平成20年度 第2種 電力

2022年1月2日更新

目次

  1. 揚水式発電所のサイリスタ始動方式
  2. 変圧器の負荷時タップ切換装置
  3. 送配電系統の高調波対策
  4. 地中配電線路
  5. 原子燃料サイクル
  6. 交流送電の特徴
  7. 送電線の電圧制御

問1 揚水式発電所のサイリスタ始動方式

サイリスタ始動方式は,停止中の発電電動機にあらかじめ励磁を与えておき,サイリスタ始動装置の順変換器に所内から商用周波数交流電源を供給し,発電電動機の回転子位置検出器からの信号により逆変換器のゲート回路を制御し,回転子の励磁位置に対応した零(0)から定格周波数まで変化する交流を電機子に供給して発電電動機を始動・加速する方式である。

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問2 変圧器の負荷時タップ切換装置

負荷時タップ切換装置は,負荷時タップ切換器とその駆動装置及び保護などの付属装置から構成される。そのうち,負荷時タップ切換器は,無電流状態でタップを選択するタップ選択器と,選択された回路の電流を開閉する切換開閉器のほか,タップ切換動作の際,タップ間が橋絡されたときに流れる循環電流を制限する限流インピーダンスとから構成される。なお,変圧器の巻線が Y 結線の場合には,負荷時タップ切換器は,通常,絶縁が容易な巻線の中性点側に設置される。

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問3 送配電系統の高調波対策

送配電系統の高調波電流抑制対策としては,発生源の一つであるパルス数 p の三相ブリッジ回路を持つ電力変換装置の発生する高調波次数は pm ± 1 ( m は整数)で,大きさは次数に反比例するため,パルス数を増加することにより低次数の高調波を抑制することができる。また,パルス幅変調方式など高調波発生を抑制した制御方式を採用した電力変換装置も使用されている。単相整流及び三相ブリッジ整流回路の場合は,交流側にリアクトルを直列に挿入することにより高調波電流の発生を抑制することができる。

電気機器や装置の負荷電流の高調波成分の電力系統への流出を抑制する方法の一つとして,受動(パッシブ)フィルタが用いられる。受動フィルタは負荷電流に含まれる高調波成分を吸収するもので,複数の所定次数調波吸収用の同調フィルタと,高次調波吸収用の高次フィルタで構成される場合が多い。

需要家に設置される力率改善用コンデンサは,一般的に高圧側に設置されることが多いが,これを低圧側に設置することにより配電系統に流出する高調波電流を抑制することができる。

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問4 地中配電線路

地中配電系統は,過密都市部など高信頼度を要請される地域に適用されることが多い。その系統構成はケーブルの事故復旧に長時間を要することから,分岐系統であっても末端を他系統と連系したり,あるいは特に重要な部分の系統を二重化する方式となっている。そのため,ケーブル系統のどこで事故が発生しても切り替えにより,早期に停電が解消できる。

現在,地中配電線路に用いられるケーブルは CVT ケーブルが主流であり,このケーブルは絶縁層に架橋ポリエチレンを用いており耐熱性や作業性に優れている一方,水トリーという絶縁劣化現象があることが昭和 40 年代中頃から明らかになり,様々な研究が行われた。現在では,定期的に劣化診断を行うなど運用面での対応とともに,水トリーを抑えるために絶縁層内の含水率や不純物を低減し,絶縁層と半導電層との界面を滑らかにするなど,製造過程でも対応を行っている。

CV ケーブルの特長は以下の通り。ちなみに CVT は単心ケーブル三本を撚ったもので,CV ケーブルに比べて曲げやすいという特長がある。

  • 保守が容易である。
  • 取り扱いが容易で作業性がよい。
  • 誘電正接が小さく,誘電損が少ない。
  • 耐薬品性が優れている。

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問5 原子燃料サイクル

天然ウラン中には,235U は 0.7 [%] 程度しか含まれておらず,大部分が 238U である。そのため,燃料としては,235U の濃度を 3 ~ 5 [%] まで濃縮し,UO2 に再転換して使用する。原子炉内に挿入された燃料は,通常の運転状態では平均 3 ~ 5 年間程度熱エネルギーを放出した後,使用済燃料として取り出され,再処理を経て,転換・濃縮・再転換され燃料として使用される。

再処理によって分離されたプルトニウムをウランと混ぜ合わせた混合燃料を MOX 燃料といい,これを現在の原子力発電所の軽水炉で使用することをプルサーマルという。

  • MOX 燃料:プルトニウムとウランを混合して作った混合酸化物燃料(Mixed Oxide Fuel)の略語。
  • プルサーマル:プルトニウムとサーマルリアクター(現在の原子力発電所)の二つの言葉を合わせた造語。

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問6 交流送電の特徴

現在の電力系統は交流送電が主体で直流送電が補完的に適用されている。これは交流送電の次に述べる利点による。

  • 大電力を効率よく送電できる高電圧送電が,静止器である変圧器により容易に,かつ,効率的に実現できる。
  • 半周期ごとに電流が零となるため,遮断器による系統構成の変更や系統事故除去が容易にできる。
  • 多端子のネットワークを構成でき,効率的,経済的な電力輸送が可能となる。
  • 直流発電機と異なり整流子を必要としない同期発電機が主な電源として利用される。
  • 構造が簡単で堅ろうで安価なかご形などの誘導機を動力負荷として利用可能である。

反面,系統内の発電機をほぼ一定の回転速度で運転し,発電機間の電圧位相差をある範囲に収める同期運転が必要となることから,送電線の安定度による送電限界や事故時の発電機脱調等,直流送電にない問題がある。

ちなみに直流送電の利点は次のとおり。

  • 変換器は高価だが,線路建設費は安く,送電距離が長いと経済的である。
  • 直流連系により安定度や短絡容量の問題がない。
  • ケーブルを用いても充電電流がない。
  • 異周波系統の連系ができる
  • 高速の潮流制御が可能である。

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問7 送電線の電圧制御

送電線の送電端及び受電端の電圧を一定範囲に保つためには,送受電端において適切に無効電力の授受を行わなければならず,このために用いるのが調相設備であり,電力用コンデンサ,分路リアクトル,ロータリーコンデンサ,SVC(Static Var Compensator)などが用いられている。調相設備を適切に用いることによって,受電端の電圧が高いとき遅れ無効電力を供給して電圧を上げる。ロータリーコンデンサは界磁電流を抑制することによって,また,SVC は,サイリスタの制御角を変えてリアクトルを流れる電流を制御することによって,発生あるいは消費する無効電力を自由にしかも連続的に変えることができ,端子電圧を一定に保つことができる。

調相設備の設置目的は次のとおり。

  • 無効電力潮流を改善する。
  • 電力損失を低減する。
  • 送電容量を確保する。
  • 系統電圧を適性に維持する。
  • 安定度の向上を図る。

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