平成25年度 第2種 電力
目次
問1 蒸気タービン発電機の起動
蒸気タービンを起動する前に,循環水(冷却水)ポンプを起動して (1) に冷却水を通水するとともに,タービンの軸封部を (2) にてシールし,空気抽出器によって (1) の真空上昇を行う。ボイラの蒸気条件及び (1) の真空度が規定値に達したら,タービン起動装置によってタービンに蒸気を送り起動する。運転に際して留意する事項は次のとおりである。
- タービンに送気する主蒸気の温度及びその変化率は,ケーシングやローターなど厚肉材料に過大な (3) を与えないよう制限値以内で運転することが重要である。
- タービン回転上昇中はタービンの伸び差や (4) ,軸受油温,油量などについて注意し,制限値を超えないようにする。特に,(4) については (5) を速やかに通過するよう操作するとともに,監視を十分に行い異常な (4) に注意する。
問1 解答と解説
(1)
正解は(ル)復水器(condenser)である。復水器は,タービン排気を冷却・凝縮させ,復水するものである。
(2)
正解は(ワ)蒸気である。
(3)
正解は(イ)熱応力である。
(4)
正解は(ヲ)振動である。
(5)
正解は(ハ)危険速度である。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「蒸気タービン発電機の起動」
問2 変圧器の負荷時タップ切換装置
負荷時タップ切換装置における負荷時タップ切換器は,無電流状態でタップを選択する (1) と,選択された回路の電流を開閉する切換開閉器と,タップ切換の際,タップ間が橋絡されたときに流れる (2) を制限する (3) とから構成される。
切換開閉器は,タップ切換の際,アークを発生し,切換開閉器室内の油を汚損したり,接点の磨耗が避けられない。このため,最近では,切換開閉器の長寿命化や切換開閉器室の浄油のための保守の省力化の観点から,(4) を使った切換開閉器も使用されている。
通常,負荷時タップ切換装置の耐用切換回数としては,電気的には 20 万回,機械的には (5) 回と決められ,形式試験で確認されている。
問2 解答と解説
負荷時タップ切換変圧器とは,JEC-2200-2014「変圧器」に記載されている 2. 用語の意味 によると,負荷時タップ切換変圧器とは,「電圧が異なる二つ以上の回路間の電圧・電流の変成を行い,かつ負荷時タップ切換えが行える変圧器」のことである。
(1)
正解は(チ)タップ選択器である。
(2)
正解は(ニ)循環電流である。
(3)
正解は(ハ)限流インピーダンスである。
(4)
正解は(ワ)真空バルブである。
従来の負荷時タップ切換装置に採用している油中接点方式は,タップ切換時に,切換開閉器室内の絶縁油中で通電電流を遮断する。このため,周囲の絶縁油を汚損し,切換開閉器室内の絶縁性能が低下することが避けられなかった。その対策として,活線浄油機を設け,汚損した切換開閉器湿の絶縁油を毎日循環ろ過運転していた。さらに,数年に 1 回の頻度で切り換え開閉器室絶縁油の全量交換が必要であった。
真空バルブ式負荷時タップ切換装置は,切換開閉器室接点に真空バルブを採用し,真空バルブ内で通電電流を遮断するため,切換開閉器室の絶縁油を汚損しない。これにより,活線浄油機が不要となり,点検周期の延伸,絶縁油の取替回数の削減ができるなどメンテナンスコストの大幅な削減ができる。
(5)
正解は(ロ)80 万である。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「変圧器の負荷時タップ切換装置」
- 真空バルブ式負荷時タップ切換装置の開発
問3 電力系統に生じる電力動揺
遠隔地電源から無限大母線へ遅れ力率で送電している超高圧並行 2 回線送電線において,その片回線が開放され,生じた電力動揺が収まった後に投入された。片回線開放直後,発電端電圧は急に (1) し,その後ある周期で振動する。投入時もやはり発電端電圧は投入に伴って急変した後,ある周期で振動する。通常,開放後の動揺周期と投入後の動揺周期と比べると (2) が,これは以下の理由による。
超高圧架空送電系統では送電線の抵抗,静電容量成分はリアクタンス成分に比べて小さいので,送電電力 $P$ は発電機内部電圧及び無限大母線の大きさ $V_1$,$V_2$ とそれらの位相差 $\delta$ 並びに発電機から送電線にかけてのリアクタンスの総和 $X$ を用いて近似的に (3) と表すことができる。両電圧及びリアクタンスをパラメータとし,$\delta$ を横軸,$P$ を縦軸として表した曲線を $P-\delta$ カーブとも呼んでいる。片回線開放後は $X$ の値が大きくなるので,定常状態で比較すると,投入時に対して開放後の δ の値の方が (4) 。
このため,開放後並びに投入後の定常状態における $P-\delta$ カーブの接線の傾きを比較すると開放後の方が小さい。これは電力動揺によって $\delta$ が変化しても,それを戻そうとする作用が弱い,すなわち (5) が小さいことを意味し,このため電力動揺周期を開放後と投入後で比べると (2) 。
問3 解答と解説
(1)
正解は(ト)上昇である。
(2)
正解は(ヨ)前者の方が長いである。
(3)
正解は(チ)$\displaystyle P = \frac{V_1 V_2}{X}\sin\delta$ である。
(4)
正解は(ヌ)大きいである。
(5)
正解は(ロ)同期化力係数である。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「電力系統に生じる電力動揺」
問4 電力系統の短絡容量
電力系統の短絡容量は 3 × (1) × 三相短絡電流によって計算する。短絡容量は系統容量の増大に伴い大きくなり,また系統連系が密になるほど大きくなる。短絡容量が遮断器の (2) を上回ると,事故電流を遮断できず,機器の損壊や広範囲・長時間の停電を引き起こすおそれがある。このため,短絡容量抑制対策として,系統分割をせずに実施する対策(1,2)あるいは,系統分割をする対策(3,4,5)が必要に応じて実施される。
- 発電機や変圧器などに高インピーダンス機器を採用する。
- 送電線に直列に (3) を設置する。
- 変電所の母線分離運用を行う。
- 短絡電流を流さない (4) を設置する。
- 現在採用されているよりも上位の (5) を導入し,既存の系統を分割する。
問4 解答と解説
(1)
正解は(ホ)基準電圧(相電圧)である。
(2)
正解は(ロ)遮断容量(breaking capacity)である。遮断容量とは,開閉機器が規定の使用条件および動作状態のもとで,ある所定の電圧において遮断し得る固有遮断電流値である。
(3)
正解は(ヌ)限流リアクトルである。
(4)
正解は(ル)BTB (Back to Back)である。
(5)
正解は(イ)電圧階級である。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「電力系統の短絡容量」
問5 水車のキャビテーションとその対策
水車の流水中の絶対圧力が (1) 以下になると,その部分にキャビテーションが発生する。キャビテーションが発生すると,以下の現象が発生する。
- 効率,出力,水流の減少が起こる
- キャビテーションの発生場所に (2) が起こる
- (3) 入口の水圧変動が著しくなる
このキャビテーションの発生を抑制する対策としては,以下などがある。
- 水車の (4) を一定値以下とする
- ランナベーンの形状を整え,表面を滑らかにする
- 過度の (5) 運転や過負荷運転をさける
問5 解答と解説
(1)
正解は(ヘ)飽和蒸気圧である。
(2)
正解は(ハ)壊食である。
(3)
正解は(ヨ)吸出し管である。
(4)
正解は(ホ)比速度である。
(5)
正解は(ヌ)部分負荷である。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「水車のキャビテーションとその対策」
- 【WLP】失敗に学ぶ-泡が機械を破壊「気泡やキャビテーションによる破壊」
問6 燃料電池
現在使用されている燃料電池は水素と酸素を反応物(活物質)として外部から連続的に供給し,水の電気分解の逆反応を用いて発電する。低温形の燃料電池には既に多数の実績があるりん酸形燃料電池と (1) 形燃料電池があるが,最近では取り扱いの容易な (1) 形が家庭用として実用化されている。これらの低温形燃料電池は,取り扱いやすく起動時間が短い長所があるが,廃熱利用用途が限られ,発電効率が低いという短所がある。また,触媒に希少かつ高価な (2) が必要となる。これに対し触媒に (2) を必要としない高温動作の燃料電池である固体酸化物形(固体電解質形)燃料電池が実用化され,家庭用に小形化も進んでいる。固体酸化物形は電解質に (3) 系電解質を用い,高効率であり,廃熱温度も高く,廃熱利用用途が広い。
反応物である水素は都市ガスや下水処理場で発生する消化ガス等を用い,(4) で水素に変換して得る。また,燃料電池は出力が直流であるため,(5) を介して交流系統に接続するのが一般的である。
問6 解答と解説
(1)
正解は(ヌ)固体高分子である。
(2)
正解は(ト)白金である。
(3)
正解は(ヨ)セラミックである。
(4)
正解は(チ)改質器である。
(5)
正解は(ロ)インバータである。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「燃料電池」
問7 低圧配電線の配線方式
低圧配電線には単相 2 線式,単相 3 線式,三相 3 線式及び三相 4 線式などが採用される。いずれの方式においても,混触時の低圧側電圧上昇を抑制するという保安上の理由から,一般には一線又は中性点が (1) されている。
単相 3 線式は単相変圧器二次側の中性点を (1) して,そこから中性線を引き出し,両外側の (2) とともに 3 線で負荷に供給する方式である。単相 2 線式と同じ太さと長さの電線を 3 本使い,中性線と両外側の (2) に単相 2 線式の負荷を半分ずつ配置し,単相 2 線式と同じ容量の負荷に供給した場合,電圧降下と電力損失は単相 2 線式の (3) に減少し,経済的に有利である。しかし,負荷に不平衡などがあると電圧不平衡となるおそれがある。電圧不平衡の対策として負荷の対象配分を図ることや,線路の末端に (4) を設置するなどの方法がある。また,単相 3 線式では,中性線にヒューズを挿入すると,ヒューズが溶断したときには (5) が発生するおそれがある。
問7 解答と解説
(1)
正解は(ヌ)接地である。
(2)
正解は(ワ)電圧線である。
(3)
正解は(ホ)1/4である。
(4)
正解は(チ)バランサである。
(5)
正解は(イ)過電圧である。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「低圧配電線の配線方式」