平成30年度 問題5 自動制御及び情報処理

2021年6月5日更新

自動制御の歴史

産業革命の原動力となったワットの蒸気機関は余りにも有名であるが,それを支えた制御技術として目標の回転速度を維持するガバナ(遠心調速機)があることは,余り知られていない。

ガバナとは,負荷が小さくなって回転速度が上昇すると,遠心錘に遠心力が作用して弁の開度が小さくなる仕組みである。回転速度が下降すると逆の減少が起こる。これは正にフィードバック制御の原理そのものである。

やがて速度制御の精度向上の要求に対処するため,技術者達は遠心錘の感度を高くすることに腐心した。現在の制御系の言葉でいえば,利得を大きくすることに相当する。しかし,そのような改良では系は振動的となり,ついには不安定となることが分かってきた。

この点を解決するために,電磁気学で有名なマクスウェルは,速度制御の精度向上は遠心錘の改良だけでは不十分であり,制御系全体としての微分方程式を導き,その安定性を議論しなければならないことを説いて,系が安定であるためには特性方程式のすべての根負の実数部を持たなければならないことを示した。彼は,三次系については安定性の必要十分条件を導いた。しかし,制御系に積分動作を持たせるなどして系の次数が更に高くなった場合については,完全に解くことができなかった。

1950年代に入ると,それまでの古典制御に代わって,時間領域で多入出力系の取り扱いを特徴とする状態空間法が生まれ,現代制御理論と呼ばれた。この新しい制御理論は,制御対象の正確なモデルを必要としたため,現場の技術者に嫌われ,ここにいわゆる「理論と現実の乖離」が生じた。

このような反省から,1990年代になると,両者を包括する新しい理論としてロバスト制御が生まれた。

制御系の分類

制御系にはいろいろな種類があり,その分類の方法も多様である。

まず,目標値の種類による分類として定値制御と追値(追従)制御がある。定値制御は目標値が一定の場合で,そこでは外乱の抑制制御が重要である。例えば,恒温槽の温度制御,発電機の出力電圧制御などがこの例である。これに対し,追値(追従)制御では,目標値が任意に変化し,それを正確に追うことが主な目的となる。XY プロッタ,レーダの自動追尾装置,工作機械などがその好例である。

次に,制御量の種類による分類として,制御量が温度,圧力,流量,濃度などであるプロセス制御,制御量が物体の位置,回転角,姿勢などであるサーボ機構などがある。

コンピュータの性能

コンピュータの性能は,中央処理装置(CPU)と主記憶装置の性能に依存する部分が多い。

CPU の性能評価のための指標としては,1 秒間に何百万回の命令が実行できるかを示す MIPS(Million Instruction Per Second),1 秒間に何回の浮動小数点演算が実行できるかを表す FLOPS(Floating Point Operation Per Second),評価用プログラムによるベンチマーク結果に基づく SPEC(Standard Performance Evaluation Corporation)値がある。

主記憶装置の性能としては,記憶容量とアクセス時間が挙げられる。主記憶装置への平均アクセス時間を短縮するために CPU と主記憶装置の間に置かれる高速記憶装置をキャッシュメモリと呼び,CPU が読み込むデータがキャッシュメモリに存在しない確率を NFP(Not Found Probability)という。

ネットワーク(通信網)

ネットワーク(通信網)は,企業や学校などの限られた地域内に設置される LAN(Local Area Network:構内通信網)と,公衆回線や専用線で構成される広域ネットワークである WAN(Wide Area Network:広域通信網)に大別される。代表的な LAN として最も普及しているイーサネットでは,標準的な媒体アクセス制御方式として CSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection) が用いられ,物理的接続形態としては一般にはバス形又はスター形の形態をとる。

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