目指せ!エネルギー管理士 電気分野
平成30年度 問題13 電気加熱
(1) 各種電気加熱の特徴及び応用例
電気加熱方式 | 応用例 | 特徴 |
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レーザ加熱 | 文字マーキング | 波長,位相がそろった集光性の高い電磁波を用いるもので,極めて高いエネルギー密度が得られる。 |
アークプラズマ加熱 | セラミックの溶射 | 放電によって電離された高温ガスが,電磁作用と熱ピンチ効果により収縮され,エネルギー密度が増大し,5 000 ~ 30 000 K の高温のガス流となる。 |
間接抵抗加熱 | 浸炭炉 | 発熱体に発生するジュール熱を利用し,被加熱材の材質,形状を問わずに加熱が可能であり,炉内雰囲気を制御する炉に適している。 |
誘導加熱 | 鍛造用ビレットヒータ | 導電性の被加熱材を非接触で直接加熱するので,急速加熱が可能である。被加熱材の表面加熱をする場合には,高い周波数を選定する。 |
直接抵抗加熱 | 黒鉛化炉 | 導電性の被加熱材に電極を介して通電し,被加熱物内部にジュール熱を発生させるもので,急速,高温加熱ができる。 |
熱ピンチ効果は,通常のアーク放電などの弱~中電離度の放電プラズマに見られるもので,それらプラズマに外部からの気流などを吹きつけて冷やそうとすると,電流路は中心付近に集中し,その部分の電流密度は上昇し温度も同時に上がる現象を指す。
(2) アーク溶接
アーク溶接において健全な溶接部を得るためには,電源電圧変動など外部条件の影響を受けることなく電源の出力が安定していることが必要である。
溶接電源の特性(電圧・電流特性)には三つのタイプがある。そのうち,アーク長が多少変化しても安定したアークが得られることから,垂下特性形は最も一般的な電源特性と言える。
定電圧特性形は,溶接ワイヤ送給が一定速度であればアークの安定を維持することができるので,消耗電極式の自動溶接に利用される。
また,無負荷電圧を低減させるために垂下特性形を改良した定電流特性形は被覆アーク溶接機に利用される。
溶接電源の特性(電圧・電流特性)を下図に示す。
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(3) 鋳鉄を溶解するための誘導炉設備
鋳鉄を溶解するための誘導炉設備がある。この設備で,20 °C の鋳鉄 2 000 kg を 1 500 °C の溶湯に溶解することを考える。ここで,図に示すように電源出力端電力が 1 500 kW で誘導炉を運転しているときの受電端電力は 1 565 kW であり,炉入力端電力は 1 450 kW である。このとき,炉の誘導コイルの電力損失は 313 kW であり,この損失は加熱に寄与しないものとする。また,鋳鉄の溶解潜熱は 210 kJ/kg,比熱は 0.79 kJ/(kg·K) で温度に関わらず一定とし,溶解過程における炉からの熱損失も 76 kW で一定とする。ただし,炉は熱的に定常状態にあるものとし,誘導炉内部での誘導コイルの電力損失以外は無視するものとする。

1) 鋳鉄の溶解のために必要な正味熱量は,単位質量当り 0.383 [kW·h/kg] であるから,電源出力端電力が 1 500 kW で一定の場合 2 000 kg の鋳鉄を溶解するのに要する時間は約 43.3 [分] であり,このときの受電端における電力原単位は 0.565 [kW·h/kg] となる。
2) 省エネルギー対策として,電源装置を誘導炉近傍に配置することで配線ケーブル長を $\displaystyle \frac{1}{3}$ とした。このとき,炉入力端電力が 1 450 kW のままで変化がないものとすれば,受電端における電力原単位は 0.553 [kW·h/kg] に低減される。なお,電源装置の変換効率には変化がないものとし,また電源出力端から炉入力端までの電力損失はすべて配線ケーブルの損失であり,配線損失はケーブル長に比例するものとする。