平成24年度 第一種 電気主任技術者二次試験 電力・管理

2022年11月6日更新

目次

  1. 再生サイクル汽力発電プラント
  2. 変電所周辺での磁束密度
  3. 直接接地系の一線地絡事故
  4. 大容量変電機器の信頼性確保
  5. 直流を介する連系(直流連系)
  6. 電力不足確率(LOLP)

問1 再生サイクル汽力発電プラント

図に示すような再生サイクル汽力発電プラントがある。図中の記号について H はエンタルピーを,m は抽気量(サイクル流量に対する流量割合)を表すものとし,添字(数字)は図のとおりとする。また,サイクル流量は 1 とし,抽気し給水加熱器で熱交換した後のドレン(蒸気が冷却され復水となった流体)は図の破線に示すようにサイクル中に戻すものとする。なお,給水ポンプの仕事は無視するものとする。

以下の設問にエンタルピー H1H7 を用いて解答せよ。

  1. タービンからの第 1 抽気の抽気量 m1 を表す式を求めよ。
  2. タービンからの第 2 抽気の抽気量 m2 を表す式を求めよ。
  3. タービンにおいて,第 1 抽気点から第 2 抽気点までに得られる仕事 W12 を表す式を求めよ。
  4. サイクルとしての熱効率 η を表す式を求めよ。ただし,記号 m1 及び m2 を用いてよい。
再生サイクル汽力発電プラント
再生サイクル汽力発電プラント

準備中

問2 変電所周辺での磁束密度

屋外気中絶縁変電所の構内において,図に示すように,地上から h [m] の高さに d [m] の間隔で母線を設置するとき,変電所周辺での磁束密度が定められた基準値以下であることを確認する手順に関連して,次の問に答えよ。

なお,大地及び変電所の構内の他の設備については考慮しないものとする。

  1. U 相母線から水平方向に x [m] ,垂直方向に z [m] 離れた図中の点 P において,磁束密度が基準値以下であることを確認する。このとき,下に示す U 相電流 IU によって点 P に生じる磁束密度 BU [μT] を,xzIωt を用いて表せ。ただし,母線は無限長の直線導体とみなし,導体の太さは無視する。また,導体から点 P までの空間の透磁率は μ = 4π × 10-7 [H/m] で一様とする。
    電流 U 相
    \[ I_U=\sqrt{2}I\sin(\omega t - \frac{2\pi}{3}) \text{ [A]} \]
    電流 V 相
    \[ I_V=\sqrt{2}I\sin(\omega t) \text{ [A]} \]
    電流 W 相
    \[ I_W=\sqrt{2}I\sin(\omega t + \frac{2\pi}{3}) \text{ [A]} \]
    I [A] : 電流実効値,ω [rad/s] : 角周波数,t [s] : 時間)
    ※電流の向きは,図において紙面の表から裏へ向かう方向を正とする。
  2. 各相の電流によって点 P に生じる磁束密度の合成値 B [μT] を,xzdIωt を用いて表せ。
  3. 絶縁に問題がないとした場合,母線の間隔 d [m] を小さくしていくと,磁束密度の合成値 B [μT] はどのような値に近づくかを,(2) で求めた式から導出せよ。なお,xd に対して十分大きい値とする。
  4. 磁束密度の測定点 P を固定とし,さらに母線の間隔 d [m] の値を固定した条件において,測定される磁束密度を低減する方策を二つ挙げ,簡潔に説明せよ。ただし,磁界を遮へいする方策は考慮しないものとする。
変電所周辺での磁束密度
変電所周辺での磁束密度

準備中

問3 直接接地系の一線地絡事故

図に示すように,送電線両端の変圧器の中性点が直接接地されている,こう長 200 [km] の 500 [kV] 並行 2 回線送電線を考える。この送電線の中間地点において,片方の回線に a 相一線地絡事故が発生した。なお,地絡インピーダンスは 0 [p.u.] とし,送電系統の各構成機器の定数は次の値とする。また,単位法における基準値は,電圧 500 [kV],容量 1 000 [MV·A] を用いる。

  • 送電線正相及び逆相リアクタンス(1 回線当たり):0.1 [p.u./100km]
  • 送電線零相リアクタンス(1 回線当たり):0.3 [p.u./100km]
  • 送電部,受電部の変圧器漏れリアクタンス:0.1 [p.u.]
  • 発電機リアクタンス:正相 0.05 [p.u.],逆相 0.02 [p.u.],零相 0.01 [p.u.]
  • 負荷:負荷端電圧 1.0 [p.u.] のとき,遅れ力率 0.9 で皮相電力 0.5 [p.u.] をとる三相平衡の定インピーダンス負荷

また,送電系統の抵抗成分,静電容量成分,回線間の相互誘導は無視する。

このとき,次の問に答えよ。ただし,(5) の解答の精度を保つため,(1) から (3) の解答は有効数字 4 桁で示せ。

  1. 事故前は負荷端の電圧の大きさが 1.0 [p.u.] で運用されている。このときの発電機の正相リアクタンス背後電圧の大きさ及び送電線の中間地点の電圧の大きさを p.u. 値で求めよ。なお,変圧器の巻数比はすべて基準状態(p.u. にて 1:1)とする。
  2. 送電線の事故点からみた,対称座標法における,送電系統の正相,逆相,零相回路をそのインピーダンス値を含めて示せ。
  3. (2) で求めた正相,逆相,零相回路を鳳・テブナンの等価回路で表せ。
  4. 図に示すように,片方の回線の中間地点を a 相一線地絡事故が発生したとき,その状態を表す正相,逆相,零相回路を接続した図をその理由と共に示せ。
  5. a 相一線地絡事故点における地絡電流 [kA] を計算せよ。
送電系統図
送電系統図

準備中

問4 大容量変電機器の信頼性確保

大容量変電機器の信頼性確保に関して大容量変圧器及び大容量 GIS を例にとり,次の問に答えよ。

  1. 大容量変電機器の品質を確保するために,輸送及び現地据付けに関して,設計時に配慮する事項を説明せよ。
    1. 大容量変圧器及び大容量 GIS に共通して配慮する事項
    2. 大容量変圧器及び大容量 GIS に個別に配慮する事項
  2. 現地据付けにおいて品質管理に必要な配慮事項を,① 作業環境,② 絶縁物の吸湿防止,③ 異物混入防止に関して,機器ごとにそれぞれ説明せよ。

(1) 輸送及び現地据付けに関して,設計時に配慮する事項

a. 大容量変圧器及び大容量 GIS に共通して配慮する事項

工場で試験を終えた変電機器は,必要に応じて輸送のための分解,梱包を行ってから,現地へ輸送される。現地では,分解された機器を組み立て,絶縁媒体を封入し,試験を行い,運用を開始する。大容量変電機器の設計では,輸送において,輸送単位が機器一体輸送,または,分解数を極小化するように配慮する。また,現地据付けにおいては,現地作業の範囲を極小化,単純化し,施工不良の発生を減らすよう配慮して設計されている。

b. 大容量変圧器に配慮する事項

リード線の接続においては,工場製造時に取り付けた羽子板端子構造によるボルト締結とし,リード線切断を行わない構造としている。冷却部取り付け部の接続では,取り付け部のバルブを本体側のフランジに取り付けたまま,冷却器を取り外せる構造として,分解,輸送時の防水,防塵効果を高めている。

c. 大容量 GIS に配慮する事項

通電部の通電接触子を用い,導体部に,はめあい構造,ボルト締結といった簡易な接続方式を採用し,複雑な作業を伴わず,確実に接続できるよう配慮されている。タンク接続においては,フランジ部の防水構造化,吸着剤取り付けによる防湿対策がなされている。また,金属異物が発生しにくいはめ合い構造による異物対策がなされている場合もある。

(2) 現地据付けにおいて品質管理に必要な配慮事項

a. 大容量変圧器

① 作業環境:タンク内に塵埃や異物が混入しないよう,周囲に隔壁を設置するなどの防塵措置を施す。作業場周辺に散水を行うなどの作業環境を整備し,必要により粉塵計を使用して防塵管理を行う。

② 絶縁物の吸湿防止:タンク内作業時における絶縁物の吸湿を防止するため,絶縁物の露出時間を管理するとともに,作業に使用する乾燥空気の湿度とタンクの内部湿度を管理する。現地作業中に吸湿した水分を熱湯噴霧循環により乾燥させ,絶縁物表面部分の水分量を基準値以下にする。高真空化(0.1 ~ 3 [Torr])で脱気装置を通して脱気ろ過した絶縁油を注油する。

③ 異物混入防止:真空脱気注油後,さらに絶縁油中の微小な塵埃を除去し,脱気度を向上させるため,タンク内の絶縁油を真空脱気装置を通して脱気ろ過循環する。

b. 大容量GIS

① 作業環境:現地接続部の組立の品質は,作業環境の影響を受けやすい。雨天時の作業を回避するとともに,湿度,風速,及び塵埃を基準値以下にする。(湿度 80 [%] 以下,風速 5 [m/s]以下,塵埃 20 [カウント/min] 以下)

② 絶縁物の吸湿防止:組み立て中は,所定の防水処理を行い,吸着剤の放置時間は 30 分以内とする。

③ 異物混入防止:作業中はフランジ面への保護カバー取り付けや,Oリングの傷,異物がないことを確認する。防塵フェンスや防塵ハウスを設置し,防塵に配慮する。ガス処理を行う前に,導体接続部の目視確認を行い,真空掃除機などを用いて,タンク内部を清掃し,吸着剤を取り付ける。

問5 直流を介する連系(直流連系)

わが国の一般電気事業者(沖縄電力株式会社を除く)の電力系統は,互いに連系して広域運営が行われている。この系統連系の中には,直流を介する連系(直流連系)が存在する。次の問に答えよ。

  1. 直流連系の一般的な長所を四つ,短所を三つ挙げよ。
  2. 系統周波数が同じ電力系統間の連系であるにもかかわらず,直流を介した連系が三つ存在する。そのうちの一つについて,連系箇所を挙げ,直流連系を採用するに至った最も大きな技術的理由を一つ述べよ。

(1) 直流連系の一般的な長所と短所

a. 直流連系の一般的な長所
  • ケーブルで送電する場合,充電電流に起因した無効電力の発生がないため,無効電力補償装置は不要である。
  • 交流系統の短絡容量が連系によって増大しない。
  • 潮流を自由に,かつ高速に制御できる。
  • 送電端と受電端との間の電圧位相差に起因する安定度問題がないので,長距離大容量送電による連系が可能である。
  • 交流系統の事故が他の交流系統に波及しない。
  • 交流連系と比べて,送電線条数が少ないため,送電線支持物を小形にできる。
  • 周波数の異なる系統を連系することができる。
b. 直流連系の一般的な短所
  • 直流連系の両端に変換設備が必要である。
  • 交流系統の短絡容量が小さい場合,電圧不安定問題,発電機軸ねじり問題,高調波不安定現象を発生する可能性がある。
  • 多端子連系の場合は,制御と保護が複雑になる。
  • 高調波対策が必要となる。

(2) 系統周波数が同じ電力系統間の直流連系採用の技術的理由

北海道 - 本州間直流連系,紀伊水道直流連系

海底ケーブルによる海峡横断送電であるため,交流連系での無効電力発生を回避できるため。

南福光直流連系

ループ系統での潮流制御の自由度確保

南福光変電所・連系所

北陸地域と中部地域間の交流ループ系統の潮流調整として,南福光変電所・連系所に 2 台の交直変換器で直流送電線を介さない BTB(Back to Back)方式の変換容量 300 MW の直流連系設備が 1999 年に運転を開始した。同設備には水冷式光直接点弧サイリスタバルブが使用されており,また,系統運用としてなんらかの理由で常時の交流連系が解け,北陸系統が単独となった緊急時に北陸系統の周波数変動を改善するため北陸系統と中部系統の周波数偏差に応じて連系電力を AFC 制御機能が付加されている。

道上 勉 著,「電気学会大学講座 送配電工学[改訂版]」

問6 電力不足確率(LOLP)

二つの電力系統 A ,B がある。それぞれの電力系統は図 1 に示すように,1 発電機,1 負荷で表され,一つの送電線で連系されているものとする。発電機 A,B の容量はそれぞれ 80 [MW] とし,それぞれの負荷の負荷確率分布は図 2 に示す折れ線 F(L) (負荷電力が L を超える確率)であるとする。このとき,電力系統 A の電力不足確率(LOLP)を,次の場合につき小数第 3 位まで求めよ。

  1. 送電線が使用されていない場合。ただし,発電機 A の事故停止確率は 0 とする。
  2. 送電線が使用されていない場合。ただし,発電機 A の事故停止確率は 0.02 とする。
  3. 送電線が使用されている場合。ただし,発電機 A , B ,の事故停止確率はともに 0 とし,負荷 A , B の負荷変動は互いに独立しており,送電線の損失は無視するものとする。
    また,電力系統 B から電力系統 A への電力融通は,次の条件とする。
    1. 電力系統 A の発電電力が電力系統 A の負荷電力を下回るとき
    2. 融通電力は電力系統 B の発電電力の余力分まで
    3. 送電線の送電容量は 10 [MW]

なお,$\displaystyle f(L) = -\frac{\text{d}F}{\text{d}L}$ は確率密度関数と呼ばれ,f(L)dL は負荷電力が LL + dL である確率を表し,$\displaystyle F(L) = 1 - \int^L_0 f(L) \text{d}L$ の関係がある。

図1
図1
図2
図2

(1) 送電線が使用されていない場合(発電機 A の事故停止確率は 0 )

負荷電力が 80 [MW] を超えるとき電力不足となるので,

LOLP = F(80) = 0.250

(2) 送電線が使用されていない場合(発電機 A の事故停止確率は 0.02 )

発電機が運転しているとき(確率 0.98)は負荷電力が 80 [MW] を超えるとき,発電機が停止しているとき(確率 0.02)は負荷電力に関わらず電力不足となるので,

LOLP = 0.98 × F(80) + 0.02 × 1.0 = 0.98 × 0.250 + 0.02 × 1.0 = 0.265

(3) 送電線が使用されている場合

準備中

inserted by FC2 system