10 000 kW 未満でなければならない。

随時監視制御方式では,技術員が必要に応じて発電所に出向き,運転状態の監視又は制御その他必要な措置を行わなければならない。さらに,随時巡回方式又は随時監視制御方式の発電所に施設する変圧器の使用電圧は 170 000 V 以下でなければならない。

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(1)

正解は(ヲ)随時巡回である。

(2)

正解は(ヨ)随時監視制御である。

(3)

正解は(ト)燃料電池である。

(4)

正解は(ワ)ガスタービンである。

(5)

正解は(ニ)10 000である。

(6)

正解は(ル)必要に応じてである。

(7)

正解は(ハ)170 000である。

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問6 電力需給

次の文章は,電力需給に関する記述である。

電気の需要と供給との関係を電力需給という。電力需給は電気の特性に起因して他の商品の需給とは次の点で大きく異なる。

  1. 供給力(発電設備)による電気の発生と,需要(負荷設備)による電気の消費とが同時に行われるため,需要と供給の間に不均衡が生じると周波数が変動する。供給力が不足すると需給の均衡が破れて供給を継続することができなくなり,最悪の場合,大規模な停電に至る。
  2. 供給力は,水力を含む再生可能エネルギー・火力・原子力等の電源により構成されている。一方,需要は電気の使用形態を異にする多数の負荷で構成され,常に変動している

したがって,全国規模での安定供給体制と需給調整機能を強化するためには,需給状況の監視,供給能力の確保,需給状況が悪化又はそのおそれがある場合の電気の供給の指示等を,全国的な視点を持った一つの法人が行う必要があるとされ,電力システム改革以降,電力広域的運営推進機関(OCCTO)がその役割を担っている。電力広域的運営推進機関(OCCTO)は全ての電気事業者(発電事業者,小売電気事業者,一般送配電事業者,送電事業者,配電事業者,特定送配電事業者,特定卸供給事業者)が会員となることが義務付けられており,次に掲げる業務を行っている。

  1. 会員が営む電気事業に係る電気の需給の状況の監視
  2. 需給の状態が悪化又はそのおそれがある場合で需給の状況を改善する必要があると認められるときの,電源の出力増や電力融通により電気を供給する指示
  3. 送配電等業務の実施に関する基本的な指針の策定
  4. 電気事業者による供給計画及び当該供給計画に関する意見の経済産業大臣への送付
  5. 供給能力の確保の促進
  6. FC,地域間連系線等の送電インフラの整備に関する広域系統整備計画の策定
  7. 一般送配電事業者による災害時連携計画及び当該災害時連携計画に関する意見の経済産業大臣への送付
  8. その他電力広域的運営推進機関(OCCTO)の目的を達成するために必要な業務
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(1)

正解は(リ)周波数である。

(2)

正解は(ソ)変動しているである。

(3)

正解は(ロ)電力広域的運営推進機関(OCCTO)である。

(4)

正解は(レ)小売である。

(5)

正解は(ハ)一般である。

(6)

正解は(ニ)送電である。

(7)

正解は(タ)電力融通である。

(8)

正解は(ル)地域間連系線である。

参考文献

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