平成25年度 第1回 線路及び設備管理

2020年6月18日作成,2021年1月3日更新

問1

(1) 通信ケーブル設備の概要

通信ケーブルは、心線の材料及び構造の違いにより、平衡対ケーブル、同軸ケーブル及び光ファイバケーブルに分類することができる。

平衡対ケーブルは、電気通信サービスの高速・広帯域化を実現する上で、損失と雑音の低減が大きな課題となる。設備センタとユーザ宅を結ぶアクセス系平衡対ケーブルの損失は、周波数が高くなるに従い増加する特性を示し、4 [kHz] 程度までは緩やかに増加し、100 [kHz] を超えると、表皮効果による抵抗の増加などにより、急激に増加する。さらに、アクセス系平衡対ケーブル設備では、メタリック心線の融通を確保するため、一般に、ブリッジタップが存在し、ブリッジタップの先端部分は開放されているため,反射が生ずることから、特に、ADSL 回線では、損失が増加し、伝送速度が低下する要因となる場合がある。

また、平衡対ケーブルに生ずる雑音としては、高圧送電線などから受ける誘導雑音、束ねられた他の心線から電流が誘起され定常的に生ずる漏話雑音、手ひねり接続された部分の電気抵抗が振動などで変化することにより生ずる時々断に伴う雑音などがある。

一方、光ファイバケーブルは、平衡対ケーブル及び同軸ケーブルと比較して極めて低損失で高速・広帯域伝送に適しているため、アクセス系及び中継系ネットワークに広く用いられている。また、光ファイバケーブルでは、伝送媒体であるガラスが無誘導である特性を生かし、テンションメンバなどの構成材料をすべてノンメタリック化した IF ケーブルが誘導対策用として用いられている。

通信ケーブルの種類・特性及び適用」参照

(2) 設置環境に応じた光ファイバケーブルの構造など

(ⅰ) 架空用光ファイバケーブル

  1. 丸型ケーブルを架渉する方法としては、あらかじめ、つり線を電柱間に架線しておき、丸型ケーブルをケーブルリングやラッシングワイヤなどを用いてつり線に添架する方法がある。(
  2. 架空用光ファイバケーブルを既設の架空線路区間に新設する場合において、電柱及び支持線の安全率に余裕があるとき、螺旋状のハンガを用いて架空用光ファイバケーブルを既設ケーブルと一束化して架渉することにより、架空空間を効率的に利用する方法がある。(
  3. FTTH における架空区間では、光ファイバテープ心線を収容するスロットロッドの撚り方向を同一方向として撚りピッチを変えた SZ 撚りの架空用光ファイバケーブルを用いることにより、光ファイバテープ心線の弛みを利用した中間後分岐作業が行われている。(
  4. FTTH の設備形態において、ユーザ宅への引込みに用いられるドロップ光ファイバケーブルには、落雷時のサージ電流対策などのため、テンションメンバに非導電性である FRP を用いているものがある。(

正しくは「撚り方向を一定の間隔で反転させる」である。

(ⅱ) 地下用光ファイバケーブル

  1. テープスロット型光ファイバケーブルは、スロットロッドの螺旋状などに撚られた溝に光ファイバテープ心線を積層した構造であり、テープスロット型光ファイバケーブルには、高密度実装の多心光ファイバケーブルがある。(
  2. 地下用光ファイバケーブルに用いられるタイト型ケーブルでは、布設張力などによる伸び率は、一般に、2 [%] 程度まで許容されている。(
  3. 非ガス保守方式では、地下用光ファイバケーブルが外被に損傷を受けても浸水部分が広がらないようにするため、一般に、スロットロッドと外被との間にアルミテープを巻いた WB ケーブルが用いられる。(

正しくは,B.「0.2 [%] 程度まで許容」,C.「(不織布に吸水材料が塗布してある)WB テープ」である。

(3) 光ファイバの分散、光中継伝送システムの概要など

(ⅰ) 光ファイバの分散及び各種光ファイバの特徴

  1. 光ファイバのコア形状のわずかなゆがみから複屈折が生ずることにより、光ファイバ中を伝搬する二つの偏波モード間に伝搬時間差が生ずる現象は、偏波モード分散といわれ、波形劣化の要因となる。(
  2. マルチモード光ファイバにおいて、光ファイバ中を伝搬する伝搬モードごとに伝搬速度が異なる現象は、モード分散といわれる。グレーデッドインデックス光ファイバでは、モード分散の大きさは波長分散の大きさと比較して小さい。(
  3. 分散シフト光ファイバは、低損失な波長帯域である 1.55 μm 帯における波長分散をゼロとするために材料分散の値を変化させた屈折率分布を持つ光ファイバであり、高速伝送システムの伝送媒体に適している。(
  4. ノンゼロ分散シフト光ファイバは、すべての波長帯域において波長分散がゼロとならない光ファイバであり、WDM システムにおける波長の異なる複数の光信号の位相整合性を高めることにより非線形光学効果を抑制することが可能である。(

正しくは,2.「モード分散の大きさは波長分散の大きさと比較して大きい」,3.「最小」,4.「1.55 μm 帯での非線形現象を抑制した光ファイバ」である。

(ⅱ) 光中継伝送システムの概要

  1. 3R 機能を有する再生中継器を用いた光中継伝送システムでは、中継器数の増加により雑音は累積されないが波形劣化は累積され、SN 比が低下する要因となる。(
  2. 線形中継器を用いた光中継伝送システムでは、光信号をそのまま直接増幅しているため柔軟に伝送速度を選択できる、波長の異なる複数の光信号の一括増幅が可能であるなどの特徴がある。(
  3. WDM 方式を用いた光中継伝送システムにおける光信号の波形劣化要因である非線形光学効果として、自己位相変調、四光波混合などがある。自己位相変調を抑える方法としては、使用波長を不等間隔で配置する方法がある。(
  4. WDM 方式を用いた光中継伝送システムにおける雑音としては、発光源雑音、入力光信号の持つ量子雑音であるショット雑音、受光素子での誘導放出による ASE 雑音などがあり、SN 比が低下する要因となる。(

再生中継方式では、中継を繰り返しながら信号を伝送するため、中継区間が増加しても雑音やひずみが累積することはなく、長距離伝送が可能である。

正しくは,3.「四光波混合」,4.「熱雑音」である。

問2

(1) 通信土木設備の概要

通信土木設備は、収容ケーブル条数などにより、一般に、管路設備、中口径管路設備及びとう道設備の 3 種類に大別され、さらに、管路設備は、一般管路設備と地下配線管路設備に分けられる。

一般管路設備は、一般に、呼び径 75 [mm] の管を多条多段に積んで地表面下 1 ~ 2 [m] 程度に埋設したものである。管種には、硬質ビニル管、鋼管、鋳鉄管などがあり、液状化の危険度、電磁誘導対策の要否など埋設場所の環境条件に応じて選択採用される。特に、電磁誘導対策には主に鋳鉄管が用いられる。また、一般管路設備には、作業者が入孔してケーブル接続などの作業空間を確保できるマンホールが設置されている。

地下配線管路設備には、呼び径 25 [mm] 及び 50 [mm] の管路 1 条ごとに通信ケーブルを収容する方式、呼び径 150 [mm] の管に通信ケーブルを複数収容するフリーアクセス単管方式などが適用されている。

中口径管路設備は、一般に、呼び径 250 〜 500 [mm] の管を、主に非開削施工により埋設したものであり、管内をスペーサなどにより区分して通信ケーブルを収容するものである。中口径管路とマンホールとの取付部には、地震時に応力が集中しやすいため、一般に、軸方向及び軸直角方向の地盤変位を吸収するダクトスリーブが設置されている。

通信土木の概要」参照

(2) 通信土木設備における不良設備の点検、補修など

(ⅰ) マンホールの不良事象とその対策

  1. 鉄蓋と受枠上面との段差が大きくなるとガタツキが生じ、さらに、車両通過時の衝撃荷重が重なると鉄蓋の飛び上がり、通行車両の破損などの重大事故につながるおそれがある。(
  2. マンホール首部やマンホール躯体の設備不良はマンホール設備の構造破壊につながり、通信設備としての信頼性及び道路占用物としての安全性に重大な影響を及ぼすおそれがある。(
  3. マンホール躯体のひび割れ、破損などの補修には、ひび割れや破損した箇所を V 字形にはつり、無収縮急結セメントの充填及びエポキシ系樹脂の塗布により補修する方法がある。(
  4. マンホール鉄蓋の磨耗、ガタツキなどによる蓋鳴りの防止対策としては、鉄蓋と受枠との隙間部に硬質ポリエチレンを充填することにより、鉄蓋の回転や移動を抑制する方法がある。(

正しくは「軟質ウレタン」である。

(ⅱ) 通信土木設備の診断、補修など

  1. コンクリートの劣化の程度を診断するためには、コンクリート構造物の劣化現象から劣化機構を特定しなければならない。劣化機構の一つとしては、本来アルカリ性であるコンクリートが外部環境の影響を受けてアルカリ性を失う現象であるポップアウトがある。(
  2. ケーブルが収容されていない不良管路の補修には、開削による補修と非開削による補修がある。このうち非開削補修には、管内洗浄工法、ビニル管矯正技術などが用いられる。(
  3. 橋台際の橋梁添架管路が腐食している場合、腐食している区間の管路を切断後撤去し、補修用半割管を取り付けることにより、橋台の破砕を不要にした補修方法がある。(

正しくは「中性化」である。

(3) 光海底ケーブルの故障位置の測定など

(ⅰ) 中継光海底ケーブルの絶縁故障位置の測定など

  1. 片端給電の中継光海底ケーブルシステムでは、海中区間での光海底ケーブルの絶縁故障が一箇所でも発生すると、その故障発生箇所がどの中継区間であってもすべての光海底中継器へ給電することができなくなる。(
  2. 片端給電の中継光海底ケーブルシステムでは、海中区間での光海底ケーブルの絶縁故障が発生した場合、光海底ケーブルの静電容量を測定することにより、高精度の絶縁故障点位置の判定が可能である。(
  3. 両端給電の中継光海底ケーブルシステムでは、海中区間での光海底ケーブルの絶縁故障が複数箇所あっても絶縁故障箇所が 1 中継区間内であれば、すべての光海底中継器への給電が継続可能である。(
  4. 海中区間での光海底ケーブルの絶縁故障位置の探索において、両端給電の中継光海底ケーブルシステムは、片端給電の中継光海底ケーブルシステムと異なり、ベルヌーイの法則により絶縁故障点での接地抵抗分の測定誤差への影響が打ち消されるため、絶縁故障点位置の測定精度が上がる。(

正しくは,1.「故障個所までの中継器までは給電することができる」,2.「絶縁故障が発生した場合,静電容量測定は不可能である」,4.「」である。

(ⅱ) 光海底ケーブルの故障修理方法

  1. 深海部における非埋設の光海底ケーブルの故障修理では、一般に、カットアンドホールドグラプネルを用いて光海底ケーブルを引っ掛けることにより船上に引き揚げた後に光海底ケーブルを切断する。(
  2. 深海部における光海底ケーブルの故障修理では、故障点を除去した後に修理用予備ケーブルを割り入れる必要があり、その割入れケーブル長は、一般に、水深の 2 ~ 2.5 倍程度を必要とする。(
  3. 光海底ケーブルの故障修理での後埋設作業において、海底の地盤が硬い粘土の場合、ROV(Remotely Operated Vehicle)のウォータジェット機能は、海底の地盤が砂質の場合と比較して埋設効率が高い特性を有している。(
  4. ケーブルが特に込み合っている海域での埋設ケーブルの故障修理における探線作業には、ROV を活用することが有効であるが、ROV の最大適用水深は 500 [m] 程度に限定される。(

正しくは,1.「光海底ケーブル切断と同時に片側端を船上に回収する」,3.「下線部が逆」,4.「2,500 [m] まで可能なものがある」である。

問3

(1) 光ファイバの強度保証など

光ファイバが破断する原因の一つは、一般に、光ファイバ全長にわたって確率的に傷が存在することである。光ファイバに張力を加えたときの破断強度は、傷が大きいほど低く、光ファイバが長くなり大きな傷を有する確率が増えるほど、確率的に低下する。

破断強度と破断確率の関係は、一般に、ワイブル分布を示し、低張力で破断する確率は強度の指数関数で急激に減少する。また、光ファイバの表面に傷を与える原因としては、プリフォームから光ファイバへの線引き時における、ほこり、急激な温度変化などが考えられる。

光ファイバの強度を保証するために、光ファイバに張力を加えることにより弱い部分を破断させるスクリーニング試験といわれる選別試験が JIS で規定されている。この試験は光ファイバの製造時及び融着接続後の強度試験として用いられ、この試験により弱い部分が取り除かれるため、選別された光ファイバの破断確率を極力低く抑えることが可能となる。

また、光ファイバケーブルは、布設時などに生ずる伸びを許容値以下に抑える必要があることから、ケーブル内に適切な機械的強度を保持するための部材が使用されている。この部材としては伸びを小さくするため、ヤング率が一定以上大きいものが必要であり、一般に、鋼、アラミド繊維などが使用されている。

通信ケーブルの種類・特性及び適用」参照

(2) 光ファイバケーブルの試験、保守方法など

(ⅰ) OTDR を用いた光ファイバケーブルの光パルス試験

  1. 光パルス試験では、光ファイバの接続損失を測定することができる。接続損失の測定については、片端からの測定で、平均化回数を増やすことにより両端からの測定と同じ精度で接続損失の値を求めることができる。(
  2. 光パルスを光ファイバに入射すると、光ファイバのコア内の微小な屈折率の揺らぎによって生ずるレイリー後方散乱光が入射端に戻ってくる。光パルスの入射端から遠い点からのレイリー後方散乱光ほど累積されて戻ってくるため光パワーは大きくなる。(
  3. 光パルスを光ファイバに入射すると、破断点などの屈折率の急峻な変化のある箇所では、大きなフレネル反射光が生ずるが、コネクタ接続点ではフレネル反射は生じない。(
  4. レイリー後方散乱光やフレネル反射光は、反射点までの距離に見合った時間を経過した後に、入射端に戻ってくる。このようにして戻ってきた光は、OTDR において、光方向性結合器を用いて分離し、取り出した後、電気信号に変換することにより観測波形として画面表示させることができる。(

正しくは,1.「ブリルアン散乱光の周波数分布を測定・解析することにより」,2.「近い点」,3.「コネクタ接続点でもフレネル反射が生ずる」である。

(ⅱ) 光ファイバの心線対照方法

  1. 光ファイバケーブルの建設工事では光ファイバの誤切断や誤接続を防止するため、心線対照作業により該当の光ファイバであるか否かを確認するが、地下光ファイバケーブルの故障修理における光ファイバ心線切替作業では既設設備を管理している設備管理簿などを利用するため、一般に、心線対照作業は不要とされている。(
  2. 光ファイバ ID テスタを用いた心線対照において、現用通信光の波長が 1.55 [μm] の場合、一般に、心線対照光の波長としては、現用通信光より短い波長の 1.31 [μm] を適用する。(
  3. 光ファイバ ID テスタを用いた心線対照において、心線対照光には、自然光や現用通信光の漏洩光などの心線対照光以外の光パワーによる誤検出を防止するため、変調光が用いられる。(

正しくは,A.「心線対照作業は必要である」,B.「長い波長の 1.65 [μm]」である。

(ⅲ) 光ファイバケーブル及び光ファイバケーブル接続部の浸水対策など

  1. ガス保守方式は、一般に、ケーブルの内部に大気圧よりも高い圧力の乾燥空気を送り込み、長手方向におけるガス圧分布を測定することにより、ガスが漏洩している位置を探索し、故障位置を判定する方法を用いている。(
  2. 光ファイバケーブルの場合、マンホールなどにおいて、ケーブルの内部が浸水しても直ちに故障にはつながらないため、非ガス保守方式が適用でき、防水構造の光ファイバケーブルと接続点における浸水検知技術を併用することによって光ファイバの破断寿命の短縮などを防いでいる。(
  3. 非ガス保守用として用いられる WB ケーブルは、ケーブル外被の亀裂から浸水しても吸水材が膨張しながらゲル化して間隙を埋めるため、止水することができる。(
  4. マンホール内の光ファイバケーブル接続点に取り付けられる浸水検知モジュールは、吸水材が水を含むことにより膨張して可動体を押し上げることで、監視用の光ファイバ心線を断線させる。この断線箇所は、光パワーメータにより特定できる。(

浸水検知モジュールは,光ファイバに圧力をかけ,曲げを発生させる構造になっており,この作用により増加した光ファイバの損失を,OTDR で検知する。

(ⅱ) 可視光源などを用いたケーブル保守方法

次の問は,選択肢が不適であるため削除

  1. 中継系光ファイバケーブルの保守作業において、光ファイバ断線時には、一般に、OTDR に備わっている可視光源を用いて入射端から故障点までの距離を推定する。
  2. ケーブル保守作業に用いられる可視光源としては、一般に、赤外線と比較して波長が長い可視光を出力する青色 LED が用いられる。
  3. 中心波長が 650 [μm] 程度の光を出力する可視光源は、現場付け光コネクタの組立て作業時の導通確認や光ファイバの破断箇所の探索などを目視により行うために用いられている。
  4. LED による可視光は、1.55 μm 帯を用いた光伝送システムの信号光と比較して、光パワーは小さいが伝送損失も小さいため、アクセス系光伝送システムを構成する光ケーブルの全区間を対象としたケーブル保守作業における試験光として有効である。

問4

(1) 職場における安全活動など

働きやすく、安全な職場を作るためには、創意工夫などによって常により良い職場に改善する姿勢と努力が必要である。

創意工夫などを引き出すための手法としては、安全改善提案制度やツールボックスミーティングなどがある。

ツールボックスミーティングは、職場などの第一線監督者を中心として、その日の作業の内容や方法、段取り、問題点などについて、短時間に話し合ったり、指示伝達を行ったりするものである。

職場改善の観点から創意工夫などを引き出すための手法の一つとして、ヒヤリハット運動がある。ヒヤリハット運動は、重大な事故には至らないものの、事故に直結してもおかしくない一歩手前の事例を発見し、その原因を解消する運動である。ヒヤリハット運動は、労働災害における経験則の一つであるハインリッヒの法則などに基づいており、重大な事故の発生を未然に防止するための有効な活動とされている。

労働災害の原因のうち、人的要因によるミスは、ヒューマンエラーといわれる。ヒューマンエラーに起因する事故などを防止することを目的に、イラストや写真を用いたシートを活用し、職場の小単位のグループで行う短時間の訓練は、危険予知訓練(KYT)といわれ、KYT の進め方としては、現状把握、本質追究などの各段階を経て進めていく 4R 法がある。

また、先取り安全の取組みの一つとして、リスクアセスメントがある。リスクアセスメントは、職場に潜在する危険性又は有害性を洗い出して特定し、それらのリスクを見積り、評価し、そのリスクを低減するための措置と優先度を検討して低減措置の実施を体系的に進める手法である。リスクアセスメントの実施は、労働安全衛生法において、事業者の努力義務とされている。

安全管理」参照

(2) JIS Z 8115 : 2000 ディペンダビリティ(信頼性)用語

(ⅰ) 管理に関する用語

  1. 信頼性実証とは、試験及びフィールドデータを基にしてアイテムの信頼性特性値を推定する行為をいう。(
  2. 信頼性改善とは、系統故障の原因除去、その他の故障発生確率の低減及びそれら両者を考慮した活動によって、信頼性を向上させるための明確な意図をもって行うプロセスをいう。(
  3. 信頼性・保全性計画書とは、ある契約又はプロジェクトについて、与えられた信頼性・保全性性能に関する要求事項をアイテムが確実に満たすために必要な特定の実施方法、資源及び活動を記載した文書をいう。(
  4. 信頼性・保全性保証とは、アイテムが与えられた信頼性・保全性性能の要求事項を満たすという確証を得るのに必要な、適切で計画的、かつ、体系的な活動を実施する行為をいう。(

信頼性実証とは,アイテムに要求される信頼性特性値の実証をいう。

(ⅱ) 解析に関する用語

  1. 故障解析とは、故障メカニズム、故障原因及び故障が引き起こす結果を識別し、解析するために行う、故障したアイテムの論理的、かつ、体系的な調査検討をいう。(
  2. ストレスモデルとは、下位アイテムのフォールトモード、外部事象又はこれらの組合せのいずれかが、アイテムに与えられたフォールトモードを発生させることを示す論理図をいう。(
  3. ストレス解析とは、アイテムが与えられた条件の下で遭遇する物理的、化学的又はその他のストレスの種類とそれによる影響を決める行為をいう。(
  4. フォールト位置特定とは、ある保全実施単位のもとで、フォールトを発生している単数又は複数の下位アイテムの種類とその部位を特定する活動をいう。(

ストレスモデルとは,所定のストレスがアイテムの信頼性性能値,又はその他の特性に与える影響を説明する数学モデルをいう。

フォールトの木とは、下位アイテムのフォールトモード、外部事象又はこれらの組合せのいずれかが、アイテムに与えられたフォールトモードを発生させることを示す論理図をいう。

(3) 基板の信頼性

次の文章は、10,000 個のメモリ素子を組み込んだ基板の信頼性について述べたものである。ただし、基板は偶発故障期間にあり、メモリ素子個々の故障率は同一値とし、$\log_{e}0.99 = -0.01$、$e^{-0.1}=0.9$ とする。

基板の使用開始後 50 時間における信頼度が 0.99 であるとき、メモリ素子 1 個当たりの故障率は、20 [FIT] である。また、この基板の使用開始後 500 時間以内に故障する確率は、10 [%] である。

基板の故障率を $\lambda$ とすると,基板の使用開始後 50 時間における信頼度が 0.99 であるので,次式が成り立つ。

\[ \exp(-\lambda \times 50)=0.99 \] \[ -\lambda \times 50 = \log_{e}0.99=-0.01 \]

上式より,$\lambda=2\times10^{-4}$ である。

10,000 個のメモリ素子を組み込んだ基板の故障率は $\lambda$ であるので,メモリ素子 1 個当たりの故障率は,次式で求められる。

\[ \frac{\lambda}{10000}=2\times10^{-8} \]

1 [FIT] は,故障率 1 × 10-9 であるので,FIT 単位に換算すると,メモリ素子 1 個当たりの故障率は,20 [FIT] である。

故障率の表記として,$1 \times 10^{-9}$ [件/時間] を単位とした FIT(Failure In Time / Failure Unit)が用いられることもある。

この基板の使用開始後 500 時間以内に故障する確率は,次式で求められ,10 [%] である。

\[ 1-\exp(-500 \times \lambda)=1-\exp(-500 \times 2 \times 10^{-4})=1-\exp(0.1)=0.1 \]

問5

(1) ログの取得方法など

OS、アプリケーション、通信機器などにおける業務プロセスの実行記録はログといわれ、ログを確認することで装置の稼働状態、処理の実行状態、障害の発生状況などを把握できる。

どのようなログを取得するかはそのログの使用目的を考慮する必要がある。不正アクセスがあったときに、その実行者を特定するためには、一般に、システムを利用した人の ID や操作記録が必要である。また、不正プログラムがシステム設定を変更したことを知るためには、プログラムの動作記録を取得することが有効である。一方、ファイアウォールにはアクセス制御やアクセスに関する履歴を取得する機能があり、IDS には、ネットワークを流れるパケットを監視し、不正アクセスと思われるパケットを発見したときにアラームを表示し、通信記録を保存する機能を持つものがある。しかし、例えばファイアウォールで通信の許可や拒否の履歴をすべて取得するとなると、その量は膨大となるため、どこまでログを取得するかの見極めが重要となる。

セキュリティインシデントが発生した場合、一般に、一つの装置のログだけではなく複数の装置のログを突き合わせて原因究明を行う必要がある。ログを突き合わせるためには各装置の時刻合わせが必須であり、その方法として、世界の各所に存在する NTP サーバから正確な時刻を取り込む、組織内に NTP サーバを構築して組織内の情報システムの時刻合わせを行うなどの方法がある。また、syslog はリモートホストにログをリアルタイムに送信することができる機能を提供する仕組みであり、この機能を用いて各サーバのログを 1 か所に集めることでログの一元管理を実現できる。

その他の情報セキュリティ対策」参照

(2) ISMS の要求事項を満たすための管理策

JIS Q 27001 : 2006 に規定されている、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の要求事項を満たすための管理策

  1. 情報及び情報処理施設と関連する資産のすべてについて、組織の中に、その管理責任者を指定しなければならない。(
  2. 情報セキュリティ基本方針文書は、監督官庁に届出を行った後、全従業員に公表し、通知しなければならない。(
  3. 経営陣は、組織の確立された方針及び手順に従ったセキュリティの適用を従業員、契約相手及び第三者の利用者に要求しなければならない。(
  4. 装置は、環境上の脅威及び災害からのリスク並びに認可されていないアクセスの機会を低減するように設置し、又は保護しなければならない。(

情報セキュリティのための方針群は,これを定義し,管理層が承認し,発行し,従業員及び関連する外部関係者に通知しなければならない。つまり「監督官庁への届出」は不要である。

(3) コンピュータウイルスの予防対策など

  1. コンピュータウイルスに感染したと思われる兆候が見られたら、一般に、コンピュータの異常な動作を止めるために直ちに再起動を行い、その後コンピュータウイルスを駆除するのが最善策とされている。(
  2. セキュリティホールを利用して感染するタイプのコンピュータウイルスに対しては、一般に、ウイルス対策ソフトウェアのウイルス定義ファイルにより OS のバージョンアップを行い、セキュリティホールを塞ぐ方法が用いられている。(
  3. リムーバブルメディアを介したコンピュータウイルスの感染を防ぐ方法の一つとして、パーソナルコンピュータのオートラン機能を無効にする方法がある。(

(4) 工程管理に用いられる手法

(ⅰ) 工程表の種類と特徴

  1. 縦軸に出来高を置き、横軸に日数をとって各作業の工程(進捗度合い)を示した工程表は、グラフ式工程表などといわれ、各作業の計画工程と実施工程が視覚的に対比できるが、どの作業が全体工期に影響を及ぼすかが把握しにくい。(
  2. 縦軸に作業内容や作業人員を置き、横軸に期間(時間)をとって、各作業内容や作業人員の所要期間を視覚的に示した工程表は、一般に、バナナ曲線といわれる。(
  3. バナナ曲線において、実施工程曲線が下方許容限界曲線を下回るときは、工程が進み過ぎており、一方、実施工程曲線が上方許容限界曲線を上回るときは、工程が遅れていると判断できる。(
  4. 縦軸に進捗度を置き、横軸に日数をとって各作業を折れ線で示す横線式工程表は、一般に、バーチャートといわれる。(
  5. 縦軸に作業内容を置き、横軸に各作業の達成率をとるガントチャートは、一般に、各作業の所要日数は分からないが、作業の順序が分かる。(

正しくは,2.「バーチャート」,3.「遅れており」「進み過ぎている」,4.「曲線式工程表」「出来高累積曲線」,5.「各作業の所要日数は分からず,作業の順序も分からない」である。

(ⅱ) ネットワーク式工程表による工程管理

図 ネットワーク式工程表
  1. 結合点(イベント)番号 4 の最早結合点時刻は、5 日である。(
  2. 結合点(イベント)番号 5 の最遅結合点時刻は、8 日である。(
  3. 作業 B の日程を短縮することにより、全体工期を短縮することが可能である。(
  4. 作業 C のフリーフロートは、1 日である。(
  5. 作業 E は、最早結合点時刻で作業を開始すると、所要日数 4 日に対して 2 日遅れても全体工期に影響を及ぼすことはない。(

正しくは,1.「6 日」,2.「9 日」,3.「はできない」,4.「」である。

フリーフロートとは,最早開始時刻で作業をはじめ,後続作業も最早開始時刻ではじめてもなお存在する余裕。

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