安全管理

2019年6月3日作成,2021年9月1日更新

工事中の事故防止対策

建設工事公衆災害防止対策

「建設工事公衆災害防止対策要綱」(国土交通省)を抜粋する。

作業場への工事車両の出入り等

施工者は、道路上に作業場を設ける場合は、原則として、交通流に対する背面から車両を出入りさせなければならない。ただし、周囲の状況等によりやむを得ない場合においては、交通流に平行する部分から車両を出入りさせることができる。この場合においては、原則、交通誘導警備員を配置し、一般車両の通行を優先するとともに公衆の通行に支障を与えないようにしなければならない。

一般交通を制限する場合の措置

制限した後の道路の車線が 1 車線となる場合にあっては、その車道幅員は 3 m 以上とし、2 車線となる場合にあっては、その車道幅員は 5.5 m 以上とする。

制限した後の道路の車線が 1 車線となる場合で、それを往復の交互交通の用に供する場合においては、その制限区間はできる限り短くし、その前後で交通が渋滞することのないよう原則、交通誘導警備員を配置しなければならない。

歩行者用通路の確保

発注者及び施工者は、やむを得ず通行を制限する必要がある場合、歩行者が安全に通行できるよう車道とは別に、幅 0.9 m以上(高齢者や車椅子使用者等の通行が想定されない場合は幅 0.75 m 以上)、有効高さは 2.1 m 以上の歩行者用通路を確保しなければならない。特に歩行者の多い箇所においては幅 1.5 m 以上、有効高さは 2.1 m 以上の歩行者用通路を確保し、交通誘導警備員を配置する等の措置を講じ、適切に歩行者を誘導しなければならない。

安全対策

安全対策の一例を以下に示す。

  • 現場代理人の常駐
  • 主任技術者・監理技術者の専任
  • 建設業の許可,労災保険関係成立票,建築確認の標識の掲示
  • 施工体制台帳の備付,施工体系図に掲示
  • 緊急連絡体制表の明治
  • 新規入場者教育
  • 作業手順の確認<安全ミーティング(KY 活動)>
  • 休憩場所等の確保,快適な作業環境確保への取組
  • 注意喚起標識の設置,安全標語の掲示
  • 作業中止基準及び指示系統の設定と明示
  • 消火設備の配置と明示及び火元責任者による確認点検の実施
  • 救急用具の設置
  • 熱中症対策

ヒューマンエラー防止対策

労働災害の原因のうち、人的要因によるミスは、ヒューマンエラーといわれる。

1) 事前の打合せを十分に行う。

  • 作業開始前に,作業内容の確認および変更事項の連絡などを確実に行う。
  • 初めて,または,経験の浅い作業従事者には,特に綿密な打合せを行う。

2) 常に危険意識をもつ

  • 慣れ,危険軽視がヒューマンエラーに繋がる。
  • 現場には危険がたくさんあるという意識をもち,安全のためのルールや指示を守ることが必要。

3) 設備改善に努める

  • 教育訓練だけでは限界があり,現場に即した二重のヒューマンエラー対策が必要。
  • 作業員の安全活動を促進させる対策(例として,安全帯の使用)。
  • 作業員が不安全行動をしても,それをカバーする対策(例として,墜落防止ネット)。

4) 健康管理に注意する

  • 十分な睡眠をとって疲労回復に努める。
  • 定期的に健康診断を受け,体調管理に気を配る。
  • 休業中に適度に休憩をとり,気分転換を図る。

労働安全衛生法に基づく安全管理体制と役割

事業者は,快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保する責務を有している。

統括安全衛生管理者

統括安全衛生責任者は、「当該事業場においてその事業の実施を統括管理する者」とされており、一般に、工事事務所の所長がその任に当たることが多い。

業種が通信業であって、常時 300 人以上の労働者を使用する事業場においては、事業を実質的に統括管理する総括安全衛生管理者を選任しなければならない。

労働安全の管理体制としては,通信業の場合,事業者は常時使用する労働者数が 300 人以上の事業場において,統括安全衛生管理者を選定し,安全管理者,衛生管理者などを指揮させるとともに,労働者の危険又は健康障害を防止するための措置などの業務を統括管理させなければならない。総括安全衛生管理者が統括管理する業務の一つとして、労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関することがある。

労働安全衛生法 第十条(総括安全衛生管理者)

事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、総括安全衛生管理者を選任し、その者に安全管理者、衛生管理者又は第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者の指揮をさせるとともに、次の業務を統括管理させなければならない。

  1. 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること。
  2. 労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること。
  3. 健康診断の実施その他健康の保持増進のための措置に関すること。
  4. 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること。
  5. 前各号に掲げるもののほか、労働災害を防止するため必要な業務で、厚生労働省令で定めるもの

2 総括安全衛生管理者は、当該事業場においてその事業の実施を統括管理する者をもつて充てなければならない。

3 都道府県労働局長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、総括安全衛生管理者の業務の執行について事業者に勧告することができる。

安全管理者

業種が通信業であって、常時 50 人以上の労働者を使用する事業場においては、安全に係る技術的事項を管理する安全管理者を、資格を有する者のうちから選任しなければならない。

労働安全衛生法 第十一条(安全管理者)

事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、安全管理者を選任し、その者に前条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。)のうち安全に係る技術的事項を管理させなければならない。

2 労働基準監督署長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、事業者に対し、安全管理者の増員又は解任を命ずることができる。

衛生管理者

労働安全衛生法 第十二条(衛生管理者)

事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し、その者に第十条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。)のうち衛生に係る技術的事項を管理させなければならない。

2 前条第二項の規定は、衛生管理者について準用する。

安全委員会

通信業の場合,常時 100 人以上の労働者を使用する事業場では,事業者は労働者の危険の防止に関する重要事項などを調査審議させ,事業者に対して意見を述べさせるために,安全委員会を設置することが義務付けられている。安全委員会の運営方法として,重要な議事内容は記録し,3 年間保存しなければならない。

労働安全衛生法 第十七条(安全委員会)

事業者は、政令で定める業種及び規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、安全委員会を設けなければならない。

  1. 労働者の危険を防止するための基本となるべき対策に関すること。
  2. 労働災害の原因及び再発防止対策で、安全に係るものに関すること。
  3. 前二号に掲げるもののほか、労働者の危険の防止に関する重要事項

2 安全委員会の委員は、次の者をもつて構成する。ただし、第一号の者である委員(以下「第一号の委員」という。)は、一人とする。

  1. 総括安全衛生管理者又は総括安全衛生管理者以外の者で当該事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者のうちから事業者が指名した者
  2. 安全管理者のうちから事業者が指名した者
  3. 当該事業場の労働者で、安全に関し経験を有するもののうちから事業者が指名した者

3 安全委員会の議長は、第一号の委員がなるものとする。

4 事業者は、第一号の委員以外の委員の半数については、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があるときにおいてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときにおいては労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき指名しなければならない。

5 前二項の規定は、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合との間における労働協約に別段の定めがあるときは、その限度において適用しない。

衛生委員会

業種を問わず常時 50 人以上の労働者を使用する事業場では,労働者の意見を反映させるために,衛生委員会を設置することが義務付けられている。衛生委員会の運営方法として,開催回数は毎月 1 回以上で,重要な議事内容は記録し,3 年間保存しなければならない。

労働安全衛生法 第十八条(衛生委員会)

事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、衛生委員会を設けなければならない。

  1. 労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること。
  2. 労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること。
  3. 労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るものに関すること。
  4. 前三号に掲げるもののほか、労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項

2 衛生委員会の委員は、次の者をもつて構成する。ただし、第一号の者である委員は、一人とする。

  1. 総括安全衛生管理者又は総括安全衛生管理者以外の者で当該事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者のうちから事業者が指名した者
  2. 衛生管理者のうちから事業者が指名した者
  3. 産業医のうちから事業者が指名した者
  4. 当該事業場の労働者で、衛生に関し経験を有するもののうちから事業者が指名した者

3 事業者は、当該事業場の労働者で、作業環境測定を実施している作業環境測定士であるものを衛生委員会の委員として指名することができる。

4 前条第三項から第五項までの規定は、衛生委員会について準用する。この場合において、同条第三項及び第四項中「第一号の委員」とあるのは、「第十八条第二項第一号の者である委員」と読み替えるものとする。

安全衛生委員会

安全委員会及び衛生委員会を設けなければならないときは、それぞれの委員会の設置に代えて、安全衛生委員会を設置することができる。

労働安全衛生法 第十九条(安全衛生委員会)

事業者は、第十七条及び前条の規定により安全委員会及び衛生委員会を設けなければならないときは、それぞれの委員会の設置に代えて、安全衛生委員会を設置することができる。

2 安全衛生委員会の委員は、次の者をもつて構成する。ただし、第一号の者である委員は、一人とする。

  1. 総括安全衛生管理者又は総括安全衛生管理者以外の者で当該事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者のうちから事業者が指名した者
  2. 安全管理者及び衛生管理者のうちから事業者が指名した者
  3. 産業医のうちから事業者が指名した者
  4. 当該事業場の労働者で、安全に関し経験を有するもののうちから事業者が指名した者
  5. 当該事業場の労働者で、衛生に関し経験を有するもののうちから事業者が指名した者

3 事業者は、当該事業場の労働者で、作業環境測定を実施している作業環境測定士であるものを安全衛生委員会の委員として指名することができる。

4 第十七条第三項から第五項までの規定は、安全衛生委員会について準用する。この場合において、同条第三項及び第四項中「第一号の委員」とあるのは、「第十九条第二項第一号の者である委員」と読み替えるものとする。

作業主任者

労働災害を防止するための管理を必要とする作業で,政令で定めるものについては,当該作業の区分に応じて,作業主任者を選任しなければならない。作業主任者は,作業に従事する労働者の指揮のほか,機械・安全装置の点検,器具・工具などの使用状況の監視などに関する職務を担っており,技能講習修了者や免許所有者の中から選任されるものである。

労働安全衛生法 第十四条(作業主任者)

事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う技能講習を修了した者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。

酸素欠乏危険作業主任者

マンホール内で作業を行う場合の酸素欠乏危険作業主任者は,酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者の技能講習を修了した者のうちから選任しなければならない。

事業者は、第一種酸素欠乏危険作業に係る酸素欠乏危険作業主任者に、その日の作業を開始する前、作業に従事するすべての労働者が作業を行う場所を離れた後再び作業を開始する前及び労働者の身体、換気装置等に異常があったときに、作業を行う場所の空気中の酸素の濃度を測定させなければならない。

なお,酸素欠乏等とは,空気中の酸素の濃度が 18 パーセント 未満である状態又は空気中の硫化水素の濃度が 100 万分の 10 (10 [ppm])を超える状態をいう。

足場の組立て等作業主任者

吊り足場などの足場の組立て等作業主任者は,足場の組立て等作業主任者の技能講習を修了した者のうちから選任しなければならない。

移動式クレーン

移動式クレーンを使用して,1 トン以上の電柱の玉掛け作業をする者は,玉掛け作業に係る技能講習を終了した者でなければならない。

移動式クレーンを使用して,5 トン以上の電柱を吊り,移動作業をする者は,当該作業に係る移動式クレーンの運転士免許を取得している者でなければならない。

移動式クレーンにより労働者を運搬し、又は労働者をつり上げて作業させてはならないが、作業の性質上やむを得ない場合又は安全な作業の遂行上必要な場合は、移動式クレーンのつり具に専用のとう乗設備を設けて、当該とう乗設備に労働者を乗せることができる。

クレーン等安全規則 第78条 作業開始前の点検

事業者は、移動式クレーンを用いて作業を行なうときは、その日の作業を開始する前に、巻過防止装置、過負荷警報装置その他の警報装置、ブレーキ、クラツチ及びコントローラーの機能について点検を行なわなければならない。

玉掛け作業

つり上げ荷重が 1 トン未満の移動式クレーンの玉掛けの業務に労働者を就かせるときは、当該労働者に対し、当該業務に関する安全のための特別の教育を行わなければならない。

クレーン等安全規則 第213条 玉掛け用ワイヤロープの安全係数

事業者は、クレーン、移動式クレーン又はデリックの玉掛用具であるワイヤロープの安全係数については、六以上でなければ使用してはならない。

2 前項の安全係数は、ワイヤロープの切断荷重の値を、当該ワイヤロープにかかる荷重の最大の値で除した値とする。

クレーン等安全規則 第215条 不適格なワイヤロープの使用禁止

事業者は、次の各号のいずれかに該当するワイヤロープをクレーン、移動式クレーン又はデリツクの玉掛用具として使用してはならない。

  1. ワイヤロープ一よりの間において素線(フイラ線を除く。以下本号において同じ。)の数の十パーセント以上の素線が切断しているもの
  2. 直径の減少が公称径の七パーセントをこえるもの
  3. キンクしたもの
  4. 著しい形くずれ又は腐食があるもの
クレーン等安全規則 第220条 作業開始前の点検

事業者は、クレーン、移動式クレーン又はデリツクの玉掛用具であるワイヤロープ、つりチエーン、繊維ロープ、繊維ベルト又はフツク、シヤツクル、リング等の金具(以下この条において「ワイヤロープ等」という。)を用いて玉掛けの作業を行なうときは、その日の作業を開始する前に当該ワイヤロープ等の異常の有無について点検を行なわなければならない。

2 事業者は、前項の点検を行なつた場合において、異常を認めたときは、直ちに補修しなければならない。

高所作業

事業者は、高さが 2 [m] 以上の箇所(作業床の端、開口部等を除く。)で作業を行う場合において墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、足場を組み立てる等の方法により作業床を設けなければならない。作業床を設けることができないときは安全帯を使用するなど、作業者の安全を確保しなければならない。

事業者は、労働者に安全帯等を使用させるときは、安全帯等及びその取付け設備等の異常の有無について、随時点検しなければならない。

事業者は、脚立については、丈夫な構造で、材料は著しい損傷、腐食等がなく、踏み面は作業を安全に行うために必要な面積を有し、脚と水平面の角度は 75 度以下で、折りたたみ式のものにあっては、脚と水平面との角度を確実に保つための金具等を備えたものを使用しなければならない。

電柱における登り幅とは、架設物を取り付けない空間を設け、安全な昇降と作業のために設けられた空間である。

高所作業車

架空線路の保守作業では、作業床の高さが 2 [m] 以上 10 [m] 未満の高所作業車を運転(道路上を走行させる運転を除く。)する者は、高所作業車運転技能講習の修了者(修了証の交付を受けた者)又は、高所作業車運転業務の特別教育を修了した者,10 [m] 以上の場合には高所作業車運転技能講習を修了した者により実施されなければならない。

安全活動

働きやすく、安全な職場を作るためには、創意工夫などによって常により良い職場に改善する姿勢と努力が必要である。

創意工夫などを引き出すための手法としては、安全改善提案制度やツールボックスミーティングなどがある。

危険予知活動

日々の作業の手順の中に隠れている「不安全状態」の発生や「不安全行動」を行ってしまう心理状態を事前に明らかにし,作業者自身が対策を考えて実行することを目的として行う自主的な安全活動のことを危険予知活動,またはその頭文字をとって KY 活動という。

ヒューマンエラーに起因する事故などを防止することを目的に、イラストや写真を用いたシートを活用し、職場の小単位のグループで行う短時間の訓練は、危険予知訓練(KYT)といわれ、KYTの進め方としては、現状把握、本質追究などの各段階を経て進めていく4R法がある。

ツールボックスミーティング

ツールボックスミーティングは、職場などの第一線監督者を中心として、その日の作業の内容や方法、段取り、問題点などについて、短時間に話し合ったり、指示伝達を行ったりするものである。

ヒヤリハット運動

職場改善の観点から創意工夫などを引き出すための手法の一つとして、ヒヤリハット運動がある。ヒヤリハット運動は、重大な事故には至らないものの、事故に直結してもおかしくない一歩手前の事例を発見し、その原因を解消する運動である。ヒヤリハット運動は、労働災害における経験則の一つであるハインリッヒの法則などに基づいており、重大な事故の発生を未然に防止するための有効な活動とされている。

労働安全衛生マネジメントシステム

建設業労働災害防止協会が定めた建設業労働安全衛生マネジメントシステムガイドライン(以下,ガイドラインという。)は,平成 11 年 4 月に厚生労働省が公表した労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針に基づき,建設業の固有の特性を踏まえ,必要な安全衛生管理の仕組みを示したものである。

労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS : Occupational Safety and Health Management System)は,事業者が労働者の協力の下に「計画(Plan)-実施(Do)-評価(Check)-改善(Act)」という一連の過程を定めて,継続的な安全衛生管理を自主的に進めることにより,労働災害の防止と労働者の健康増進,さらに進んで快適な職場環境を形成し,事業場の安全衛生水準の向上を図ることを目的とした安全衛生管理の仕組み。

労働安全衛生マネジメントシステムの特徴

  1. PDCA サイクル構造の自主的システム
  2. 手順化,明文化及び記録化
  3. 危険性又は有害性の調査及びその結果に基づく措置
  4. 全社的な推進体制

建設業労働安全衛生マネジメントシステム

建設業労働安全衛生マネジメントシステム(Construction Occupational Health and Safety Management System : COHSMS)の目的は,建設業者と社員が協力し,店社と作業所が一体となって,「計画(P)-実施(D)-評価(C)-改善(A)」のサイクルを回し,作業所における労働災害の潜在的な危険有害要因をなくし,健康の増進と快適職場づくりを実現し,建設企業の安全衛生水準の向上を目指すことにある。

このシステムの導入により,次のメリットが期待できる。

  1. 経営理念の中に安全衛生が取り込まれることにより,安全衛生管理が事業を行う上で欠かせないことが明確となる。
  2. PDCA サイクルの運用により,安全衛生水準の継続的・段階的向上が図れる。
  3. リスクアセスメントの導入により,個々の建設現場の状況に応じた安全衛生対策がたてられる。
  4. 作業員の参画により安全衛生活動の取り組みが活性化される。
  5. 個人の能力に頼らず組織的な取り組みが可能となる。

建設業労働安全衛生マネジメントシステムガイドライン

建設業労働災害防止協会が定めた建設業労働安全衛生マネジメントシステムガイドライン(以下,ガイドラインという。)は,平成 11 年 4 月に厚生労働省が公表した労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針に基づき,建設業の固有の特性を踏まえ,必要な安全衛生管理の仕組みを示したものである。

ガイドラインは,建設事業を行う事業者が,労働者の協力の下に,店社と作業所が一体となって,計画-実施-評価-改善という一連の過程を定めて継続的に行う自主的な安全衛生活動を促進することにより,建設事業場における労働災害の潜在的危険性を低減するとともに,労働者の健康の増進及び快適職場の形成の促進を図り,もって建設事業場における安全衛生水準の向上に資することを目的としている。

また,ガイドラインにおける建設業労働安全衛生マネジメントシステム(以下,システムという。)とは,建設事業場において,安全衛生方針の表明,安全衛生目標の設定,安全衛生計画の作成,実施及び運用,日常的な点検及び改善,システム監査,システムの見直し等の一連の過程を定めて連続的かつ継続的に実施する安全衛生管理に関する仕組みであって,施工管理等の建設事業の実施に係る管理に関する仕組みと一体となって実施され,及び運用されるものをいう。

建設事業場におけるシステムを確立し,適切に実施し,及び運用するため,建設事業者が実施する基本的事項には,特定された危険又は有害要因等を踏まえ,安全衛生方針に基づき,安全衛生目標を設定すること,安全衛生目標の設定及び安全衛生計画の作成に当たり,安全衛生委員会の活用等労働者の意見を反映する手順を定め,この手順に基づき,労働者の意見を反映することなどがある。

リスクアセスメント

先取り安全の取組みの一つとして、リスクアセスメントがある。リスクアセスメントは、職場に潜在する危険性又は有害性を洗い出して特定し、それらのリスクを見積り、評価し、そのリスクを低減するための措置と優先度を検討して低減措置の実施を体系的に進める手法である。リスクアセスメントの実施は、労働安全衛生法において、事業者の努力義務とされている。

本稿の参考文献

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