維持・運用

2019年6月3日作成,2021年9月1日更新

異常時の措置の内容

近年、地震や洪水等の自然災害が頻繁に発生している。マンホール、電柱などの屋外設備は、度々これらの自然災害により被害を受け、結果として電気通信サービスそのものが停止する場合もある。これらの被害を最小限にするためには、適切な災害管理が必要不可欠である。

TTC(Telecommunication Technology Committee) 標準「JT-L92 屋外設備に対する災害管理」(2013年11月14日)は、自然災害から屋外設備を防護するための災害管理に関する技術的考慮について述べている。ケーブル、電柱やマンホール等の屋外設備に対する災害管理、地震、強風、洪水等の自然災害対策について紹介する。付録では、韓国および日本における災害管理の事例がそれぞれ紹介されている。また、各国の自然災害管理に関する基本的情報として、各国に回覧された質問状に対する回答結果についても添付されている。本勧告の目的は、これらの見地、知識、事例を国際的に共有し、屋外設備の災害耐性をより良いものにすることにある。

災害管理活動は以下の 4 つのフェーズに分類される。

Mitigation(予防)
災害の可能性を減らすまたは除外するための活動。例えば,津波を想定して,通信ビルやケーブルルートを高台へ設置する対策が含まれる。
Preparedness(準備)
災害に先立ち、予防、応答、回復を支援するための活動。本フェーズでは、被害を最小限にするための計画立案がされる(例えば早期警報システム等が含まれる)。例えば,強風を想定して,支柱,支線ワイヤなどの支持物品を導入する対策が含まれる。
Response(応答)
災害後の活動。事態を収拾する、あるいは二次災害の可能性を低減するための活動。例えば,地震を想定して,布設されたケーブル等の構造物にセンサを取り付けての監視等ヘルスモニタリングシステムを設置する対策が含まれる。
Recovery(回復)
正常運用時または改善された事態に戻すために必要な活動(例えば破壊されたものの再建、インフラの修復等が含まれる)。

IPOCM(Incident Preparedness and Operational Continuity Management : 事故準備及び事業継続管理)は、組織内において事故対応や事業継続性に対する理解、立案、解釈の基礎概念となるものである。本概念は、公共または私的機関に対して、無意識に、意図的に、自然に事故に対する準備として必要な要素やステップを提供するものであり、事故対応を管理して事業を継続するために適切なアクションをとることができる。

体制確立

指定公共機関

災害対策基本法において,独立行政法人,日本銀行,日本赤十字社,日本放送協会その他の公共機関及び電気,ガス,輸送,通信その他の公共的事業を営む法人であって,内閣総理大臣が指定するものは,指定公共機関といわれる。

防災業務計画

指定公共機関は,内閣府に設置される中央防災会議が作成する防災に関する基本的な計画に基づき,その業務に関し,防災業務計画を作成し,毎年防災業務計画に検討を加え,必要があると認めるときは,これを修正しなければならない。

中央防災会議は、内閣の重要政策に関する会議の一つとして、内閣総理大臣をはじめとする全閣僚、指定公共機関の代表者及び学識経験者により構成されており、防災基本計画の作成や、防災に関する重要事項の審議等を行っています。

指定公共機関は,防災業務計画を作成し,又は修正したときは,速やかに当該指定公共機関を所管する大臣を経由して内閣総理大臣に報告し,関係都道府県知事に通知するとともに,その要旨を公表しなければならない。

災害基本対策法 第二条 定義

この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(中略)

五 指定公共機関 独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。)、日本銀行、日本赤十字社、日本放送協会その他の公共的機関及び電気、ガス、輸送、通信その他の公益的事業を営む法人で、内閣総理大臣が指定するものをいう。

(中略)

九 防災業務計画 指定行政機関の長(当該指定行政機関が内閣府設置法第四十九条第一項若しくは第二項若しくは国家行政組織法第三条第二項の委員会若しくは第三号ロに掲げる機関又は同号ニに掲げる機関のうち合議制のものである場合にあつては、当該指定行政機関。第十二条第八項、第二十八条の三第六項第三号及び第二十八条の六第二項を除き、以下同じ。)又は指定公共機関(指定行政機関の長又は指定公共機関から委任された事務又は業務については、当該委任を受けた指定地方行政機関の長又は指定地方公共機関)が防災基本計画に基づきその所掌事務又は業務について作成する防災に関する計画をいう。

災害基本対策法 第三十九条 指定公共機関の防災業務計画

指定公共機関は、防災基本計画に基づき、その業務に関し、防災業務計画を作成し、及び毎年防災業務計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならない。

2 指定公共機関は、前項の規定により防災業務計画を作成し、又は修正したときは、速やかに当該指定公共機関を所管する大臣を経由して内閣総理大臣に報告し、及び関係都道府県知事に通知するとともに、その要旨を公表しなければならない。

3 第二十一条の規定は、指定公共機関が第一項の規定により防災業務計画を作成し、又は修正する場合について準用する。

情報共有

災害の救援や復旧並びに公共の秩序の維持のため,法令に基づき,防災関係等各種機関等に対し,電気通信事業者が提供している災害時優先電話は,一般に,災害発生時などに行われる通信制限時であっても優先電話からの発信を優先して扱うことにより,重要通信を確保するサービスである。

影響把握

代替ルートへの切替(途絶防止)

指定公共機関として指定された電気通信事業者は,災害対策基本法などの法令に則り,電気通信設備等の耐水構造化や耐震構造化による電気通信設備等の高信頼度化,主要な伝送路の多ルート化や主要な中継交換機の分散設置による電気通信システムの高信頼度化などの災害対策に取り組んでいる。

早期復旧

災害復旧時において,障害を受けた優先電話は,復旧作業は効率性の観点から実施され,他の通常電話に対して最優先で復旧されることはない。

移動式 ICT ユニットは,ICT サービス提供に必要な装置類を収容した可搬型のユニットであり,災害時に被災地に搬入・設置して避難所などの周辺に Wi-Fi によるローカルネットワークの構築,広域ネットワークへの接続を短時間で行うことができる。(参考)「移動式 ICT ユニット(MDRU)の概要

電気通信事業者は,災害発生時に重要な通信設備などへの電源供給の応急復旧に資するために災害対策用移動電源車を配備しており,一台の最大発電能力は対応規模に応じてさまざまで 2,000 [kVA] を有する発電機もあり,また,発電方式はガスタービン方式の他ディーゼルエンジン方式などがある。(参考)「災害対策用移動電源車

アウトソーシング管理のポイント

対象業務の選定

保守を委託する場合は,委託契約により保守作業及び責任の範囲を明確にする。

委託先の選定

責任範囲の明確化

保守を委託する場合は,作業手順を明確にするとともに,監督を行う。

守秘義務契約や情報管理規程等によるリスク管理

偽装請負の防止

形式的には請負契約の方式をとっているが,実態は労働者派遣契約の形態で業務を行うことは,偽装請負といわれる。偽装請負の問題点としては,安全衛生などの責任があいまいになり,危険防止措置が十分に講じられないため,労働災害が生ずるおそれが高まることが挙げられる。

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