目指せ!エネルギー管理士 電気分野

2020年7月19日作成,2020年7月23日更新

平成25年度 問題9 電気機器

(1) 変圧器

図は,二巻線変圧器の一次側から見た簡易等価回路である。$\dot{V}_1$ [V] は一次側の端子電圧,$\dot{V}_2$ [V] は二次側の端子電圧,$\dot{E}_1$ [V] は一次巻線の誘導起電力,$\dot{I}_1$ [A] は一次電流,$\dot{I}_2$ [A] は二次電流,$\dot{I}_2'$ [A] は一次側に換算した二次電流,$\dot{Z}$ [Ω] は負荷のインピーダンスであり,$r_1$ [Ω] は一次巻線の抵抗,$x_1$ [Ω] は一次巻線の漏れリアクタンス,$r_2$ [Ω] は二次巻線の抵抗,$x_2$ [Ω] は二次巻線の漏れリアクタンスである。$_0$ [S] は励磁コンダクタンス,$b_0$ [S] は励磁サセプタンス,$\dot{Y}_0$ [S] は励磁アドミタンスである。

二巻線変圧器の一次側から見た簡易等価回路
二巻線変圧器の一次側から見た簡易等価回路

1) 図において,$a$ は巻数比であり,一次巻線数 $N_1$ と二次巻線数 $N_2$ を用いて,$a=$ $\displaystyle \frac{N_1}{N_2}$ で表される。

図中の $\dot{I}_0$ は励磁電流であり,印加電圧と同相の鉄損電流と,主磁束を発生させる磁化電流を合成したものである。等価回路において,負荷側端子を開放して,$\dot{V}_1$ として定格周波数の定格電圧 $V_{1n}$ [V] を加えたときの有効電力の値が無負荷損 $P_\text{i}$ [W] であり,これは,印加電圧 $V_\text{1n}$ と $g_0$ を用いて,$P_\text{i} =$ $g_0 V_\text{1n}^2$ [W] で表される。この $P_\text{i}$ と $\dot{I}_0$ の大きさから,励磁アドミタンス $\dot{Y}$($=g_0 - \text{j}b_0$)[S] を求めることができる。この電流の値には一次側巻線抵抗による損失が含まれるが,$\dot{I}_0$ の大きさは定格電流に比べ非常に小さいので,この損失は無視できる。

2) 図中の $r_1$ 及び $r_2$ は,それぞれの巻線抵抗測定によって個別に求めることができる。通常,巻線抵抗測定によって得られた値は,使用する絶縁物の耐熱クラスによって,基準巻線温度に補正した値が用いられる。油入変圧器の基準巻線温度は 75 [°C] である。

$x_1$ 及び $x_2$ の値は,二次巻線を短絡し,この巻線の定格電流を流すように一次巻線に印加した定格周波数の電圧 $V_\text{1S}$ [V] から,インピーダンス $\dot{Z}_{01}$ [Ω] の大きさ $Z_{01}$ [Ω] を求め,これと,抵抗測定によって求めた $r_1$ 及び $r_2$ を使って,$x_1 +a^2 x_2$ の値として求めることができる。定格電圧及び定格容量での基準インピーダンスを $Z_\text{b}$ [Ω] とすると,パーセント値として表される短絡インピーダンス $\%Z_{01}$ [%] は,$\displaystyle \%Z_{01}=\frac{Z_{01}}{Z_\text{b}}\times100$ [%] となる。この $\% Z_{01}$ は,印加した電圧 $V_\text{1S}$ と定格電圧 $V_\text{1n}$ との比の百分率に等しい。

また,このとき得られる電力計の指示値は,この変圧器の負荷損に相当し,これを基準巻線温度に補正した値が用いられる。

一方,電圧変動率 $\epsilon$ [%] は次式で与えられる。ここで,$V_{2n}$ [V] は定格二次電圧であり,$V_{20}$ [V] は定格二次電圧において定格力率の定格二次電流 $I_\text{2n}$ [A] を流し,そのままの状態で二次側を開放したときに現れる二次側端子電圧である。

\[ \epsilon=\frac{V_{20}-V_{2n}}{V_{2n}}\times 100 \text{ [%]} \]

この電圧変動率は,近似的に次式で示される。

\[ \epsilon\approx (\frac{I_\text{2n}r}{V_\text{2n}}\cos\phi+\frac{I_\text{2n}x}{V_\text{2n}}\sin\phi)\times100=p\cos\phi+q\sin\phi \text{ [%]} \]

ここで,$\phi$ [rad] は力率角を表し,$r$ [Ω],$x$ [Ω],$p$ [%] 及び $q$ [%] を次のように定義する。

\[ r=\frac{r_1}{a^2}+r_2 \] \[ x=\frac{x_1}{a^2}+x_2 \] \[ p=\frac{I_\text{2n}r}{V_\text{2n}}\times100 \] \[ q=\frac{I_\text{2n}x}{V_\text{2n}}\times100 \]

この式で得られる $p$ を百分率電圧降下,$q$ を百分率 リアクタンス降下と呼び,$\%Z_{01}$ との間で,次式が成り立つ。

\[ \% Z_{01}=\sqrt{p^2 + q^2} \text{ [%]} \]

(2) 変圧器の損失,効率

定格容量 500 kVA,定格一次電圧 6 600 V,定格二次電圧 210 V の三相変圧器がある。この変圧器の無負荷試験を行ったところ,損失は 850 W であった。また,力率 1.0 で,定格容量 25 % の負荷時の効率 $\eta_{25}$ と,定格容量 75 % 負荷時の効率 $\eta_{75}$ が等しくなった。これらの条件から,力率 1.0 で定格容量 100 % 負荷時の負荷損 $P_\text{c}$ を算出すると,次のようになる。

\[ P_\text{c}=4.53 \text{ [kW]} \]

したがって,この変圧器を力率 1.0 で,定格容量の 100 % 負荷で運転したときの効率は 98.93 [%] となる。また,この変圧器が最大効率となるのは,定格容量の 43.3 [%] で運転したときである。

この変圧器に力率 0.6(遅れ)の負荷を接続すると,最大効率となるのは負荷が 130 [kW] のときであり,このとき効率は 98.71 [%] となる。

負荷損

与えられた条件より,負荷損 $P_\text{c}$ は,次式で求める。

\[ \frac{500\times1000\times0.25}{500\times1000\times0.25+850+0.25^2 \times P_\text{c}}=\frac{500\times1000\times0.75}{500\times1000\times0.75+850+0.75^2 \times P_\text{c}} \] \[ P_\text{c}=4533.3 \text{ [W]}\approx4.5 \text{ [kW]} \]

変圧器を力率 1.0 で,定格容量の 100 % 負荷で運転したときの効率

変圧器を力率 1.0 で,定格容量の 100 % 負荷で運転したときの効率は,次式で求められる。

\[ \frac{500\times1000}{500\times1000+850+4533.3}\times100=\frac{500000}{505383.3}\times100=98.934\approx98.93 \text{ [%]} \]

最大効率となる負荷率

変圧器が最大効率となるときの負荷率 $\alpha$ は,次式で求められる。

\[ \alpha=\sqrt{\frac{P_\text{i}}{P_\text{c}}}\times100=\sqrt{\frac{850}{4533.3}}\times100=43.30\approx43.3 \text{ [%]} \]
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