科目Ⅰ:エネルギー総合管理及び法規 平成19年度

問題3 エネルギー管理技術の基礎

次の各文章は「工場又は事業場におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準(平成18年経済産業省告示第65号)(以下,工場・事業場判断基準という)の内容に関連したものである。

  1. 工場・事業場判断基準は,
    1. エネルギーの使用の合理化の基準(基準部分)
    2. エネルギーの使用の合理化の目標及び計画的に取り組むべき措置(目標及び措置部分)
    から構成されている。このうち,Ⅰの基準部分は,工場・事業場で事業者すべてが遵守すべき基準を示したものであり,Ⅱの目標及び措置部分では,エネルギー消費原単位を中長期的に見て年平均1%以上低減させるために努力すべき措置が述べられている。
  2. あるガス燃焼ボイラにおいて,乾き排ガス中の酸素濃度(体積割合)が3.5%であった。このボイラにおいて燃料が完全燃焼しているものとすれば,簡略式によって計算される空気比は約1.2である。
    このボイラの空気比は,工場・事業場判断基準の別表1A(備考)の計算式より計算すると,
    21/(21-3.5)=1.2
    となる。
  3. 加熱及び冷却並びに伝熱(以下,加熱などという)の合理化とは,加熱などの方法及び熱の移動の機構の改善によって,ある目的のために加える,又は奪う熱量を可能な限り低減することである。工場・事業場判断基準では,加熱などを行う設備は,被加熱物又は被冷却物の量及び炉内配置について管理標準を設定し,過大負荷及び過小負荷を避けることが求められている。
  4. メタンガス(CH4)4m³Nを燃焼させるのに必要な理論空気量は38[m³N]である。
  5. 温度500°Cの物体の表面から放射される単位面積,単位時間当たりの放射エネルギーは16[kW/m²]である。ただし,この物体の表面の放射率を0.8,ステファン・ボルツマン定数を5.67×10-8W/(m2·K4)とする。
    500°Cの物体から単位時間当たりに放射されるエネルギーは,
    E[W/m²]
    となる。
  6. 空気調和で,冷房時の設定室温はできるだけ高い方が,また,暖房時の設定室温は低いほうが空調熱負荷が軽減される。工場・事業場判断基準では,空気調和の管理は,空気調和を施す区画を限定し,ブラインドの管理などによる負荷の軽減及び使用状況などに応じた設備の運転時間,室内温度,換気回数,湿度などについての管理標準を設定して行うことが求められている。
  7. 一般に,空気調和設備の年間の稼働状況を見ると,部分負荷での運転時間が長いという特徴がある。工場・事業場判断基準では,空気調和設備の新設に当たっての措置の中で,負荷の変動が予想される空気調和設備の熱源は,適切な台数分割及び台数制御,部分負荷運転時に効率の高い機器又は蓄熱システムなど効率の高い運転が可能となるシステムを採用することが求められている。
  8. 廃熱の回収利用を進めるに当たっては,まず回収すべき廃熱の範囲,回収の目標を設定することが重要である。工場・事業場判断基準では排ガスの廃熱の回収利用は,排ガスを排出設備などに応じ,排ガスの温度又は廃熱回収率について管理標準を設定して行うことが求められている。
  9. 燃料としてガスを使用している自家用火力発電所の年間発電端発生電力が20GW·h,年間平均発電端熱効率が37%であった。ガスの高発熱量を46MJ/m³Nとしたとき,この火力発電所の年間ガス消費量は4.23×106[m³N]である。
    年間発電端発生電力量を熱量換算すると,
    20×106×3600=72×109[KJ]72×106[MJ]
    となる。したがって,発電所の年間ガス消費量は,
    72×106/46/0.37=4.23×106[m³N]
    となる。
  10. 加熱・冷却,伝熱の過程では,放射,伝導,対流による熱の移動によって,また,熱媒体や炉内ガスなどの設備外部への漏えい,及び空気などの設備内部への侵入などによって,熱損失が生じる。工場・事業場判断基準は,加熱などを行う設備ごとに,炉壁外面温度,被加熱物温度,排ガス温度などの熱の損失状況を把握するための事項及び熱の損失改善に必要な事項の計測及び記録に関する管理標準を設定し,これに基づきこれらの事項を定期的に計測し,その結果に基づく熱勘定などの分析を行い,その結果を記録することが求められている。
  11. スチームトラップは,蒸気使用設備の一部であり,蒸気を使用する工場ではその数も多い。工場・事業場判断基準では,スチームトラップは,その作動の不良などによる蒸気の漏えいを防止するように保守及び点検に関する管理標準を設定し,これに基づき定期的に保守及び点検を行うことが求められている。
  12. 工場・事業場判断基準では,変圧器及び無停電電源装置は,適正な需要率を維持するように管理標準を設定し,稼働台数の調整及び負荷の適正配分を行うことが求められている。変圧器の需要率とは,ある期間の最大電力を変圧器の設備容量で除した比率をいい,変圧器の使用の程度を表す指数である。
  13. 抵抗24Ω,リアクタンス10Ωを直列に接続した負荷がある。この負荷に単相の交流電圧を加えたところ電流が8A流れた。この場合,負荷に加えた電圧は208[V]であり,負荷の消費電力は1.54[kW]である。
  14. 三相3線式6.6kV電源から供給される平衡三相負荷の消費電力が400kW,力率が90%であった。この力率を100%に改善するために,負荷に並列に設置すべきコンデンサ容量は194[kvar]である。
    平衡三相負荷の無効電力Qは,消費電力(有効電力)をP,力率角をθとすると,
    Q
  15. 送風機の軸動力は,効率を一定とすれば送風機の風量の全圧との積に比例して変化する。送風機の回転速度を変えると,送風機の軸動力は,理論的には回転速度の3乗に比例して変化する。工場・事業場判断基準の目標及び措置部分では,電動力応用設備を負荷変動の大きい状態で使用するときは,負荷に応じた運転制御を行うことができるようにするため,回転速度制御装置などを設置するよう検討することが求められている。
  16. 電気加熱は,燃料の燃焼による加熱,蒸気などによる加熱では得られない特徴を持っている。例えば,誘導加熱は誘電体(絶縁体)を内部から高効率で加熱でき,急速加熱が可能で,均一加熱も局部加熱も行える特徴があり,その発生する熱量は周波数,誘電率などに比例し,加える電圧の2乗に比例する。
  17. 照明器具やランプにほこりや汚れが付くと,照度が著しく低下する。また,総点灯時間と共に明るさが減少し,効率が低下する。工場・事業場判断基準では,照明器具については,照明器具及びランプの清掃並びにランプの交換など保守及び点検に関する管理標準を設定し,これに基づき定期的に保守及び点検を行うことが求められている。
  18. エネルギーの使用の合理化を進めるに当たっては,事業場独自の取り組みに加え,第三者による診断,助言の活用などがある。工場・事業場判断基準の目標及び措置部分では,エネルギーの使用の合理化を総合的に進めるために必要な措置を講ずるに当たっては,ESCO(Energy Service Company)事業者などによるエネルギー効率改善に関する診断,助言,エネルギーの効率的利用に係る保証の手法などの活用についても検討することが求められている。
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