【要点ノート】電気計測

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はじめに

電気計測(electrical measuring)とは,電流,電圧,電力などの電気的な諸量を測る方法,測定器,および,測定結果の処理に関する技術をいう。

情報通信がデータを伝達し,情報処理がそれを加工・抽出・統合する技術であるのと並んで,計測はデータを現場で生産する技術である。現代の高度情報化社会は,データの生産と伝達,処理が揃わなければ一時たりとも機能しない。計測技術の発展が社会に及ぼすインパクトは,今後ますます大きくなっていくはずである。

目次

電気計測の留意事項

計測と測定

電圧・電流に代表される電気量や一般的な物理量など,変量の値を確定することを目的に行う一連の操作を計測という。JIS Z 8103:2000(計測用語)では,ある量を,基準として用いる量と比較して数値又は符号をもって表すことを測定と定義している。一般には計測の方が広義に用いられる。また,基準の量との比較から,目盛を振り当て表示数値を規定する行為ないしは作業を校正という。

計測器の指示が,公正な商業取引や生産活動における品質維持などにおいて相互に食い違うことを防ぐためには,一定の基準によって目盛又は表す量が校正されていなければならない。その校正に用いる標準器又は計測器の示す値が,国家標準や国際標準にたどりつく経路が明らかで,かつ,不確かさがすべて表示された切れ目のない連鎖によって国家標準や国際標準の値を反映していることを「トレーサビリティが確立されている」という。

計測の分野

計測は我々が目途とする情報の生産であるという観点を横串として,計測を俯瞰的に研究する分野が古くから存在する。例えば,情報生産の過程を数学的に追及する測定論,計測過程をモデル化する状態空間表現,計測の基準や度量衡,公正に関する計量学などは,汎用な観点から計測を体系化しようとする科学,計測の社会実装を考える工学である。

JIS Z 8103:2019「計測用語」用語の定義(抜粋)

JIS Z 8103:2019「計測用語」に記載されている用語の定義を抜粋する。

計測
特定の目的をもって,測定の方法及び手段を考究し,実施し,その結果を用いて所期の目的を達成させること。
計量
公的に取り決めた測定標準を基礎とする測定。
測定(measurement)
ある量をそれと同じ種類の量の測定単位と比較して,その量の値を実験的に得るプロセス。
基本量(bese quantity)
ある与えられた量体系において,取決めによって選択される部分集合に含まれる量であって,当該部分集合の中のどの量も,同じ部分集合の中の他の量で表現できないもの。
組立量(derived quantity)
量体系の中で,その体系の基本量を用いて定義される量。
国際量体系,ISQ(International System of Quantities)
七つの基本量,すなわち,長さ,質量,時間,電流,熱力学温度,物質量及び光度を基本量とする量体系。
国際単位系,SI(International System of Units)
国際度量衡総会(CGPM)によって採択された,一連の接頭語の名称及び記号を含めた単位の名称及び記号,並びにその使用規則を含む,国際量体系に基づく単位系。
校正(calibration)
指定の条件下において,第一段階で,測定標準によって提供される不確かさを伴う量の値とそれに対応する指示値との不確かさを伴う関係を確立し,第二段階で,この情報を用いて指示値から測定結果を得るための関係を確立する操作。
トレーサビリティ(traceability, metrological traceability)
個々の校正が不確かさに寄与する,切れ目なく連鎖した,文書化された校正を通して,測定結果を参照基準に関係付けることができる測定結果の性質。
測定結果(measurement result)
利用し得る全ての関連情報を伴った,測定対象量に結び付けられる量の値の集合。
測定値(measured value, measured quantity value)
測定結果を表す量の値。
真値,真の値(true value, true quantity value)
量の定義と整合する量の値。
(測定)誤差(measurement error, error)
測定値から真値を引いた値。
器差 (instrumental error)
指示値から真値を引いた値。標準器の公称値から真値を引いた値
分解能 (resolution)
対応する指示値が感知できる変化を生じる,測定される量の最小の変化。

偶然誤差における測定値のばらつき

偶然誤差における測定値 $x$ のばらつきの程度は,$\displaystyle f(s) = \frac{1}{\sqrt{2\pi}\sigma}\exp{-\frac{(x-x_\text{m})^2}{2\sigma^2}}$ の形の正規分布で表現されることが多い。ここで,$\sigma$ は測定のばらつきの標準偏差,$x_\text{m}$ は測定値の平均値である。

正規分布においては,平均値を中心として$\pm \sigma$ の範囲には 68.3 % の測定値が含まれ, $\pm 2\sigma$ の範囲には 95.4 % が含まれ,$\pm 3\sigma$ の範囲には 99.7 % の測定値が含まれる。

指示電気計器

指示電気計器はアナログ計器で,指針と目盛板によっている。次の表 1 は,各種のアナログ式指示電気計器について,その測定対象と測定原理を示したものである。

表 1 各種アナログ式指示電気計器
計器の形式 主な測定対象 測定原理
回路 対象
可動鉄片 500 Hz 程度より低い周波数の交流 電流
電圧
測定電流によって磁化された金属間の吸引・反発力を利用
可動コイル 直流 電流
電圧
永久磁石の磁界とコイルに流れる電流の相互作用を利用
電流計 直流
1 kHz 程度までの周波数の交流
電流
電圧
電力
2 組のコイルに流れる電流の電磁力を利用
誘導 10 Hz から 500 Hz までの交流 電流
電圧
電力
電力量
磁界とそれによって生じる渦電流との相互作用を利用

可動鉄片形計器(moving magnet instrument)

コイルに発生した磁界中に軟鉄を置くと磁気誘導作用を生ずる。可動鉄片形はこの作用を利用した交直両用の計器である。

可動コイル形計器(moving coil instrument)

永久磁石などで発生した磁界中にコイルを配置して電流を流すとトルクが発生する。可動コイル形はこのトルクを利用した直流専用の計器である。

可動コイル形の特徴は感度が高く,消費電流が小さいことである。この計器は直流専用であり,交流に接続した場合はコイルが発生する交番磁界によって指示器が振れず,計測することができない。

可動コイル形は平均値を示し,目盛は等間隔の平等目盛となる。

電流力計形計器(electrodynamic instrument)

固定コイルと可動コイルの二つのコイルに電流を流すと,それぞれのコイルにトルクが発生する。このトルクを駆動トルクとして利用した計器が電流力計形である。電流力計形は,交直両用の計器である。直流と交流の指示誤差は小さいが,構造が複雑で小型化に不利である。

静電形計器

静電形計器は,交流と直流の指示誤差は小さいが,電圧動作であり,駆動トルクが小さい。

整流形計器

整流器と可動コイル形計器とを組み合わせて,交流の電圧や電流を測定する計器を整流形計器という。整流形計器は入力信号の絶対値の平均値に比例するので,そのままでは実効値を表示できない。整流形計器では正弦波入力時に実効値が正しく表示できるように,正弦波の波形率 1.11(= 実効値 / 平均値)を乗じた目盛をつけている。

交流電圧 $u(t)$ の平均値 $V_\text{ave}$ 及び実効値(effective value) $V_\text{eff}$は,その信号の周期を $T$ として,次式で計算できる。

\[ V_\text{ave} = \frac{1}{T}\int^{T}_{0}{|u(t)|}\text{d}t \] \[ V_\text{eff} = \sqrt{\frac{1}{T}\int^{T}_{0}{|u(t)|^2}\text{d}t} \]

測定範囲の拡大

分流器

可動コイルに流せる電流は数十 mA 程度にすぎないので,大きな電流を流すときには下図のように可動コイルにシャント抵抗 $R_s$ を入れて使用する。これを分流器といい,測定電流の範囲を広げることができる。測定したい電流を $I$,可動コイルに流れる電流を $I_0$ とすると,次式となる。

\[ I = \frac{r_a + R_s}{R_s} I_0 = MI_0 \]

$M$ を電流計の倍率といい,振れ角 $\theta$ に比例する電流 $I_0$ に倍率 $M$ を掛けた値が指示計器に電流値として目盛られている。

分流器の接続
図 分流器の接続

分圧器

回路内の端子電圧を測定するには電圧計をその端子に並列に接続するが,このとき内部抵抗 $r_v$ は高く,コイルに流れる電流が少ないことが望ましい。より高い電圧を測定したい場合には,下図にように可動コイルに直列抵抗 $R_M$ を入れて使用する。これを倍率器という。計器を含む全体の端子に電圧 $V$ を加えるとコイルに流れる電流 $I_0$ は次式となる。

\[ I_0 = \frac{V}{R_M + r_v} \]

振れ角 $\theta$ は $I_0$ に比例するので,可動コイル形電流計の目盛りに電圧値を目盛れば高い電圧範囲の電圧計として使用できる。

可動コイルの駆動電圧が $V_0 = r_v I_0$ であると,測定しうる最大電圧 $V$ は次式となる。

\[ V = \frac{R_M + r_v}{r_v}V_0 = M' V_0 \]

$M'$ を電圧計の倍率という。

倍率器の接続
図 倍率器の接続

電力の測定

単相電力の測定(三電圧計法)

三電圧計法(three voltmeters method)は,3 個の電圧計と既知の抵抗を用いて交流の電力を測定する方法である。既知抵抗 $R_\text{s}$ を回路に直列に入れ 3 個の電圧計を図のように入れたとき,その指示値を $V_1$,$V_2$,$V_3$ とすると,負荷電力 $P$ の値は,次式で求めることができる。

\[ P = \frac{1}{2R_\text{s}}(V_3^2 - V_1^2 - V_2^2) \]
単相電力の測定(三電圧計法)
図 単相電力の測定(三電圧計法)

三電圧計法による負荷電力の導出

負荷電力を $P$,負荷に流れる電流を $I$,負荷の力率を $\cos\theta$ とすると,次式が成り立つ。既知抵抗 $R_\text{s}$ の両端の電圧 $\dot{V}_2$,流れる電流 $\dot{I}$ は同位相である。

\[ P = V_1 I \cos\theta \] \[ I = \frac{V_2}{R_\text{s}} \]

ここで,3 個の電圧計で測定する電圧,負荷に流れる電流 $I$ のベクトル図を描く。

三電圧計法で測定する電圧のベクトル図
図 三電圧計法で測定する電圧のベクトル図

ここで,$\pi - \theta$ における余弦定理の式は,次式で表される。

\[ \cos(\pi - \theta) = \frac{V_1^2 +V_2^2 - V_3^2}{2V_1 V_2} \]

$\cos(\pi - \theta) = -\cos\theta$ を用いて,上式を変形する。

\[ \cos\theta = \frac{V_3^2 -V_1^2 - V_2^2}{2V_1 V_2} \]

負荷電力 $P$ を求める式に代入する。

\[ P = V_1 I \cos\theta = V_1 \times \frac{V_2}{R_\text{s}} \times \frac{V_3^2 -V_1^2 - V_2^2}{2V_1 V_2} = \frac{V_3^2 - V_1^2 - V_2^2}{2R_\text{s}} \]

単相電力の測定(三電流計法)

三電流計法 (three ammeters method) は,3 個の電流計と既知の抵抗を用いて交流の電力を測定する方法である。図のように抵抗 $R$ と電流計を接続したとき,その指示値を $I_1$,$I_2$,$I_3$ とすると,負荷電力 $P$ の値は,次式で求めることができる。

\[ P = \frac{R}{2}(I_3^2 - I_1^2 - I_2^2) \]
単相電力の測定(三電流計法)
図 単相電力の測定(三電流計法)

三電流計法による負荷電力の導出

負荷電力を $P$,負荷の両端の電圧を $V$,負荷の力率を $\cos\theta$ とすると,次式が成り立つ。既知抵抗 $R$ に流れる電流 $\dot{I}_2$ と負荷の両端の電圧 $\dot{V}$ は同位相である。

\[ P = VI_1 \cos\theta \] \[ V = RI_2 \]

ここで,3 個の電流計で測定する電流のベクトル図を描く。

三電流計法で測定する電流のベクトル図
図 三電流計法で測定する電流のベクトル図

ここで,$\pi - \theta$ における余弦定理の式は,次式で表される。

\[ \cos(\pi - \theta) = \frac{I_1^2 + I_2^2 - I_3^2}{2I_1 I_2} \]

$\cos(\pi - \theta) = -\cos\theta$ を用いて,上式を変形する。

\[ \cos\theta = \frac{I_3^2 - I_1^2 - I_2^2}{2I_1 I_2} \]

負荷電力 $P$ を求める式に代入する。

\[ P = VI_1 \cos\theta = R I_2 \times I_1 \times \frac{I_3^2 - I_1^2 - I_2^2}{2I_1 I_2} = \frac{R}{2}(I_3^2 - I_1^2 - I_2^2) \]

三相電力の測定

交流電力の測定においては,「$m$ 相 $m$ 線式の交流回路において,$m-1$ 台の単相電力計を用いれば全電力を測定できる」というブロンデルの定理によって測定することができる。すなわち,三相 3 線式交流電力は 2 台の単相電力計を用いる二電力計法で測定することができる。

直流電力の測定

データセンターでは直流電力の利用が盛んである。また,電気自動車の普及などの後押しもあり,直流電力の測定ニーズは増えている。

直流電力の測定は,電圧計と電流計により負荷に印加されている電圧 $V$ [V] と負荷に流れる電流 $I$ [A] をそれぞれ測定し,$P=VI$ [W] で算出できる。ただし,電圧計,電流計の内部抵抗により誤差が発生する。

いま,図 1 及び図 2 における負荷の消費電力 $P$ の計測について考える。ここで,$r_\text{v}$ [Ω] は電圧計の内部抵抗,$r_\text{A}$ [Ω] は電流計の内部抵抗である。

図1
図1
図2
図2

電圧計,電流計の内部抵抗による誤差を考慮すると,負荷の真の消費電力 $P$ は,図 1 では $\displaystyle VI-\frac{V^2}{r_\text{v}}$,図 2 では $VI-r_\text{A}I^2$ [W] となる。

この結果から,より正確な測定のためには電圧計の内部抵抗はできるだけ高いものを,電流計の内部抵抗はできるだけ低いものを選ぶ必要がある。

電力量の測定

交流回路に使用する誘導形電力量計の回転子(円板)の回転速度は負荷電力に比例し,回転数を積算することにより電力量が測定できる。電力量計の 1 kW·h 当たりの回転子の回転数を計器定数といい,単位を [rev/(kW·h)] で表す。

1 000 rev/(kW·h) の電力量計で低圧回路の負荷の測定を行ったところ,30 分間の回転数が 400 回転であった。このとき,負荷の 30 分間の平均電力は 800 [W] である。

ひずみの適切な測定

日本の電源供給は周波数 50 Hz 又は 60 Hz の正弦波が原則であるが,電源波形がひずむと電気機器の誤動作の原因となるため,ひずみの適切な測定は電源の品質管理の一つとして重要である。

ひずみの主原因は,基本波の整数倍の周波数を持つ正弦波である高調波の電源への混入であり,多くの国で高調波は規制の対象となっている。

三次高調波

三次高調波を含んでいるひずみ波の測定例を示す。時間経過に伴い,半周期ごとに同じ波形が正負対称で交互に繰り返される場合,主として奇数次高調波を含んでいる。

図 三次高調波を含んでいる波形
図 三次高調波を含んでいる波形

四次高調波を含んでいる波形を下図に示す。

図 四次高調波を含んでいる波形
図 四次高調波を含んでいる波形

抵抗・インピーダンス測定

抵抗測定

抵抗測定では,測定対象が高安定な抵抗器から不安定な絶縁抵抗など様々であり,目的,要求精度,測定条件などに応じた適切な測定方法を選択する必要がある。ここでは,その測定方法を大きく電流・電圧法とブリッジ法に分けて,その特徴を示す。

電流・電圧法

電流・電圧法は,高精度の電圧計や電流計の出現に伴い,近年主流となっている方法であり,その原理はオームの法則を用いるものである。この方法を,回路構成によって更に 2 端子抵抗測定法と 4 端子抵抗測定法に分けて考える。

2 端子抵抗測定法では,測定した電圧と電流から抵抗値を求める際に,被測定抵抗に繋がる配線や接触抵抗を含んだ抵抗を測定することになるが,被測定抵抗が十分大きく,高精度を必要としない場合には,それらによる誤差は問題とならない場合が多い。簡易的なテスタや絶縁抵抗計などが該当する。

一方,4 端子抵抗測定法では電圧の抵抗を極めて大きくして,配線や接触抵抗の影響を受けない電圧が測定できる。

内部に定電流源や電圧増幅器,アナログ-デジタル変換器を備え,広い抵抗範囲や他の電気量も測定できる計測器としてデジタルマルチメータが多く用いられているが,4 端子抵抗測定法を用いたものであれば,被測定抵抗以外の抵抗の影響を受けない,より精密な測定が可能となる。

2 端子抵抗測定法

電流 $I$ は被測定抵抗 $R_0$,配線抵抗 $r_1$,$r_2$ に流れる。よって,測定する電圧は,次式で求められ,配線抵抗 $r_1$,$r_2$ を含んだ値となる。

\[ E = (r_1 + R_0 + r_2)I \]
2 端子抵抗測定法
図 2 端子抵抗測定法

4 端子抵抗測定法

電流 $I$ はすべて被測定抵抗 $R_0$ に流れる。したがって,$r_3$,$r_4$ の電圧降下は 0 となり,測定する電圧 $E$ と被測定抵抗 $R_0$ の両端の電圧降下 $E_0$ は等しくなり,配線抵抗 $r_1$ ~ $r_4$ の影響を受けずに抵抗測定ができる。

4 端子抵抗測定法
図 4 端子抵抗測定法

インピーダンス測定

ブリッジ法

ブリッジ法は比較的古くからある抵抗測定法であるが,研究開発における精密測定での利用が主である。

ブリッジ法の中で,最も基本的で広く使われてきたのはホイートストンブリッジである。その原理は,三つの既知抵抗でその内の一つが可変な抵抗と,被測定抵抗を用いてブリッジ回路を構成し,可変抵抗の調整によって検流計の値が零となったときの各抵抗の関係から被測定抵抗の値を求めるものであり,精密測定が可能である。ただし,この方法ではリード線測定や接触抵抗の影響が誤差の要因となる。

被測定抵抗以外の抵抗の影響を除去したものがケルビンダブルブリッジである。これは,ブリッジ回路に改善を加えて測定対象外の抵抗が誤差要因とならないように工夫したもので,より低抵抗の精密測定が可能である。ただし,どちらもその他の誤差要因である,既知抵抗の校正値と公称値のずれ,回路中の熱起電力,通電による加熱や周囲の温度による影響などには注意が必要である。

図に示すような交流ブリッジの各辺に $R_1$ [Ω],$R_2$ [Ω],$R_3$ [Ω] 及び $R_4$ [Ω] の適切な抵抗と,$L_1$ [H] 及び $L_3$ [H] の適切なインダクタンスを接続したところ,検流器 D の指示値が 0 となった。この様な状態を平衡状態と呼ぶ。このとき,電源電圧を $V$ [V],電源の角周波数を $\omega$ [rad/s] とすると,これらのインピーダンスの関係は $\omega$ を用いて,式 $R_2 R_3 + j\omega R_2 L_3 = R_4 R_1 + j\omega R_4 L_1$ と表すことができる。この式から,抵抗とインダクタンスには式 $\displaystyle \frac{R_2}{R_4} = \frac{R_1}{R_3} = \frac{L_1}{L_3}$ で示す比例関係があることがわかる。また,電源電圧の変動は抵抗とインダクタンスの比例関係に影響を与えないことも説明できる。このように,ブリッジの原理を利用して各種インピーダンスの測定が行われる。

交流ブリッジ
図 交流ブリッジ

変成器ブリッジ

交流 4 辺ブリッジによるインピーダンス測定において,ブリッジ各部の浮遊静電容量が平衡条件に影響を及ぼすことがある。この影響を避けるためには,下図のような変成器ブリッジを用いるとよい。下図において,$\dot{E}$ は交流電源の電圧,$\dot{E}_1$,$\dot{E}_2$ は二次巻線の電圧,$n_1$,$n_2$ は二次巻線の巻数,$\dot{Z}_1$,$\dot{Z}_2$ はインピーダンス,$\dot{I}_1$,$\dot{I}_2$ は二次電流,G は検流計である。

図 2 ブリッジ
図 変成器ブリッジ
変成器ブリッジの平衡条件

このブリッジの平衡条件は $\dot{I}_1 = \dot{I}_2$ であり,そのときに次式の関係が成り立つ。($\dot{E}_1 = \dot{Z}_1 \dot{I}_1$,$\dot{E}_2 = \dot{Z}_2 \dot{I}_2$ と $\dot{I}_1 = \dot{I}_2$ より,次式のように整理できる。)

\[ \frac{\dot{E}_1}{\dot{E}_2} = \frac{\dot{Z}_1}{\dot{Z}_2} = \frac{n_1}{n_2} \]

$\dot{E}_1$ と $\dot{E}_2$ は同位相であるので,$\dot{Z}_1$ と $\dot{Z}_2$ の比は正の実数となり,$\dot{Z}_1$ と $\dot{Z}_2$ のいずれかが既知であれば,他方のインピーダンスが分かる。

Q メータ

図に未知の,インダクタンスLと実効抵抗Rで表される被測定物のインピーダンスを Q メータで測定する場合の原理を示す。値が既知のコンデンサ $C$ があり,発振器の角周波数 $\omega$ を変化させると,$\displaystyle \omega=\frac{1}{\sqrt{LC}}$ のときにコンデンサの両端の電圧は最大となり,このとき共振現象が観測される。

そのときの $\omega$ の値を $\omega_0$として,$\displaystyle \frac{\omega_0 L}{R}$ で表される Q 値を用いるとコンデンサの両端の電圧は,電源電圧の位相を基準として $-jQE$ と表され,Q が測定できる。以上の結果により,インダクタンス $L$ は $\displaystyle \frac{1}{\omega_{0}^{2}C}$,実効抵抗 $R$は $\displaystyle \frac{1}{\omega_0 CQ}$ と表される。

Q メータ
図 Q メータ

絶縁抵抗の測定

配線や電気機器の絶縁抵抗を測定する場合,一般には測定機器としてメガー(絶縁抵抗測定器)を用いる。高電圧の配電設備などにおいては,安全確保のため,配線間,及び配線と大地の間で比較的高い電圧をかけて,所定の抵抗値があることを確認しておく必要がある。

被測定回路が大きな静電容量を持つ場合,測定開始直後は低い抵抗値を示すことがある。このような場合は,被測定回路を遮断器や開閉器を用い可能な限り分割すること,メータの指針が上昇し,止まるのを待ってから読み取ること,測定電圧を被測定回路に影響がない範囲で上げることなどが必要である。

接地抵抗の測定

多くの計測器には接地端子が付属している。計測器の接地は,回路の電位の基準を設定するためにも重要であり,また,大電力を利用する装置の場合,感電防止の観点からも重要である。接地電流が大きくなると,接地極と大地の電位差が大きくなる。この電位差と接地電流の比を,その接地電極の接地抵抗という。

図に示すように,一直線上にあって十分離れた地面 G1,G2,G3 の 3 箇所に,接地極が埋設されている。ここで,G1 と G2 の距離を $L_{12}$ [m],G2 と G3 の距離を $L_{23}$ [m],G1 と大地との間の抵抗を $R_1$ [Ω],G2 と大地との間の抵抗を $R_2$ [Ω],G3 と大地との間の抵抗を $R_3$ [Ω] とする。

これらの接地極に対し図のとおり電源及び計測器を接続し,接地抵抗の測定を行ったところ,電源からの電流 $I$ [A] と,G1 と G2 の間の電圧 $V$ [V] が得られた。この回路で測定できるのは $R_1$,$R_2$,$R_3$ のうち $R_1$ であり,その値は,式 $\displaystyle \frac{V}{I}$ で求められる。

接地抵抗計は,原理的にはこのような手法や類似手法で接地抵抗を測定している。ここで,測定には交流の定電圧電源が用いられる。その理由は,分極作用によって生じる電位差による測定誤差を防止するためである。

接地抵抗の測定
図 接地抵抗の測定

各種の効果・現象

各種の効果や現象について,代表的なものをまとめると次表のようになる。

表 各種の効果・現象
名称 説明
ゼーベック効果(Seebeck effect) 2 種類の金属線で 1 つの閉回路を作り,その 2 つの接合部を異なる温度に保つと熱起電力を生じて電流が流れる。熱電対はこの原理を利用している。
ペルチェ効果(Peltier effect) 異種の金属導体で閉回路を作り,その回路に電流を通じると,2 つの接合部の一方で熱が発生し,他方で熱の吸収がみられる。
トムソン効果(Thomson effect) 一様な金属線の 2 点間に温度差があるとき,電流を流せば,その温度の変わり目で熱が発生するか吸収される。
ホール効果(Hall effect) 電流密度 $J$ をもって導体に流れる電流の方向と直角な方向に磁束密度 $B$ を与えると,この両者に垂直な方向に $J\times B/d$ に比例した起電力が生じる。
ピンチ効果(Pinch effect) 液状導体に過大な電流が流れるとき,断面の小さい部分ができると,その部分がさらに絞られ,切断してはつながるという動作の繰返しが発生する。
ピエゾ効果(圧電効果,Piezoelectric effect) 強誘電体の結晶に機械的な圧力または張力を加えると,その強さに比例した分極電荷を生じ,結晶の表面間に電位差を生じる。
表皮効果(Skin effect) 導体内の電流分布が,周波数が高いほど表面に集中する。
超電導現象(superconductivity) 物質の温度を -200 °C 以下のような極低温まで冷やすと,突然,電気抵抗がゼロになることがある。

機械量センサ

道路,橋梁等の耐用年数の長い各種社会インフラやビル等の劣化,ひずみの診断,対象物の検出には各種の機械量センサが用いられ,機械量を電気量に変換して計測するセンサの種類としては,非接触式である静電容量形センサ,接触式であるひずみゲージ式センサ,圧電形センサなどがある。

静電容量式センサ

静電容量式センサは,電界を利用した非接触型のセンサで,被測定物とプローブとの間の静電容量の変化で被測定物の変位量などを検出するものである。

ひずみゲージ式センサ

ひずみゲージ式センサは,被測定物に接着された金属の電気抵抗が,被測定物の伸び縮みなどにより変化する現象を利用したものである。

その他の測定

周波数測定

周波数カウンタは内部に高精度のクロックを内蔵している。このクロックを分周することで,例えば 1 秒間開く正確なゲート信号を作る。入力された被測定信号は波形整形されて,このゲートを通り抜ける。その数を「カウント」すれば,周波数が得られる。

オシロスコープ

オシロスコープは,原理的には時間的に変動している電圧をディスプレイに表示する装置である。

1) 縦軸方向に表示された入力電圧に対応する輝点を横軸方向に時間で掃引することで,そのディスプレイ上に電圧波形を表示させることができる。周期波形の場合,入力がある設定電圧を横切ったら掃引を開始するようにすると,ディスプレイに安定して波形が表示される。この設定電圧をトリガ電圧と呼ぶ

2) ディスプレイを格子状に縦 8 分割,横 10 分割し,その格子に目盛りを振ったオシロスコープがある。このオシロスコープを用いて正弦波形の観測を行うことを考える。ここで横軸の掃引速度を 1 [μs/div] とした。ただし,div は 1 格子間隔を意味し,掃引速度は 1 格子間隔当たりの時間で定義される。また,縦軸の格子間隔を 1 [mV/div] と設定した。ディスプレイ画面の縦 8 格子,横 10 格子一杯に,ちょうど 2 サイクル分の正弦波形が観測された。このとき,その正弦波形の周波数は 200 [kHz],振幅は 4 [mV] である。

3) 横軸に時間ではなく別の電圧信号を用いることもできる。その場合,楕円や線分などの表示が得られる。このように表された図をリサジュー図形と呼び,入力した 2 つの電圧信号の相互関係を観測するときに便利である。この図から,2 つの入力電圧信号の周波数比や位相差などを求めることもできる。

ここで振幅が等しい二つの電圧信号を考える。横軸に周波数 $f_1$ の正弦波電圧,縦軸に周波数 $f_2$ の正弦波電圧を入力したところ,ディスプレイ上に右,つまり横軸の正方向に傾いた楕円図形が得られた。このことから,二つの入力電圧信号の周波数に $f_1 = f_2$ の関係があることがわかる。

ディジタルオシロスコープ

電圧波形を観察する機器にディジタルオシロスコープがある。この機器は,入力電圧をサンプルホールドして量子化し,その電圧値をメモリに蓄えて,時間の関数として電圧値を描画するものである。

この機器を一般的なアナログ機器と比較したときの特徴的な利点は,単発現象の測定が容易なことである。一方,高速の波形観察は A/D 変換の速度で制限されてしまうことと,エイリアシングが生じることが欠点である。エイリアシングを防ぐため,サンプリング周波数を $f_\text{S}$ [Hz] とすると,再現可能な周波数は理論的には $\displaystyle \frac{f_\text{S}}{2}$ [Hz] より低い周波数に制限される。

また,この機器の多くは高速フーリエ変換機能を有しており,周波数分析までできる。ただし,標本化を行う計測では,標本化周波数が低いときに標本点を結んだ波形が測定対象の信号波形と全く異なるものになってしまうエイリアシング (aliasing) に注意する必要がある。

サンプリングオシロスコープ

信号周波数が非常に高くなり,掃引信号の繰り返し周波数では追従できなくなるような場合には,サンプリングオシロスコープが有効である。

サンプリングオシロスコープは,周期 $T$ の信号波形に対して,それよりわずかに周期の長い時間間隔 $(T+\Delta t)$ で信号波形をサンプリングし,1 周期ごとに $\Delta t$ ずつずれた点のデータをサンプリングしてブラウン管の画面に表示する。

$T/\Delta t$ 回のサンプリングで 1 周期分のデータが得られるが,高速繰り返し現象を低速繰り返し現象に変換して波形表示するものである。通常のオシロスコープでは周波数上限が 400 ~ 500 MHz 程度であるのに対し,サンプリングオシロスコープでは 10 GHz 帯の周波数まで観測できる。

電池の特性評価

電源として電池を用いる場合は,その内部特性を確認しておく必要がある。二次電池であるリチウムイオン電池などは,内部抵抗が大きい電池として電気自動車や工作機械など,高出力を必要とする機器の電源に用いられている。現在,様々な場面でこのような二次電池が利用されているが,同時に,劣化あるいは故障した二次電池による多くの事故も報告されている。二次電池の的確な特性評価は,電池の劣化診断や故障解析において重要であるとともに,電池の開発や性能評価にもなくてはならない手段である。

電池の特性評価には直流法と交流法があり,交流法で得られるのは電池の内部インピーダンスである。

温度測定

温度センサには多くの種類がある。使用する際には,対象温度範囲などの使用条件,用途,コスト,メンテナンス性,守るべき規格への対応等を考慮する必要がある。

温度センサとして広く使用されるものに,熱電対,サーミスタ測温体,測温抵抗体,半導体センサなどがある。

熱電対

このうち,熱電対は,2 種類の金属を両端で接続し,二つの接点に異なる温度を与えたときに電流が流れるというゼーベック効果を利用したもので,この接点の一方を開いたときに,温度差に応じて変化する起電力で温度を測定する。また,サーミスタ測温体は,温度によって抵抗の値が大きく変化する性質を利用して温度を測定する。

一般に熱電対による温度測定装置は,熱電対,補償導線,温度変換器から構成される。補償導線は,熱電対とほぼ同じ熱起電力特性を持つ金属線であり,熱電対を延長するより経済的であるため広く用いられている。

温度変換器は,測定した熱起電力と基準接点の温度から測定点の温度を得るためのものであり,その演算には,通常 JIS C 1602 : 2015「熱電対」で定められた規準熱起電力を用いる。

抵抗温度計

温度による電気抵抗の変化を利用した温度計を抵抗温度計という。その中で工業用温度計として代表的なものが白金測温抵抗体である。白金測温抵抗体は,JIS 規格で基準抵抗値が -200 °C ~ 850 °C の範囲で定められており,また,100 °C での抵抗値 $R_{100}$ と 0 °C での抵抗値 $R_0$ の比 $\displaystyle \frac{R_{100}}{R_0}$ が通常 1.3851 と定められている。

抵抗温度計の測定誤差としては,主に配線抵抗,自己加熱及び電磁ノイズが考えられる。配線抵抗の影響を避けるため,結線方式としては 3 線式が主流であり,高精度の測定には 4 線式も用いられる。また,自己加熱の影響を避けるために,定められた測定電流条件で使用することが必要である。

熱電温度計

2 種類の金属の接合部で生じる起電力を測定し,その値をあらかじめ求められている温度換算式を用いて換算し,温度表示を行う温度計に熱電温度計がある。この温度計は,温度範囲や測定雰囲気に応じ多数の種類があるため,適切な選定が必要である。

放射温度計

前述の温度計(抵抗温度計,熱電温度計)が接触式であるのに対し,放射温度計は非接触式である。非接触式は,測定対象が移動体である場合や高温高圧の場合に便利であり,また,食品分野の温度管理でも衛生面や安全面から,測定対象に触れないで温度が測定できる非接触式がよく使用されている。

工業炉における温度測定

工業炉において,正確な温度を測定することは非常に重要である。温度計には抵抗温度計や熱電温度計などの接触式と,光温度計や放射温度計などの非接触式がある。

接触式温度測定

接触式は温度検出部を測定対象に接触させる方式で,接触により温度が変化しないことが必要である。接触式は一般に正確な温度を測定できるが,動いている物体は測定しづらい。

非接触式温度測定

非接触式は被測定体からの熱放射エネルギーをレンズで集光し,検出素子により電気量に変換して測温するものである。測定対象からの放射エネルギーが十分検出部に到達することが必要であり,動いている物体の温度が測定でき,一般に表面温度を測る場合に使用する。

測温抵抗体(platinum resistance thermometer)

抵抗素子,内部導線,絶縁物,保護管,端子などからなる白金測温体。ただし,分離できる保護管及びサーモウエルは含まない。(JIS 1604 : 2013「測温抵抗体」 3 用語)

内部導線の結線方式(3 線式)

内部導線の結線方式のうち,3 線式は最も一般的な結線方式である。下図に示すように,抵抗素子の片端に 2 本,もう片端に 1 本の導線を接続した結線方式である。3 本の導線の長さ,材質,線径及び電気抵抗が等しい場合,導線抵抗の影響を回避することができる。

内部導線の結線方式(3 線式)
図 内部導線の結線方式(3 線式)

内部導線の結線方式(4 線式)

下図に示すように,抵抗素子の両端に 2 本ずつ導線を接続した結線方式である。高価であるが,測定原理上,導線抵抗の影響を完全に回避できる。

内部導線の結線方式(4 線式)
図 内部導線の結線方式(4 線式)

湿度測定

1) 湿度測定は家庭のみならず,食品工場や半導体工場での生産管理に欠かせない技術である。

湿度の表現方法には相対湿度と絶対湿度の二つがある。相対湿度は水蒸気量とそのときの温度における飽和水蒸気量との比率を百分率で示したものであり,一般的に湿度の指標としては相対湿度が利用されることが多い。一方,絶対湿度には容積絶対湿度と重量絶対湿度があるが,国際的には容積絶対湿度のことを指し,単位体積当たりに含まれる水蒸気量を示したものである。

2) 生産管理用として広く用いられている電子式湿度計は,主に多孔質セラミクスなどの吸湿・脱湿による電気抵抗変化あるいは静電容量変化を用いて湿度を検出するものである。多くの電子式湿度センサは相対湿度の算出のため温度計を内蔵している。

これらの湿度センサは原理的に校正が必要であるとともに,その構造から汚損などによる経時変化が避けられないため,定期的なリフレッシュが必要である。

3) 精密湿度測定には露点計を用いることも多い。例えば露点計が鏡面冷却式の場合は,鏡面(観測面)を冷却していき,結露を生じたときの温度を測定することにより湿度を求めるものである。高精度に測定するため自動平衡式などの方法がある。

流量計

ポンプ,ファンなどの電動力応用設備において,気体や液体の流量測定を行う場合,測定器は測定対象に応じていろいろな方式のものが用いられる。

  1. 差圧式は,オリフィス板などの絞り機構を設置してその前後の差圧を検出することで,流量がこの差圧の $\displaystyle \frac{1}{2}$ 乗に比例するという原理を利用して流量を求める。特に,気体の流量測定では,圧力や温度により流体の密度が大きく変動するので,圧力や温度を測定して流量の補正を行うことが多い。
  2. 渦式は,流体中に柱状の物体を設置して,その下流に流速に比例して発生する渦の周波数を測定して流量を求める。この渦はカルマン渦と呼ばれる。
  3. 超音波式は,管内の流れに対して斜めに超音波を発射すると,その伝播速度が,超音波の発射方向と流体の流速により変化する性質を利用したものが多く用いられる。超音波式では,測定器を管の外側に設置して,内部の流量を測定することが可能で,これは一般にクランプオン形超音波流量計と呼ばれる。

次の表は,各種の流量計について,その測定原理や特徴等を示したものである。

表 各種流量計(その 1)
方式 差圧 容積式 タービン式
測定原理 ベルヌーイの法則 ますの回転数を計測 羽根車の回転数を計測
対象・条件等 測定精度 ± 0.5 ~ ± 2 %
フルスケール
± 0.5 %
フルスケール
± 0.2 ~ ± 0.5 %
指示値
測定流体 液体,気体,蒸気 液体 低粘性液体
温度 -250 ~ 650 °C -30 ~ 300 °C -250 ~ 500 °C
圧力 42 MPa 以下 10 MPa 以下 10 MPa 以下
圧力損失 大きい 大きい 大きい
特徴 長所
  • 流体制約が少ない
  • 構造が簡単で安価
  • 直管部が不要
  • 流体の物性の影響が少ない
  • 流量に比例したパルスによる計測が可能
短所
  • レンジアビリティが小さい
  • 大流量の計測が困難
  • 旋回流に弱い
表 各種流量計(その 2)
方式 電磁式 超音波式
測定原理 ファラデーの法則 超音波の伝搬時間を計測
対象・条件等 測定精度 ± 0.5 %
フルスケール
± 1 ~ ± 2 %
フルスケール
測定流体 導電性液体 液体,気体
温度 -10 ~ 150 °C -40 ~ 80 °C
圧力 4 MPa 以下
圧力損失 なし なし
特徴 長所
  • スラリー測定が可能
  • 配管外部から測定可能
  • 大口径に適用可能
短所
  • 低伝導率流体の測定が不可能
  • 精度が低い
  • 液体計測の場合,気泡発生に弱い

付録

(付録)電気計器の分類

JIS(日本工業規格)では,電流計,電圧計,電力計の精度により,下表のように 5 段階に分類している。各級の数値は,誤差の範囲を示すものであり,測定の許容誤差が ±0.5 % である場合には 0.5 級の計器を使用すればよい。

表 電気計器の分類
計器の階級 定格値に対する許容誤差 [%] 用途
0.2 級 ±0.2 実験・検査・試験等の精密測定
0.5 級 ±0.5 携帯用計器
1.0 級 ±1.0 大形配電盤用
1.5 級 ±1.5 一般工業測定用
2.5 級 ±2.5 小形配電盤用

JIS では,直動式の電流計及び電圧計は,0.05 から 5 の間の数値で表現される階級指数により精度が 11 に区分されている。

精度,精度階級及び階級指数

JIS C 1102-1 : 2007「直動式指示電気計器−第1部:定義及び共通する要求事項 」において,精度,精度階級及び階級指数は,次のように定義されている。

精度(accuracy)
計器については,指示値が対応する真の値にいかに近いかを表すよさ。附属品では,表示された値が対応する真の値にいかに近いかを表すよさ。
注記 計器又は附属品の精度は,固有誤差の限度と変動の限度によって決まる。
精度階級(accuracy class)
規定限度内に誤差及び影響変動値を保ち,測定上の要求を満たすように作られた計器及び/又は附属品のグループ。
階級指数(class index)
精度階級を表す数。
注記 計器及び/又は付属品は,複数の階級指数をもってもよい。

(付録)演算増幅器(オペアンプ)

オペアンプ(operational amplifier)は,非反転入力端子(+)と反転入力端子(-)と,一つの出力端子を備えた増幅器の電子回路モジュールである。

理想オペアンプ(理想演算増幅器)

アナログ演算,またはアナログ信号処理を理想的に行うために,演算増幅器は理想的には次の 3 条件を備えることが求められる。

  1. 電圧利得が周波数に無関係に無限大である。
  2. 入力インピーダンスが無限大である。
  3. 出力インピーダンスが 0 である。

反転増幅器(inveting amplifier)

図 のように演算増幅器の非反転入力端子を接地し,反転入力端子に抵抗 $R_1$ を介して入力電圧 $v_\text{in}$ を加える。出力電圧 $v_\text{out}$ は帰還抵抗 $R_2$ を介して反転入力端子に帰還する。演算増幅器の入力インピーダンスは無限大,出力インピーダンスは 0 で,電圧利得は $A$ であると仮定すると,反転入力端子の電圧を $v_r$ とすれば,以下の 2 式が成り立つ。

\[ \frac{v_\text{in} - v_r}{R_1} = \frac{v_r - v_\text{out}}{R_2} \] \[ -v_r A = v_\text{out} \]

したがって,$v_\text{out}$ は次式で求められる。

\[ v_\text{out} = - \frac{v_\text{in}R_2}{R_1 + \frac{R_1 + R_2}{A}} \]

オペアンプが理想的なものであるとすると,電圧利得 $A$ が十分大きくて,$\displaystyle R_1 \gg \frac{R_1 + R_2}{A}$ とみなせば,電圧利得は次式となる。

\[ \frac{v_\text{out}}{v_\text{in}} = - \frac{R_2}{R_1} \]
図 反転増幅回路
図 反転増幅回路

非反転増幅器(noninverting amplifier)

図 2 において,演算増幅器の入力電圧を $v_\text{in}$,出力電圧を $v_\text{out}$ とすると,反転入力端子の電圧は $\displaystyle \frac{v_\text{out} R_2}{R_1 + R_2}$,非反転入力端子の電圧は $v_\text{in}$ である。仮想短絡の条件より,次式が成り立つ。

\[ \frac{v_\text{out} R_2}{R_1 + R_2} = v_\text{in} \]

したがって,電圧利得は次式となる。

\[ \frac{v_\text{out}}{v_{in}} = \frac{R_1 + R_2}{R_1} \]
図 非反転増幅回路
図 非反転増幅回路

(付録)ディジタル計測

時間に対して連続に変化する量(アナログ量:A)を,数値化された量(ディジタル量:D)に変換して測定するのがディジタル計器である。A-D 変換のプロセスは 3 つの過程を経ている。

  1. 標本化:入力信号の速さに対応してサンプル時間を決め,サンプル値を抽出する。
  2. 量子化:標本化されたサンプル値の大きさを数値化する。
  3. 符号化:量子化された数値を 2 進符号またはパルス値に変換する。

アナログ計測器

一般に測定対象が連続量である場合によく利用され,測定された量を主としてアナログ量で扱い,計測結果をアナログ表示させるものを,ここではアナログ計測器と呼ぶ。アナログ表示のため,測定値の挙動が直感的に理解しやすいのがアナログ計測器の大きな特徴である。

ディジタル計測器

一方,測定対象自体が離散量であるものや,連続量であっても離散化した方が実際的で便利な場合に,測定された量を主としてディジタル量で扱い,計測結果をディジタル表示させるものを,ここではディジタル計測器と呼ぶ。

ディジタル計測器には次のような特徴がある。

  • 計測の自動化や大量の情報処理に向いている。
  • ディジタル表示では可動指針が存在しないため耐久性が高く,高速計測,反復計測も容易である。
  • 一般に入力部は電源部やインタフェース部と電気的に絶縁されており,また高インピーダンスの入力回路が組み込まれているので,測定対象へ影響を及ぼさずに測定できる。
  • 測定結果をディジタル表示することで,読み取り時の個人誤差が少ない

近年は,ディジタル計測器が信号処理の高度化,小型化,表示部の多様化,価格の低下などにより,アナログ計測器に取って代わりつつある。

(付録)計器用変成器(instrument transformer)

計器用変圧器(voltage transformer : VT)とは,電圧を変成する計器用変成器で,高電圧を低電圧に変換する変圧器であり,二次側には電圧計や継電器が接続されている。電圧変成に直列コンデンサの電圧分担を利用したものにコンデンサ形計器用変圧器(CVT)がある。

計器用変流器(current transformer : CT)とは,電流を変成する計器用変成器で,大電流を小電流に変換するため巻線比 a の値は小さくしておかなければならない。二次側には電流計や継電器が接続される。CT の二次側は,開路すると一次電流はすべて励磁電流となり,鉄心を飽和させるので,高電圧が発生し,回路の絶縁破壊を招くため,開路してはならない。

ここで,いずれも巻線の抵抗,巻線によるインダクタンスなどの影響は無視できる理想状態にあるものとする。

計器用変圧器の一次電圧を $V_1$,二次電圧を $V_2$,一次巻線の巻線を $N_1$,二次巻線の巻数を $N_2$ とすると,次式が成立する。

\[ \frac{V_1}{V_2}=\frac{N_1}{N_2} \]

また,変流器の一次電流を $I_1$,二次電流を $I_2$,一次巻線の巻数を $N_1$,二次巻線の巻数を $N_2$ とすると,次式が成立する。

\[ \frac{I_1}{I_2}=\frac{N_2}{N_1} \]

計器用変圧器の一次電圧と二次電圧の比 $\displaystyle \frac{V_1}{V_2}$ を変圧比,変流器の一次電流と二次電流の比 $\displaystyle \frac{I_1}{I_2}$ を変流比と呼ぶ。

いま,ある負荷の電力 $P_1$ を測定するために変圧比 $K_v$ の計器用変圧器と,変流比 $K_i$ の変流器を使用して二次側の電力を測定したところ $P_2$ [kW] であった。このとき,$P_1$ と $P_2$ の間には次式が成立する。

\[ P_1=K_V K_I \times P_2 \]

参考文献

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