目指せ!エネルギー管理士 電気分野

2021年8月13日作成,2023年12月31日更新

令和3年度 問題5 自動制御及び情報処理

(1) 定値制御のフィードバック制御系

プロセス制御を行うため,図 1 に示す定値制御のフィードバック制御系を考える。ここで,$P(s)$ は安定な制御対象であり,$K(s)$ は制御器,$r$ は目標値,$y$ は制御量である。この制御系において,$K(s)$ として PID 制御器を用いる際に,図 2 のオペアンプで構成される電子回路で実現することを考える。

オペアンプは理想素子であるとして,入力インピーダンスは無限大とする。図 2 の $V_\text{i}$ は入力電圧,$V_\text{O}$ は出力電圧,$R_1$,$R_2$ は抵抗,$C_1$,$C_2$ はコンデンサ,$V_\text{+}$ はオペアンプの非反転入力電圧,$V_\text{-}$ は反転入力電圧,$I_\text{i}$ は入力端における電流,$I_\text{O}$ は帰還回路の電流である。また,$C_1$,$C_2$ の電圧の初期化機能も持っているものとするが,図 2 では省略する。

図 1 定値制御のフィードバック系
図 1 定値制御のフィードバック系
図 2 オペアンプで構成される電子回路
図 2 オペアンプで構成される電子回路

1) 抵抗 $R_1$ とコンデンサ $C_1$ の並列接続部分の合成インピーダンス $Z_\text{i}$ と,抵抗 $R_2$ とコンデンサ $C_2$ の直列接続部分の合成インピーダンス $Z_\text{O}$ を,ラプラス演算子 $s$ を用いて表現すると,$Z_\text{i}$ 及び $Z_\text{O}$ は次式で表される。

\[ Z_\text{i}=\frac{R_1}{R_1 C_1 s +1} \] \[ Z_\text{O}=\frac{R_2 C_2 s + 1}{C_2 s} \]

2) ここで,オペアンプは理想素子であり,$V_\text{+}=V_\text{-}=0$,$I_\text{i}=I_\text{O}$ が成り立つ。このとき,入力電圧 $V_\text{i}$ のラプラス変換を $V_\text{i}(s)$,出力電圧 $V_\text{O}$ のラプラス変換を $V_\text{O}(s)$ とすると,$V_\text{i}(s)$ から $V_\text{O}(s)$ までの伝達関数 $G(s)$ は次式で表される。

\[ G(s)=\frac{V_\text{O}(s)}{V_\text{i}(s)}=-\frac{R_1 C_1 R_2 C_2 s^2 + (R_1 C_1 + R_2 C_2 )s + 1}{R_1 C_2 s} \]

3) 次に,このオペアンプ回路を制御系の PID 制御器として使用するために,2) で得られた伝達関数の符号を反転し,$\displaystyle K(s)=-\frac{V_\text{O}(s)}{V_\text{i}(s)}=K_1 +\frac{K_2}{s}+K_3 s$ とする。このとき,$K_2$ は $\displaystyle \frac{1}{R_1 C_2}$,$K_3$ は $R_2 C_1$ となる。

4) オペアンプを PID 制御器として動作させたとき,フィードバック系において外乱による定常偏差を低減するのは積分動作であり,そのゲインは $K(s)$ の式中の $K_2$ である。

1) 合成インピーダンス

抵抗 $R_1$ とコンデンサ $C_1$ の並列接続部分の合成インピーダンス $Z_\text{i}$ は,次式で求められる。

\[ Z_\text{i} = \frac{R_1 \times \frac{1}{C_1 s}}{R_1 + \frac{1}{C_1 s}} = \frac{R_1}{R_1 C_1 s + 1} \]

抵抗 $R_2$ とコンデンサ $C_2$ の直列接続部分の合成インピーダンス $Z_\text{O}$ は,次式で求められる。

\[ Z_\text{O} = R_2 + \frac{1}{C_2 s} = \frac{R_2 C_2 s + 1}{C_2 s} \]

2) 伝達関数 $G(s)$

$V_\text{i}(s)$ から $V_\text{O}(s)$ までの伝達関数 $G(s)$ は,次式で求められる。

\[ G(s) = \frac{V_\text{O}(s)}{V_\text{i}(s)}=-\frac{Z_\text{O}}{Z_\text{i}}=-\frac{\frac{R_2 C_2 s + 1}{C_2 s}}{\frac{R_1}{R_1 C_1 s + 1}} \] \[ G(s)=-\frac{(R_2 C_2 s + 1)(R_1 C_1 s + 1)}{R_1 C_2 s} = -\frac{R_1 R_2 C_1 C_2 s^2 + (R_1 C_1 + R_2 C_2)s + 1}{R_1 C_2 s} \]

3) PID 制御器の係数

PID 制御器の係数は,次式の両辺を比較して求める。

\[ K(s)=-\frac{V_\text{O}(s)}{V_\text{i}(s)}=K_1 +\frac{K_2}{s}+K_3 s = \frac{R_1 C_1 + R_2 C_2}{R_1 C_2} + \frac{1}{R_1 C_2}\frac{1}{s} + R_2 C_1 s \]

(2) 情報セキュリティ管理

企業や組織が保有している情報資産の安全性を確保するためには,情報セキュリティ管理が重要である。

1) その三要素は機密性,完全性,可用性であり,そのうち完全性とは情報が破壊,改ざん,消去されない状態を確保することである。

2) 情報資産の安全性を脅かす脅威を排除するために企業や組織が作成する規定を情報セキュリティポリシーと呼ぶ。

3) セキュリティを確保する対策としては,暗証暗号やパスワード認証などを使用するユーザー認証と,ファイアウォールなどを利用するアクセス制御がある。

C.I.A. とは,情報セキュリティの根幹を成す重要な要素である "Confidentiality"(機密性),"Integrity"(完全性),"Availability"(可用性)の頭文字を繋げた標語である。

1992年に OECD(経済開発協力機構)が「情報システムのセキュリティに関するガイドライン」(Guidelines for the Security of Information Systems)で初めて示したもので,その後様々な規格やガイドラインにに引用された。

情報セキュリティポリシー(information security policy)とは、企業などの組織が取り扱う情報やコンピュータシステムを安全に保つための基本方針や対策基準などを定めたもの。広義には、具体的な規約や実施手順、管理規定などを含む場合がある。

ファイアウォール
ファイアウォールとは、ネットワークの境界に設置され、内外の通信を中継・監視し、外部の攻撃から内部を保護するためのソフトウェアや機器、システムなどのこと。

(3) 半導体メモリ

半導体メモリは読み書きが可能な RAM と,読み取り専用の ROM に分類される。さらに RAM の種別としては,高速で消費電流も少ないが大容量化が困難な SRAM と,時間が経つと記憶内容が消えてしまうためリフレッシュ動作が必要な DRAM などがある。

RAM は Ramdam Access Memory の略,ROM は Read Only Memory の略である。

RAM は,素子の構造によって,主記憶装置に用いられるDRAM(Dynamic RAM)と,キャッシュメモリなどに用いられる SRAM(Static RAM)がある。

表 RAM の種類
種類 特徴
DRAM
  • 構造が簡単なため,安価に大容量化が可能
  • 記憶内容を保持するために一定時間ごとにリフレッシュ(再書込み)[1]が必要
  • リフレッシュ動作により速度は低下する
SRAM
  • 構造が複雑なため,大容量化には向かない
  • 2 つの安定状態を持つ順序回路(フリップフロップ回路)で 1 ビットの情報を記憶し続けることが可能
  • リフレッシュ動作が不要なため,DRAM よりも高速

本稿の参考文献

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