平成29年度 第2種 法規

2022年5月5日更新

はじめに

  1. 問題文中に「電気設備技術基準」とあるのは,「電気設備に関する技術基準を定める省令」の略である。
  2. 問題文中に「電気設備技術基準の解釈」とあるのは,「電気設備の技術基準の解釈における第1章~第6章及び第8章」をいう。なお,「第7章 国際規格の取り入れ」の各規定について問う出題にあっては,問題文中にその旨を明示する。
  3. 問題は,平成29年4月1日現在,効力のある法令(電気設備の技術基準の解釈を含む。)に基づいて作成している。

目次

  1. 「電気工事士法」及び「電気工事業の業務の適正化に関する法律」
  2. 架空電線路の支持物における支線の施設
  3. 分散型電源の系統連系設備
  4. 絶縁油の保守管理
  5. 自家用電気工作物の設置者が報告しなければならない事故
  6. 「電気設備技術基準」に基づく保安原則
  7. 架空送電線の保守

問1 「電気工事士法」及び「電気工事業の業務の適正化に関する法律」

  1. これらの法律でいう「自家用電気工作物」は,電気事業法で規定される自家用電気工作物から,発電所,変電所,最大電力 500 kW 以上の需要設備,送電線路及び保安通信設備は除かれる。
  2. 「電気工事士」とは,第一種電気工事士及び第二種電気工事士をいう。
  3. 第一種電気工事士は,経済産業省令で定めるやむを得ない事由がある場合を除き,第一種電気工事士免状の交付を受けた日から 5 年以内に自家用電気工作物の保安に関する講習を受けなければならない。当該講習を受けた日以降についても,同様とする。
  4. 「電気工事業の業務の適正化に関する法律」でいう「電気工事」は,「電気工事士法」で規定される電気工事から家庭用電気機械器具の販売に付随して行う工事が除かれる。

参考文献

問2 架空電線路の支持物における支線の施設

高圧又は特別高圧の架空電線路の支持物として使用する木柱, A 種鉄筋コンクリート柱又は A 種鉄柱には,次により支線を施設すること。

  1. 電線路の水平角度が 5 度以下の箇所に施設される柱であって,当該柱の両側の径間の差が大きい場合は,その径間の差により生じる不平均張力による水平力に耐える支線を,電線路に平行な方向の両側に設けること。
  2. 電線路の水平角度が 5 度を超える箇所に施設される柱は,全架渉線につき各架渉線の想定最大張力により生じる水平横分力に耐える支線を設けること。
  3. 電線路の全架渉線を引き留める箇所に使用される柱は,全架渉線につき各架渉線の想定最大張力に等しい不平均張力による水平力に耐える支線を,電線路に平行な方向に設けること。

参考文献

問3 分散型電源の系統連系設備

特別高圧の電力系統からスポットネットワーク受電方式で受電する者が分散型電源を連系する場合は,以下を満たすように,異常時に分散型電源を自動的に解列するための装置を施設すること。

  1. 次に掲げる異常を保護リレー等により検出し,分散型電源を自動的に解列すること。
    1. 分散型電源の異常又は故障
    2. スポットネットワーク配電線の全回線の電源が喪失した場合における分散型電源の単独運転
  2. 分散型電源の解列は,次によること。
    1. 次のいずれかで解列すること。
      • 分散型電源の出力端に設置する遮断器又はこれと同等の機能を有する装置
      • 母線連絡用遮断器
      • プロテクタ遮断器
    2. 逆電力リレー(ネットワークリレーの逆電力リレー機能で代用する場合も含む。)で,全回線において逆電力を検出した場合は,時限をもって分散型電源を解列すること。
    3. 分散型電源を連系する電力系統において事故が発生した場合は,系統側変電所の遮断器開放後に,逆潮流を逆電力リレー(ネットワークリレーの逆電力リレー機能で代用する場合も含む。)で検出することにより事故回線のプロテクタ遮断器を開放し,健全回線との連系は原則として保持して,分散型電源は解列しないこと。

参考文献

問4 絶縁油の保守管理

  1. 絶縁油は,油入変圧器や油入コンデンサなどの電気機器に広く使用されており,その主な役割は機器の絶縁と冷却である。油入機器の内部で異常過熱や絶縁劣化が生じると,絶縁油から発生した分解ガスや絶縁物の劣化生成物が絶縁油に溶け込み,絶縁油の化学的特性に変化が生じてくる。絶縁油の保守管理は,油入機器の絶縁状態を把握するとともに機器の性能を長く維持するために重要なことである。
  2. 油入変圧器を運転すると温度が変化し外気との間で呼吸作用が行われる。その際,ブリーザ不良,パッキング劣化,シール部の締付不良,外装タンクの腐食などによる気密不良があると,絶縁油に空気中の酸素や水分が混入する。絶縁油は,油中に酸素や水分が存在すると,変圧器内部の鉄や銅の裸金属に接触している状態で運転中の温度上昇により,酸化反応が促進され酸性有機物質の総量(酸価)が増大する。酸価が増大すると絶縁油や金属のコイル絶縁物が化合しスラッジ(絶縁油の劣化によって生じる泥状物質)が生成される。これがコイル絶縁物,鉄心,放熱面に付着すると放熱機能が低下し,温度上昇が著しくなり絶縁物の熱劣化が加速される。
  3. 絶縁劣化した状態で油入変圧器の運転を続けていると,過電圧などによって部分放電が発生し,外部からのサージや外部短絡時の電気的又は機械的ストレスで絶縁破壊に至るおそれがある。また,絶縁物自体も劣化生成物の溶解によって吸水性を増し,絶縁抵抗の低下や tan δ の増加など絶縁特性が低下する。
  4. 絶縁油は定期的に試験を行って劣化状況を確認する必要があり,試験項目としては,絶縁破壊電圧試験,酸価試験,水分試験などがある。

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問5 自家用電気工作物の設置者が報告しなければならない事故

  1. 感電により人が死傷した事故(死亡又は病院若しくは診療所に入院した場合に限る。)
  2. 出力 20 kW 以上の風力発電所に属する主要電気工作物の破損事故
  3. 電圧 10 000 V 以上の需要設備に属する主要電気工作物の破損事故
  4. 一般送配電事業者の一般送配電事業の用に供する電気工作物と電気的に接続されている電圧 3 000 V 以上の自家用電気工作物の破損により一般送配電事業者に供給支障を発生させた事故
  5. 電気工作物に係る社会的に影響を及ぼした事故

参考文献

問6 「電気設備技術基準」に基づく保安原則

  1. 電気設備は,感電,火災その他人体に危害を及ぼし,又は物件に損傷を与えるおそれがないように施設しなければならない。
  2. 変成器内の巻線と当該変成器内のほかの巻線との間の絶縁性能は,事故時に想定される異常電圧を考慮し,絶縁破壊による危険のおそれがないものでなければならない。
  3. 電線,支線,架空地線,弱電流電線等その他の電気設備の保安のために施設する線は,通常の使用状態において断線のおそれがないように施設しなければならない。
  4. 高圧又は特別高圧の電気機械器具は,取扱者以外の者が容易に触れるおそれがないように施設しなければならない。ただし,接触による危険のおそれがない場合は,この限りでない。
  5. 電路の必要な箇所には,過電流による過熱焼損から電線及び電気機械器具を保護し,かつ,火災の発生を防止できるよう,過電流遮断器を施設しなければならない。ここで過電流遮断器とは,高圧及び特別高圧では,ヒューズ及び遮断器が該当する。

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問7 架空送電線の保守

架空送電線は,山間地の水力発電所,沿岸部の火力・原子力発電所から需要地点に至るまで,山岳部,平野部,沿岸部と様々な立地条件の中を経過しており,雨や風,雪や雷等自然現象に起因する事故が多いだけではなく,鳥獣や樹木の接触,架空送電線付近で行われる工事用の重機や他工作物の接近等による障害も多い。

架空送電線の保守の目的は,基本的には,電力の安定供給と設備の合理的な維持であり,目的達成のために必要な業務は,大別すると,巡視,点検,補修作業,事故処理,渉外業務に分類できる。

巡視は,保守の目的を達成するために必要な業務の一つであり,架空送電線の状況を常に的確に把握するため,設備の外観等を見回り,事故の原因となる障害箇所を事前に発見し,その未然防止を図るとともに,設備の補修に必要なデータその他の資料を集めるための業務である。

巡視には幾つかの種類があるが,一般的に定期巡視のうち特定巡視と呼ばれるものは,市街地やその周辺など架空送電線の経過地の状況変化が著しく,架空送電線に障害を及ぼすおそれのある工作物の新増設や土地造成に伴う異常等を早期に発見するため,区間を定めて行う巡視をいう。

参考文献

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