平成29年度 秋期 午前 Ⅱ 問題の解答と解説
試験時間は 10:50 ~ 11:30(40 分)である。
問1 システム化構想の立案プロセス
共通フレーム 2013 によれば,システム化構想の立案プロセスで実施するタスクはどれか。
解答と解説
問2 目標復旧時間
BCP 策定に際して,目標復旧時間となるものはどれか。
解答と解説
【答え】ア
BCP とは,Business Continuity Plan(事業継続計画)である。
経済産業省や厚生労働省の資料では,BCP の発動から全面復旧に至るまでを以下の 4 段階のフェーズに分けている。
- 災害や事故の発生(或いは発生の可能性)を検知してから,初期対応を実施し,BCP 発動に至るまでのフェーズ(BCP 発動フェーズ)
- BCP を発動してから,バックアップサイト・手作業などの代替手段により業務を再開し,軌道に乗せるまでのフェーズ(業務再開フェーズ)
- 最も緊急度の高い業務や機能が再開された後,さらに復旧する業務の範囲を拡大するフェーズ(業務回復フェーズ)
- 代替設備・手段から平常運用へ切り替えるフェーズ(全面復旧フェーズ)
問3 全体最適化計画の策定
システム管理基準(平成 16 年)によれば,情報戦略における全体最適化計画の策定で実施することはどれか。
解答と解説
【答え】イ
システム管理基準は,情報戦略を立案し,効果的な情報システム投資とリスクを低減するためのコントロールを適切に整備・運用するための 287 事項をとりまとめたものである。
問4 ROI
IT 投資効果の評価に用いられる手法のうち,ROI によるものはどれか。
解答と解説
【答え】エ
ROI(Return on Investment : 投資利益率)の定義を次式に示す。ROI の値が大きいほど,投資効果が高いと評価できる。
アは NPV(Net Present Value : 正味現在価値),イは単純回収期間法,ウは IRR(Internal Rate of Return : 内部収益率)を用いた評価に関する記述である。
問5 アンゾフの成長マトリクス
アンゾフの成長マトリクスを説明したものはどれか。
解答と解説
【答え】ウ
ビジネスフレームワークの一つであるアンゾフの成長マトリクスは,経営学者の H・イゴール・アンゾフ(H. Igor Ansoff)が提唱したもので,縦軸に「市場」,横軸に「製品」をとり,それぞれに「既存」「新規」の 2 区分を設け,4 象限(市場浸透,製品開発,市場開拓,多角化)のマトリクスとしたものである。事業が成長・発展できる経営戦略を検討するために適したフレームワークである。
既存製品 | 新規製品 | |
---|---|---|
既存市場 | 市場浸透 | 製品開発 |
新規市場 | 市場開拓 | 多角化 |
問6 バリューチェーン
バリューチェーンでは,付加価値を生み出す事業活動を,五つの主活動と四つの支援活動に分類している。支援活動に該当するものはどれか。
解答と解説
【答え】ア
バリューチェーン分析は,業務を「購買物流」「製造」「出荷物流」「販売・マーケティング」「サービス」という 5 つの主活動と,「調達」「技術開発」「人事・労務管理」「全般管理」の 4 つの支援活動に分類し,製品の付加価値がどの部分(機能)で生み出されているかを分析する手法である。
イ,ウ,エは主活動に該当する。
問7 ファイブフォース分析
ファイブフォース分析は,業界の構造を,業界内で競争が激化する五つの要因を用いて図のように説明している。図中の a に入る要因はどれか。
解答と解説
【答え】イ
ファイブフォース分析は,業界の収益性を決める五つの競争要因から、業界の構造分析をおこなう手法。
- 既存競合者同士の敵対関係(内部要因)
- 新規参入の脅威(外部要因)
- 代替製品・代替サービスの脅威(外部要因)
- 買い手の交渉力(内部要因)
- 供給者の支配力(内部要因)
ファイブフォース分析は,業界構造を,業界内で激化する五つの要因を用いて下図に用に説明している。
問8 正味現在価値法
投資効果を正味現在価値法で評価するとき,最も投資効果が大きい(又は損失が小さい)シナリオはどれか。ここで,期間は 3 年間,割引率は 5 % とし,各シナリオのキャッシュフローは表のとおりとする。
シナリオ | 投資額 | 回収額 | ||
---|---|---|---|---|
1 年目 | 2 年目 | 3 年目 | ||
A | 220 | 40 | 80 | 120 |
B | 220 | 120 | 80 | 40 |
C | 220 | 80 | 80 | 80 |
投資をしない | 0 | 0 | 0 | 0 |
解答と解説
【答え】イ
割引率を考慮した回収額は次表のとおり。
シナリオ | 投資額 | 回収額 | ||
---|---|---|---|---|
1 年目 | 2 年目 | 3 年目 | ||
A | 220 | 38.1 | 72.6 | 103.7 |
B | 220 | 114.3 | 72.6 | 34.6 |
C | 220 | 76.2 | 72.6 | 69.1 |
投資をしない | 0 | 0 | 0 | 0 |
A ~ C の投資効果は以下のとおり。
投資をしないシナリオの投資効果は 0 万円なので,最も投資効果の大きいシナリオは B となる。
問9 コーズリレーテッドマーケティング
コーズリレーテッドマーケティングの特徴はどれか。
解答と解説
【答え】ウ
企業が商品やサービスの売上によって得た利益の一部を NGO や国連機関などの組織に寄付し,その社会奉仕活動と企業名を結びつけることによる訴求効果を狙うマーケティング・コミュニケーション手法。英語表記の "Cause related marketing" を略して CRM とも呼ばれる。
問10 マーケティング手法
人から人へと評判が拡散することを積極的に利用することが特徴的なマーケティング手法はどれか。
解答と解説
【答え】エ
バイラル(viral)とは,話題や概念がウイルス(virus)のように広まっていく様子を表現する言葉である。
問11 マーケティング
売り手側でのマーケティング要素 4P は,買い手側での要素 4C に対応するという考え方がある。4P の一つであるプロモーションに対応する 4C の構成要素はどれか。
解答と解説
【答え】ウ
4P に対して,買い手の視点から再定義したものが 4C である。そのため,4P(売り手側でのマーケティング要素)と 4C(買い手側での要素)は,それぞれの要素が下表のように対応している。
4P | 4C |
---|---|
Product(製品) | Customer Value(顧客価値) |
Price(価格) | Customer Cost(顧客コスト) |
Place(場所) | Convenience(利便性) |
Promotion(販売促進) | Communucation(コミュニケーション) |
問12 ペネトレーション価格戦略
ペネトレーション価格戦略の説明はどれか。
解答と解説
【答え】イ
ぺネストレーション価格戦略とは,新製品を市場に投入した初期に低価格を設定し,早期に市場シェアの獲得を目指す価格戦略のことである。
なお,英語でぺネストレーションとは「浸透すること」である。
アはスキミング価格戦略(浸透価格戦略),ウはバリュー価格戦略,エは価格バンドリングの説明である。
問13 需要の価格弾力性
需要の価格弾力性を説明したものはどれか。
解答と解説
【答え】イ
需要の価格弾力性(price elasticity of demand)とは,価格の変化率(価格の変化金額 ÷ 価格)によって,需要量の変化率(需要量の変動の大きさ ÷ 需要量)を除した比率。
問14 PEST 分析
企業が実施するマクロ環境分析のうち,PEST 分析によって戦略を策定している事例はどれか。
解答と解説
【答え】エ
PEST 分析は,主に経営戦略や海外戦略等の策定,マーケティングを行う際に使用し,自社を取り巻くマクロ環境(外部環境)が,現在または将来にどのような影響を与えるか,把握・予測するためのもの手法でである。Politics(政治),Economy(経済),Society(社会),Technology(技術)という 4 つの視点から分析することから,それぞれの頭文字をとり PEST という。
アは購買行動の事例,イはアンゾフの成長マトリクスのうち「製品開発戦略」の事例,ウはアンゾフの成長マトリクスのうち「市場拡大戦略」の事例である。
問15 プロダクトイノベーション
プロダクトイノベーションの例として,適切なものはどれか。
解答と解説
【答え】エ
プロダクトイノベーションは,革新的な新製品を開発するといった,製品そのものに関する技術革新。
問16 インプレッション保証型広告
インターネットにおける広告形態のうち,インプレッション保証型広告の説明はどれか。
解答と解説
【答え】ウ
インプレッション保証型広告とは,表示回数(インプレッション数)が保証される広告のことをいう。広告文もしくは画像や動画が,一定回数表示されるまでは継続して広告の掲載を行う,という内容の契約であるため,もし契約期間内に,広告が表示された回数が約束数に満たない場合には,掲載期間を延長して,広告を掲載することになる。
アは「リスティング広告(検索連動型広告)」,イは「アフェリエイト広告(成功報酬型広告)」,エは「期間保障型広告」の説明である。
問17 フリーミアム
フリーミアムの特徴はどれか。
解答と解説
【答え】ウ
フリーミアム(Freemium)とは「フリー(Free,無料)」と「プレミアム(Premium,割増料金)」の造語で,基本的なサービスや製品を無料で提供し,さらに高度なサービスや機能に関しては有料で行う事により収益を得るビジネスモデルである。
Web 上では 95 % が無料ユーザーであっても 5 % の有料ユーザーがいればビジネスは成立する「5 % ルール」として知られる。
問18 コンバージョン率
インターネット広告の効果指標として用いられるコンバージョン率の説明はどれか。
解答と解説
【答え】エ
コンバージョン率(CVR : Conversion Rate)は,ウェブサイトを訪れたユーザーのうち,コンバージョン(サイトでの成果)に至ったのがどのくらいの割合かを示す指標である。たとえば,インターネット広告ならクリック数が 100 回で,そのうちコンバージョン数が 1 件であれば,コンバージョン率は 1 % となる。
問19 SL 理論
ハーシィ及びブランチャードが提唱する SL 理論の説明はどれか。
解答と解説
【答え】イ
SL(Situational Leadership)理論は,ハーシィ及びブランチャードが提唱した,教示的,説得的,参加的,委任的の四つに,部下の成熟度レベルによって,リーダシップスタイルを分類した理論。部下の成熟度によって,マネジメントする人間のリーダシップがどのように変化するかを説明するものである。リーダシップをタスク(仕事)志向,人間関係志向の 2 軸に分けて有効なリーダシップを示している。
アは「ジョハリの窓と呼ばれる心理学の理論」,ウは「ナレッジマネジメントの理論」,エは「マズローの欲求 5 段階説の理論」の説明である。
問20 線形計画法
製品 X,Y を 1 台製造するのに必要な部品数は,表のとおりである。製品 1 台当たりの利益が X,Y ともに 1 万円のとき,利益は最大何万円になるか。ここで,部品 A は 120 個,部品 B は 60 個まで使えるものとする。
製品 X | 製品 Y | |
---|---|---|
部品 A | 3 | 2 |
部品 B | 1 | 2 |
解答と解説
【答え】ウ
製品 X の個数を $x$,製品 Y の個数を $y$ とすると,部品 A と B の制約により次式が成り立つ。
\[ 3x+2y \le 120 \] \[ x+2y \le 60 \]利益が最大となるのは,上記の 2 式が交わる点であり,$x=30$,$y=15$ となる。なお,利益は 30 + 15 = 45 万円である。
問21 トラブル対策
利用者とシステム運用担当者によるブレーンストーミングを行って,利用者の操作に起因する PC でのトラブルについて,主要なトラブルごとに原因となったと思われる操作,利用状況などを拾い上げた。トラブル対策を立てるために,ブレーンストーミングの結果を利用して原因と結果の関係を整理するのに適した図はどれか。
解答と解説
【答え】イ
特性要因図では,結果とそれに影響を及ぼすと思われる要因との関連を整理し,体系化して,魚の骨(フィッシュボーンチャート)のような形にまとめる。
問22 営業利益
期末の決算において,表の損益計算資料が得られた。当期の営業利益は何百万円か。
項目 | 金額 |
---|---|
売上高 | 1,500 |
売上原価 | 1,000 |
販売費及び一般管理費 | 200 |
営業外収益 | 40 |
営業外費用 | 30 |
解答と解説
【答え】イ
当期の営業利益は,次式で求められる。
なお,営業利益に営業外収益を加算して営業外費用を控除すると,経常利益が求まる。
問23 国税関係帳簿
国税関係帳簿を磁気媒体で保存する場合,法律で規定されているものはどれか。
解答と解説
【答え】ア
国税関係帳簿を磁気媒体で保存する場合,あらかじめ所轄の税務署長の承認を受けることが必要となる,と法律で規定されている。
電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律 第4条 国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存等
保存義務者は,国税関係帳簿の全部又は一部について,自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する場合であって,納税地等の所轄税務署長(財務省令で定める場合にあっては,納税地等の所轄税関長。以下「所轄税務署長等」という。)の承認を受けたときは,財務省令で定めるところにより,当該承認を受けた国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存をもって当該承認を受けた国税関係帳簿の備付け及び保存に代えることができる。
以下,省略
問24 Man-in-the-Browser 攻撃
Man-in-the-Browser 攻撃に該当するものはどれか。
解答と解説
【答え】イ
中間者(Man-in-the-middle)攻撃は,通信を行う二者間に第三者が割り込み,通信を盗聴したり,通信に介入したりする攻撃手法である。中間者攻撃が成立した場合,通信内容の盗聴,内容の差し替えなど,さまざまな攻撃が可能になる。DNS における中間者攻撃には,クライアントの DNS 問い合わせを盗聴し,本物の応答がクライアントに届く前に偽の応答を送り込むことで内容を差し替えるといったものがある。
問25 ディジタル証明書
ディジタル証明書が失効しているかどうかをオンラインでリアルタイムに確認するためのプロトコルはどれか。
解答と解説
【答え】ウ
OCSP(Online Certificate Status Protocol)は,鍵の漏えい,失効申請の状況をリアルタイムに反映するプロトコルである。(ディジタル証明書が失効しているかどうかをオンラインで確認するためのプロトコルである。)
OCSP クライアントと OCSP レスポンダとの通信では,ディジタル証明書のシリアル番号,証明書発行者の識別名(DN)のハッシュ値などを OCSP レスポンダに送信し,その応答でディジタル証明書の有効性を確認する。