令和5年度 第2種 電力・管理

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目次

電力・管理では,問 1 ~ 問 6 の中から任意の 4 問を解答する。(配点は 1 問当たり 30 点)

  1. 負荷遮断を実施した際の水撃作用
  2. 多導体送電線
  3. 等面積法を用いた過渡安定性の計算
  4. 配電系統の電圧
  5. 我が国における電力系統の中性点接地方式
  6. 電力系統の周波数

問1 負荷遮断を実施した際の水撃作用

フランシス水車を設置した圧力トンネルを伴うダム水路発電所において,負荷遮断を実施した際の水撃作用について,次の問に答えよ。

  1. この水撃作用の概要について,発生原因を含めて 100 字程度以内で述べよ。
  2. 水撃作用による被害を避けるために,機械的強度の確保とは別に,旧来から採用されてきた設備対策を二つ挙げ,その設備の設置場所及び仕組みについて,設備毎に 70 字程度以内で述べよ。

問1 解答と解説

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水撃作用の概要

発電機や発電所構内事故あるいは送電線事故などにより,保護装置が発電機の負荷を自動遮断した場合,水車・発電機が危険な速度まで速度上昇しないよう,(調速機及び保護装置により)ガイドベーンを急速閉止する。この場合,流水を急激に停止させたことにより,運動エネルギー(水流による慣性)が圧力エネルギー(高圧力)となって,水撃が発生する。

負荷遮断時には,ガイドベーンが急閉塞するため,管路を流れている水が減速され,水の運動エネルギーが圧力エネルギーに変わる。これにより,ガイドベーン直前の水圧が上昇し,その圧力が水圧管路や圧力トンネルに伝搬する現象である。

(出典)令和5年度第二種電気主任技術者二次試験 標準解答

設備対策

サージタンク

サージタンクを圧力トンネルの末端付近に設置し,水撃作用による圧力変動を吸収させる。

サージタンクを水圧管路と導水路である圧力トンネルの間に設置し,水路の途中に自由水面を設けることにより,水撃作用による圧力変動を吸収する。

(出典)令和5年度第二種電気主任技術者二次試験 標準解答
制圧機

制圧機をケーシングあるいは水圧管路の末端に設置し,水圧が危険圧力まで上昇しないよう,調速機(ガバナー)によるガイドベーンの急速閉止に連動して,この制圧機の弁体を開放し,ケーシング及び水圧管路内の水圧を逃がす。

制圧機をケーシング若しくは水圧管路末端に設置し,調速機によるガイドベーン急閉塞と連動して制圧機の弁体を開放することで圧力上昇を抑える。

(出典)令和5年度第二種電気主任技術者二次試験 標準解答

参考文献

問2 多導体送電線

超高圧送電線に多く用いられる多導体送電線には,単導体送電線に比べて種々の利点がある。単導体送電線と合計断面積が等しい多導体について,この多導体送電線の利点とその理由を,それぞれの項目について 50 字程度以内で述べよ。

  1. 電流容量
  2. 固有送電容量
  3. コロナ放電
  4. 系統安定性

問2 解答と解説

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電流容量

単導体と合計断面積が等しい多導体は,単位長当たりの全導体表面積が大きくなるとともに,表皮効果が小さいので,許容電流を大きくとることができる。

固有送電容量

送電線のインダクタンスが減少し,また,静電容量が増加するため,固有送電容量が増加する。

コロナ放電

導体表面の電位傾度を減少できるので,コロナ開始電圧が高くなり,コロナ損失,雑音障害を防止できる。

系統安定性

送電線のインダクタンスが小さくなるので,系統安定性が向上する。

  1. 表皮効果が小さくなり,また放熱が良くなるので,熱的許容電流湯量が増加する。
  2. 送電線インダクタンスが減少し,また静電容量が増加するため,固有送電容量が増加する。
  3. 導体表面の電位傾度を減少できるので,コロナ開始電圧が高くなり,コロナ損失,雑音障害を防止できる。
  4. 送電線インダクタンスが小さくなるので,同期安定度が向上する。
(出典)令和5年度第二種電気主任技術者二次試験 標準解答

参考文献

問3 等面積法を用いた過渡安定性の計算

等面積法を用いた過渡安定性の計算に関して,次の問に答えよ。

図 1 のように,変圧器及び 2 回線送電線を介して,同期発電機から無限大母線へ三相 3 線式で送電する系統を考える。変圧器のリアクタンスは $X_\text{t}$ [p.u.],送電線 1 回線当たりのリアクタンスを $X_\text{l}$ [p.u.],同期発電機のリアクタンスは系統じょう乱の影響によらず過渡リアクタンス ${X_\text{d}}'$ [p.u.] で一定とし,いずれも抵抗や静電容量は無視する。同期発電機の内部電圧及び無限大母線の電圧の大きさはそれぞれ $E_\text{G}$ [p.u.] 及び $E_0$ [p.u.] で一定とし,同期発電機の発電出力(電気的出力)及びその初期値をそれぞれ $P_\text{G}$ [p.u.] 及び $P_\text{G0}$ [p.u.] とする。無限大母線の電圧を位相の基準,単位法による定数は全て同一の基準容量に基づくものとして,以下の問いに答えよ。

(1) 発電機内部電圧の位相角を $\delta_0$ [rad] として,同期発電機の発電出力 $P_\text{G}$ を表す数式を $E_\text{G}$,$E_0$,${X_\text{d}}'$,$X_\text{t}$,$X_\text{l}$,$\delta_0$ を用いて記載せよ。

以降の設問では,$X_\text{t}$ = 0.10 p.u.,$X_\text{l}$ = 0.20 p.u.,${X_\text{d}}'$ = 0.15 p.u.,$E_\text{G} = E_0$ = 1.0 p.u.,$P_\text{G0}$ = 0.8 p.u. とする。また,発電機への機械的入力は $P_\text{G0}$ に等しく,かつ,一定とする。$\pi$ = 3.14 として計算し,有効桁数を 2 桁として答えよ。なお,同期発電機が定常状態にある平衡点では発電機内部電圧の位相角は小さいとみなし,$\sin\delta \approx \delta$ の近似を用いてよい。

(2) 同期発電機の内部電圧の位相角 $\delta_0$ [rad] を求めよ。

(3) 図 1 の送電線 1 回線で三相地絡故障が生じ,その後,当該の回線が両端の遮断器の動作により切り離されることを想定する。1 回線開放後の不安定平衡点における位相角 $\delta_\text{u}$ [rad] を求めよ。ここで,1 回線開放後の系統における発電出力と内部電圧の位相角との関係を図 2 に示す。同図の安定平衡点における位相角を $\delta_\text{s}$ [rad] とし,$\delta_\text{u} = \pi - \delta_\text{s}$ を用いること。

(4) 小問 (3) の故障が生じた際,故障継続中の同期発電機の発電出力を 0 p.u. とすると,同期発電機の位相角が図 3 の $\delta_\text{c}$ [rad] に到達する前に当該の回線を開放できれば脱調を回避できる。ここで $\delta_\text{c}$ [rad] は,等面積法により同図中の面積 (A) と (B) が等しくなる位相角である。$\cos\delta_\text{c}$ の値を求めよ。ただし,同期発電機の制動効果は無視する。

図 1
図 2
図 3

問3 解答と解説

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問4 配電系統の電圧

配電系統の電圧に関して,次の問に答えよ。

図 1 のように,こう長 4 km の三相高圧配電線の末端に 300 kW の三相負荷,力率改善後の力率(進み)90 % の需要家が接続されている。

(1) 需要家端の線間電圧を 6 600 V とするとき,送電端電圧を求めよ。

なお,1 相当たりの線路抵抗及びリアクタンスを,それぞれ 0.2 Ω/km,0.6 Ω/km とする。

また,電圧計算の近似式を用いること。

図 1

小問 (1) の系統において,図 2 のように,需要家の構内に新たな分散型電源を設置した。送電端の線間電圧が 6 600 V である場合,送電端と需要家端の電圧を同じ電圧(6 600 V)に保つために需要家端に設置が必要なリアクトル容量 $Q_1$ [kvar] を求めよ。分散型電源の出力は 500 kW,力率は 100 % とする。

なお,電圧計算の近似式を用いること。

図 2

問4 解答と解説

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参考文献

  • 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「

問5 我が国における電力系統の中性点接地方式

我が国における電力系統の中性点接地方式に関して次の問に答えよ。

(1) 中性点接地の主たる目的について,各 30 字程度で二つ述べよ。

(2) 中性点接地方式には,非接地方式,直接接地方式,抵抗接地方式,消弧リアクトル接地方式などがある。

上記のうち,以下の系統で広く適用されている中性点接地方式を答えよ。

  1. 高圧配電系統
  2. 154 kV の送電系統

(3) 直接接地方式との比較において,抵抗接地方式の特徴を合計 130 字程度で述べよ。

問5 解答と解説

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(1) 中性点接地の主たる目的

電力系統の中性点接地の目的は,以下の 4 点が挙げられる。系統設計の基本方針に応じて,これらの優先順位は異なってくるため,具体的な条件に基づいて,方式の選定と詳細設計を決定する必要がある。

  • 送配電変電設備における地絡事故発生時の健全相電位上昇の抑制
  • 地絡保護リレーの所要性能の確保
  • 地絡事故時の故障電流の抑制と電磁誘導障害対策の確立
  • 地絡過渡電圧電流の抑制,鉄共振・アーク間欠などの不安定現象の抑制

(2) 中性点接地方式の適用

  1. 高圧配電系統:非接地方式
  2. 154 kV の送電系統:抵抗接地方式

(3) 抵抗接地方式の特徴

  • 直接接地方式と比較して 1 線地絡時の故障電流が小さく,通信線に対する誘導障害が少ない。
  • 接地のための抵抗器が必要となる。
  • 直接接地方式と比較して健全相の電位上昇は大きくなり,機器の絶縁レベルを低減できない。

抵抗接地方式は,地絡電流を抑制して通信線への電磁誘導障害を軽減することが目的である。直接接地方式に比べ,1 線地絡電流が小さく保護リレーの事故検出機能は低下する。また,直接接地方式よりも 1 線地絡時の健全相の電圧上昇が大きく,線路や機器の絶縁レベルを低減できない。

(出典)令和5年度第二種電気主任技術者二次試験 標準解答

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問6 電力系統の周波数

電力系統の周波数に関して,次の問に答えよ。

(1) 「電気事業法」及び「電気事業法施行規則」において,電力系統の周波数をどのような値に維持するよう努めなければならないと規定されているか。最も適切なものを選んで記号で答えよ。

  1. 50 ± 0.5 Hz 又は 60 ± 0.5 Hz
  2. 50 ± 1 Hz 又は 60 ± 1 Hz
  3. 標準周波数
  4. 一定周波数
  5. 特に規定されていない

下図は,電力系統の負荷が変動した際に周波数を維持するための制御方式の分担を表した概念図である。これについて次の問に答えよ。

  1. 図中の (a) に入る適切な語句を答えよ。
  2. 図中の (b) ガバナフリーとはどのような制御か,100 字程度以内で説明せよ。

(3) 電力系統の周波数低下を検出して負荷遮断するために変電所に設置される保護リレーを英字 3 文字で答えよ。また,送電線や変圧器の保護リレーが事故除去リレーに分類されることに対比して,このリレーは何リレーに分類されるか答えよ。

問6 解答と解説

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(1) 電力系統の周波数の維持

周波数の変動は,次のような問題が発生する恐れがあるため,周波数を一定の範囲内に調整する必要があり,電気事業法においても周波数の維持について一般送配電事業者の努力義務が規定されている。

電気事業法 第二十六条 電圧及び周波数

一般送配電事業者は、その供給する電気の電圧及び周波数の値を経済産業省令で定める値に維持するように努めなければならない。(以下,略)

(2) 制御方式の分担

図中の (a) は「LFC」である。

ガバナフリー運転とは,発電機の調速機によって回転速度を一定に保つよう自動で応動させる運転をいう。

(3) 負荷遮断するために変電所に設置される保護リレー

電力系統の周波数低下を検出して負荷遮断するために変電所に設置される保護リレーは,UFR(周波数低下リレー)である。また,送電線や変圧器の保護リレーが事故除去リレーに分類されることに対比して,このリレーは系統分離リレーに分類される。

参考文献

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