平成29年度 第2回 線路及び設備管理

2019年6月5日作成,2021年1月2日更新

問1

(1) GE-PON 及び GE-PON に用いられる光受動部品の概要

光アクセスネットワークの形態の一つに,設備センタ内の OLT とユーザ宅内の ONU との間に光受動部品を設置し,1 心の光ファイバを複数の ONU で共有する PDS 方式を採用したものがある。

PDS 方式を用いた光アクセスネットワークの一つである GE-PON では,1 心の光ファイバから複数の光ファイバに光信号を分岐する光受動部品として,一般に,平面光波導波路(PLC)型の光スプリッタが用いられている。4 分岐と 8 分岐の PLC 型光スプリッタを組み合わせて設備センタ内の 1 心の光ファイバで最大 32 ユーザを収容する構成では,1 ユーザの伝送路における分岐による原理的な光損失は約 15 [dB] となり,伝送距離を制限する要因となる。

また,GE-PON では,WDM 方式による双方向多重伝送技術が用いられており,設備センタからの下り信号には 1.49 μm 帯の波長帯域が割り当てられている。さらに,光ネットワークを保守・監視するための試験光には信号光とは別の波長帯域が割り当てられており,一般に,戸建て向けの GE-PON では,通信に影響を及ぼすことなく試験を行うことができるように ONU の直前にファイバグレーティングを利用して試験光を遮断する光フィルタが組み込まれている。ファイバグレーティングは紫外線照射によるガラスの屈折率の増加現象を利用して光ファイバの屈折率を周期的に変化させたものであり,光コネクタに内蔵されている場合もある。

PDS(Passive Double Star)は,NTT が開発した PON の具体的な通信方式の一つ。

32 ユーザを収納する構成の光損失

1 つの分岐での損失は 1/2 で,32 ユーザ(25 ユーザ)を収容する構成の分岐による原理的な光損失は次式となる。

\[ 10 \log_{10}{(\frac{1}{2})^5} = -50 \log_{10}{2} = -50 \times 0.3 = -15 \text{ [dB]} \]
GE-PON システム
図 GE-PON システム

(2) メタリック平衡対ケーブル及び光ファイバケーブルの構造,特徴など

(ⅰ) メタリック平衡対ケーブルの構造又は特性

  1. メタリック平衡対ケーブルの直流導体抵抗値は,導体の長さに比例し,心線径に反比例する。また,温度が高くなるほど直流導体抵抗値は低下する。(
  2. 架空用メタリック平衡対ケーブルとしては,ケーブルと鋼撚り線が一体となった自己支持(SS)形ケーブルが施工面において優れていることから,広く用いられている。また,SS 形ケーブルは,断面形状がひょうたん形であることから,強風によるダンシング現象を抑制することができるため,強風地帯にも適している。(
  3. 地下用メタリック平衡対ケーブルと架空用メタリック平衡対ケーブルは,一般に,仕様をできるだけ同一にする必要があるため,心線径は,0.4 [mm],0.5 [mm] 及び 0.65 [mm] の 3 種類に統一されている。(
  4. 地下用メタリック平衡対ケーブルには,外被構造をアルミテープとポリエチレン(PE)外被を一体化した LAP 構造とし,心線絶縁材料として PE 内に気泡を含ませることにより誘電率を抑えた発砲 PE を用いた PEC ケーブルがある。(

メタリック平衡対ケーブルの直流導体抵抗値は,導体の長さに比例し,心線径の 2 乗に反比例する。また,温度が高くなるほど直流導体抵抗値は増加する。

架空用メタリック平衡対ケーブルとしては,ケーブルと鋼撚り線が一体となった自己支持(SS)形ケーブルが施工面において優れていることから,広く用いられている。また,SS 形ケーブルは,断面形状がひょうたん形であることから,強風によるダンシング現象が増加するため,強風地帯には適していない

地下用メタリック平衡対ケーブルと架空用メタリック平衡対ケーブルは,一般に,経済性を考慮し,地下ケーブルの心線径は,0.32 [mm],0.4 [mm],0.5 [mm],0.65 [mm] および 0.9 [mm] の 5 種類に統一されている。また,架空用メタリックの心線径は,0.4 [mm],0.5 [mm],0.65 [mm] および 0.9 [mm] の 4 種類に統一されている。

(ⅱ) メタリック平衡対ケーブルの漏話など

  1. メタリック平衡対ケーブルの漏話には,誘導回線の電流の方向と同じ方向へ誘起電流が伝搬される近端漏話と,逆方向へ伝搬される遠端漏話がある。ISDN 回線による ADSL 回線への漏話の影響については,一般に,近端漏話と比較して遠端漏話からの影響を強く受ける。(
  2. メタリック平衡対ケーブルの漏話には,同一カッド内のペア相互間の静電結合によって生ずるものがある。カッド崩れが起きた場合は,静電結合が大きくなるため,漏話も大きくなる。(
  3. メタリック平衡対ケーブルにおける心線の撚り合わせ方法としては,一般に,心線収容効率,漏話特性などを考慮して 2 心線を撚り合わせたペアを,さらに,ペアどうしで撚り合わせた星形カッド撚りが用いられている。(

メタリック平衡対ケーブルの漏話には,誘導回線の電流の方向と同じ方向へ誘起電流が伝搬される遠端漏話と,逆方向へ伝搬される近端漏話がある。ISDN(Integrated Services Digital Network : サービス総合ディジタル網)回線による ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line : 非対称デジタル加入者線)回線への漏話の影響については,一般に,遠端漏話と比較して近端漏話からの影響を強く受ける。

近端漏話と遠端漏話
図 近端漏話(Near end crosstalk)と遠端漏話(Far end crosstalk)

メタリック平衡対ケーブルにおける心線の撚り合わせ方法としては,一般に,心線収容効率,漏話特性などを考慮して 4 本の導体を四角に配列して共通の軸回りに一括して撚り合わせた星形カッド撚りが用いられている。

(ⅲ) 光ファイバケーブルの構造,特徴など

  1. 1,000 心のテープスロット型光ファイバケーブルは,中心部に抗張力体を持ち,スロットロッドの周りに 12 個のスロットを有する構造であり,8 心テープ型光ファイバ心線が 11 個のスロットに 10 テープずつ,12 心テープ型光ファイバ心線が 1 個のスロットに 10 テープそれぞれ積層されている。(
  2. 地下用多心光ファイバケーブルは,一般に,抗張力体を中心に光ファイバテープ心線を収納したスロットロッドと外被などによって構成され,スロットロッドと外被の間に吸水テープを巻いた FR ケーブルや,難燃性外被を施した IF ケーブルなどがある。(
  3. 架空用光ファイバケーブルのうち,ケーブル部と支持線との間の首部に窓を開けた構造の SS ケーブルは,首部に窓を設けていない構造の SS ケーブルと比較して,強風によるダンシング現象が生じにくい特徴を有している。(
  4. 誘導を受けないという光ファイバの特性を生かすため,金属を全く使用しない構造でノンメタリック化した光ファイバケーブルでは,抗張力体としてヤング率が鋼線の 4 倍程度の繊維強化プラスチック(FRP)が用いられている。(

1,000 心のテープスロット型光ファイバケーブルは,中心部に抗張力体を持ち,スロットロッドの周りに 13 個のスロットを有する構造であり,8 心テープ型光ファイバ心線が 12 個のスロットに 10 テープずつ,8 心テープ型光ファイバ心線が 1 個のスロットに 5 テープそれぞれ積層されている。

8 心 × 12 スロット × 10 テープ + 8 心 × 1 スロット × 5 テープ = 960 + 40 = 1,000 心

地下用多心光ファイバケーブルは,一般に,抗張力体を中心に光ファイバテープ心線を収納したスロットロッドと外被などによって構成され,スロットロッドと外被の間に吸水テープを巻いた WB ケーブルや,難燃性外被を施した FR ケーブルなどがある。

誘導を受けないという光ファイバの特性を生かすため,金属を全く使用しない構造でノンメタリック化した光ファイバケーブルでは,抗張力体としてヤング率が鋼線の 25 % 程度の繊維強化プラスチック(FRP)が用いられている。

(ⅳ) 布設環境に応じた光ファイバケーブルの特徴,布設方法など

  1. テープスロット型光ファイバケーブルの布設時における最小許容曲げ半径は,布設が一過性であるため,一般に,固定時における最小許容曲げ半径と比較して小さい。(
  2. 地下用光ファイバケーブルでは,管路内布設時における張力による伸び率は,一般に 2 [%] 程度まで許容されている。(
  3. 地下管路区間とケーブル布設では,光ファイバケーブルに捻回が生じないように,ケーブルとプーリングアイとの間に撚り返し金物を取付け,布設方法が先端牽引方法の場合であって布設張力がケーブルの許容張力を超えるときは,布設ルートの中間で 8 の字取り工法などが用いられる。(
  4. 電柱に架渉されている既設のメタリックケーブルなどと同ルートに新たなケーブルをオーバーレイする架渉技術として一束化技術があり,既設のケーブルを支持母体として,新設する光ファイバケーブルをらせん状ハンガを用いて一束化する方法がある。(

テープスロット型光ファイバケーブルの布設時における最小許容曲げ半径は,動的側圧の影響を少なくするため,一般に,固定時における最小許容曲げ半径と比較して大きい

地下用光ファイバケーブルでは,管路内布設時における張力による伸び率は,一般に 0.2 [%] 程度まで許容されている。

地下管路区間とケーブル布設では,光ファイバケーブルに捻回が生じないように,ケーブルとプーリングアイとの間に撚り返し金物を取付け,布設方法が先端牽引方法の場合であって布設張力がケーブルの許容張力を超えるときは,布設ルートの中間で中間牽引機などが用いられる。

問2

(1) 通信土木設備工事における管路の設置など

通信土木設備は,一般に,公共道路に設置されるため,通信土木設備工事を実施する場合,占用企業者は,道路法に基づく道路占用許可の取得が必要である。

通信土木設備である管路の線形は,道路形状,埋設物などに応じて曲線を設けることは避けられない。その場合,ケーブルの布設性などを考慮して曲線半径の許容範囲が設けられる。

また,管路内の水の滞留による凍結のおそれがある区間における管路の縦断線形は,中だるみを避け,やむを得ない場合は,管路のダクト口に水,土砂などの流入を防ぐダクト止水栓を設置する。

一方,河川などを横断する道路橋での管路の添架位置は,道路橋桁の両側又は道路橋の床版の下で,洪水時の流水などによる外力,直射日光などの影響を受けにくい箇所が選定されている。架線などを横断する適当な道路橋が確保できない場合,通信ケーブル専用の橋が架橋され,その形式の一つとして,溝形鋼の主桁と L 形鋼などの横桁・横構を組み合わせた構造の圧延鋼桁橋がある。

専門的分野・通信土木 対策ノート」参照

(2) 電線類の地中化,無電柱化工事の費用負担など

(ⅰ) 電線類の地中化など

  1. 国土交通省が整備を進めている道路管理用光ファイバケーブルを収容するために道路の地下に設けられる施設は,C. C. BOX といわれ,空いている管があれば,占用許可を取得することにより,電気通信事業者も利用することができる。(
  2. 電線類地中化区間に選定されたルートにおいては,事業者が保有する既存の設備を活用することにより,地中化工事の施工コストの低減を図る必要がある。(
  3. 2 以上の公益事業者の公益物件を収容するため道路管理者が道路の地下に設ける施設は,一般に,共同溝といわれ,共同溝には,電気通信,電気,ガス,上下水道などの事業者の設備を収容することができる。(
  4. 幹線道路などの地下に設けられ,通信ケーブルの布設,接続及び保守修理ができる空間が確保されているトンネル形式の施設は,一般に,とう道といわれ,施工方法としては,シールド工法や開削工法などがある。(

国土交通省が整備を進めている道路管理用光ファイバケーブルを収容するために道路の地下に設けられる施設は,情報 BOX といわれ,空いている管があれば,占用許可を取得し,占用料を支払うことにより,電気通信事業者も利用することができる。

(ⅱ) 無電柱化に伴う材料費,敷設費などの工事費の費用負担

  1. 電線共同溝方式では,電線共同溝の整備等に関する特別措置法に基づき,道路管理者及び電線管理者が費用負担する。(
  2. 単独地中化方式では,全額を電線管理者が費用負担する。(
  3. 自治体管路方式では,管路設備の材料費を地方公共団体が費用負担し,管路設備の敷設費を電線管理者が費用負担する。(
  4. 要請者負担方式は,無電柱化協議会で優先度が低いとされた箇所などで要請者の要望で無電柱化を実施する場合に適用され,原則として,全額を要請者が費用負担する。(

自治体管路方式では,管路設備の構築に伴う全費用(材料費及び敷設費等)を地方公共団体が負担し,ケーブル敷設に関する費用を電線管理者が費用負担する。

(3) 光海底ケーブルシステム及び光海底ケーブルの構造,機能など

(ⅰ) 無中継光海底ケーブルシステム及び中継光海底ケーブルシステム

  1. 無中継光海底ケーブルシステムでは,光海底中継器を使用しないため,給電を必要としないことから,光海底ケーブルは,銅などの金属を使用しないで光ファイバ心線,プラスチック,ポリエチレンなどから構成されている。(
  2. 無中継光海底ケーブルシステムは,中継光海底ケーブルシステムと比較して多くの光ファイバペアを実装でき,無中継光海底ケーブルシステムには,光ファイバ実装数が 100 心の光海底ケーブルを適用したものがある。(
  3. 中継光海底ケーブルシステムの光ファイバペア数は,光海底中継器回路数の制限から最大で 3 である。(
  4. 中継光海底ケーブルシステム及び無中継光海底ケーブルシステムでは,水深 8,000 [m] 程度まで光海底ケーブルを敷設することがあるため,光海底ケーブルの最大適用水深はいずれも 8,000 [m] である。(

無中継光海底ケーブルシステムでは,光海底中継器を使用しないため,給電を必要としないことから,光海底ケーブルは,銅や鉄などの金属を使用して,光ファイバ心線,プラスチック,ポリエチレンなどを保護している

中継光海底ケーブルシステムの光ファイバペア数は,光海底中継器回路数により決まる。回線数は光増幅デバイスや電源回路の小型化及びケーブル構造の改良により増加しており,現在は 8 ファイバペアのものが採用されている。

中継光海底ケーブルシステム及び無中継光海底ケーブルシステムでは,水深 8,000 [m] 程度まで光海底ケーブルを敷設することがあるが,敷設場所に応じた適用水深が定められている

(ⅱ) 光海底ケーブルの構造,機能など

  1. 伝送容量の増大に伴い,曲げ損失を抑えるためにコア部分への光パワーの閉じ込めを弱くして実効断面積を拡大した光ファイバを用いた光海底ケーブルが導入されている。(
  2. 鉄 3 分割パイプ形光海底ケーブルに用いられている銅チューブは,光海底ケーブルシステムの給電路としての役割を担っているが,一般に,銅チューブ内部の光ファイバに有害な水素ガスの侵入を阻止する役割は担っていない。(
  3. 光海底ケーブルシステムに用いられる光海底ケーブルの構造において,タイトタイプ構造は,ルースタイプ構造と比較して,光ファイバへのストレスを低減でき,偏波モード分散を小さく抑えることができる。(
  4. 陸揚局近傍の浅海域では,漁労や錨などにより光海底ケーブルが損傷を受けやすいため,一般に,鋼線を一重又は二重に撚り込んで保護した外装ケーブルが使用されている。(

高い光信号パワーによる非線形光学効果の影響を抑圧するためにコア部分への光パワーの閉じ込めを弱くして実効断面積を拡大した光ファイバを用いた光海底ケーブルが導入されている。

鉄 3 分割パイプ形光海底ケーブルに用いられている銅チューブは,光海底ケーブルシステムの給電路としての役割を担っているが,一般に,銅チューブ内部の光ファイバに有害な水素ガスの侵入を阻止する役割も担っている

光海底ケーブルシステムに用いられる光海底ケーブルの構造において,ルースタイプ構造は,タイトタイプ構造と比較して,光ファイバへのストレスを低減でき,偏波モード分散を小さく抑えることができる。

問3

(1) WDM システムの概要

WDM システムでは,光合分波器を用いて 1 心の光ファイバに波長の異なる複数の光信号を多重化する方法が採られており,さらに,それぞれの波長の光信号において,時分割多重化方式を利用することが可能である。

WDM システムに用いられる WDM 方式には,CWDM とDWDM があり,CWDM の波長間隔は,高精度な波長安定化回路を必要としないで済むよう TTC 標準において 20 [nm] と規定されている。

なお,WDM システムは,一般に,ポイント・ツー・ポイント型を基本構成とするが,波長単位での光信号のクロスコネクトやアドドロップの機能などを組み合わせることにより,メッシュ型やリング型のネットワークを構成することが可能である。

また,線形中継器を多段につないで中継する WDM システムでは,光ファイバの非線形光学効果に起因する四光波混合による SN 比劣化と,相互位相変調及び波長分散による波形劣化を生ずる場合がある。四光波混合による SN 比劣化を緩和するために,信号波長としてゼロ分散波長と一致しない波長帯を利用するなどの方法が採られている。

中継系光ファイバケーブルの伝送技術」参照

クロスコネクト(XC : cross-connect)
多重化されたディジタル信号において,特定のパスの分岐・挿入をしたり,一度で多数の異なる方面の宛先別に接続替えをしたりする回線編集機能を持つ装置である。
アドドロップ(ADM : add-drop)
特定のパスだけを付加したり切り離したりして各方面に振り分ける装置である。

(2) 光ファイバケーブルの保守方法

(ⅰ) 光ファイバケーブルの非ガス保守など

  1. 光ファイバケーブルは,メタリックケーブルとは異なり,ケーブル内に水が浸入しても直ちに伝送特性には影響を及ぼさないが,浸水を長期間放置した場合は,ケーブル内の金属の腐食などにより発生する水素の影響で損失が増加し,伝送特性に影響を及ぼす場合がある。(
  2. 光ファイバケーブルの保守方法には,光ファイバケーブル内での浸水の防止対策の違いにより,ケーブル内部に防水材料を充填する非ガス保守方式を用いる方法や,ケーブル内部に大気圧と比較して高い圧力の乾燥空気を送り込むガス保守方式を用いる方法がある。(
  3. 地下用クロージャなどの接続部に設置した浸水検知モジュールは,水が浸入すると光ファイバ心線に曲げを与え,破断させる構造となっており,破断位置を OTDR で検出することにより浸水位置を特定することができる。(
  4. 非ガス保守方式を適用する光ファイバケーブルに用いられる WB テープは,浸水すると水を吸収し,膨張しながらゲル化してケーブルの隙間を埋め尽くすことにより,止水ダムを形成してそれ以上の浸水を防止するものである。(

地下用クロージャなどの接続部に設置した浸水検知モジュールは,水が浸入すると光ファイバ心線に曲げを与え,曲げ損失を発生させる構造となっており,曲げ損失を OTDR で検出することにより浸水位置を特定することができる。

(ⅱ) OTDR による測定など

  1. 光ファイバに光パルスを入射して伝搬させると,コア内の微小な屈折率の揺らぎによって生ずるレイリー散乱光の一部が入射端に戻ってくる。OTDR による測定は,このレイリー散乱光が入射端に戻ってくる現象などを利用したものである。(
  2. OTDR による測定において,被測定光線路と始端と終端や光コネクタ接続部に現れる不要なフレネル反射の影響を取り除くには,ダイナミックレンジを大きく設定する方法がある。(
  3. 光ファイバケーブルの光ファイバ心線は,地震などにより引張り応力が加わり,ひずみが生ずると,突然,破断に至ることがある。この破断の発生を予測するには,B-OTDR を用いて光ファイバの長さ方向に分布するひずみを測定する方法がある。(

OTDR による測定において,被測定光線路と始端と終端や光コネクタ接続部に現れる不要なフレネル反射の影響を取り除くには,ダミー光ファイバを接続する方法がある。

(ⅲ) 光ファイバの心線対照

  1. 光ファイバの ID テスタを用いた心線対照において,現用通信光の波長が 1.55 [μm] の場合,心線対照光の波長としては,一般に,現用通信光より短い波長の 1.31 [μm] が用いられる。(
  2. 光ファイバ ID テスタを用いた心線対照において,心線対照光には,自然光や現用通信光からの漏洩光などの心線対照光以外の光パワーによる誤検出を防止するため,一般に,変調光が用いられる。(
  3. 光ファイバケーブルの建設・保守作業における打合せ回線を確保するために,空き心線を使用した光通話器が用いられる場合がある。光通話器は,携帯電話と異なりダイヤル操作の必要はないが,1 心の光ファイバを用いた場合,片方向の通話に制限され,通話できる区間も最長 5 [km] 程度に限定される。(
  4. 光ファイバ断線時において,断線箇所を探知するため可視光源を利用する場合がある。可視光源としては,一般に,出力光を直視しても目の嫌悪反応によって,目が保護されるクラス 4 のレーザ安全規格を満たしている赤色 LD が用いられる。(

光ファイバの ID テスタを用いた心線対照において,現用通信光の波長が 1.55 [μm] の場合,心線対照光の波長としては,一般に,現用通信光より長い波長の 1.65 [μm] が用いられる。

光ファイバケーブルの建設・保守作業における打合せ回線を確保するために,空き心線を使用した光通話器が用いられる場合がある。光通話器は,携帯電話と異なりダイヤル操作の必要はないが,1 心の光ファイバを用いた場合,双方向の通話が可能となり,通話できる区間も最長 50 [km] 程度に限定される。

光ファイバ断線時において,断線箇所を探知するため可視光源を利用する場合がある。可視光源としては,一般に,出力光を直視しても目の嫌悪反応によって,目が保護されるクラス 2 のレーザ安全規格を満たしている赤色 LD が用いられる。

(ⅳ) 通信ケーブルにおける生物被害対策

  1. リスのかじりによる架空ケーブルの損傷を防ぐ対策としては,HS ケーブルに更新する方法,また,局所的には PVC シートにステンレスを貼り付けた防リステープなどでケーブルを防護する方法がある。(
  2. キツツキによる被害を受けるおそれがある場所では,一般に,ケーブル外被の内側に FRP を巻いた構造のケーブルを用いることにより,FRP 層で損傷を止める方法が採られている。(
  3. 架空ケーブル区間において,ガの幼虫が接続端子函の中に入り込み,酸性度の強い体液を心線に付着させることにより,PE 被覆を溶かし絶縁不良を引き起こす場合がある。対策としてはアルミテープを心線に巻きつける方法がある。(
  4. クマゼミの産卵管によるドロップ光ファイバケーブルの断線故障の対策としては,外被を高強度化したドロップ光ファイバケーブルを用いる方法に替えて,ノッチを無くすことにより産卵管を心線に誘導してしまうことを防止するとともに心線取出し作業も容易にしたドロップ光ファイバケーブルを用いる方法が採られている。(

キツツキによる被害を受けるおそれがある場所では,一般に,ケーブル外被の内側にステンレステープを巻いた構造の HS ケーブルを用いることにより,ステンレステープで損傷を止める方法が採られている。

架空ケーブル区間において,ガの幼虫が接続端子函の中に入り込み,酸性度の強い体液を心線に付着させることにより,PE 被覆を溶かし絶縁不良を引き起こす場合がある。対策としては設備に接触している木の枝,蔦などの植物を除去する方法がある。

クマゼミの産卵管によるドロップ光ファイバケーブルの断線故障の対策としては,外被を高強度化したドロップ光ファイバケーブルを用いる方法が主流である

問4

(1) 建設業労働安全衛生マネジメントシステムガイドライン

建設業労働災害防止協会が定めた建設業労働安全衛生マネジメントシステムガイドライン(以下,ガイドラインという。)は,平成 11 年 4 月に厚生労働省が公表した労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針に基づき,建設業の固有の特性を踏まえ,必要な安全衛生管理の仕組みを示したものである。

ガイドラインは,建設事業を行う事業者が,労働者の協力の下に,店社と作業所が一体となって,計画-実施-評価-改善という一連の過程を定めて継続的に行う自主的な安全衛生活動を促進することにより,建設事業場における労働災害の潜在的危険性を低減するとともに,労働者の健康の増進及び快適職場の形成の促進を図り,もって建設事業場における安全衛生水準の向上に資することを目的としている。

また,ガイドラインにおける建設業労働安全衛生マネジメントシステム(以下,システムという。)とは,建設事業場において,安全衛生方針の表明,安全衛生目標の設定,安全衛生計画の作成,実施及び運用,日常的な点検及び改善,システム監査,システムの見直し等の一連の過程を定めて連続的かつ継続的に実施する安全衛生管理に関する仕組みであって,施工管理等の建設事業の実施に係る管理に関する仕組みと一体となって実施され,及び運用されるものをいう。

建設事業場におけるシステムを確立し,適切に実施し,及び運用するため,建設事業者が実施する基本的事項には,特定された危険又は有害要因等を踏まえ,安全衛生方針に基づき,安全衛生目標を設定すること,安全衛生目標の設定及び安全衛生計画の作成に当たり,安全衛生委員会の活用等労働者の意見を反映する手順を定め,この手順に基づき,労働者の意見を反映することなどがある。

安全管理」参照

(2) システムの信頼性

(ⅰ) 故障率分布の一般的な特徴など

  1. ある部品の故障率が CFR 型を示す期間内にあるとき,この部品の寿命分布は,正規分布に従う。(
  2. ある部品の故障率が CFR 型を示す期間内にあるとき,この部品の時間当たりの故障の起こる割合は一定で,その故障発生の時期の予測が可能である。(
  3. ある部品の故障率が DFR 型を示す期間内にあるとき,この部品はある時間帯で集中的に故障する傾向があり,故障が集中的に起こる直前に事前取替を行うことで未然に故障を防止できる。(
  4. ある部品の故障率が DFR 型を示す期間内にあるとき,この部品の使用に先立ち,バーンインなどによりスクリーニングを行うことで故障率の低い良品を選ぶことができる。(

ある部品の故障率が CFR(Constant Failure Rate : 偶発故障期)型を示す期間内にあるとき,この部品の寿命分布は,指数分布に従う。

ある部品の故障率が CFR 型を示す期間内にあるとき,この部品の時間当たりの故障の起こる割合は一定で,その故障発生の時期の予測が不可能である。

ある部品の故障率が IFR(Increasing Failure Rate : 摩耗故障器)型を示す期間内にあるとき,この部品はある時間帯で集中的に故障する傾向があり,故障が集中的に起こる直前に事前取替を行うことで未然に故障を防止できる。

(ⅱ) MTBF 及び MTTF

  1. ある装置の偶発故障期間中の故障率が,1 時間当たり 0.02 であるとき,MTBF は,50 [時間] である。(
  2. 装置の使用開始してから故障するまでの時間の平均である MTTF は,修理を前提としない装置で用いられる。(
  3. 装置を使用開始してから最初に故障するまでの時間は,MTBF を計算する際の稼働時間の和に含めない。(
  4. MTBF を求める方法として,偶発故障期間中のある期間を区切って数台の装置の動作を観測し,その期間中の延べ総動作時間を延べ総故障数で除する方法がある。(

装置を使用開始してから最初に故障するまでの時間は,MTBF を計算する際の稼働時間の和に含める

(3) 10,000 個のメモリ素子を組み込んだ基板 A の信頼性

基板 A は偶発故障期間にあるものとし,$\log_e 0.99 = -0.01$,$e^{-0.025} = 0.975$ とする。

基板 A の使用開始後 200 時間における信頼度が 0.99 であるとき,メモリ素子 1 個の故障率は,5 [FIT] である。また,基板 A の使用開始後 500 時間以内に故障する確率は,2.5 [%] である。ただし,メモリ素子個々の故障率は同一値とする。

基板の故障率を $\lambda$ としたとき,使用開始後 200 時間における信頼度が 0.99 であるので,次式が成り立つ。

\[ 0.99 = e^{-200 \lambda} \] \[ \log_e 0.99 = \log_e e^{-200 \lambda} \] \[ -0.01 = -200 \lambda \]

よって,$\lambda = 5 \times 10^{-5}$ である。基板 A には 10,000 個のメモリ素子が組み込まれており,メモリ 1 個の故障率は,$5 \times 10^{-5} / 10000 = 5 \times 10^{-9}$ = 5 [FIT] である。

また,基板 A の使用開始後 500 時間以内に故障する確率は,次式で求められる。

\[ 1-e^{-500 \lambda} = 1 - e^{-500 \times 5 \times 10^{-5}} = 1-e^{-0.025}=1-0.975=0.025 = 2.5 \text{ [%]} \]

問5

(1) 情報システムへの攻撃の手法

情報の奪取などを行う攻撃の手法には,パスワードクラック,バッファオーバフロー,不正なコマンド注入などがある。

パスワードクラックには,英数記号などのあらゆる文字の組合せを総当たりで試行するブルートフォース攻撃,よく使う単語などを登録しておきこれらを組み合わせて試行する攻撃などがある。

バッファオーバフローは,対象となる OS やアプリケーションの脆弱性を利用してサーバを操作不能にしたり,特別なプログラムを実行させて管理者権限を奪うことなどに用いられる。

不正なコマンド注入の一つとして,データベースに連動した Web サイトに入力するデータの中に悪意のあるコマンドを混入し,Web 管理者の想定外の処理を発生させることにより,データベースからの情報漏洩やデータの改ざんを引き起こす SQL インジェクションがある。

ネットワークセキュリティ対策」参照

(2) ISMS の要求事項を満たすための管理策

JIS Q 27001 : 2014 に規定されている,ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の要求事項を満たすための管理策

  1. プログラムソースコードへのアクセスは,制限しなければならない。(
  2. 情報セキュリティのための方針群は,これを定義し,管理層が承認し,発行し,全ての従業員に通知しなければならず,関連する外部関係者に対しては秘匿しなければならない。(
  3. パスワード管理システムは,対話式でなければならず,また,良質なパスワードを確実とするものでなければならない。(
  4. 装置は,可用性及び完全性を継続的に維持することを確実にするために,正しく保守しなければならない。(

情報セキュリティのための方針群は,これを定義し,管理層が承認し,発行し,全ての従業員及び関連する外部関係者に通知しなければならない

(3) コンピュータシステムへの脅威

  1. 他人のコンピュータに不正に侵入し,無断でプログラムやデータを書き換えるなどの行為は,一般に,クラッキングといわれる。(
  2. インターネット上でサービスを提供しているサーバに対し,パケットを大量に送りつける,セキュリティホールを悪用するなどにより,サーバが提供しているサービスを利用不能にする攻撃は,一般に,DoS 攻撃といわれる。(
  3. 金融機関などによる正規の電子メールや Web サイトを装い,暗証番号やクレジットカード番号などを入力させて個人情報を盗む行為は,一般に,スキミングといわれる。(

金融機関などによる正規の電子メールや Web サイトを装い,暗証番号やクレジットカード番号などを入力させて個人情報を盗む行為は,一般に,フィッシングといわれる。

ちなみに,スキミングとはクレジットカードに書き込まれている磁気ストライプを読み取り,同じ情報を持つ「偽造カード(クローンカード)」を作成し不正利用する犯罪のことである。

(4) 工程表の種類と特徴

  1. 縦軸に進捗度を置き,横軸に日数をとって各作業を折れ線で示す横線式工程表は,一般に,バーチャートといわれる。(
  2. 縦軸に作業内容を置き,横軸に各作業の達成率をとるガントチャートは,一般に,各作業の所要日数は分からないが,作業の順序が分かる。(
  3. 縦軸に作業内容や作業人員を置き,横軸に期間(時間)をとって,各作業内容や作業人員の所要期間を視覚的に示した工程表は,一般に,バナナ曲線といわれる。(
  4. バナナ曲線において,実施工程曲線が下方許容限界曲線を下回るときは,工程が進み過ぎており,一方,実施工程曲線が上方許容限界曲線を上回るときは,工程が遅れていると判断できる。(
  5. 縦軸に出来高を置き,横軸に日数をとって各作業の工程(進捗度合い)を示した工程表は,グラフ式工程表などといわれ,各作業の計画工程と実施工程が視覚的に対比できるが,どの作業が全体工程に影響を及ぼすかが把握しにくい。(

縦軸に進捗度を置き,横軸に日数をとって各作業を折れ線で示す曲線式工程表は,一般に,出来高累計曲線といわれる。

縦軸に作業内容を置き,横軸に各作業の達成率をとるガントチャートは,一般に,各作業の所要日数は分からないが,作業の順序も分からない

縦軸に作業内容や作業人員を置き,横軸に期間(時間)をとって,各作業内容や作業人員の所要期間を視覚的に示した工程表は,一般に,バーチャートといわれる。

バナナ曲線において,実施工程曲線が下方許容限界曲線を下回るときは,工程が遅れており,一方,実施工程曲線が上方許容限界曲線を上回るときは,工程が進み過ぎていると判断できる。

(5) 建設副産物適正処理推進要綱に基づく建設廃棄物の処理など

  1. 元請業者は,建設廃棄物の排出に当たり,処理を委託する場合,契約の簡素化及び処理作業の一元化を図るため,運搬と処分について同一業者と一括契約することが望ましい。(
  2. 元請業者は,建設廃棄物の処理に当たり,処理を委託する場合,産業廃棄物管理票(マニフェスト)を産業廃棄物処理業者に確実に交付することにより,再生を含む最終処分が完了したことの確認を省略することができる。(
  3. 元請業者は,指定建設資材廃棄物である建設発生木材の処理において,工事現場から最も近い再資源化のための施設までの距離が 10 [km] を超える場合,再資源化に代えて埋め立て処分することができる。(
  4. 元請業者は,現場において分別できなかった混合廃棄物について,選別等を行う中間処理施設を活用し,再資源化等及び再資源化されたものの利用の促進に努めなければならない。(

元請業者は,建設廃棄物の排出に当たり,処理を委託する場合,運搬と処分についてそれぞれ個別に契約する

元請業者は,建設廃棄物の処理に当たり,処理を委託する場合,産業廃棄物管理票(マニフェスト)を産業廃棄物処理業者に確実に交付することにより,再生を含む最終処分が完了したことの確認する

元請業者は,指定建設資材廃棄物である建設発生木材の処理において,工事現場から最も近い再資源化のための施設までの距離が 50 [km] を超える場合,再資源化に代えて縮減することができる。

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