専門的分野・通信土木 対策ノート
はじめに
通信土木設備とは,通信ケーブルを人為的災害,自然災害に対して防護する機能を持ち,日常のケーブル工事や保守作業を行う空間を確保するため,主として道路を占用して設置するマンホール,管路等の通信設備をいう。
その役割は,通信用ケーブルを布設し,敷設されたケーブルに対する開通工事等の各種ケーブル工事及び日常点検などの保守作業を行うための空間の確保と,通信土木設備が主として道路の地下を占用して建設されることから発生する,布設されたケーブルを道路の改良工事や道路上で行われる下水道工事などの公共土木工事によるケーブル切断などの人為的災害から防護すること,及び,日常の風雨はもちろん風水害,地震などの自然災害から防護することにある。
目次
1. 通信土木設備
2. 通信土木設備設計
3. 通信線路伝送工学
1. 通信土木設備 1-1. 通信土木工学
1-1-1. 土質力学
土の性質
土の物理的性質は,色,構造,土粒子の大きさ,土粒子の混合割合,比重,密度,空隙,土の種々の状態における体積割合と質量割合および両者の関係,そしてコンシステンシー等で示される。これらの諸性質のなかで特に定量的に求められる比重,密度,体積割合と質量割合,そしてコンテステンシー特性といった性質は工学的な指数として用いられることから,一般に土の基本的性質と呼ばれている。
圧密
飽和粘土層が外力を受けて圧縮されるとき,土粒子および間隙中の水は非圧縮体であるので,外力を受けた瞬間は体積は減少せず,外力に応じた間隙水圧が増大する。
つづいて,時間の経過とともに排水面から水が流出し,それに伴って生じた土中の間隙水圧の差によって間隙水が排水面に向かって流動する。このとき,過剰間隙水圧の減少分に等しい応力が土粒子の骨組構造によって分担され有効応力の増分となり,流出した間隙水の体積に等しい圧縮が生じる。
外力を受けてから十分時間が経過すると外力はすべて有効応力によって分担され,過剰間隙水圧はゼロとなって間隙水圧の流出が止み,圧縮が終了する。このような現象を圧密という。
土圧
土と接している構造物には,必ず土圧が作用する。この土圧に対し構造物は安定を保たなければならないが,土圧の大きさは土の強度,変形特性によっても異なるし,構造物の形状や剛性によっても異なるので非常に複雑になる。
土の強さ
土,コンクリート,鋼材等,土木の分野で用いられる材料は多岐にわたる。通常,これらの材料の破壊とは,その材料に応力を漸次増加させながら作用させたときに,ある値以上に応力が増加できなくなり,変形(ひずみ)が急増して材料本来の形を保てなくなるような不安定な状態を指す。そして,土の場合,その土が支える得る最大の応力値を土の強さ(ピーク強度ともいう)と呼ぶ。材料の強さは,当然,その特質と深く関係している。
1-1-2. 構造力学
「[わかりやすい・詳細]単純支持はり・片持ちはりのたわみ計算」を参照
1-1-3. 材料力学
鋼材の材質
鉄筋の腐食は,鉄筋被りが極端に浅い場合に発生しやすい。
鉄筋を腐食しにくくするには,浸透性防錆材をコンクリート表面に塗布し,鉄筋まで浸透させ,防錆被膜を形成することにより,錆の発生を抑制する方法がある。
マンホール内の金物の腐食には,異なる種類の金属材料が電気的に接触して生ずる異種金属接触腐食,狭い隙間の内部に生ずる隙間腐食などがある。
マンホール内の金物のバクテリア腐食は,微生物の作用によるものであり,有機被覆による絶縁防食,又は流電陽極による犠牲防食,あるいはそれらを併用することにより金属の長寿命化・延命が可能である。
コンクリートの性質
とう道の壁に生成される白色物質は,コンクリートの中の消石灰がコンクリートの亀裂から流出し,空気中の二酸化炭素(CO2)と反応して生成される炭酸カルシウムである。
コンクリートの中の消石灰(Ca(OH)2,水酸化カルシウム)がコンクリートの亀裂から流出し,炭酸カルシウム(CaCO3)に置き換わると,コンクリートの中は徐々に中性化(Carbonation)し,鉄筋は腐食しやすくなる。具体的には,鉄筋の周囲を包んでいるコンクリートが中性化すると不働態被膜が破壊され,水や酸素の浸透により鉄筋が腐食し,腐食が進展すれば,構造物の耐荷性や耐久性が失われる。
地中水に鉄やマンガン成分を含む臨海埋立地に設置されるマンホールは,嫌気性バクテリアなどにより生成される硫化水素でコンクリート壁が浸食される場合がある。
マンホール内の金物のバクテリア腐食は微生物の作用によるものであり,流電陽極による犠牲防食又は有機被覆による絶縁防食若しくはそれらを併用することにより金物の長寿命化・延命が可能である。
1-1-4. 耐震工学
1. 通信土木設備 1-2. 通信土木設備
通信土木設備は,収容ケーブル条数などにより,一般に,管路設備,中口径管路設備及びとう道設備の3種類に大別され,さらに,管路設備は,一般管路設備と地下配線管路設備に分けられる。
1-2-1. 通信管路
管路は径によって中口径管路方式と管路方式に分けられる。さらに,管路方式は用途によって主線管路や地下配線管路に分けられる。中口径管路方式は,内径が概ね 250 ~ 500 mm 程度の中口径管路(外管)に通信ケーブル収容用の内管を複数本収容し,外管と内管の間隙をモルタル等で充填する内空充填方式と,中口径管内空間をモルタル充填しないフリースペース方式がある。フリースペース方式は内空間の下部断面に太径の通信ケーブルを収容するため,外管径に応じて下部スペーサ(内管)を同時に敷設し,上部断面には通信ケーブル需要発生時にスペーサを施設する方式である。内空間をフリースペース構造とすることによって,需要により変動する設備容量への柔軟な対応が可能となっている。
材料の違いによる分類
管の種類には,材料の違いにより硬質ビニル管,塗覆装鋼管,鋳鉄管などがあり,管種の選択に当たっては,液状化の危険度,電磁誘導対策の要否などの埋設場所の環境に応じた最適な管種が決定される。
同一呼び径において,肉厚は,硬質ビニル管 > 鋳鉄管 > 塗覆装鋼管である。
種類 | 説明 | 用途 |
---|---|---|
硬質ビニル管 | 塩化ビニル樹脂を主体とした重合体を主原料に用いた管 | |
塗覆装鋼管 | ポリエチレン被覆した鋼管 | 地下埋設ケーブル保護用 |
鋳鉄管 | 金属材料を使用する管のうちでは腐食に強く,鋳鉄管の抗張力は塗覆装鋼管と比較して大きい | 送電線の昇圧化などに伴う誘導対策 |
方式による分類
自治体管路方式
自治体管路方式は,地方公共団体が管路設備を敷設する方式であり,管路設備の材料費及び敷設費は地方公共団体が負担する。また,敷設された管路などの施設は道路占用物件として地方自治体が管理する。
自治体管路方式では,管路設備の構築に伴う全費用(材料費及び敷設費等)を地方公共団体が負担し,ケーブル敷設に関する費用を電線管理者が費用負担する。
単独地中化方式
単独地中化方式は,電線管理者が自ら費用を負担して単独で地中化を行う方式であり,敷設された管路などの施設は道路占用物件として電線管理者が管理する。
要請者負担方式
要請者負担方式は,各地方での無電柱化協議会で優先度が低いとされた箇所などにおいて無電柱化の要請に基づいて実施する場合に採用される方式であり,原則として費用の全額を要請者が負担する。この場合の敷設された管路などの施設の管理方法は多様である。
情報 BOX
情報 BOX は,国土交通省又は地方公共団体の道路管理者が道路管理用光ファイバケーブルを収容する施設として設置するものであり,道路管理の高度化を図るとともに設備の余裕空間を民間事業者に開放している。
情報 BOX は,道路高度情報サービスの基盤設備として,道路情報の提供や ITS(高度道路交通システム)推進などの目的で,道路管理用光ファイバケーブルを収容するために道路管理者が設置している。
情報 BOX には,複数の光ファイバケーブルを布設することが可能なことから,道路管理者から占用許可を得れば,情報 BOX の空き管路は電気通信事業者なども利用することができる。
情報 BOX へ入溝する事業者は,一般に,占用許可を受け占用料を払うことによりケーブルを入線することができるため,単独地中化の工事費と比較して,安価に管路ルートを確保することができる。
「情報 BOX」とは,光ファイバケーブルを収めるためのさや管を,複数(通常は 6 管)内部に収めた管路で,主に,国が管理する国道の地下に設置しています。
「情報 BOX」には,安全で快適に道路を利用できるように道路を監視したり,道路利用者へ情報を提供する等のための光ファイバが敷設されています。
また,当面空いているさや管は,IT 社会の実現に向け,全国的な光ファイバネットワーク構築を支援するために,通信関連会社等の民間業者に開放しています。
(出典)「情報BOXとは?」(国土交通省中部地方整備局)
設備の形態による分類
管路設備は,設備の形態により,一般に,一般管路設備,中口径管路設備及び地下配線管路設備に分けられる。
一般管路設備
一般管路設備では,1 条の管路にメタリックケーブルと比較して細径化された光ファイバケーブルを複数収納する場合もある。一般に,呼び径 75 mm 管が多条多段に積まれ,地表面下 1 [m] ~ 2 [m] 程度に埋設される。管種には,硬質ビニル管,鋼管,鋳鉄管などがあり,液状化の危険度,電磁誘導対策の要否など埋設場所の環境条件に応じて選択採用される。特に,電磁誘導対策には主に鋳鉄管が用いられる。また,一般管路設備には,作業者が入孔してケーブル接続などの作業空間を確保できるマンホールが設置されている。
中口径管路設備
中口径管路とは,マンホール〜マンホール相互間,マンホール〜とう道間を結び,中口径の管内に多条数のケーブルを敷設できる構造の管路をいう。管路が原則的に 1 条の管路にケーブル 1 条を収容するのに対し,呼び径 250 [mm] 〜 500 [mm] の中口径管路 1 条に多条数のケーブルを収容するための管路。
中口径管路設備は,一般に,呼び径 250 〜 500 [mm] の管を,主に非開削施工により埋設したものであり,管内をスペーサなどにより区分して通信ケーブルを収容するものである。中口径管路とマンホールとの取付部には,地震時に応力が集中しやすいため,一般に,軸方向及び軸直角方向の地盤変位を吸収するダクトスリーブが設置されている。
中口径管路設備には,一般に,呼び径 250 [mm] ~ 500 [mm] 程度の管路にあらかじめ多条数のケーブル収容用スペーサ(インナパイプ)を布設するパイプインパイプ方式及びケーブル需要の発生時にスペーサを布設するフリースペース方式がある。
中口径管路設備は,一般に,非開削で施工されるが,埋設物との離隔が十分に確保できないなどの理由から開削で施工されることがある。開削施工には,吊降し工法及び元押し工法がある。
地下配線管管路設備
地下配線管路とは,加入者に配線するために主線管路より分岐して加入者に至るまでの地下管路をいう。地下配線管路には,一定間隔毎にケーブルの分岐・接続点を設置するハンドホールを構築している。
地下配線管路設備には,呼び径 25 [mm] 及び 50 [mm] の管路 1 条ごとに通信ケーブルを収容する方式,呼び径 150 [mm] の管に通信ケーブルを複数収容するフリーアクセス単管方式などが適用されている。
1-2-2. マンホール設備,ハンドホール設備
マンホールの種類及び適用
マンホールとは
マンホールとは,ケーブルの引込みや引抜き,接続作業などのため,地下に設けられる長さ 10 m 未満の構造物である。(長さが 10 m 以上のものは,「とう道」となる。)構造上天井(上床版またはスラブという)があるのが特徴である。
マンホールは,矩形の躯体,円形または矩形の首部及び鉄蓋から構成される。
マンホールは,一般に,き線ルート及び中継ルートにおいて,ケーブルや接続部である地下用クロージャを収容する設備とされており,作業者が中に入ってケーブルの建設保守作業を行うためのスペースが確保されている。
マンホールは,一般に,躯体,首部及び鉄蓋から構成されている。躯体の内側にはケーブルダクトが形成された額縁,外側には管路周辺からの浸水を防ぐ防水コンクリート,底部には排水用の水溜枡などが設けられている。
マンホールの種類
マンホールには,一般に,躯体の寸法や形状を規格で定めた標準マンホールと個別に寸法や形状を検討して定める特殊マンホールがあり,標準マンホールの形状には,直線形と分岐形がある。直線形の標準マンホールのうち,収容可能な管路条数が最大のものは,8 号マンホールである。
レジンコンクリート製ブロックマンホール
レジンコンクリート製ブロックマンホールは,複数に分割されたブロックで構成され,ブロック相互の結合には,一般に,接着剤が使用されている。
レジンコンクリート製マンホールは,セメントコンクリート製マンホールと比較して,壁厚を薄くできるため軽量化が可能であり,耐火性は合成樹脂を含むためやや劣る。
レジンコンクリートとは,セメントや水を一切使わず,熱硬化性樹脂(レジン)を結合材として,砕石・砂・炭酸カルシウムを強固に固めたコンクリートである。結合樹脂には通常,効果時間が調整できる不飽和ポリエステル樹脂が用いられ,用途によって,エポキシ樹脂なども使用されている。
一般のセメントコンクリートと比較して,以下の性能が優れている。
- 硬化が早く,短期間で所定の強度が得られる
- 高強度であり,接着性に優れる
- 緻密な材料であり,水密性,絶縁性に優れる
- 耐酸性に優れる
マンホールの不良事象
鉄蓋と受枠上面との段差が大きくなるとガタツキが生じ,さらに,車両通過時の衝撃荷重が重なると鉄蓋の飛び上がり,通行車両の破損などの重大事故につながるおそれがある。
マンホール鉄蓋の蓋鳴りの原因は,防振用パッキングの摩耗又は外れ,鉄蓋と受枠の間への砂利などの浸入,受枠の摩耗などがある。
マンホールの蓋鳴り防止には,マンホールの鉄蓋と受枠の隙間部に発泡した軟質ウレタンを充塡し,鉄蓋の移動や回転を抑制して蓋鳴りを防止する方法がある。
マンホールの劣化
マンホールの壁が黒色に変色する原因としては,地下水に含まれている鉄やマンガンの酸化物,水酸化物などが挙げられる。
地中水に鉄やマンガン成分を含む臨海埋立地に設置されるマンホールは,嫌気性バクテリアなどにより生成される硫化水素でコンクリート壁が浸食される場合がある。硫化水素でコンクリートが浸食されるおそれがあるマンホールは,定期的にコンクリート壁の劣化,中性化などを調査する必要がある。
マンホール内の金物の腐食には,異なる種類の金属材料が電気的に接触して生ずる異種金属接触腐食,狭い隙間の内部に生ずる隙間腐食などがある。
マンホール鉄蓋の劣化診断
マンホール鉄蓋の劣化診断には,マンホール鉄蓋劣化診断器を用いて鉄蓋をハンマーで打撃したときの振動特性から鉄蓋の亀裂状況を検知し,鉄蓋の残存寿命を推定する方法がある。
ハンドホールの種類及び適用
ハンドホールとは
ハンドホールとは,マンホールに比較して小対の通信ケーブルの敷設,撤去,接続作業を目的として地下に設けられる。構造上,上床版がなく路上で通信ケーブルを接続し,その接続点を収容保護するために,地下に設けられる構造物である。
ハンドホールは,地下配線ルートにおいてケーブルや地下配線用クロージャを収容する設備であり,収容可能な管路条数は片側 4 条までである。

1-2-3. とう道
とう道とは,作業者が内部に入って通信ケーブルの敷設・保守作業が可能な直径 2 ~ 5 m の通信ケーブル専用トンネルである。設備寿命,信頼性,作業性などに優れており,主に幹線ルートに適用される。とう道は施工主体によって事業者単独で建設する単独とう道,電力会社などの他企業と費用を分担して設置する併設とう道に分類される。
とう道の機能
とう道設備とは,作業者が内部に入って建設及び保守作業ができ,通信用地下ケーブルを大容量収容できるトンネル形式の通信土木設備である。とう道設備は,多条数のケーブルを収容することができる空間とともに,ケーブルの布設及び接続,保守修理作業などができる空間が確保されている。内部に設置されている設備は,通信ケーブル収容用金物設備,照明,換気,排水設備及び監視システムなどである。また,通信ビルとの取付部や土質が変化しているところでは,フレキシブルなとう道伸縮継手を設けている。さらに,通信ビル近傍部には,万が一とう道内火災が発生した際には通信ビルへの延焼を防ぐための防護壁や低地などで冠水が予想される地域では防水壁が設置されている。
とう道は,多条数の通信用ケーブルを収容できるトンネル形式の通信土木設備であり,災害に強い,交通量の多い道路においても制約が少なくケーブル工事ができる,大きな需要耐力があるといった特徴を有している。
とう道の形状種類
下図に示すとおり,開削工法,シールド工法の施工方法による矩形,円形の形状種別がある。


共同溝
2 以上の公益事業者の公益物件を収容するため道路管理者が道路の地下に設ける施設は,一般に,共同溝といわれ,共同溝には,電気通信,電気,ガス,上下水道などの事業者の設備を収容することができる。
毎日の生活に欠かせない電話,電気,ガス,上・下水道などのライフラインのうち,電話局間,変電所間,浄水場間等を結ぶ主要な幹線を収容する施設が共同溝である。主に車道の地下に設置され,内部にはライフラインの収容空間のほかに,人が入って維持点検などの管理作業を行うための空間や,換気設備,排水設備,照明設備などが確保されている。
共同溝を整備することにより,道路の掘り返し工事の防止,地震災害に強い首都圏づくり,ライフラインの安全性の確保,工事渋滞の軽減,環境の保全が図られる。
1-2-4. その他設備
橋梁添架
管路ルート上で河川等を横断する場合には,橋梁添架管路,専用橋などによって横断する。橋梁添架管路は道路橋などの上部構造や下部構造を利用して管路を渡す方式である。
河川などを横断する道路橋での管路の添架位置は,道路橋桁の両側又は道路橋の床版の下で,洪水時の流水などによる外力,直射日光などの影響を受けにくい箇所が選定されている。
橋梁添架管路としては,一般に,硬質ビニル管を使用し,橋台際や支持間隔の制約で硬質ビニル管が適用できない箇所などでは鋼管を使用する。
橋梁添架管路の支持間隔は,管の水平移動,軸のたわみ,橋梁振動との共振などを考慮して決めるが,硬質ビニル管の支持間隔は鋼管の支持間隔と比較して狭い。硬質ビニル管の支持間隔は 2.0 ~ 2.5 m,鋼管の支持間隔は 5.5 m 以下。
橋梁添架管路内に布設されたケーブルは,地下管路に布設されたケーブルと比較して大幅な温度変化を受け易いため,温度変化によるケーブルの伸縮対策としては,スラック(たるみ)を取り付ける方法が採られている。
橋梁添架管路内に布設されたケーブルの伸縮量は,ケーブルの種類,橋梁の形態,管路種別,温度変化幅などにより異なるが,実際に影響が現れるのは,一般に,橋長 10 [m] 以上の橋梁といわれている。
橋梁上の車両通行により発生するクリーピング現象は,ケーブルが一方向に移動する現象である。
海岸地域では,橋梁添架設備の腐食が発生しやすく,その補修には塗装による方法が採られている。橋梁添架設備の塗装替えには,一般に,細部まで十分に塗装ができないといった問題がある。
塗装替えに伴う塗装の耐久性については,素地調整(ケレン)の程度,塗り重ね回数,塗料の種類などが直接影響を及ぼすが,施工時の品質管理の良し悪しにより左右される度合が大きいといわれている。
半割管を用いたケーブル引上げ管の腐食補修は,腐食した引上げ管路を撤去した後に半割管を装着する工法であるため,ケーブルを布設替えすることがなく,簡易に補修できる方法である。
専用橋
専用橋は河川等を横断する適当な道路橋が確保できない場合に通信ケーブル専用の橋として架橋するもので,通信ケーブルを収容する管路などの上部構造と,これを支える橋台,橋脚などの下部構造で構成される。
河川などを横断する適当な道路橋が確保できない場合,通信ケーブル専用の橋が架橋され,その形式の一つとして,溝形鋼の主桁と L 形鋼などの横桁・横構を組み合わせた構造の圧延鋼桁橋がある。
河川などを横断する通信ケーブルのための専用橋は,一般に,道路橋と比較して幅員が狭く,その形式は耐震対策として有効である圧延鋼桁やトラス(3 本の細長い部材で構成された三角形が連続した骨組構造を主桁とする形式の橋)どがある。
電線共同溝(C.C.BOX)
電線共同溝とは,道路の地下空間を活用して,電力線,通信線などをまとめて収容する施設であり,その整備の目的は,電線共同溝の整備等に関する特別措置法において,特定の道路について,電線共同溝の整備等を行うことにより,当該道路の構造の保全を図りつつ,安全かつ円滑な交通の確保と景観の整備を図ることとされている。
電線共同溝の整備等に関する特別措置法 第一条 目的
この法律は,電線共同溝の建設及び管理に関する特別の措置等を定め,特定の道路について,電線共同溝の整備等を行うことにより,当該道路の構造の保全を図りつつ,安全かつ円滑な交通の確保と景観の整備を図ることを目的とする。
電線共同溝の整備等に関する特別措置法 第二条 定義
3 この法律において「電線共同溝」とは,電線の設置及び管理を行う二以上の者の電線を収容するため道路管理者が道路の地下に設ける施設をいう。
電線共同溝の占用を希望する事業者は,電線共同溝整備道路が指定されたときは,電線共同溝の占用許可を申請することができる。また,道路管理者は占用予定事業者の意見を聴いて電線共同溝整備計画を定めることができ,これに基づき電線共同溝を建設する。
電線共同溝は,電線の設置及び管理を行う 2 以上の者の電線を収容するための施設であり,道路の附属物として位置付けられている。
道路管理者は,安全かつ円滑な交通の確保と景観の整備を図るために特に必要があると認められる道路を,区間を定めて電線共同溝整備道路として指定することができる。
ちなみに,C.C.BOX の最初の C には「Community」「Communication」「Compact」,二つ目の C には「Cable」の意味が込められている。ガスや上下水も収容する共同溝に対して,電線類のみを収容する共同溝という意味で用いられる。一説によると,関西では「電線共同溝」,関東では「C.C.BOX」と呼ばれることが多い。
電線共同溝の種類は,管路の設置位置や構造面から浅層埋設方式と従来方式に大別される。浅層埋設方式には,小型トラフの採用による浅層化,共用 FA 方式の採用及びボディ管の使用による集約化などを図ったものがある。
1. 通信土木設備 1-3. 通信土木設備保守技術
1-3-1. 点検・診断技術
パイプカメラ
管路への通線が何らかの理由で困難な場合,パイプカメラを管路内に挿入してモニタすることにより,不良箇所を調査・点検する方法がある。
コンクリート診断技術
コンクリートの劣化の程度を診断するためには,コンクリート構造物の劣化現象からその劣化機構を特定しなければならない。劣化機構の一つとして,本来アルカリ性であるコンクリートが外部環境を受けてアルカリ性を失う現象は,中性化といわれる。
反発硬度法
コンクリートの強度を推定する方法には反発硬度法がある。反発硬度法は,テストハンマを用いてコンクリートの表面を打撃したときのはね返った距離などからコンクリートの強度を推定する方法である。
弾性波法
コンクリートのひび割れ,剥離及び空洞を調査する方法には弾性波法がある。弾性波法は,利用周波数範囲や受信方法の違いなどによっていくつかの方法に分類され,一般に,20 [kHz] 以上の周波数帯を使用する方法は,超音波法といわれる。
コンクリート中の鉄筋探査法
コンクリート中の鉄筋探査法としては,電磁波レーダ法,電磁誘導法などがある。
電磁波レーダ法
電磁誘導法
マンホールの鉄蓋劣化診断技術
マンホールの鉄蓋をハンマーで打撃したときの振動特性から鉄蓋の亀裂量を検知し,残存寿命を測定する。
1-3-2. 補修・補強技術
管路補修技術
管路の補修方法は,非開削補修方法と開削補修方法がある。ここでは,代表的な非開削補修について下表に示す。
設備 | 工法 | 概要 |
---|---|---|
管路 | ウォータジェット洗浄 | 高水圧ホース先端に前方噴射ノズル,後方噴射ノズルを取り付け,高圧水により管路内の土砂・泥水・錆を除去し洗浄する |
管内面ライニング | 腐食により管路内面が全体的に劣化した金属管路内面に薄い樹脂膜を形成する | |
超薄膜ライニング | スポンジ付きピグを使用することにより,0.3 mm 程度のライニング膜を形成する | |
負圧式ライニング | 管路内の空気を吸収・減圧することで空気の流れを作り,それを利用して 0.2 mm 程度のエポキシ樹脂薄膜を形成する | |
ケーブル収容管補修 | ケーブルを収容した管路の内面に新たな樹脂膜を形成する工法 または,ケーブルを収容した管路内に工場成形した PVC 製のライニング材を現場で組み立て新たに空間を形成する工法 |
|
金属管偏平矯正 | 油圧を利用して管路内で拡径して管路の偏平を矯正する | |
ビニル管偏平矯正 | 硬質ビニル管の偏平部を管路内から加熱軟化させるとともに,油圧を利用して機械的に矯正・強化する | |
橋梁添架管路専用橋 | 橋梁添架補修用半割管 | 腐食により劣化した橋梁添架ケーブル収容管を切断・撤去し,半割管を取り付ける |
橋台際補修用半割管 | 腐食により劣化した橋梁添架ケーブル収容管を切断・撤去し,半割差込ソケットを取り付ける | |
その他 | 残置ケーブル撤去技術 | 管路内の土砂詰まり等で撤去できず残置されているケーブルを強力な把持力でつかみ,強力な牽引力(196 kN)で引き抜く技術 |
管路内の洗浄
管路内に土砂などによる詰まりがある場合,高水圧ホース先端にノズルを取り付け,高圧のジェット水流で管路内の土砂などを除去し,管路内を洗浄する方法がある。
管内面ライニング工法
錆腐食が進行して劣化した金属管路の内面に樹脂薄膜を形成することによって補修する方法をとるものは,管内面ライニング工法といわれる。
管路内の空気を吸引・減圧することで空気の流れを作り,その流れを利用してライニング材を含浸したホースを反転挿入させて 0.2 [mm] 程度のライニング膜を形成し,補修する方法は,負圧回転式ライニング工法といわれる。
ビニル管扁平矯正工法
硬質ビニル管の扁平部を管路内から加熱軟化させるとともに,油圧を利用して機械的に矯正・補強する方法は,ビニル管扁平矯正工法といわれる。
半割管を用いたケーブル引上げ管の腐食補修
半割管を用いたケーブル引上げ管の腐食補修は,腐食した引上げ管路を撤去した後に半割管を装着する工法であるため,ケーブルを布設替えすることがなく,簡易に補修できる方法である。
ゴムジョイント設置方法
とう道と立坑の取付部において,地震によるひび割れからの漏水対策として可とう性と止水性を有するゴムジョイントを設置する方法がある。
管路再生技術
管路再生技術とは,既設ケーブルを収容した状態でケーブルに影響を与えることなく管路を再生する技術であり,空間確保タイプと PIT(Pipe Insertion Type)新管路方式の 2 つの技術がある。
コンクリート補修・補強技術
マンホール躯体のひび割れ,破損などの補修には,ひび割れや破損した箇所を V 字形に斫り,無収縮急結セメントの充填及びエポキシ系樹脂の塗布により補修する方法がある。
マンホールの劣化を放置すると,道路陥没などの事故につながるおそれがあるため適切な補修が必要であり,セメントコンクリート製マンホールの本体のひび割れ補修工法としてはV字形カット工法がある。
マンホール躯体のひび割れ,破損などの補修には,ひび割れや破損した箇所をV字形にはつり,無収縮急結セメントの充填及びエポキシ系樹脂の塗布により補修する方法がある。
2. 通信土木設備設計 2-1. 通信管路
通信土木設備は主に道路下の空間を占用して構築されることから,外部からの制約や規制などにより建設コストがアップする要因を多く抱えているとともに,計画から完成までの期間が長くなるという宿命を持っている。このため,通信土木設備の構築にあたっては,繰返し工事の発生を避け,一度構築した設備は長期にわたる使用を可能とする必要がある。通信土木設備のグランドデザイン策定にあたっては,基本的な考え方として以下の 4 項目を考慮する。
- 社会環境の変化等に対応できる普遍的な設備づくり
- ルート単位で優先順位を付けて実施する効率的な整備
- シンプルでマネジメントしやすい設備づくり
- 進展する技術やニーズの変動を柔軟に吸収できる設備づくり
2-1-1. 通信管路の設計
盛土区間における管路の占用位置は,盛土崩壊のおそれが少ない位置を基本とし,管種は,一般に,金属管が使用される。
通信土木設備である管路の線形は,道路形状,埋設物などに応じて曲線となることは避けられず,一般に,ケーブルの牽引張力,ケーブルの曲げ特性などを考慮して曲線半径の許容範囲が設けられている。
通信土木設備は,一般に,公共道路に設置されるため,通信土木設備工事を実施する場合,占用企業者は,道路法に基づく道路占用許可の取得が必要である。
通信土木設備の工事は,そのほとんどが道路占用工事となり,道路占用工事を行う場合,道路法に基づく道路占用許可及び道路交通法に基づく道路使用許可の取得が必要である。
主線管路の線形は,平面線形,縦断線形とも直線とすることが望ましいが,一般に,道路形状,地下埋設物などに応じて曲線を設ける場合の曲率半径の標準は 10 [m] 以上とされている。
管路の縦断線形は,凍結防止対策を実施する区間を除き,一般に,中だるみを許容した線形を適用する。
管路内の水の滞留による凍結のおそれがある区間における管路の縦断線形は,中だるみを避け,やむを得ない場合は,管路のダクト口に水,土砂などの流入を防ぐダクト止水栓を設置する。
管路の土被りは,国土交通省などの通達により,車道部では道路の舗装の厚さ(路面から路盤の最下面までの距離)に 0.3 [m] を加えた値(当該値が 0.6 [m] に満たない場合には 0.6 [m])以下としないこと,歩道部では 0.5 [m] の最低土被りを確保することとされている。
車道部及び歩道部における管路の最小土被りは,国土交通省などの通達により設定されており,車道部における管路の土被りは,一般に,歩道部における管路の土被りより大きい。
- 「電線等の埋設物に関する設置基準」の緩和について(平成28年2月22日 国土交通省 道路局)
2-1-2. 通信管路の建設工法
施工者は,道路上に作業場を設ける場合は,原則として,交通流に対する背面から車両を出入りさせなければならない。ただし,周囲の状況等によりやむを得ない場合においては,交通流に平行する部分から車両を出入りさせることができる。
埋設物探査技術
通信土木設備に近接して他事業者の掘削工事などが実施される場合,近接工事による通信土木設備への影響の有無,設備への防護の必要性などについて検討するため,事前に非開削で埋設物を探知する埋設物探査が重要となっている。探査方法としては,一般に,電磁波レーダ法,電磁誘導法などが用いられる。
電磁波レーダ法
電磁波レーダ法は,埋設管の電気特性が伝搬媒体である周辺の土と異なるものであれば,埋設管の材料は金属,非金属ともに探査可能である。
電磁波レーダ法では,地表面に置かれた送信アンテナから地中に向けて電磁パルスを放射し,電気特性が異なる界面で発生する反射波を受信アンテナでとらえることにより,反射波の伝搬時間から埋設物の位置や深度が算出できる。
電磁レーダ法では,地表面に置いた送信アンテナから地中に向けて電磁波パルスを送信し,電気的定数である非誘電率が異なる媒体の界面で発生する反射波を受信アンテナで捉え,埋設物の位置を電磁波パルスの伝搬時間から算出する。探査能力は使用する電磁波の周波数によって異なるが,一般に,口径 25 [mm] ~ 1,000 [mm] までの埋設管の探知が可能である。また,探査深度についても土質,舗装条件などによって異なるが,一般に,1.5 [m] ~ 数 [m] までの探査が可能である。電磁波レーダ法の特徴は,電気特性が探査対象物の周辺の伝搬媒体である土と異なるものであれば,埋設管の材質は金属,非金属とも探査可能であり,埋設管の探査のほか,空洞の探査などにも利用できる。
電磁誘導法
電磁誘導法による探査は,周辺の金属管や誘導体の影響を受け 2 次誘導が発生することがある。
電磁誘導法による探査は,地中の金属媒体に誘導電流を流して金属媒体から発生する誘導磁界を地上から計測するものであり,一般に,地中の空洞の計測はできない。
電磁誘導法は,地中に埋設された光ファイバケーブルの鋼心などに発信機から信号を送り,金属媒体から発生する誘導磁界を地上で測定することにより,埋設物の深度を探査する方法である。
2-1-3. 通信管路の災害対策
通信土木設備は重要なライフラインである通信サービスを支える基盤であり,ネットワークとしての機能を確保するために,構造物として受ける自然災害による地盤変動等に対応できる強度を持ち,かつ近接工事や加害,環境条件等による物理的,化学的作用に対しても信頼できるものでなければならない。
自然災害対策(盛土区間,液状化地盤,軟弱地盤等)
地震により液状化が予想される地域において管路を設置する場合は,金属管を使用し,マンホールからの第 1 接続点で管路と管路の接続部に伸縮継手を使用する。
地盤が軟弱地盤から土質が異なる地盤に急変する箇所に管路を施設する場合は,硬質ビニル管単独又は金属管単独とし,金属管の場合は離脱防止継手を使用し,硬質ビニル管の場合は短尺化した管を使用する。
管路内の水の滞留による凍結のおそれがある区間における管路の縦断線形は,中だるみを避け,やむを得ない場合は,管路のダクト口に水,土砂などの流入を防ぐダクト止水栓を設置する。
耐震対策・誘導対策を考慮した管路材料の適用(ダクトスリーブ,管路差込継ぎ手,管路離脱防止継ぎ手等)
マンホールダクト部において,地震時の地盤変状などに起因して生ずる相対変位によるコンクリートの剥離などを抑える対策として,スチールファイバコンクリートを用いて耐荷力の向上を図る方法がある。
ダクトスリーブ
管路とマンホールの接続部においては,ダクトスリーブ構造とすることにより地震時に生ずる管路とマンホールの相対変位を吸収し,安全性の向上を図る方法がある。
スチールファイバコンクリート
スチールファイバコンクリートは通常のコンクリートに比べて引張強度や曲げ強度が大きく,優れたじん性を持ち合わせたコンクリートである。コンクリート 1 m3 あたり約 100 万本のスチールファイバを混入し,分散させると,通常のコンクリートに比べてひび割れ抵抗や耐久力が大幅に向上する。
2. 通信土木設備設計 2-2. マンホール
マンホールの設計では,規格化されている部材類の組み合わせで信頼性を確保することになるが,災害の影響を適切に見積もって設計することが肝要である。
2-2-1. マンホールの設計
占有位置選定
マンホールの設置箇所は,一般に,ケーブルの布設作業,ケーブルの接続分岐点,引上げケーブルの分岐点など,屋外線路設備としての必要事項を検討し,選定されている。
橋梁添架の橋詰マンホールは,橋梁の架け替え工事に支障を及ぼさない位置とし,一般に,橋台から約 15 [m] 以上離れた位置が選定されている。
首部構造の決定
マンホールの首部は,通常円形であり長さは 0.5 [m] であるが,既設埋設物との関係でマンホールの土被りが深くなり首部の長さが 1.5 [m] を超える場合は,現場打ちコンクリートによる角型の構造とする。
2-2-2. マンホールの建設工法
現場打ちマンホール・ブロックマンホールの特徴と施工手順
建設工法で分類すると現場で鉄筋コンクリートを打設する現場打ちマンホールと,分割したパーツを現場に運搬,据え付けるブロックマンホールに分けられる。通信土木工事では,現場作業期間が短縮できかつ品質が安定したブロックマンホールが一般的に普及しているが,形状が複雑で規格以外となる場合や,既設マンホール更改でブロックの搬入作業が困難な場合は,現場打ちマンホールが採用される。また,マンホールを材質で分類すると鉄筋コンクリートマンホールとレジンコンクリートマンホールがある。レジンコンクリートは,鉄筋コンクリートに比べ強度が大きくブロックマンホールに採用されている。
マンホールのダクト口には,地下水,土砂などの流入を防止するため,止水栓などを設置する。
2-2-3. マンホールの災害対策
地震により液状化が予想される地域にマンホールを築造する場合は,一般に,セメントコンクリート製とし,その周辺にグラベルドレーンを施す。
グラベルドレーン工法(砕石パイル工法)は,砂地盤中に砕石のパイルを設けることで水平方向の排水距離を短縮し,地震時に生じる間隙水圧の上昇を抑止して,液状化を防止する。市街地など振動や騒音が懸念される場所での施工や既設構造物周辺での施工も可能な液状化対策工法である。
地震により液状化が予想される地域にマンホールを設置する場合は,一般に,レジンコンクリート製と比較して重量の大きいセメントコンクリート製が適している。
地震により液状化が予想される地域のマンホールに施されるグラベルドレーン工法は,マンホール周辺に砕石を配置することにより液状化による過剰間隙水圧を消散し,マンホールの浮上がりを防止している。
2. 通信土木設備設計 2-3. とう道
とう道は都市内の幹線ルートとして多数の通信ケーブルを収容する設備であり,管路・マンホール以上に設計要件を固めて設計する必要がある。様々な情報通信サービスは,通信土木設備の信頼性を前提として展開されており,通信土木設備の防災設計がシステム化による対策や復旧対策の要となっている。
2-3-1. とう道の設計
開削式とう道の縦断線形は,道路の縦断勾配,埋設物,必要な土被り,排水,歩行,資材運搬の容易性などを考慮して決定され,一般に,勾配が設けられている。
2-3-2. とう道の建設工法
とう道設備の施工方法には,シールド工法と開削工法があり,とう道の断面形状は,一般に,シールド工法では円形,開削工法では矩形である。
開削工法
開削によるとう道の施工では,土留めを設置しながら路上から掘削作業を行い,掘削溝内に矩形とう道躯体を構築した後,その周囲の埋め戻しを行う。また,躯体の建造方法は,掘削後の型枠組立て,鉄筋組立て,コンクリート打設を現地で行う現場打ち方式と,コンクリート製ボックスカルバートをプレキャスト製品化(工場生産)し,現地へ搬入して連結,据付けを行うブロック方式がある。
ボックスカルバートとは,主に地中に埋設され,水路や通信線などの収容に使われる箱型のコンクリート構造物のことである。その用途は多岐に渡り,地下道・貯留槽など様々なインフラ事業で活用されている。ボックスカルバートは,プレキャスト化することで,品質が安定し,工期の短縮につながる。
開削式とう道の縦断線形では,道路の縦断勾配,埋設物,必要な土被り,排水,歩行,資材運搬の容易性などを考慮して決定されるが,一般に,勾配が設けられている。
シールド工法
埋設震度が比較的深く,開削工法ではコスト的に割高になる場合や,交通事情の悪化,施工時の騒音・振動等の周辺地域への影響,埋設物の輻輳等の問題が発生する恐れのある都市部では,主にシールド工法が採用されている。シールド工法とは,円筒形のシールドマシンを地中に推進させ,その内部で前面の掘削を行いながら,鋼製またはコンクリート製のトンネル壁を組立てていく工法である。シールド工法の選定にあたって最も重要な点は,土質,水圧等の地盤条件の下で切羽根(シールドマシン前面)の安定が図れ,掘削排土等を効率的に行うことのできるシールド形式を選定することである。
シールド式とう道の構造としては,外側に 1 次覆工,内側に 2 次覆工が設けられ,2 次覆工は,防食,防水,蛇行修正などを目的としている。
2-3-3. とう道の災害対策
とう道は設置されるケーブルにまで被害が及ばないように,大規模な地震に対して十分な強度設計がなされる。しかしながら,浸水や洪水が接続点において発生するため,後述する対策が開発されている。
開削工法とう道フレキシブルジョイント
開削工法とう道伸縮接手において,建物や立坑との取付部で段差が生じることによる損傷を防止するために用いられる。
シールド工法とう道接続部のフレキシブルジョイント
シールド工法とう道と立坑との取付部を維持するために用いられる。
3. 通信線路伝送工学 3-1. ケーブルの伝送理論
3-1-1. メタリックケーブル・同軸ケーブルの伝送理論
専門分野・通信線路 対策ノート「メタリックケーブル・同軸ケーブルの伝送理論」を参照
3-1-2. 光ファイバケーブルの伝送理論
専門分野・通信線路 対策ノート「光ファイバケーブルの伝送理論」を参照
参考文献
- 浅川 美利,『土質工学演習』,鹿島出版会,1984年4月10日 第1刷発行
- 基盤設備(通信土木設備)とは? | 事業内容 | NTTインフラネット
- ケーブル収容管再生技術|NTTアクセスサ-ビスシステム研究所
- JT-L92 屋外設備に対する災害管理
- 「特殊専用橋の耐震性評価技術」,NTT アクセスサービスシステム研究所,2013年
- 電線共同溝のはなし|株式会社カナエ
- 道路:無電柱化の推進 - 国土交通省「無電柱化の概要と事務手続き」
- 道路:無電柱化の推進 - 国土交通省「手法・工程」