【要点ノート】エネルギー情勢・政策,エネルギー概論

2013年7月15日作成,更新

エネルギー情勢・政策,エネルギー概論

国際単位系(SI)

国際単位系(SI)は,次の七つの基本単位と二つの組立単位から成っている。

表 国際単位系(SI)の基本単位
次元 読み 単位記号
長さ メートル [m]
質量 キログラム [kg]
時間 [s]
電流 アンペア [A]
温度 ケルビン [K]
物理量 モル [mol]
光度 カンデラ [cd]
表 国際単位系(SI)の補助単位
次元 読み 単位記号
平面角 ラジアン [rad]
立体角 ステラジアン [sr]

組立単位

組立単位は,基本単位と補助単位から誘導されたもので,その分野で功績のあった人の名前を頭文字としている。

表 組立単位
単位の名称 単位記号 定義
周波数 ヘルツ [Hz] s-1
ニュートン [N] kg·m/s²
圧力 パスカル [Pa] kg/(m·s²)
エネルギー ジュール [J] N·m
仕事率 ワット [W] J/s,kg·m2/s3
電気量 クーロン [C] A·s
電圧 ボルト [V] W/A
電気抵抗 オーム [Ω] V/A
コンダクタンス ジーメンス [S] A/V
磁束 ウェーバ [Wb] V·s
磁束密度 テスラ [T] Wb/m²
インダクタンス ヘンリー [H] Wb/A
静電容量 ファラド [F] C/V
示量性の状態量 エントロピー [$S$] J/K

圧力量の単位 パスカル

圧力量 1 [Pa] は,次のように定義されている。

1 [Pa] は,1 [m2] の面積につき 1 [N] の力が作用する圧力または応力

上記の定義より,パスカルを SI 基本単位や他の SI 組立単位で表すと,以下のようになる。

1 [Pa] = 1 [N/m2] = 1 [kg·(m/s2)/m2] = 1 [kg/(m·s2)]

カルノーサイクルの理論効率 $\eta$

カルノーサイクル(Carnot cycle)は,温度の異なる 2 つの熱源間で動作する可逆熱サイクルの一種である。

高温熱源の絶対温度を T2 ,低温熱源の絶対温度を T1 とすると,カルノーサイクルの理論効率 η は,次式で表される。

\[ \eta = \frac{T_2 - T_1}{T_2} \times 100 \]

カルノーサイクル(Carnot cycle)とは

熱はただ高温物体から低温物体へ移動するだけで何も仕事をしない場合もあることは日常経験することである。そこでどのようなサイクルを作ればもっと効率よく熱を仕事に変えられるかということが問題となる。結論を先にいってしまえば,高温から低温へ熱が流れるような過程がないサイクルを作ればよい。カルノー(N. L. Sadi Carnot, 1776 - 1832)が考えたカルノーサイクル(Carnot cycle)とはこのようなサイクルである。

成績係数 COP

成績係数(Coefficient Of Performance : COP)は,冷房機器などのエネルギー消費効率の目安として使われる係数である。消費電力 1 kW あたりの冷却・加熱能力を表した値である。COP は,省エネ法にも採用されているため,冷房機器の性能指標として広く一般に浸透している。

ヒートポンプ

外部から仕事を与えて低温熱源から高温熱源に熱エネルギーを移動させる機器を一般に冷凍機あるいはヒートポンプ(heat pump)と呼ぶ。これらのうち後者は,高温熱源側の利用を目的とするものである。これらのサイクルを構成する四つの過程は,高温熱源あるいは低温熱源と系との間で熱を授受する二つの過程と,作動媒体の膨張と圧縮の二つの過程とから成る。これらのサイクルの性能は成績係数と呼ばれる指標で評価される。高温熱源と低温熱源の温度が定められている場合,逆カルノーサイクルで作動するときに最高性能を引き出すことができ,両熱源の温度差が無限小に近づくと成績係数は無限大に近づく。

ヒートポンプの成績係数

低温熱源 T1 から高温熱源 T2 へ熱を汲み上げる成績係数 COP(Coefficient of Performance)は,次式で表される。

\[ \text{COP} = \frac{T_2}{T_2 - T_1} \]

冷房 COP

冷房 COP は,定格冷房時の消費電力 1 kW あたりの冷房能力である。

冷房 COP = 冷房能力 [kW] ÷ 冷房消費電力 [kW]

温室効果ガスの排出量削減目標値

1997 年京都で開催された「気候変動枠組条約第 3 回締約国会議」(COP3)において,各国が 2008 年から 2012 年までに達成すべき,温室効果ガスの排出量削減目標値が決められた。これによれば,我が国の目標値は 1990 年の値に対して 6 [%] 削減となっている。

対象となる物質は,二酸化炭素,メタン,一酸化二窒素,ハイドロフルオロカーボン,パーフルオロカーボン,六フッ化硫黄の 6 種類である。

気候変動枠組条約(Frame-work Convention on Climate Change)

大気中の温室効果ガス(CO2(二酸化炭素),CH4O(メタン)等)の増大が地球を温暖化し自然の生態系等に悪影響を及ぼすおそれがあることを背景に,大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを目的とした条約。

太陽からの放射エネルギーと大気と地表面の作用で生じる温室効果

地球に到達する太陽からの放射エネルギーは,大気圏の外側で太陽光線に垂直な単位面積当たり単位時間当たりに約 1.4 [kW/m2] である。この太陽からの放射エネルギーと大気と地表面の作用で生じる温室効果において,主に関与する気体は二酸化炭素と水蒸気である。これらの気体は熱ふく射のうちの 1 μm 以上の波長域に比較的強い吸収帯を有しており,それが温室効果の原因となる。

温室効果ガス(greenhouse effect gas)

温室効果ガスと呼ばれる CO2 (二酸化炭素),メタン,フロン等は,太陽からの日射エネルギーをほぼ完全に透過させる一方,地表から再放射される赤外線の一部を吸収し,宇宙空間に熱が逃げるのを妨げる効果を持っており,地球温暖化の原因となっている。

大気中に存在する温室効果ガスとしては,二酸化炭素,メタン,一酸化二窒素,オゾン,水蒸気等がある。このほか,フロンや六フッ化硫黄も温室効果を持つことが知られている。これらの中で最も熱放射を吸収する量が多いものは水蒸気であり,次いで二酸化炭素である。

カーボンニュートラル

カーボンニュートラルは,排出が避けられない温室効果ガス(greenhouse gas,GHG)と同じ量の GHG を,「吸収」または「除去」することで,人類の活動が大気中の GHG の増減に対して影響を及ぼさない(ニュートラル,中立)ようにすることを指す。

主な GHG の二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)には炭素(カーボン)が含まれているため,「カーボン」ニュートラルと言われる。

日本政府の 2050 年カーボンニュートラル宣言

菅 義偉 内閣総理大臣(当時)は,令和2年(2020年)10月26日に開催された第203回国会における所信表明演説について,2050 年までにカーボンニュートラル,脱炭素社会の実現を目指すことを宣言した。

演説では,温暖化対策は経済成長の制約ではなく,積極的な温暖化対策の実施が,産業構造や経済社会の変革をもたらし,大きな経済成長につながるという発想転換を求めた。

さらに 2021年4月には,2030 年度に GHG を 2013 年度から 46 % 削減することを目指すと表明した。

カーボンニュートラルについての参考文献

火力発電

一般に火力発電とは,化石燃料である石油や石炭,天然ガスなどを燃焼させて湯を沸かし,蒸気を発生させることでタービンを回し,電気を発生させる発電方式。タービンを回した蒸気は,その後,復水器で冷やされて水に戻り,またボイラー内に送られて蒸気に変わる。冷却用に水が大量に必要となるため,海岸沿いに設置されることが多い。

一次エネルギー

一次エネルギーの中で主要なものとして,石炭,石油,天然ガスなどのいわゆる化石燃料がある。これらの化石燃料を用いて火力発電を行う場合の発電単価は,発熱量当たりの燃料購入価格に比例するものとして比較すると,少なからぬ変動があるものの,エネルギー・経済統計要覧(日本エネルギー経済研究所編)によると,最近では平均的には安い順に石炭 → 天然ガス → 原油である。化石燃料の一つとして,ごく最近とりわけ米国での生産急増で注目を集めているものにシェールガスがあり,新たな燃料資源として期待されている。

原油

原油量の単位としてはバレルが慣用的に用いられる。1 バレルは約 160 リットルである。また,原油の価格は,エネルギー・経済統計要覧などで報告されているように,2011 ~ 2013 年には 1 バレル当たり 100 ドル付近で推移していた。その後,2014 年には原油安の進行が見られるが,これはシェールオイルの増産が一因となっていると考えられる。

主な発電方式

  • 汽力発電は,蒸気でタービンを回して発電するもっとも一般的な火力発電
  • 内燃発電は,ディーゼルエンジンなどの内燃機関で発電する方式。主に離島などで利用される
  • ガスタービン発電は,高温の燃焼ガスを発生させ,そのエネルギーでガスタービンを回す方式
  • コンバインドサイクル発電は,ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた発電方式。発電効率が高く,運転・停止も短時間で可能
  • 石炭ガス化複合発電(Integrated coal Gasification Combined Cycle : IGCC)は,石炭をガス化して利用する発電方式。
コンバインドサイクル発電(combined cycle generation)

2 種類の発電システムを結合して高温域から低温域までエネルギーを利用し,高い効率を得ようとするもので,燃焼ガスがもっているエネルギーを,高温域はガスタービンで発電し,低温域はガスタービンの排気をボイラに導いて熱回収を行い,発生した蒸気を利用して発電するものである。また,この方式では比較的小容量の単位設備をいくつも組み合わせて大容量化することになるので,運用面においても,① 起動時間が短く起動停止が容易,② 負荷変化率が比較的大きく負荷追従性が良好,③ 部分負荷時の熱効率が高い,④ 最低負荷が低い等の優れた特性を有している。

石炭ガス化複合発電技術(Integrated Coal Gasification Combined Cycle : IGCC)

石炭を微粉末にして高温・高圧化で酸素と反応させると,一酸化炭素と水素の合成ガスができるが,石炭中の窒素分や硫黄分は,この反応過程で大幅に減らすことができる。この合成ガスを燃焼させてガスタービンを回し,さらにガスの熱を利用して蒸気タービンも回して発電すると,微粉末火力発電よりも大幅に発電効率を向上させることができる。これが石炭ガス化複合発電技術である。

燃料別の特徴

  • 石油火力=燃料単価が高く,国際情勢などの影響を受けやすい
  • LNG 火力,その他ガス火力=LNG は液化天然ガスのこと。石油・石炭に比べると二酸化炭素(CO2)の排出量が少ない。燃料単価は石炭火力よりも高く,石油火力よりも安い
  • 石炭火力=石油に比べ埋蔵量が豊富で単価も安いが,CO2 排出量が多く,ばいじんや硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)などの環境対策も必要となる

水力発電

水が高いところから低いところへ落ちる時の力(位置エネルギー)を利用して水車を回し,電力を発生させる方式。

自流式(流れ込み式)

河川の水をためず,高低差による流れをそのまま発電に使用する方式

調整池式

河川の流れをせき止めた規模の小さいダムを用いて,電力需要の増加に合わせて水量を調整しながら発電する方式

貯水池式

調整池式より規模の大きいダムに,水量が豊富で電力需要が比較的少ない春・秋などに河川水をため込み,需要期である夏や冬に発電する方式

揚水式

発電所をはさんで河川の上部と下部にダムをつくって貯水し,電力需給の状況に合わせて水をくみ上げたり,発電したりする方式

原子力発電(nuclear power)

ウラン 235 などの核分裂反応による熱を利用して湯を沸かし,蒸気タービンを回して発電する方式。蒸気でタービンを回し発電するのは火力発電所と同じ。

再生可能エネルギー

石油や石炭,天然ガスなどの限りある化石燃料とは異なり,自然現象のサイクルなどにより資源の再生が可能なエネルギー。太陽光や太陽熱,水力,風力,木質バイオマス,地熱,波力,海洋温度差発電などがある。地球温暖化の原因となる二酸化炭素を発生させる火力発電の代替として期待されている。

近年注目されている「再生可能エネルギー」の原語(英語)は renewable energy である。

再生可能エネルギーによる発電量比率

資源エネルギー庁の電力調査統計による 2021 年度の発電実績によると,我が国における水力を除く再生可能エネルギーによる発電量比率については,バイオマス,太陽光,地熱及び風力の中では,バイオマス太陽光が他と比べて大きい。

再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT : Feed-in Tariff)

再生可能エネルギーの普及政策の一つであり,再生可能エネルギーで発電した電気を,長期間固定優遇化角煮て電力会社が買い取ることを国が約束する制度。日本では一般電気事業者に対し,経済産業大臣が認定した再生可能エネルギー発電設備(太陽光,風力,中小水力,地熱,バイオマス)によって発電された電気を,国が定める固定価格で一定期間全量買い取ることを義務付けている。

再エネ事業者にとってはコスト回収の見通しが立ちやすくなるため,多くの事業参入が期待されるとして,2012 年 7 月より制度が開始された。

固定価格買取制度の概要
  1. 国が再生可能エネルギーの買取価格を決める。
  2. 再生可能エネルギーの発電を行う企業は,発電した電力の全量を国が決めた価格で電力会社に買い取ってもらうことができる。
  3. 電力会社は再生可能エネルギー発電企業からの買取に要した費用の全額を,電気料金に上乗せして企業や個人の顧客から徴収することができる。

水素を利用した発電設備や熱機関

化石燃料の燃焼利用などに伴う大気中の二酸化炭素濃度の増加を抑制するために,水素を利用した発電設備や熱機関が注目されている。水素は電気などと同様二次エネルギー[1]と呼ばれるように,自然界から直接得ることはできないので,まずその取得過程が重要である。水の電気分解などによる場合には,取得過程における二酸化炭素排出を極力抑制する視点から,電力源として再生可能エネルギーや原子力エネルギーを利用することが効果的である。

ただし,化石燃料を利用する場合でも,そこから化学的に改質して得た水素を用いるシステムで発電を高効率の燃料電池などにより行い,またシステム中で発生した熱エネルギーを有効に利用できれば,結果として二酸化炭素の排出抑制効果が期待できる。

水素エネルギー(hydrogen energy)

水素はクリーンで資源的に豊富であり,かつ利用の可能性がきわめて高いエネルギーともいわれている。しかし,実際には大量の水素を安価に製造する技術が確立していないため,エネルギーとしての利用開発が遅れている。

今後の利用方法としては,高効率な燃料電池への使用,余剰電力で水の電気分解により水素を作り,蓄電と同じ効果を得ること等が考えられる。


  1. 電気のように供給しやすいように加工されたエネルギーの形態。

メタネーション

脱炭素技術の一つとして最近メタネーションが注目されている。この技術は,さまざまな排出源から回収した二酸化炭素に水素を触媒反応させてメタン(CH4)を合成するもので,このメタンは既存の天然ガスのインフラストラクチャーを活用して輸送・貯蔵・利用できる。メタネーションで 1 モルの二酸化炭素を全てメタンと水にするには,理論的に 4 モルの水素分子が必要になるので,この水素をどのように供給するかが鍵となり,再生可能エネルギー由来のいわゆるグリーン水素を主に供給することが前提となる。

ちなみに,化石燃料由来の水素であっても,水素を生成したときに発生した二酸化炭素の大気中への排出を抑える方法の一つである CCUS を適用する場合はブルー水素と呼ばれる。

グリーン水素
グリーン水素とは,水を電気分解し,水素と酸素に還元することで生産される水素のことである。
ブルー水素
ブルー水素とは,天然ガスや石炭等の化石燃料を,蒸気メタン改質(Steam Methane Reforming)や自動熱分解(Autothermal Reforming)などで水素と二酸化炭素に分解し,二酸化炭素を大気排出する前に回収する方法である。
CCUS (Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)
CCUS (Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage) は,分離・貯留した CO2 を利用しようというものである。たとえば米国では,CO2 を古い油田に注入することで,油田に残った原油を圧力で押し出しつつ,CO2 を地中に貯留するという CCUS がおこなわれており,全体では CO2 削減が実現できるほか,石油の増産にもつながるとして,ビジネスになっている。

エクセルギー

エクセルギー(Exergy)

種々のエネルギー源を対象として,それらを利用する系が外界(多くの場合は環境)と平衡するまでに取り出せる最大の仕事量($E$ とする)をエクセルギーと呼ぶ。

エネルギーは保存され,原理的にはほとんどのエネルギー形態間での変換が可能である。しかし,エネルギーを実際に利用する立場からは,有効エネルギーあるいはエクセルギーという視点が重要である。ここでエクセルギーとは,ある系から力学的な仕事として取り出せるエネルギーのことである。単に有効エネルギー(Available energy)ともいう。

エクセルギー率

エクセルギーの値をエンタルピーの値で除したエクセルギー率を見ると,エクセルギー率が最も高い電気エネルギーと,これに続く化学エネルギーに比較して,熱エネルギーはエクセルギー率が低いと表現されることも多い。

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