開閉サージ
はじめに
開閉サージ(switcing surge)は基本的に遮断器を投入するときの投入サージ(closing surge)と,開放するときの遮断サージ(clearing surge)とに分類される。前者はさらに無負荷送電線を充電するときの投入サージと,事故などを遮断した後,再度遮断器を投入するときの再投入サージ(reclosing surge)に分けられる。これはたんに線路残留電圧(初期条件)が異なるに過ぎない。遮断サージとしては線路事故時の故障電流を遮断するときの故障遮断サージ,無負荷変圧器の励磁電流を遮断するときの誘導性小電流遮断サージなどが代表的である。
- 超高圧以上の送電線における遮断器の投入により高いサージ電圧が発生する
- 無負荷送電線の充電電流を遮断する際に遮断器の極間絶縁が不十分であるとき,再点弧を起こし,高いサージ電圧を発生させる
- 変圧器の励磁電流を消弧性の強い遮断器で遮断すると電流裁断を生じ,変圧器のインダクタンスに応じた過電圧を発生する
- コンデンサバンクの投入・遮断
- 事故の遮断
- 断路器の開閉
- 直列コンデンサの保護ギャップの放電
- 地絡サージ
開閉過電圧(switching overvoltage)
開閉機器の開閉に伴い,その動作前の電圧波高値を超えて電線路に現れる過渡的電圧をいい,その最高電圧の波高値で表す。
送電線の体格・コストを決定付けるクリアランス(clearance)[1]は,一般的に開閉サージ絶縁レベルに基づいている。地絡サージによる過電圧は,送電線線路中央部などで抑制することは容易ではない。これらのことを考慮し,1 000 kV 設計送電線では,線路の絶縁レベルを地絡サージにより決定し,これ以外の開閉サージを抵抗投入・抵抗遮断にて地絡サージレベルまで抑制することで,合理的な絶縁設計としている。
開閉過電圧には,対地と相間の過電圧があるが,そのうち相間の開閉過電圧は,下図のように三相一括形 GIS において,その相間距離の決定要因となるので非常に重要になる。
- 相間絶縁距離は,相間 SIWV(Switching Impulse Withstand Voltage)で決まる。
- 対地絶縁距離は,対地 LIWV(Lightning Impulse Withstand Voltage)で決まる。

JEC 規格においては確定論的手法で試験電圧値を決定しており,過電圧解析条件を過酷に設定し,十分な裕度を持った最大過電圧値を求めている。得られた過電圧値には裕度の上乗せはせず,直上の規格値を選定している。
以上のことから,試験電圧の検討に当たっては,十分過酷な解析条件を設定する必要がある。
GIS の相間寸法は開閉過電圧で決定されるが,相間開閉サージによる絶縁事故の報告はない。適切な相間の試験電圧が設定されているとの見方とともに,裕度をとりすぎていないかという見方もある。
- 2 つの導電性部分間の,空間を通る最短距離。絶縁空間距離ともいう。
開閉サージ(switching surge)
電線路を進行する開閉過電圧。送電線のインダクタンスや変圧器による誘導電流や,送電線のキャパシタンスによる電荷の放電などに起因する。
遮断器,断路器等の開閉操作によって,系統のある地点の相と大地間あるいは相間に発生する過電圧をいう。代表的なものとして,遮断器の投入過電圧(投入サージ)と遮断過電圧(遮断サージ)および断路器サージとがある。線路の地絡やその回復時に発生するサージ性過電圧,発生波形が類似しており,かつ地絡故障は回路の開閉と考えられるため,広義の開閉過電圧に含める場合がある。開閉過電圧の波形や波高値は,線路長,系統構成,電源容量,中性点の接地方式等に影響されるが,その持続時間は,百 μs から数 ms である。送電線の絶縁強度は電圧波形の影響を大きく受け,とくに開閉サージに対して最も弱い特性を示す。このため,開閉サージに対する絶縁は送電線絶縁設計の基本要因の一つである。
(出典)「電気事業事典」電気事業講座2008 別巻((株)エネルギーフォーラム 発行)
投入(再投入)サージ
無負荷送電線で遮断器を投入したときに発生する過電圧を投入サージ過電圧という。遮断器投入時の線路電圧初期値が 0 でない場合を再投入サージ,初期値 $V_0$ を残留電圧と呼ぶ。単相線路で電源インピーダンス,線路での減衰(波形変歪)および残留電圧を無視すると,線路終端の最大過電圧は理論的に 2 p.u. となる。実線路は多相であるため,相互誘導,遮断器各相の不揃い,線路残留電圧などにより過電圧は 4 p.u. に達することもある。投入サージ波形の波頭長は線路往復伝搬時間 $2 \tau$ よりやや大きい程度である。
開閉サージ倍数(switching surge ratio)
JEC-0102-2010 では,開閉サージ過電圧の場合,1 [p.u.] を次のように定義する。
公称電圧と最高電圧との関係は,下表の通り。
公称電圧 [kV] | 最高電圧 [kV] |
---|---|
66 | 69 |
77 | 80.5 |
154 | 161 |
275 | 287.5 |
500 | 525 |
電気設備の技術基準の解釈の解説 第1条【用語の定義】
- 電線路の公称電圧
- その電線路を代表する線間電圧
- 電線路の最高電圧
- その電線路に通常発生する最高の線間電圧
投入サージ過電圧の一例
500 kV 送電線を無負荷充電したとき,線路終端で発生する過電圧をシミュレーションする。線路モデルは,下図に示す 500 kV 水平配列 1 回線送電線の装柱を想定し,周波数依存線路モデルは,周波数範囲が 0.1 Hz から 10 MHz で 400 点,大地抵抗率を 200 Ωm として線路モデルを作成した。

線路モデルを比較するための,解析モデルを下図に示す。交流電源として,線間電圧 500 kV(実効値)の電源,10 mH のリアクタンス,時刻 5 ms で投入するスイッチに前述の線路モデルを接続し,線路の終端における電圧を比較する。下図では 1 相のみを記載するが,実際には 3 相で解析を行っている。

500 kV 送電線路終端で発生する投入過電圧の大きさを下図に示す。青色で示す R 相の電圧の大きさが,2 p.u. に達していることがわかる。線路モデルを解析するモデルでは,R 相の電源電圧が最大となるとき,スイッチを投入しているためである。

投入サージの発生原理
投入サージによる過電圧は,大別して,電源側のインダクタンスと送電線のキャパシタンスの振動現象として生じるものと,送電線上を伝搬する進行波が開放条件である遠方端で正反射することにより生じるものの 2 種類がある。前者は,ケーブル線路など,線路のインダクタンスが小さくキャパシタンスが大きいことで,線路を集中条数のキャパシタンスにみなせる場合に生じる。一方,後者は,長距離の架空送電線など,線路の分布定数的特性が顕著と成る場合に生じる。
電源側のインダクタンスと送電線のキャパシタンスの振動現象
変電所にある遮断器を投入し,無負荷の送電線を充電するものとする。遮断器より上位系の電源を正弦波電圧原 $e(t) = E\sin{(\omega t + \theta)}$ とこれに直列に接続されたインダクタンス $L$ で模擬する。送電線については,集中定数のキャパシタンスにみなせると仮定し,キャパシタンス $C$ で模擬する。以上の等価回路を図示すると,下図となる。

電圧の初期位相 $\theta$ が 90 °,送電線の残留電圧が 0 の条件で,$t$ = 0 で遮断器を閉じたときの送電線の電圧 $v$ は次式で与えられる。
\[ v(t) = \frac{E}{1 - \omega^2 LC} (\cos{\omega t} - \cos{\frac{1}{\sqrt{LC}}t}) \]上式では,第 1 項が定常的な電源電圧,第 2 項が $L$ と $C$ による振動に対応している。なお,上記の計算では,電源側および送電線の損失を無視したため,第 2 項は減衰しないが,実際には損失により減衰していく。
一例として,$\omega = 2\pi 50$ [rad/s],$L = 43.7$ [mH],$C = 6.6$ [μF](500 kV 送電線 約 60 km に相当)の場合について,電源電圧波形と送電線電圧波形は下図となる。電源電圧に $LC$ 振動による電圧が重畳している様子が見て取れる。通常,$\omega^2 LC$ の値は 1 より十分小さいため,送電線電圧波形のピーク値は 2 p.u. に達することがわかる。

送電線上を伝搬する進行波が開放条件である遠方端で正反射することにより生じるもの
先と同様に,変電所にある遮断器を投入し,無負荷の送電線を充電するものとする。遮断器より上位側の電源を正弦波電圧源 $e(t) = E \sin{(\omega t + \theta)}$ とこれに直列に接続されたインダクタンス $L$ で模擬する。送電線については,線路長 $l$,伝搬速度 $c$,特性インピーダンス $Z_0$ の無損失分布定数回路で模擬する。これを等価回路として図示すると下図となる。

電源の初期位相 $\theta$ が 90 °,送電線の残留電圧が 0 の条件で,$t = 0$ で遮断器を閉じたとする。このとき,電源の電圧はステップ状に立ち上がるため,$t=0$ の直後ではこれを振幅 $E$ のステップ波と考える。送電線始端の電圧 $v_1$ の波形は,このステップ波を $L$ と $Z_0$ で分圧したものであるから,時定数 $L/Z_0$ でなまった振幅 $E$ のステップ波形となる。この $v_1$ の波形が進行波として送電線上を伝搬し,伝搬時間 $\tau = l/c$ 後には終端に到達する。開放端において電圧波は正反射し,2 倍の電圧を生じるから,このとき,送電線の終端では $2E$(2 p.u.)の電圧が発生することになる。さらに時間 $\tau$ 後には,正反射した進行波は始端に到達する。電源端のインピーダンスは $L$ のみで小さいため,この電圧波は始端でほぼ負反射し(電圧源の内部抵抗は 0 Ω),以降,往復反射を繰り返すことになる。$t=0$ の直後では電源電圧をステップ波と考えたが,長時間で見ると正弦波状に変化するから,実際に送電線に発生する電圧は,正弦波状の電源電圧に上記の往復反射が重畳したものとなる。
一例として,架空送電線 60 km 相当を想定し,$\omega = 2\pi50$ [rad/s],$L=43.7$ mH,$l=60$ km,$c=300$ m/s,$Z_0 = 400$ Ω の場合について,終端電圧 $v_2$ の波形を計算した結果を下図に示す。終端に約 2 p.u. のピーク電圧をもたらす往復反射が,電源電圧に重畳している様子が見て取れる。

遮断サージ
無負荷変圧器の励磁電流あるいはリアクトル負荷電流などの小さな誘導性小電流を,電流零点前に強制的に遮断した場合,$\displaystyle \frac{\text{d}i}{\text{d}t}$ がきわめて大となるため $\displaystyle L \frac{\text{d}i}{\text{d}t}$ で定まる大きな過電圧が発生する。これを誘導性小電流遮断サージと呼び比較的大容量の他力形高速遮断器を用いる場合に生じやすい。負荷を急激に遮断した場合にも,遮断直後にサージ過電圧が発生する。これを負荷遮断サージと呼び,1 000 kV 以上の UHV 系統では問題となることもある。
遮断サージの種類
遮断サージは,被遮断物によってそれぞれ特異な現象を発生する。
進み小電流(線路の充電電流)遮断
実際の遮断器技術で説明を避けて通ることができないのが再発弧現象(reigniton)と再点弧現象(restriking)である。そして,進み小電流遮断では,その再発弧や再点弧が発生しやすい状況となる。再発弧はさほど深刻な問題とはならないが,再点弧は線路や変電所機器の対地電圧を脅かし,また遮断器の遮断失敗に直結する極めて過酷な現象である。
無負荷送電線路充電電流やコンデンサバンクの電流遮断に際し,遮断器の再点弧がなければ 1 [p.u.],再点弧 1 回のときは 3 [p.u.] 近くになる。
遅相電流遮断
無負荷変圧器またはリアクトルの励磁電流遮断に伴い,インダクタンス中に蓄積されているエネルギーが静電容量と共振して高周波振動を発生する。
地絡故障遮断
近距離故障のときは,故障電流が大きく,再起電圧の上昇率 [kV/μs] が大きくなるので,遮断器の消弧能力が不足して遮断できなくなる例があった。遮断器の進歩,特に SF6 ガス遮断器の普及により,最近では発生しなくなった。
開閉サージ許容電圧の判定
発生する開閉サージは,交流電圧の位相と遮断器接点の開閉時刻のばらつきによって,発生する電圧が変化する。一般には累積発生頻度 2 % の電圧に耐えるように絶縁設計すれば足りる。その理由は,計算の対象としている回路条件がきわめて苛酷な場合を選んでいること,最大サージが発生するのは無負荷送電線の投入であるから,まれに線路地絡が発生しても電力系統運用に重大な支障を生じないことがあげられる。
下図に 500 kV 送電線(約 60 km)で遮断器の投入時間を変え,発生する線路端の過電圧を求め,その最大値の累積頻度分布を示す。シミュレーションでは,遮断器を投入する時間は 100 ms を中心に ±20 ms 内で分布するものとしている。この例では,累積発生頻度 2 % の電圧は,約 2.7 p.u. である。

2 % 値の意味と最大値を採用する理由
2 % 値が規格検討のベースとして採用できれば,最大値よりも低いので,相間 SIWV はさらに低減できる。しかし,2 % 値ではなく,最大値を採用するのが適切である。その理由及び 2 % 値の意味について,以下に説明する。
- 2 % 値とは,正規分布における 2σ 値である(2σ = 2.28 %)。開閉過電圧解析では,200 回の開閉を実施しているので,2 % 値を求めることができる。
- 標準偏差 σ が分かれば,2.4σ 値(1 % 値),あるいは,非常に過酷な 3σ 値(0.13 %)を計算で求めることもできる。それを試験電圧検討のベースにもできる。
- 2 % 値を規格値検討のベースにはできない。発生確率 1/50 の過電圧値であり,十分に過酷とは言えない。
- 実際には避雷器があると,開閉過電圧は正規分布にはならない。
- そこで最大値を試験電圧のベースとして採用する。2 % 値は,最大値のモノサシとして,その過酷度を見る目安となる。200 回の開閉であるから,最大値は 0.5 % 値ということになる。
投入サージの抑制
抵抗投入方式
抵抗投入方式は,下図のように,まず抵抗 $R$ を通して線路を課電し,一定時間後に抵抗 $R$ を短絡する。投入サージは,抵抗接点(Resistance Contact)を閉路した瞬間と,主接点(Main Contact)を閉路した瞬間(すなわち,抵抗 $R$ を短絡した瞬間)の 2 回発生する。投入抵抗 $R$ が大きいほど,最初のサージが小さく,逆に抵抗短絡時のサージが大きくなる。両方のサージを案分して低減するためには,数百 Ω が最適となるといわれている。
開閉過電圧抑制のために採用される遮断器の投入・遮断抵抗は小さな抵抗値を採用するほど開閉過電圧を抑制できるが,熱処理容量の増大によりコスト高となることから,開閉絶縁設計レベルの決定においては適切な抵抗値の選定が必要となる。具体的には,抵抗投入時に送電線に地絡事故が継続している場合,抵抗の発熱量は $E^2 /R$ になる。抵抗の熱容量の点からは $R$ が大きいほうが有利であるから,投入抵抗 $R$ は大きめ(例として 1 kΩ)に選定する。

下図に抵抗投入方式遮断器による投入サージ過電圧抑制の一例を示す。例では,約 10 ms で抵抗接点を閉路とし,抵抗 $R$ = 1 [kΩ] を通して線路を荷電した。その後,約 100 ms で主接点を閉路している。投入サージ過電圧の一例と抵抗投入方式を採用する以外は,同等の条件でシミュレーションしており,抵抗投入方式とすることで,投入サージ過電圧を抑制できていることがわかる。

遮断器の投入時間
1 000 kV 設計送電線で各種開閉過電圧が解析されたとき,抵抗投入遮断器の設定条件は次のようなものであった。
抵抗接点投入から 10 ms 後に主接点を投入する。さらに,投入時の交流電圧位相,3 相間の投入タイミングのばらつき,および抵抗挿入時間のばらつきによる過電圧の変化も考慮し,ランダム 200 回投入における最大値にて評価する。なお,遮断器の 3 相投入時間のばらつきは正規分布とし,標準偏差を 1 ms とする。
同期投入方式
遮断器の投入操作をしてから,接点が閉路するまでの時間のばらつきは,0.5 ~ 1.5 ms という実測値がある。同期投入方式には,抵抗投入なしの遮断器の投入時間を制御する方法と,抵抗投入遮断器の抵抗短絡時期を制御する方法の 2 種類がある。
遮断器投入時の各相の投入ばらつきは開閉サージを統計的に扱う場合の重要な因子であるので,実測結果を解析し,基準投入時刻に対して 0.5 〜 1.5 ms(平均的には 1 ms 前後)の標準偏差をもつ正規分布でばらつくと推定されることを示した。
「電力系統における開閉サージ性過電圧の検討」
抵抗投入なしの遮断器の投入時間を制御する方法
遮断-再投入の際に線路側に残留電圧がある。そのうえ,3 相再投入のときには先行して閉路する他の 2 相からの誘導電圧が残留電圧と重畳するため,最後に投入される相の線路側電圧は,投入直前(数 ms ~ 数十 ms 前)に急変する。このため,線路側の(残留電圧+誘導電圧)の組合せいかんによっては,やや大きな投入サージが発生する確率が残ることとなる。
抵抗投入遮断器の抵抗短絡時期を制御する方法
投入抵抗を短絡する最適位相は,投入抵抗の両端の電圧がゼロになる移送を目標とする。被投入線路全長の静電容量を $C$ とすると,投入抵抗の両端の電圧と変電所母線電圧の位相差は常に $1/\omega CR$ で定まる。$R$ と $C$ は既知であるから,変電所母線電圧の位相を計測すれば,最適な短絡時期を知ることができる。
線路側避雷器の設置
変電所の引込口遮断器の線路側に避雷器を設置することが多くなった。その目的は変電所の引込口の遮断器が開路中に線路側から雷サージが侵入してきたときの遮断器極間絶縁の保護,およびガス絶縁変電所の引込口近辺の雷サージ保護である。雷サージ保護の目的で,制限電圧を低減した避雷器を設置すると,開閉サージでも避雷器が動作して開閉サージが低減する。
1 000 kV 送電線においては,開閉サージを 1.6 p.u. に抑制するため,線路両端に避雷器を設置することが不可欠である。
線路側並列リアクトルの設置
三相遮断の際の線路残留電荷を除去するのに効果がある。三相遮断後は送電線路の静電容量と並列リアクトルのインダクタンスが共振し,減衰振動電圧を発生する。これを急速に減衰させるため,並列リアクトルの接地側端子とアース間に制動抵抗を挿入する方法がとられる。
開閉サージ電圧
電気学会送電線絶縁設計要綱調査専門委員会がとりまとめた「開閉サージに対する所要がいし個数および絶縁距離」に記載されている開閉サージ電圧を下表に示す。
この開閉サージ電圧をもとに,がいし個数,アークホーン間隔,絶縁間隔等が定められている。
公称電圧 [kV] | 66 | 77 | 154 | 275 | 500 |
---|---|---|---|---|---|
最高許容電圧 $U_m$ [kV] | 72 | 84 | 168 | 300 | 525 |
対地電圧波高値 $U_m \times \sqrt{2/3}$ [kV] | 58.8 | 68.6 | 137 | 225 | 429 |
開閉サージ倍数 $n$ [倍] | 3.3 | 3.3 | 3.3 | 2.8 | 2.0 |
開閉サージ電圧 $U_m \times \sqrt{2/3}\times n$ [kV] | 194 | 226 | 452 | 686 | 858 |
開閉インパルス試験電圧
遮断器の開閉操作などによって系統のある地点に発生する過電圧で,一般には波頭長が 20 ~ 5 000 μs のサージ性過電圧を開閉過電圧と呼び,こう長が長い送電線を遮断器で投入する場合に最も過酷な過電圧が発生する。開閉過電圧解析では遮断器の投入条件や線路長などに対して将来系統を考慮した上で過酷条件となるよう設定し,多数回の投入シミュレーションを実施して過電圧レベルを決定する。
公称電圧 [kV] | 相間開閉インパルス耐電圧値 [kV] | |
---|---|---|
標準値 | 低減値 | |
66 | 400 | 350 |
77 | 450 | 400 |
110 | 650 | 550 |
154 | 850 | 800 |
187 | 750 | - |
220 | 850 | - |
275 | 1 050 | - |
500 | 1 550 | - |
長ギャップに対するフラッシオーバ電圧
長ギャップに対するフラッシオーバ電圧の $V-t$ 特性は,数十 ~ 数百 [μs] で最小値をとる。これを U 特性と呼んでいる。この U 特性の発見をきっかけに開閉サージを模擬する開閉インパルス電圧標準波の波頭長が 250 [μs] と定められた。開閉インパルス電圧の長ギャップ放電に特有な性質は, U 特性以外にもいくつか知られている。
その一つが飽和特性,すなわちギャップ長に比例してフラッシオーバ電圧が増加せず飽和傾向が顕著になる性質である。 500 [kV] 以上の電力系統で現れる開閉サージの大きさがこの飽和傾向の強まるところと一致している。このため 500 [kV] 以上の送電線では開閉サージ倍数が大きいと絶縁間隔が大きくなり鉄塔も大形化して建設費も増大するため,高性能避雷器の設置,抵抗付き遮断器の採用などの開閉サージ抑制対策が行われる。
遮断性能や開閉現象に関する主な用語
系統の開閉には必ず開閉サージ電圧が発生する。遮断器の責務は回路の開閉だけではない。開閉時に発生する開閉サージを一定のレベル以内に抑制することも絶縁協調の基礎となる遮断器の重要な責務である。ここに,遮断性能や開閉減少に関する主な用語を説明する。
- 過渡回復電圧(TRV : Transient recovery voltage)
- 遮断器の遮断直後にその遮断部の両接触子間に現れる過渡電圧をいう。ガス遮断器の場合,遮断して電流が零値となった直後の数 μs は,極間に導電性の高い高温ガスが存在しているため,急しゅんな過渡回復電圧が加わると残留電流とよばれる微小電流がアークの存在していた空間に流れる。この電流によって空間に注入されるエネルギーがガスの熱伝導などによる冷却能力を上回らないようにして,熱的再発弧が発生することがないようにしている。さらにその後も極間の絶縁耐力が過渡回復電圧を常時上回ることで遮断過程が完了する。
- 固有過渡回復電圧(Ideal transient recovery voltage)
- 正弦波の電流がその電流のゼロ時点でアークなどを発生することなく理想的な遮断をした場合の過渡回復電圧。
- 回復電圧(Recovery voltage)
- 遮断後に遮断点間に現れる商用周波電圧をいう。
- 過渡回復電圧波高値(Peak value of transient recovery voltage)
- 過渡回復電圧波形のいくつかの極大値のうちの最大値をいう。
- 過渡回復電圧初期波高値(Initial peak value of transient recovery voltage (the first peak value))
- 再起電圧第 1 波の極大値をいう。
- 過渡回復電圧周波数(Frequency of transient recovery voltage)
- 過渡振動電圧成分の振動周波数をいう。回路条件によっては複数の振動周波数が含まれる。
- 過渡回復電圧振幅率(Amplitude ratio of transient recovery voltage)
- 過渡回復電圧波高値と回復電圧波高値との比をいう。
- 過渡回復電圧上昇率(RRRV : Rate of Raise of Recovery Voltage)
- 過渡回復電圧の初期部分の立上り速度で,kV/μs で表す。
- 再発弧(Reignition of arc)
- 遮断電流が遮断された直後,商用周波数の 1/4 サイクル以内の時点で遮断器の両接触子間に再び電流が流れることをいう。
- 再点弧(Restriking of arc)
- 遮断電流が遮断された直後,商用周波数の 1/4 サイクル以後の時点で遮断器の両接触子間に再び電流が流れることをいう。再発弧は許容されるが再点弧は深刻な現象となる。
- 低周波消弧(Low-frequency extinction)
- 故障電流(商用周波)の電流ゼロ点でのアーク消弧。
- 高周波消弧(High frequency extinction)
- 再発弧(または再点弧)後の自由振動電流ゼロ点でのアーク消弧。
- 開閉インパルス耐電圧試験値(SIWV : Switching Impluse Withstand Voltage)
- EMTP や TNA(Transient Network Analyzer)による開閉サージ過電圧の解析結果を参考に決定される値。
参考文献
- 雨谷 昭弘 著,「分布定数回路論」,コロナ社,1990 年
- 有働 龍夫 著,「電力系統絶縁工学 - サージと事故防止 -」,オーム社,1999 年
- 長谷 良秀 著,「電力技術の実用理論 発電・送変電の基礎理論からパワーエレクトロニクス応用まで 第 3 版」,丸善出版,2015 年
- 非有効接地系統および UHV 系統の絶縁協調技術協同研究委員会 編,「非有効接地系統および UHV 系統の試験電圧の考え方 - JEC-0102-2010 技術解説 -」,電気学会技術報告,No. 1258(2012 年 8 月)
- 尾野 孝夫,「電力系統における開閉サージ性過電圧の検討」,電力中央研究所,総合報告 : I21,1985年1月
- 野田 琢 他,「電力系統の瞬時値解析・過渡現象解析手法の調査と XTAP による解析例(その 1 )-開閉サージ性過電圧の解析-」,電力中央研究所 研究報告 H12005,2013 年 6 月
- 電気学会送電線絶縁設計要綱調査専門委員会 編,「架空送電線路の絶縁設計要綱」,電気学会技術報告,Ⅱ 分,第 220 号(1986 年 5 月)
- 平成24年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力科目 問6「開閉サージと長ギャップに対するフラッシオーバ電圧」