科目Ⅳ:電力応用 平成23年度

問題13 電気加熱-選択問題

電気加熱

電気加熱の特徴の一つとしては,加熱負荷を含め全加熱システムが電気系で構成されるので,一般に熱慣性が少ないため,加熱温度の制御精度が高い。また,多量のエネルギーを被加熱材に短時間で投入し急速加熱が可能であるため,加熱時間の短縮により放散などの熱損失が少なくなり,加熱効率が高い。

誘導加熱

誘導加熱では,被加熱材内に誘導される渦電流密度は表皮効果により表面から内部に進むに従い指数関数的に減少する。その電流密度が,表面の密度の0.368倍となった位置までの深さを,電流浸透深さと呼ぶ。誘導加熱においては,加熱目的,被加熱材の材質,形状,寸法に応じて,電流浸透深さが適切な値となるように,電源の周波数を選定しなければならない。

内部加熱方式

誘導加熱,マイクロ波加熱は,被加熱材自体が発熱する内部加熱方式で,被加熱材固有の誘電正接や比誘電率の差を利用し,必要な部分を選択して加熱ができる。また,一般に被加熱材の厚さが電力半減深度の2倍程度であれば,ほぼ均一に加熱される。

レーザ加熱

レーザ加熱は,局部的にエネルギー密度を非常に高くすることができ,また,加工点の高精度の制御が可能なことから,精密部品や鋼板の切断,プラスチックの三次元的な加工などに応用されている。

電気加熱における省エネルギー対策

電気加熱における省エネルギー対策は,設備上と操業上との対策に分けられる。これらの一例として,前者では間欠操業炉の耐火断熱材に,密度や比率の小さい材料を使用して炉の蓄熱量を小さくする方法がある。また,後者では加熱温度を正確に管理して過熱をできるだけ少なくすることなどがある。

抵抗炉による加熱

図の抵抗炉を用いて120kgの被加熱材を0.4時間で700°Cまで加熱している。発熱体の抵抗値は0.4Ω,ケーブルの抵抗値は往復で0.02Ω,ケーブル入力端の電圧は220Vで,それぞれ加熱中は一定である。炉は熱的定常状態にあって炉内壁温度は常に700°Cに保たれており,炉壁を通しての伝熱損失は16kWで常に一定である。また,外気温度は他の条件にかかわらず20°Cに保たれている。なお,この炉においては,炉壁を通しての伝熱損失以外の熱損失はないものとし,被加熱材,耐火断熱材の物性値は温度にかかわらず一定とする。

この加熱におけるケーブル入力端電力は115[kW]となり,その消費電力量は46.1[kW·h]となるから,ケーブル入力端における電力原単位は0.384[kW·h/kg]となる。また,被加熱材の加熱に寄与してた正味の電力量は37.5[kW·h]である。

次に,発熱体の配置を変えてその抵抗値を0.8Ωとし,ケーブル入力端の電圧を350Vに変更したとき,発熱体の消費電力は146[kW]となり,炉からの伝熱損失は変わらないので700°Cまでの加熱時間は0.289時間となる。

この炉の耐火断熱材の,伝熱面積は8m²,厚さは65mm及び熱伝導率は0.2W/(m·K)である。このとき,耐火断熱材の熱抵抗は40.6×10-3[K/W]となる。一方,炉内壁と外気間の熱抵抗は,炉外壁面の熱伝達も考慮して,伝熱損失を用いて計算すると42.5×10-3[K/W]となるので,炉外壁温度は50.0[°C]となる。

ケーブル入力端電圧は,

[W]

消費電力量は,

[W·h]

ケーブル入力端における電力原単位は,

[W·h/kg]

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