目指せ!エネルギー管理士 電気分野
令和元年度 問題14 電気化学
(1) 一次電池と二次電池
電池は,化学反応で生じるエネルギーを電気エネルギーに直接変換する装置である。主に正極,負極及び電解質から構成されており,その種類は,充電できない一次電池と充電可能な二次電池に大別できる。
一次電池には,マンガン乾電池やアルカリマンガン乾電池などがあるが,近年主流となっているのは,アルカリマンガン乾電池である。アルカリマンガン乾電池の活物質として正極には二酸化マンガンが用いられている。また,構成要素の正極,負極及び電解質のうち,マンガン乾電池とアルカリマンガン乾電池で異なった物質を用いているのは電解質である。
二次電池である鉛蓄電池の活物質として,正極には二酸化鉛が用いられている。鉛蓄電池が放電したとき,電解質である硫酸の濃度は低くなる。
一次電池 | 正極 | 負極 | 電解質 |
---|---|---|---|
マンガン乾電池 | 二酸化マンガン | 亜鉛 | 塩化亜鉛 |
アルカリマンガン電池 | 二酸化マンガン | 亜鉛 | 水酸化カリウム |
二次電池 | 正極 | 負極 | 電解質 |
---|---|---|---|
鉛蓄電池 | 二酸化鉛 PbO2 | 鉛 Pb | 希硫酸 |
(2) 電極反応
電極電位は,標準水素電極を 0 V として定義されている。二つの電極反応を組み合わせた電気化学システムにおいて,自発的に反応が進行するのは電位の低い方の電極の反応が酸化方向に進む。電池の起電力は二つの電極の開回路における電極電位の差であり,電極電位のイオンの活量依存性はネルンストの式で求めることができる。
電極反応において,反応速度を大きくするためには過電圧の絶対値を大きくすればよい。また,触媒活性を高くすれば電極反応は速やかに進行する。この電極触媒能を表す重要な因子は交換電流密度である。
標準水素電極
標準水素電極(SHE : Standard Hydrogen Electrode)とは,水素ガスおよび水素イオンの活量が全て 1 であるときの水素電極である。
ネルンストの式
ネルンストの式(Nernst equation)とは,電気化学において,電池の電極の電位 $E$ を記述した式である。
(3) リチウムイオン電池
リチウムイオン電池があり,その公称電圧が 3.70 V であるとする。ここで,Li の原子量は 7,Co の原子量は 59,O の原子量は 16 とし,ファラデー定数は 27 A·h/mol とする。
1) 公称電圧でこの電池を充電して,正極活物質の LiCoO2 25 g に含まれる Li をすべて離脱したときに要する充電電気量は 6.89 [A·h],電気エネルギーは 25.5 [W·h] である。
2) この電池を,前述の条件で電流 0.5 A で充電したときに Li をすべて離脱するために要する時間は 13.8 [h] である。
リチウムイオン電池の正極における化学式は以下のとおり。
正極活物質の LiCoO2 25 g に含まれる Li をすべて離脱したときに要する充電電気量は,次式で求められる。
\[ \frac{25 \text{ [g]}}{(7 + 59 + 16\times2) \text{ [g/mol]}} \times 27 \text{ [A·h/mol]} = 6.8877 \approx 6.89 \text{ [A·h]} \]公称電圧が 3.70 V であるので,電気エネルギーは,次式で求められる。
\[ \frac{25 \text{ [g]}}{(7 + 59 + 16\times2) \text{ [g/mol]}} \times 27 \text{ [A·h/mol]} \times 3.70 \text{ [V]} = 25.484 \approx 25.5 \text{ [W·h]} \]電流 0.5 A で充電したときに Li をすべて離脱するために要する時間は,次式で求められる。
\[ \frac{25 \text{ [g]}}{(7 + 59 + 16\times2) \text{ [g/mol]}} \times 27 \text{ [A·h/mol]} \div 0.5 \text{ [A]}= 13.775 \approx 13.8 \text{ [h]} \]