令和3年度 第2種 機械

2021年11月21日作成,2023年9月16日更新

令和3年度第二種電気主任技術者試験一次試験 機械科目の合格基準は,90 点満点換算で 54 点以上,受験者は 3,635 人,合格者数は 1,881 人で,合格率は 51.7 % だった。

目次

  1. 一般的な直流励磁の定速同期発電機の励磁方式及び励磁装置
  2. インバータの動作
  3. 特殊かご形誘導機
  4. 単巻変圧器
  5. 食塩電解
  6. グローブ照明器具
  7. 電気加熱
  8. A-D 変換

問1 一般的な直流励磁の定速同期発電機の励磁方式及び励磁装置

次の文章は,原動機で駆動され,電力系統に連系した一般的な直流励磁の定速同期発電機の励磁方式及び励磁装置に関する記述である。

小形の同期発電機では界磁に永久磁石を使用することもあるが,中型から大型の同期発電機(以下,主発電機と呼ぶ)では界磁巻線に直流電流を通電して励磁する方法が適用される。

この直流電流(界磁電流)を供給する装置を励磁装置と呼び,近年では交流励磁機方式,又は静止形励磁方式が一般的である。また,この界磁電流の大きさを調整して主発電機の無効電力や端子電圧を調整することを励磁制御という。

交流励磁機方式は,励磁電源として同期発電機を使用しており,この発電機を交流励磁機と呼ぶ。交流励磁機方式では,主発電機の界磁電流の増減は,交流励磁機の界磁電流の調整によって行われる。交流励磁機の出力は半導体電力変換器で整流されて,主発電機の界磁巻線に供給される。交流励磁機にも励磁が必要であるが,その電源としてさらに小型の発電機をもう一台使用する場合は,この小型の発電機を副励磁機と呼ぶ。

交流励磁機方式の一つにブラシレス励磁方式がある。ブラシレス励磁方式の交流励磁機の構造は回転電機子形であり,その出力は交流励磁機の回転子と同軸上に設置された半導体電力変換器で整流されて,主発電機の界磁巻線に供給される。このため,この方式では主発電機及び交流励磁機に界磁電流を給電するためのスリップリングとブラシが不要である。

静止形励磁方式では,サイリスタ素子を使用した電力変換器を使用する方式が近年一般的であり,サイリスタ励磁方式とも呼ばれる。サイリスタ励磁方式では,その電源を励磁変圧器経由で主発電機の出力回路(主回路)から得る自励方式が多く採用されている。

参考文献

問2 インバータの動作

準備中

問3 特殊かご形誘導機

かご形誘導機の始動特性の特徴として始動電流が大きい割に始動トルクが小さいことがあげられる。始動特性を改良するために二次周波数の変化に対する二次抵抗の変化を利用したのが特殊かご形誘導機である。

二重かご形誘導機の回転子は,二つのかご形導体を有している。回転子表面に近い外側導体は断面積が小さく,抵抗値が大きい。軸に近い内側導体は断面積が大きく,抵抗値が小さい。始動時の二次周波数が高い間は,内側導体が構成する二次回路の漏れリアクタンスが大きいため,二次回路を流れる電流の大部分は外側導体を流れる。そのため,二次抵抗の高い誘導機として始動され,大きな始動トルクを得ることができる。二次周波数の低下に伴い,二次電流の大部分は抵抗の低い内側導体に流れる。

深みぞかご形誘導機の回転子には半径方向に長い導体を用いている。始動時の二次周波数が高い間は,二次電流は表皮効果により導体の回転子表面近くに集中する。二次周波数の低下に伴い,二次電流が導体の軸に近い部分まで広がるので,二次抵抗は低くなる。

参考文献

問4 単巻変圧器

変圧器の一次巻線と二次巻線とを別々の巻線にしないで,一次巻線と二次巻線の一部を共用して使用する変圧器を単巻変圧器といい,この変圧器の一次,二次に共通した巻線を分路巻線,共通でない部分を直列巻線という。

図に示すように単巻変圧器の一次側に 20 Ω の直列抵抗,二次側に 5 Ω の負荷抵抗を接続し,電源電圧を 100 V とする。一次巻線の巻き数を $N_1$ = 200 とした場合に,5 Ω の負荷抵抗で消費される電力が最大となる二次巻数は $N_2$ = 100 となり,このときの負荷抵抗の消費電力は 125 W となる。なお変圧器は理想変圧器として考える。

単巻変圧器
  • $N_1$ : 一次巻線(= 200)
  • $N_2$ : 二次巻線

参考文献

  • 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「単巻変圧器

問5 食塩電解

食塩電解は食塩水を電解して塩素,水酸化ナトリウム(苛性ソーダ),水素を得る工業電解プロセスであり,全反応式は以下で表される。

2 NaCl + 2 H2O → Cl2 + H2 + 2 NaOH

現在,国内で行われているイオン交換膜法では Na+ の選択透過性のある密隔膜(イオン交換膜)を隔膜として利用し,アノードには寸法安定性電極,カソードにはニッケル系の電極が用いられ,理論分解電圧は 2.3 V,実際のセル電圧は 3.0 ~ 5.0 V である。

電解槽のセル電圧を下げるためには,電極反応や電解槽の内部抵抗などが原因のセル電圧の上昇を小さくしなければならない。食塩電解の電極反応はターフェルの式に従う。したがって,運転時の電極電位と平衡電位の差である過電圧は電流が大きくなると,電流の対数に比例して大きくなる。内部抵抗は電解質の抵抗によるものが支配的である。この電解質の抵抗は電解液である食塩水や水酸化ナトリウムやイオン交換膜などの電解質のイオン抵抗である。内部抵抗を小さく,すなわちイオン伝導度を高くするためには電解質の濃度を高く維持する必要がある。このとき,食塩水や水酸化ナトリウムなどの強電解質の濃度あたりの伝導率であるモル伝導率は,イオン間の相互作用により濃度が高くなると小さくなる

電解槽に加える電力は電流と電圧の積で表すことができ,電気化学反応も化学熱力学的な項,ファラデーの法則に基づく電流項,ネルンスト式で表される電圧項,それぞれ理論的な値が存在するので,電解槽のエネルギー変換効率は化学熱力学に基づく理論効率,電流効率と電圧効率の積で表される。

今,電極面積 2 m2 の食塩電解セルを 2 時間運転した。このときのセル電圧が 3.3 V,電流密度が 6 kA/m2,電流効率が 96 % で一定であった。この間の電解セルの電圧効率は 69.7 %,標準状態換算での塩素の生産量は 9.63 kL である。なお,ファラデー定数は 26.80 A·h/mol,気体の標準状態の体積を 22.4 L/mol とする。

参考文献

  • 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「食塩電解

問6 グローブ照明器具

乳白ガラスでできたグローブ(球体,半径 $r$ [m])がある。グローブの中心には全光源(全光束 $F_\text{p}$ [lm])が置かれている。グローブの内側と外側の表面はともに均等拡散面がある。点光源を発してグローブの内側表面に入射した光は,一部は反射され,残りは乳白ガラスに進入する。なお,乳白ガラスの厚みは無視でき,乳白ガラスの反射率及び透過率はそれぞれ $\rho$ 及び $\tau$ とする。

また,グローブの内側表面で反射された光はグローブ内を進行して内側表面のどこかに再び入射し,そこで一部は反射され,残りは乳白ガラスに進入する。光はこのような過程をグローブ内で繰り返すが,グローブの内側表面で反射された光が点光源に吸収されることはないものとする。なお,円周率は $\pi$ とする。

以上の諸量を用いて,グローブから外部に放射される全光束 $F_\text{s}$ は $\displaystyle \frac{\tau F_\text{p}}{1-\rho}$ [lm] で表される。また $F_\text{s}$ を用いて,グローブの光度 $I$ は $\displaystyle \frac{F_\text{s}}{4\pi}$ [cd],光束発散度 $M$ は $\displaystyle \frac{F_\text{s}}{4\pi r^2}$ [lm/mm2] で表される。

次に,図に示すように,このグローブ照明器具を部屋の天井面からつるし,部屋の照明を行った。グローブ中心直下の床面上の位置 A 点からグローブ中心までの高さは $H$ [m] で,$H$ >> $r$ である。また,A 点から床面上の B 点までの距離は $D$ [m] である。なお,この部屋にはグローブ照明器具以外に光源はなく,天井,床,壁など,周囲からの反射光や入射光の影響はないものとする。

B 点における水平面照度 $E_\text{h}$ はグローブの光度 $I$ を用いて $\displaystyle \frac{HI}{(H^2 + D^2)^{\frac{3}{2}}}$ [lx] で表される。また,B 点からグローブの中心を見たときの輝度 $L$ は光束発散度 $M$ を用いて $\displaystyle \frac{M}{\pi}$ [cd/m2] となる。

グローブ照明器具

問7 電気加熱

電気エネルギーを熱として利用し,対象物の温度を上昇させることを電気加熱と呼ぶ。電気加熱のうち最も広く使われているのが抵抗加熱である。抵抗加熱は抵抗体に電流を流すことにより生じるジュール熱を利用する。このとき,抵抗体が達する温度はジュール熱により生じる熱と抵抗体から放散する熱が等しくなる温度である。この状態を熱平衡という。

このうち間接抵抗加熱は,熱源となる抵抗体から伝熱によって被加熱物に熱を伝えるので,被加熱物の材質にかかわらず加熱することができる。伝熱とは熱の移動をさし,次の 3 とおりの,熱伝導対流熱伝達放射伝熱の形態がある。

熱伝導とは物質内で熱のみが移動することをいう。

対流熱伝達とは固体と流体の間の熱の移動や,流体の移動などの物理現象をともなった熱の移動を表す。

放射伝熱では,熱源から電磁波としてエネルギーが放出され対象物に吸収されて熱が移動する。熱源の表面から放出されるエネルギーは,物質の温度の 4 乗にほぼ比例する。

参考文献

  • 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「電気加熱

問8 A-D 変換

アナログ信号をコンピュータで利用するには,A-D 変換によりディジタル信号に変換する必要がある。

連続したアナログ信号を適当な時間間隔で区切り,断続的な信号とすることを標本化という。標本化定理によると,入力信号を完全に復元するためには,その入力信号に含まれる最高周波数成分の 2 倍を超えたサンプリングレートとすればよい。

標本化されたアナログ値を飛び飛びの不連続な数値で表すことを量子化という。量子化の段階数が増え,量子化の単位が小さくなるほど,量子化誤差は小さくなる。

A-D 変換器には主に次のような方式がある。

積分形には,入力信号を一定時間積分し,この積分結果と一定の基準信号を積分した値が等しくなる時間を計測し,この計測値から変換結果を得る方式がある。サンプリングレートは低いが,高精度でノイズに強い方式である。

逐次比較形には,入力信号と内部の D-A 変換器の出力を 2 分探索で比較していき,ディジタル値に変換する方式がある。n ビットの変換には,MSB 側から n 回の比較が必要なため,中程度のサンプリングレートとなる。変換精度を得るために,サンプリングホールド回路により,標本化される信号レベルが変換終了まで変動しないようにする場合がある。

並列形はフラッシュ形とも称され,n ビットの変換には (2n - 1) 個の基準電圧と比較器を準備し,入力信号をそれらで同時に比較して変換する方式がある。高いサンプリングレートを得られるが,回路規模は大きくなる。

参考文献

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