目指せ!エネルギー管理士 電気分野

2019年8月31日作成,2023年12月31日更新

令和元年度 問題5 自動制御及び情報処理

(1) フィードバック制御系

図 1 に示すようなフィードバック制御系を考える。ここで,$t$ を時間,参照値を $r(t)$,制御器出力を $u(t)$,操作量を $c(t)$,外乱を $d(t)$,制御対象への入力を $f(t)$,制御量を $y(t)$ とし,$R(s)$ は $r(t)$ を,$U(s)$ は $u(t)$ を,$C(s)$ は $c(t)$ を,$D(s)$ は $d(t)$ を,$F(s)$ は $f(t)$ を,$Y(s)$ は $y(t)$ をそれぞれラプラス変換したものとする。また,$K$ と $H$ は定数であり,$K=100$,$H=0.2$ とする。ここで,全ての物理量は無次元で表現する。

図 1 フィードバック制御系
図 1 フィードバック制御系

1) いま,アクチュエータの伝達関数 $G_\text{A}(s)$ が次の式で与えられるとする。

\[ G_\text{A} (s) = \frac{b}{s + a} \]

この伝達関数の単位ステップ応答が $100(1 - e^{-10t})$ であるとすると,$a$ は 10,$b$ は 1 000 である。

2) 次に制御対象の伝達関数 $G_\text{T}(s)$ について考える。$G_\text{T}(s)$ が次の時間領域関数のラプラス変換したもので表されるとする。

\[ M \frac{\text{d} y(t)}{\text{d} t} = f(t) \]

ここで,$M = 1 000$ とすると,伝達関数 $G_\text{T}(s)$ は次のように表される。

\[ G_\text{T}(s) = \frac{0.001}{s} \]

3) ここで,外乱を 0 として $R(s)$ から $Y(s)$ までの伝達関数を求めると,$\displaystyle \frac{100}{s^2 + 10s + 20}$ となる。

4) 外乱が $d(t) = 1$ のときに,参照値 $r(t) = A$ を与えた。充分に時間が経過した後に,制御量 $y(t)$ が 20 となった。このとき $A$ の値に最も近いのは 4 である。

1) アクチュエータの伝達関数 $G_\text{A}(s)$ の単位ステップ応答

アクチュエータの伝達関数 $G_\text{A}(s)$ の単位ステップ応答は次式となる。

\[ G_\text{A}(s) \cdot \frac{1}{s} = \frac{b}{s + a} \cdot \frac{1}{s} = \frac{b}{a}(\frac{1}{s} - \frac{1}{s + a}) \]

ラプラス逆変換する。

\[ \frac{b}{a}(1-e^{-at}) \]

この伝達関数の単位ステップ応答が $100(1 - e^{-10t})$ であるとすると,$a$ は 10,$b$ は 1 000 である。単位ステップ応答を次の図に示す。

単位ステップ応答
図 単位ステップ応答

2) 伝達関数 $G_\text{T}(s)$

与えられた式をラプラス変換する。

\[ M \cdot sY(s) = F(s) \]

左辺が $Y(s)$ となるよう整理する。

\[ Y(s) = \frac{F(s)}{Ms} = G_\text{A}(s) F(s) \]

よって,伝達関数 $G_\text{T}(s)$ は次式となる。

\[ G_\text{T}(s) = \frac{1}{Ms} = \frac{1}{1 000 s} = \frac{0.001}{s} \]

3) $R(s)$ から $Y(s)$ までの伝達関数

$Y(s)$ は次式で求められる。

\[ Y(s) = (R(s) - HY(s)) \cdot K \cdot G_\text{A}(s) \cdot G_\text{T}(s) \]

上式を整理し,与えられた数値または伝達関数を代入し,さらに整理する。

\[ \frac{Y(s)}{R(s)} = \frac{K \cdot G_\text{A}(s) \cdot G_\text{T}(s)}{1 + H \cdot K \cdot G_\text{A}(s) \cdot G_\text{T}(s)} = \frac{100 \times \frac{1000}{s + 10} \times \frac{0.001}{s}}{1 + 0.2 \times 100 \times \frac{1000}{s+10} \times \frac{0.001}{s}} = \frac{100}{s^2 + 10s + 20} \]
伝達関数
図 伝達関数

4) $A$ の値

$Y(s)$ は次式となる。

\[ Y(s) = \{(R(s) - HY(s))K G_\text{A}(s) + D\}G_\text{T}(s) \]

$Y(s)$ について,整理する。

\[ Y(s) = \frac{R(s)KG_\text{A}(s)G_\text{T}(s) + DG_\text{T}(s)}{1 + HKG_\text{A}(s)G_\text{T}(s)} \]

与えられた数値または伝達関数を代入し,整理する。

\[ Y(s) = \frac{0.001s + (100A + 0.01)}{s^3 + 10s^2 + 20s} \]

充分に時間が経過した後の制御量 $y(t)$ を,ラプラス変換の最終値定理(final value theorem)より求める。

\[ \lim_{t \to \infty}{y(t)} = \lim_{s \to 0}{sY(s)} = \lim_{s \to 0}{\frac{0.001s + 100A + 0.01}{s^2 + 10s + 20}} = 5 A + 0.0005 \]

充分に時間が経過した後に,制御量 $y(t)$ が 20 であればよいので,$A = 4$ となる。

(2) 伝達関数で表現される線形システムの極と応答

1) もし,すべての極が複素左半平面に存在するとき,そのシステムは安定である。

2) 次に極が 1) と同じ条件であり,制御系設計により,極を移動することができる状況を考える。

ここで,二次遅れ系で極が共役複素根のとき,極の位置を原点に近づけると,システムの応答は遅くなる。一方,極の位置を垂直に実軸に近づけると,システムのステップ応答のオーバーシュートは小さくなる

伝達関数 $G(s)$ が安定となる条件は,$G(s)$ の極の実部がすべて 0 未満になることである(すべての極が複素左半平面に存在)。また,そうでない場合は $G(s)$ は不安定になる。

(3) 論理回路の論理記号

図 2 にある論理回路の論理記号(MIL 規格),表にその真理値を示す。入力 A,B 及び出力 C は真を 1(電圧の高いレベル),偽を 0(電圧の低いレベル)で表す正論理をとるものとする。

図 2 の論理記号で示される回路は NAND 回路と呼ばれ,論理式は C = $\overline{\text{A}\cdot\text{B}}$ で表現される。入力 A,B 共に 0 の信号を入力した場合の出力 C の値は 1 となる。

また,このような論理回路を組み合わせて信号の情報を保持する機能を実現した回路をフリップフロップと呼び,その中でもセット,リセットの同時入力を許し,そのときに出力を反転させる回路を JK フリップフロップと呼ぶ。

図 2 MIL 規格による論理記号
図 2 MIL 規格による論理記号
表 真理値
入力 A 入力 B 入力 C
0 0 1
1 0 1
0 1 1
1 1 0

AND 回路の出力を否定して出力する論理回路を NAND 回路という。

フリップフロップ(flip-flop)は,二進数の基本である 1 ビットの情報を一時的に 0 または 1 の状態として保持する(記憶する)ことができる論理回路で,順序回路の基本要素である。

(4) ハードディスク

ハードディスクはデータを記録するための補助記憶装置の一つであり,磁性体を塗布した円盤から記録データを読み書きする。磁気ヘッドを搭載したアームを操作してトラックを選択し,その中に複数個連続して配置されているセクタが 1 回の読み書き単位となる。

補助記憶装置は,記憶装置の分類で,外部バスに接続され,CPU が入出力命令で操作するものである。メインのバスに直接される主記憶装置(メインメモリ)と比較するとレイテンシやスループットは遅いが,大容量である。

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