令和2年度 第2種 電力

2020年9月19日作成,2021年12月4日更新

目次

合格基準は,90 点満点換算で 54 点以上,受験者は 4,118 人,合格者数は 2,873 人で,合格率は 69.8 % だった。

  1. 水素冷却発電機の水素ガス制御方式
  2. 架空送電線路の雷害対策
  3. 電力系統の短絡電流
  4. 架空配電系統の環境調和設備
  5. 水路式発電機
  6. 電池電力貯蔵設備
  7. 発変電所に設置する開閉設備

問1 水素冷却発電機の水素ガス制御方式

水素冷却発電機は水素ガスの漏えいや,(1) の侵入を防止するため,水素ガスシール装置を備えている。水素ガスシールは (2) とシールケーシング内に取り付けた (3) の間隙に,機内水素ガス圧力と (4) 圧力の油を供給し,この油が水素ガス側と (1) 側に流出し続けることで水素ガスが機外に漏洩するのを防止している。

シール油の制御方式のうち,(5) 方式は,使用後のシール油をそのまま供給する方式で,シール部と発電機本体の間に隔室を設け,ここから純度の低い水素ガスを排出している。

問1 解答と解説

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水素冷却発電機とは,回転子および固定子を水素で冷却する発電機である。タービン発電機のように高速かつ大容量になると,冷却効果および損失の観点から水素冷却方式が採用される。

(1)

正解は(ハ)空気である。

(2)

正解は(ト)回転子軸である。

(3)

正解は(ル)シールリングである。

(4)

正解は(ヘ)比べ高いである。

(5)

正解は(リ)連続掃気である。

参考文献

問2 架空送電線路の雷害対策

架空送電線路の雷害対策として,送電線への (1) を防止するために架空地線を設置することが有効である。架空地線の条数を増やせば,(2) は小さくなり,遮へい効率は向上する。架空地線や鉄塔に雷撃が生じると,雷撃電流は鉄塔を通して大地に流れる。これによって鉄塔の (3) が上昇し,がいし連の絶縁耐力を超えると鉄塔から電力線に (4) が発生する。これを防止するためには,塔脚の接地抵抗を小さくする必要があり,棒状の接地電極を埋め込むが土壌の性質によっては (5) を設けたりする。

問2 解答と解説

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(1)

正解は(ヌ)直撃雷である。

(2)

正解は(チ)遮へい角である。

(3)

正解は(リ)電位である。

(4)

正解は(ロ)逆フラッシオーバである。

フラッシオーバと逆フラッシオーバのイメージを下図に示す。

フラッシオーバと逆フラッシオーバ
図 フラッシオーバと逆フラッシオーバ

(5)

正解は(カ)埋設地線(counterpoise)である。

送電線路の塔脚接地抵抗を低くすることは,直撃雷による逆フラッシオーバを防止し,誘導雷の波高値を低減する効果を有し,送電線路の耐雷設計として最も重要な要素である。

接地抵抗は,水田等では十分に低くとれても,畑地や山地は非常に高いことが多い。その場合には地表面下 30 ~ 50 cm のところに亜鉛メッキ鋼より線を地表面に沿って埋設し,その一端を鉄塔脚部に接続する。これを埋設地線(counterpoise)という。設置方式には,放射形,平行形,連続形がある。

参考文献

問3 電力系統の短絡電流

同期発電機の増加や送電線の新増設等により,(1) の増大や系統連系が密になることによって,系統事故発生時の短絡電流が大きくなる。短絡電流の増加により,送変電機器の損傷増大や,周辺通信線への (2) が考えられるため,以下のような短絡電流抑制対策を施す必要がある。

  1. 現在採用されている電圧より上位の電圧の系統を作り,既設系統を分割する。
  2. 発電機や変圧器の (3) を大きくする。
  3. 送電線や母線間に (4) を設置する。
  4. 系統間を直流設備で連系する。
  5. 変電所の (5) 運用を行う。

問3 解答と解説

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(1)

正解は(ト)系統容量である。

短絡容量(short-circuit capcity)
電力系統において短絡故障が発生すると,各電源から短絡地点に向かって短絡電流が流れる。短絡電流の大きさは短絡発生の瞬間から時間の経過とともに減衰するが,その大きさや分布は系統構成のあり方や故障点の位置または故障の種類等によって複雑に変化する。短絡容量は短絡電流に線間電圧を乗じたもので,次式で与えられる。 \[ \sqrt{WS}=3I_\text{s} V \] ここで $WS$ は 3 相短絡容量 [MVA],$I_\text{s}$ は短絡容量 [kV],$V$ は線間電圧 [V] を表す。(出典)電気事業講座 電気事業辞典

(2)

正解は(ヌ)電磁誘導障害である。

下図に電磁誘導現象について示す。導線 A に電流が流れると,その瞬間に導線 B にも電流が流れる。導線 B に流れる電流は,導線 A に流れる電流とは,逆方向である。

電磁誘導現象
図 電磁誘導現象

詳しくは,目指せ!電気通信主任技術者「誘導対策」参照。

(3)

正解は(ハ)インピーダンスである。

発電機や変圧器のインピーダンスを大きくすることで,短絡電流を減少させることができる。

(4)

正解は(ヨ)限流リアクトルである。

(5)

正解は(ヘ)母線分離である。

変電所で母線分離を行うことで,系統を切り離して運用する(系統連系を疎にする)。

参考文献

問4 架空配電系統の環境調和設備

配電設備は地域の実態,都市化の進展に対応して技術開発が進められている。具体的には,環境調和とあわせてビル火災時の消防活動や,構造物との (1) 確保などの安全対策,さらには都市美化を兼ねた対策を施している。

上記の一例として占有スペースの縮小化を目的としてコンパクトな (2) が開発されている。この装柱には,高圧線を架空ケーブルとする方式と,絶縁電線を (3) にする方式がある。

架空ケーブル方式は,ビルの消防活動を円滑にするため,建物との (1) 確保を図っており,柱上変圧器は,2 台の単相変圧器を一つの筐体に収め (4) としたもので,電灯負荷に加え動力負荷も供給可能としている。また,その下部に架空ケーブルを施設しており,都市美化とあわせて消防車のはしごをかける範囲を拡大している。

絶縁電線方式は,道路側に電線を架線できる (5) を使用し,建物との (1) を確保している。

問4 解答と解説

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(1)

正解は(ハ)離隔である。

(2)

正解は(へ)都市形装柱である。

(3)

正解は(イ)縦引である。

(4)

正解は(リ)同容量 V 結線である。

(5)

正解は(ホ)D 形腕金である。

参考文献

問5 水路式発電機

水路式発電所は河川の水を取り入れ,比較的長い水路で発電所に導いて落差を得る方式であり,その主な設備としては,取水口,取水ダム,(1) ,導水路,(2) ,水圧管,水車,発電機,放水路及び放水口からなる。

取水口はごみの流入を抑制する目的で河川と直角にとることが多い。また,取水ダムには (3) を設け,洪水時などに取水口付近に堆積した土砂を排出する。

次に,取水した水は,(1) に入る。ダム式発電所と異なり,取水中の土砂は取水口で完全に除くことができないため,ここで,水の流れを緩やかにして,導水路に入るまで土砂を十分に沈殿させる。導水路には,主に開きょや (4) が用いられる。岩盤が堅固なところでは素掘りのままとする場合もあるが,多くはコンクリートなどで内面の巻立てを行う。

(2) は,水圧管の手前に設けられ,水路末端の断面積を広げて容積を大きくしたものであり,最終的な土砂の沈殿や落葉などのごみの取り除きを行うほか,発電所負荷の急増時には水の補給を行うなどの機能を有する。また,負荷遮断等の負荷急減時に,水路から流入してくる水を河川に放出するための設備を (5) という。

問5 解答と解説

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水路式発電所(conduit type hydropower plant)
河川勾配に比べて緩勾配の水路を設けて導水することにより,落差を得る方式の水力発電所で,できるだけ短い水路延長で大きい落差が得られる場合に有利となる。したがって一般に勾配が急であって,かつ屈曲の多い河川の中・上流部に設けられることが多い。(出典)電気事業講座 電気事業辞典

(1)

正解は(ヨ)沈砂池である。

河川水には常に多少の土砂が浮遊しており,とくに出水時には,その濃度が非常に大きくなる。この水をそのまま水路・水車に通すと,水路内に土砂が堆積あるいは水路壁の摩耗,水車の摩耗・損傷が生じるので,水路の入り口で浮遊土砂を沈殿させ除去する必要がある。このための設備を沈砂池という。

(2)

正解は(ニ)ヘッドタンクである。

水路式発電機の導水路の末端にあって,水圧管の吞口となる池をヘッドタンク(水槽)といい,次のような役目を持っている。

  • 負荷の微少変動(使用水量の微少変動)を調整し,負荷遮断時の余剰水量を処理する構造である。
    すなわち,負荷が増加した場合,水槽内の水を補給し,負荷が減少した場合,余った水を水槽に蓄え,収容しきれない水を余水吐から放流する。送電系統の事故などにより水車の負荷を遮断したときは,導水路から流れてくる全流量を余水吐から河川に放流する。
  • 土砂・じんかい・氷雪などの発電に障害となるものを最終的に取り除く。
  • 水圧管入口に制水門を設け,水圧管内の断水点検をできるようにする。

(3)

正解は(カ)排砂門である。

(4)

正解は(ロ)無圧トンネルである。

無圧トンネルは自由水面を有する水路,圧力トンネルは水路内に圧力が働いており管水路の状態となる。

無圧トンネルと圧力トンネルの違いは,樋(とい)を流れている水と水道管を流れる水との違いに相当する。樋の場合,上流から水を流すと下流に達するのに時間がかかるが,水道管の場合は,蛇口をひねることによりただちに流量が変化する。

(5)

正解は(ト)余水吐である。

参考文献

問6 電池電力貯蔵設備

電池電力貯蔵設備は,需要家の負荷平準化,緊急時のバックアップ電源などに用いられてきたが,近年は再生可能エネルギー発電の出力変動に対応するための送電系統の (1) に用いる実証試験等も行われるようになった。そこでは,電極活物質などが異なる様々な二次電池が用いられている。

ナトリウム・硫黄電池は,二次電池の中では比較的,理論エネルギー密度が高いなどの特長を有している。同電池では,円筒形状の単電池を断熱容器に格納し,正極・負極活物質を溶融状態に保つため (2) 程度に保つ。このためヒータの消費電力量が大きくならないような運用形態で使用することが望ましい。

また,電解質として有機溶媒電解液等を用いた (3) は,二次電池の中では充電効率が比較的高く,常温動作であるなどの特長もあることから,電気自動車用も含めた様々な用途で利用が進んでいる。(3) は,ナトリウム・硫黄電池に比べ (4) を高くとることができるため,比較的小さい電池容量 [kW·h] で大きな出力 [kW] を得ることができる。

これらの二次電池以外に,電解質タンクの大きさを増すことで電池容量 [kW·h] を増大できるなどの特長を有するレドックスフロー電池も,送電系統用として使用されている。

二次電池を運用するにあたっては,過充電,過放電を避けつつ電池容量を有効に利用するため,満充電時に対する充電状況を比率で表した (5) を適切に管理する必要がある。(5) の推定方法は電池種別により異なるが,例えば電池の開回路電圧を用いて推定するなどの方法がある。

問6 解答と解説

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(1)

正解は(リ)周波数制御である。

(2)

正解は(カ)300 °Cである。

ナトリウム-イオン電池(NAS 電池,sodium-sulfur battery)

電力貯蔵用二次電池として開発されてきた新型電池の一つ。ナトリウム-硫黄電池は,陰極活物質に溶融ナトリウム,陽極活物質に溶融硫黄または多硫化ナトリウムを使用し,両者の間をナトリウムイオンに対し選択的に伝導性を持つ β アルミナ固体電解質により隔離したもの。作動温度は,陽極活物質の融点を考慮し,300 ~ 350 °C に維持する必要がある。

(3)

正解は(ヨ)リチウムイオン電池である。

リチウムイオン電池(lithium-ion battery)

正極と負極の間をリチウムイオンが移動することで充電や放電を行う 2 次電池。電極材料にはさまざまなものが使われるが,正極に炭素(グラファイト),負極にコバルト酸リチウムを用いることが多い。正極板と負極板をセパレータで挟んで何層も積み重ね,全体を有機溶媒の電解質で満たした構造になっている。(出典)電気事業講座 電気事業辞典

(4)

正解は(イ)C レートである。

C レートとは,充電及び放電のスピードのことである。定電流充放電の場合,電池の理論容量を 1 時間で完全充電(または放電)させる電流の大きさを 1 C と定義する。放電時の C レートは放電レート,充電時の C レートは充電レートである。

(5)

正解は(ニ)SOCである。

SOC は State Of Charge の略で,充電率または充電状態を表す指標である。満充電状態を 100 %,完全放電状態を 0 % と定義する。

選択肢(へ)SOH は State OF Health の略で,健全度や劣化状態を表す指標である。初期の満充電容量(Ah)を 100 % とした際の劣化時の満充電容量(Ah)の割合である。

参考文献

問7 発変電所に設置する開閉設備

遮断器は,平常時の電力の送電及び停止の際に (1) 電流を開閉するために用いられており,送配電線や発変電所内の機器に短絡・地絡が発生した際は (2) 電流を遮断するために用いられる。

(3) は,発変電所内の回路の保守作業を行う際に安全のために作業箇所を電圧のある回路から切り離すことなどに用いられる。一般的に (3) は,単に電圧が加わっている回路で電流が流れていないときに開閉できるが,変圧器の (4) 電流や送電線の充電電流,複母線の場合において甲母線から乙母線に運転を切り替えるときに流れる (5) 電流などの開閉ならば行うことができる。

問7 解答と解説

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遮断器(circuit-breaker)は,常規状態の電路のほか,異常状態,特に短絡状態における電路をも開閉し得る開閉機器である。

(1)

正解は(ル)負荷である。

負荷に供給している電流を,負荷電流という。

(2)

正解は(チ)故障である。

故障とは,送配電線や発変電所内の機器に短絡・地絡が生じることをいい,そのとき流れる電流を故障電流という。

(3)

正解は(ト)断路器である。

断路器(disconnector)は,単に充電された電路を開閉分離するために用いられる開閉機器で、負荷電流の開閉をたてまえとしないものである。

(4)

正解は(ロ)励磁である。

変圧器が無負荷のとき,一次巻線に流れる電流を励磁電流という。

(5)

正解は(ヌ)ループである。

断路器に要求される責務の一つとして,複母線を有する変電所の母線断路器には母線切り換えを行う際に,ループインピーダンスに対応したループ電流を開閉する必要がある。

参考文献

  • 遮断器(目指せ!電気主任技術者~解説ノート~)
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