目指せ!エネルギー管理士 電気分野
令和3年度 問題15 照明
(1) LED 照明
近年,照明用光源として LED を導入する事例は年々増加している。経済産業省が公表している 2019 年の機械統計によると,国内で新規に販売された照明器具(自動車用を除く)全体に占める LED 照明器具の台数の割合は,90 % 以上に達している。これは,LED の省エネルギー性が高く評価され,寿命が長く価格も手頃になってきたことが主な理由である。
光源を評価する特性の中で,省エネルギー性に最も関係の深いものはランプ効率である。LED のランプ効率はこの 20 年間で大幅に向上し,他の光源に対する優位性は明らかである。
その他にも光源を評価する重要な特性として,始動性及び光束安定化特性が挙げられる。
例えば,直管蛍光ランプの場合は,次のような特性を持つ。
- 放電を開始するためにランプの両電極間に高電圧を印加する必要がある。
- ランプの管内に封入された物質である水銀の蒸気圧によって光束が変化するため,点灯直後は光束は低く,ランプの温度上昇に伴い徐々に増加して安定する。
一方,LED の場合は,次のような特性を持つ。
- 固体発光素子であり電源投入からの点灯時間が短い。
- LED の温度上昇に伴い光束はやや低下する。
(2) 光色が異なる 2 つの電球形 LED ランプ
光色が異なる 2 つの電球形 LED ランプ a 及び b の特性を表 1 に示す。
定格消費電力 [W] | 光色 | 相関色温度 [K] | 全光束 [lm] | 平均演色評価数 | 定格寿命 [h] | |
---|---|---|---|---|---|---|
a | 6.0 | 昼白色 | $X$ | 810 | 83 | 40 000 |
b | 7.2 | 電球色 | 2 700 | 810 | 83 | 40 000 |
1) 2 つの電球形 LED ランプのうちの a のランプは昼白色ランプなので,表中の相関色温度の $X$ は約 5 000 [K] である。また,2 つの電球形 LED ランプの平均演色評価数はどちらも 83 である。これは,2 つのランプの光色は異なっているが,被照射物の色のずれの大きさが同程度という意味である。
2) ある居室で,全てを a のランプを搭載した照明器具あるいは全てを b のランプを搭載した照明器具とし,ランプの寿命末期の 40 000 時間において 16 000 lm の全光束を確保する条件で,必要台数設置したときの 1 年間の両者の電力消費量の差について考える。
ここで,二種類の照明器具の器具効率,照明率はいずれも 1 であり,保守率はランプの光束維持率と等しいものとする。寿命末期の 40 000 時間における a,b ランプの光束維持率はどちらも 80 % であるとし,途中で不点灯になるランプは一切ないものと仮定する。
点灯時間を年間 5 000 時間とすると,ランプ a の昼白色とした場合には,ランプを b の電球色とした場合と比べて,1 年間で 150 [kW·h] の電力消費量削減となる。
1) 色温度
色温度とはランプの光色を表す数値であり,単位には [K] が使用される。色温度が低いとオレンジがかった暖かみのある色となり,高くなるにつれて白っぽくなり,さらに高くなると青みがかった涼しげな色となる。
2) 照明器具の電力消費量
ランプの寿命末期の 40 000 時間において 16 000 lm の全光束を確保する条件を満たす LED ランプの台数を $N$ [台] とすると,次式が成り立つ。ただし,照明器具の器具効率,照明率はいずれも 1 であり,光束維持率は 80 % であるとする。
上式より,LED ランプの台数は 25 台である。
電球形 LED ランプ a の電力消費量
点灯時間を年間 5 000 時間とすると,電球形 LED ランプ a の 1 年間の電力消費量は,次式で求められる。
電球形 LED ランプ b の電力消費量
点灯時間を年間 5 000 時間とすると,電球形 LED ランプ b の 1 年間の電力消費量は,次式で求められる。
電力消費量削減
ランプ a の昼白色とした場合には,ランプを b の電球色とした場合と比べて,1 年間で削減できる電力消費量は,次式で求められる。
(3) 照明計算
1) 直径 40 cm で一様な輝度をもつ円形光源が天井面に水平に設置されている。このとき,円形光源の中心直下で 5 m 離れた水平な床面上の P 点の水平面照度が 40 lx であった。この円形光源の光度は 1.0 × 103 [cd] である。
次に,P 点から床面上で水平に 2 m 離れた点の直上 1 m の点 Q に新たな点光源を設置して,P 点での水平面照度を 100 lx としたい。必要な光源の光度は 6.7 × 102 [cd] となる。
2) 幅 2 m,長さ 4 m で透過率 20 %,吸収率 10 % の均等拡散性の布に光が一様に放射されている。このとき,表面の輝度が 200 cd/m2 であった。照度は 9.0 × 102 [lx] となる。
3) 玄関に設置されているポーチ灯の光源を,電力節減のために白熱灯から LED ランプに交換した。各光源の消費電力は,交換前の白熱灯が 40 W,交換後の LED ランプが 5 W であった。照明の使用時間を 1 日当たり 10 時間で 1 年間 365 日使用するとすれば,この交換によって,年間の電気使用料金を 2.9 × 103 [円] 節約することができる。ただし,電気料金は 23 円/(kW·h) とする。
4) 間口,奥行きともに 10 m で,天井高さ 4.8 m の作業場がある。天井面に照明器具を設置して,床面より 0.8 m 上の作業面の照度を 500 lx にしたい。
表 2 で,隣接した 2 つの室指数間の照明率は比例配分で与えられるものとして作業室の照明率を求めると 5.25 × 10-1 となる。蛍光灯 40 W × 2 灯用下面開放埋込形照明器具を使用するものとすれば 16 [台] 必要になる。ただし,蛍光ランプ 1 本当たりの全光束を 4 500 lm,保守率を 0.67 とする。
室指数 | 0.6 | 0.8 | 1.00 | 1.50 | 2.00 |
---|---|---|---|---|---|
照明率 | 0.34 | 0.42 | 0.48 | 0.57 | 0.62 |
1) 円形光源の光度
円形光源の光度 $I_\theta$ [cd] は,次式で求められる。ただし,P 点の水平面照度を $E_\text{h}$,円形光源から P 点までの距離を $l$ [m] とする。
\[ I_\theta = E_\text{h} \times l^2 = 40 \times 5^2 = 1000 \text{ [cd]} \]P 点での水平面照度を 100 lx とするには,点 Q に設置する光源により 60 lx を得る必要がある。よって,点 Q に設置する光源の光度は,次式で求められる。
\[ I_\theta = E_\text{h} \times \frac{l^3}{h} = 60 \times \frac{(\sqrt{1^2 + 2^2})^3}{1}=670.8 \text{ [cd]} \]3) 電気使用料金
白熱灯(40 W)の年間の電気使用料金は,次式で求められる。
LED ランプ(5 W)の年間の電気使用料金は,次式で求められる。
よって,電力節減のために白熱灯から LED ランプに交換することで,節約することができる年間の電気使用料金は,次式で求められる。
4) 室指数と照明率
間口 $X$,奥行 $Y$ ともに 10 m で,作業面から照明までの高さ $H$ は 4.0 m (= 4.8 m - 0.8 m)の作業場の室指数 $K$ は,次式で求められる。
\[ K=\frac{X\times Y}{(X+Y)H}=\frac{10\times10}{(10+10)\times4.0}=1.25 \]隣接した 2 つの室指数間の照明率は比例配分で与えられるものとして作業室の照明率 $M$ を求める。(室指数は 1.25 であるので,室指数 1.00 の照明率 0.48 と室指数 1.50 の照明率 0.57 の中間の値である。)
なお,参考に室指数と照明率との関係を下図に示す。

光源の個数 $N$ は,次式で求められる。ただし,照明器具 1 台当たりの光束 $F$ は 4 500 × 2 [lm],照明率 $U$ は 0.67,部屋の被照面積 $S$ は間口 10 m × 奥行 10 m = 100 [m2],部屋の平均照度 $E$ は 500 [lx] である。
\[ N= \frac{ES}{FUM} = \frac{500 \times 100}{4500 \times 2 \times 0.67 \times 0.525} = 15.79 \]よって,必要な照明器具の台数は 16 [台] である。