平成22年度 第2回 線路及び設備管理

2020年6月27日作成,2021年1月4日更新

問1

(1) 光ファイバ伝送システムの中継方式

光ファイバ伝送システムの中継方式には、再生中継方式と線形中継方式がある。再生中継方式は、各中継器内で光信号をいったん電気信号に変換し、等化増幅、タイミング抽出、識別再生のいわゆる 3R 処理を施した後、再び光信号に変換して送出する方式であり、線形中継方式は、光信号を電気信号に変換せず、光ファイバ増幅器により光信号を直接増幅して中継する方式である。

再生中継方式では、送信機の能力を最大限に活用して高レベルの光信号を送出し、再生中継間隔の拡大を図ることができる。一方、線形中継方式では、高レベルの光信号を送出すると、光ファイバの非線形光学効果による波形ひずみが顕著になるため、送出信号レベルが制限される。また、線形中継方式を用いた伝送システムでは、中継数の増加に伴って累積する光雑音により SN 比の低下が生じ、さらに、光ファイバの分散による波形劣化も増大し、伝送システムの符号誤り特性に影響を及ぼす。

しかしながら、線形中継方式は、光信号を直接増幅しているため、超高速領域まで柔軟に伝送速度の選択が容易であり、また、WDM 方式を適用した伝送システムに用いることで、波長の異なる複数の信号の一括増幅を実現できることから、伝送容量を大幅に拡大することが可能であるなどの優れた特徴を有している。

中継系光ファイバケーブルの伝送技術」参照

(2) 光ファイバケーブル及びメタリックケーブルの特性など

(ⅰ) 光ファイバケーブルの構造及び光ファイバの特性

  1. 光ファイバケーブルの構造は、タイト形とルース形に大別することができる。一般に、タイト形ケーブルの場合、許容伸び率の目安は 2 [%] 程度であるが、ルース形ケーブルの場合は、ルースチューブなどに収容される光ファイバに余長を持たせることにより、4 [%] 程度の伸び率まで許容される構造となっている。(
  2. 光ファイバケーブルの基本構造において、層撚り形は、テープ形光ファイバ心線をあらかじめ成型した溝形のスロット内に収容することで高密度の実装が可能となる構造を有している。(
  3. 光ファイバの両端を把持し、一定速度で端を引っ張ると光ファイバの伸びひずみが大きくなり破断する。このような試験を長さが一定の光ファイバについて、多数回繰り返すことにより得られる光ファイバの破断応力と累積破断確率の関係を示す動的疲労特性は、一般に、ワイブル分布になる。(
  4. 光ファイバはガラス特有の脆性があるため、光ファイバを用いて線路を構成するうえで、光ファイバの機械的強度のうち、圧縮強度は特に考慮しなければならない重要な要素である。(

正しくは,1.「0.2 [%]」「0.4 [%]」,2.「テープスロット型」,4.「引張強度」である。

(ⅱ) 光ファイバ心線などの構造及び特性

  1. 光ファイバ心線は、一般に、1 次被覆された光ファイバ素線を UV 硬化型樹脂、ポリアミド樹脂などの 2 次被覆で被覆した構造を有している。(
  2. テープ形光ファイバ心線は、複数本の光ファイバ心線を整列し、UV 硬化型樹脂でテープ状に一括被覆したもので、2 心、4 心、8 心テープなどがあるが、融着接続により一括接続できる心線数は、最大 4 心である。(
  3. 光ファイバ素線の 1 次被覆の主な役割は、光ファイバの表面の保護であるが、側圧が加わった際に発生するひずみの光ファイバへの影響を軽減させる緩衝効果もある。(

8 心以上を一括接続できるものもある。

(ⅲ) メタリックケーブルの構造及び特性

  1. 地下ケーブルと架空ケーブルでは、要求される伝送特性などが同一のため、心線径は、0.4 [mm]、0.65 [mm] 及び 0.9 [mm] の 3 種類に統一されている。(
  2. メタリックケーブルの直流導体抵抗値は、導体の長さに比例し、心線径に反比例する。また、温度が高くなるほど直流導体抵抗値は低下する。(
  3. キツツキ、蛾の幼虫、リスなどの鳥虫獣による被害の防止対策に用いられる架空ケーブルとして、波付ステンレスラミネートテープで外被を補強・保護した HS ケーブルがある。HS ケーブルは、強風地域での外被亀裂(リングカット)に対する対策としても有効である。(
  4. 架空ケーブルとしては、ケーブルと鋼撚り線が一体となった自己支持(SS)形ケーブルが施工面において優れていることから、広く用いられている。また、SS 形ケーブルは、断面形状がひょうたん形であることから、強風によるダンシング現象を抑制することができるため、強風地帯にも適している。(

地下ケーブルの心線径は,0.32 [mm],0.4 [mm],0.5 [mm],0.65 [mm] および 0.9 [mm] の 5 種類,架空用メタリックの心線径は,0.4 [mm],0.5 [mm],0.65 [mm] および 0.9 [mm] の 4 種類に統一されている。

メタリックケーブルの直流導体抵抗値は、温度が高くなるほど直流導体抵抗値は増加する。

SS 形ケーブルは、断面形状がひょうたん形であることから、ダンシング現象を受けやすい。

(ⅳ) アクセス系メタリック平衡対ケーブルの漏話など

  1. メタリックケーブルにおける平衡対の構成方法は、一般に、心線使用効率、漏話特性などを考慮して 2 心線を撚り合わせた対を、さらに、対どうしで撚り合わせた星形カッドが用いられている。(
  2. メタリックケーブル内の各対の 2 本の導線を撚ることにより漏話は軽減でき、隣接する対どうしで撚りピッチを変えると、撚りピッチを同一にした場合と比較して大きな軽減効果が得られる。(
  3. 低周波(音声周波)におけるメタリックケーブルの漏話は、電磁結合による漏話が支配的となるため、静電結合による漏話対策を考慮する必要はない。(
  4. メタリックケーブルを用いた伝送方式において、漏話雑音は、音声を中心としたアナログ信号を伝送する場合に発生する特有な雑音であり、デジタル信号を伝送する場合には発生しない。(

1. 正しくは「DM カッド」である。なお,4 心の導体を正方形に配列し、共通の軸回りに一括して撚り合わせたものは星形カッド撚りといわれる。

2. 二つの回線間の電気的な結合には静電結合と電磁結合があるが,メタリック伝送の音声回線においては,電磁結合の漏話に対する影響は小さく,静電結合が支配的である。

4. 漏話雑音は,デジタル信号を伝送する場合にも発生する。

問2

(1) 光海底ケーブルの構造

光海底ケーブルには、樹脂で被覆された光ファイバ心線を中心鋼線の周りに撚り合わせ、さらに、樹脂で充填された光ファイバユニットを実装したものがある。

光ファイバユニットの樹脂層には、温度変化による樹脂の収縮・膨張などによって生ずる光ファイバのマイクロベンドを抑制するために、内層と外層とでヤング率の異なる材料を使い分けているものがある。

光ファイバユニットは、抗張力及び耐水圧構造を有する複合金属体に収容されており、さらに、ケーブル切断時における海水の浸入を抑えるために、複合金属体内部の空隙及び複合金属体と光ファイバユニットとの空隙には水走り防止材が充填されている。

水底線路の概要」参照

(2) 通信土木設備の概要

(ⅰ) マンホールの設置箇所、形状など

  1. マンホールの設置箇所は、一般に、ケーブルの布設作業、ケーブルの接続分岐点、引上げケーブルの分岐点など、屋外線路設備としての必要事項を検討し、選定されている。(
  2. 橋梁添架の橋詰マンホールは、橋梁の架け替え工事に支障を及ぼさない位置とし、一般に、橋台から約 15 [m] 以上離れた位置が選定されている。(
  3. マンホールには、一般に、躯体の寸法や形状を規格で定めた標準マンホールと個別に寸法や形状を検討して定める特殊マンホールがあり、標準マンホールの形状には、直線形と分岐形がある。(
  4. マンホールには、一般に、躯体のケーブル取り付け部にケーブルダクトが成形された額縁、地震時に管路の突き出しを吸収する伸縮継手、躯体の外側に管路周辺からの湧水を防ぐ防水コンクリートなどが設置されている。(

正しくは「ダクトスリーブ」である。ダクトスリーブを採用することで,マンホールとの接続部が地盤変状に追従できる。

(ⅱ) 管路の線形、管種など

  1. 主線管路の線形は、平面線形、縦断線形とも直線とすることが望ましいが、一般に、道路形状、地下埋設物などに応じて曲線を設ける場合の曲率半径の標準は 10 [m] 以上とされている。(
  2. 盛土区間における管路の占用位置は、盛土崩壊のおそれが少ない位置を基本とし、管種は、一般に、硬質ビニル管が使用されている。(
  3. 地震発生時に液状化が予想される地域において管路を設置する場合は、硬質ビニル管を使用し、マンホールからの第一接続点で管路と管路の接続部に離脱防止継手が使用されている。(
  4. 主線管路及び引上分線管路の管径は、一般に、内径 100 [mm] の管が使用されている。(

正しくは,2.「金属管」,3.「金属管」「伸縮接手」,4.「内径 75 [mm] の管」である。

(ⅲ) 通信土木設備など

通信土木設備などについて述べた次の文章のうち、電線共同溝の内容として正しいものは。

  1. 国土交通省が整備を進めている道路管理用光ファイバケーブルを収容するために道路の地下に設ける施設であり、空いている管があれば、占用許可を取得することにより、電気通信事業者も利用することができる。(
  2. 電線類の地中化に伴い、電線の設置及び管理を行う 2 以上の事業者の電線を収容するため、道路管理者が道路の地下に設ける施設であり、管路部及び特殊部で構成されている。(
  3. 電話、上下水道、電気、ガスなどの事業者が、各設備を収容するために共同で地下に設ける施設であり、事業者が施工・管理するものと道路管理者が施工・管理するものがある。(
  4. 一般に、幹線道路の地下に設けられる施設であり、ケーブルの布設、接続及び保守修理ができる空間が確保されている。施工は地上の交通への影響などを考慮して、開削工法やシールド工法により行われる。(

1. は,情報 BOX,3. は,共同溝,4. は,とう道の説明である。

(ⅱ) 管路の布設など

  1. 管路の縦断線形は、凍結防止対策を実施する区間を除き、一般に、中だるみを許容した線形を適用する。(
  2. 他埋設物などでやむを得ず必要な土被りを確保できない場合は、道路管理者から道路使用許可を得たうえで、鋼板、セラミック板などで管路の防護工事を行う。(
  3. マンホールのダクト口には、地下水、土砂などの流入を防止するため、止水栓などを設置する。(

正しくは「道路占用許可」である。

問3

(1) 線路設備にかかわる安全作業

線路設備にかかわる作業には屋外の様々な環境における作業があり、危険を伴う作業が多い。また、機械器具や車両を用いた作業があり、作業内容によって労働安全衛生法などで定められた資格又は作業主任者の選任を必要とする場合がある。

つり下げ荷重が 5 [t] 以上の移動式クレーンの運転をする者は、移動式クレーン運転士免許を有していなければならない。また、玉掛け作業にかかわる特別教育の修了者は、つり下げ荷重が 1 [t] 未満の移動式クレーンの玉掛け作業を行うことができる。

マンホールなどの通風の悪い場所では、空気中に占める酸素濃度の割合が低い場合がある。酸素欠乏症等防止規則では、空気中の酸素濃度が 18 [%] 未満である状態を酸素欠乏状態という。酸素欠乏症及び硫化水素中毒にかかるおそれのある場所での作業については、酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習の修了者を作業主任者に選任するよう定められている。

安全管理」参照

(2) 光ファイバケーブルの保守方法など

(ⅰ) 光ファイバケーブルの外被補修など

  1. 光ファイバケーブルの外被のみが損傷し、浸水していないことが明らかな場合、傷の大きさによっては、ポリエチレンテープを融着した後、テーピングによる外被補修を適用する。(
  2. 人力で光ファイバケーブルを布設する場合は、光ファイバケーブルけん引機を用いて布設する場合と比較して、一般に、けん引作業が連続的で、かつ、過大な張力が加わらないため、光ファイバテープ心線の引込み量が少なくなり、波打ち現象が発生しにくい(
  3. 外被補修した光ファイバケーブルを撤去再利用するに当たっては、ケーブルけん引時に外被補修部分が損傷する場合があるため、外被補修部分は取り除く必要がある。(

正しくは,A.「傷の大きさによらず,テーピングによる外被補修」,B.「下線部が逆」である。

(ⅱ) 光ファイバケーブルの伸縮及びクリーピング現象

  1. 橋梁添架管路内に布設されたケーブルは、地下管路に布設されたケーブルと比較して大幅な温度変化を受け易いため、温度変化によるケーブルの伸縮対策としては、移動防止金物を取り付ける方法が採られている。(
  2. 橋梁添架管路内に布設されたケーブルの伸縮量は、ケーブルの種類、橋梁の形態、管路種別、温度変化幅などにより異なるが、実際に影響が現れるのは、一般に、橋長 10 [m] 未満の橋梁といわれている。(
  3. 橋梁上の車両通行により発生するクリーピング現象は、ケーブルが一方向に移動する現象である。(
  4. クリーピング現象の発生状況は、車両の交通量、ケーブル種別などにより異なるが、クリーピングの対策としては、伸縮見合いのスラックをマンホール内のケーブルに挿入する方法が採られている。(

正しくは,1.「スラック(たるみ)を取り付ける方法」,2.「橋長 10 [m] 以上」,4.「移動防止金物をマンホール内のケーブルに挿入する方法」である。

(ⅲ) 光ファイバの試験、光ファイバケーブルの保守方法など

  1. 光ファイバの製造時において、一定の伸びひずみを光ファイバの長手方向に加え、傷などが原因で強度が弱い部分を破断させて取り除くことにより、完成品としての光ファイバの強度を保証するための試験は、スクリーニング試験といわれる。(
  2. アクセス系線路設備において、地下用ケーブルとして用いられるテープスロット型光ファイバケーブルには、スロットロッドと外被の間に止水材(吸水テープ)を巻いたケーブル構造とし、光ファイバケーブルの外被損傷時などにおけるケーブル内への浸水を抑える対策を講じたものがある。(
  3. 地下用光クロージャなどの接続部における浸水に対しては、浸水検知モジュールを接続部に設置し、浸水時に浸水検知モジュール内の光ファイバに生ずる曲げ損失を OTDR により検知する方法がある。(
  4. 浸水状態を放置した場合の光ファイバ心線の破断確率は、乾燥状態と比較して最大で 2 倍となることから、浸水を適切に検知することが必要となる。浸水期間を短くすることにより破断確率の上昇を抑制することが可能である。(

正しくは「10 倍」である。

(ⅳ) OTDR による測定

  1. 光ファイバに光パルスを入射して伝搬させると、コア内の微小な屈折率のゆらぎによって生ずるレイリー散乱光の一部が入射端に戻ってくる。OTDR による測定は、このレイリー散乱光が入射端に戻ってくる現象などを利用したものである。(
  2. 後方散乱係数の異なる光ファイバを接続した場合、接続損失の正確な測定としては、光ファイバのそれぞれの片端より OTDR を用いて接続損失を測定し、その平均を求める方法がある。(
  3. OTDR による測定において、被測定線路の始端と終端やコネクタ接続部に現れる不要なフレネル反射の影響を取り除くために、ダイナミックレンジを大きく設定する方法がある。(

正しくは「マスクの位置と幅を設定する方法」である。

問4

(1) 在庫管理

在庫管理で最も重要になるのが、発注時期と発注量の決定であり、その決定方法には、定期発注方式、定量発注方式、簡易在庫管理方式などがある。

定期発注方式は、あらかじめ定めた発注間隔で、発注量を発注ごとに決めて発注する在庫管理方式であり、JIS 規格において、発注量は次の式で表される。

発注量=(発注間隔+調達期間)中の需要推定量-発注残-手持ち在庫量+安全在庫量

また、定量発注方式は、発注時期になるとあらかじめ定められた一定量を発注する在庫管理方式である。

在庫量を合理的に管理する手法には、ABC 分析がある。ABC 分析は、在庫品目ごとに在庫費用の高い順に並べ、累積在庫費用などで管理方法を区分する手法であり、発注方法としては、一般に、累積在庫費用が最も高い区分の在庫品目は定期発注方式、累積在庫費用が2番目に高い区分の在庫品目は定量発注方式、残りの在庫品目は簡易在庫管理方式を選択する方法がある。

なお、ABC 分析は、在庫品目ごとの在庫費用の高い順を棒グラフに、棒グラフの在庫費用の累積を折れ線グラフにしたパレート分析を作成し、在庫を管理する手法である。

工事計画」参照

(2) 10,000 個のメモリ素子を組み込んだ基板 A の信頼性

基板 A は偶発故障期間にあるものとし、$\log_{e}{0.99}=-0.01$、$e^{-0.05}=0.95$ とする。

基板 A の使用開始後 100 時間における信頼度が 0.99 であるとき、メモリ素子 1 個の故障率は、10 [FIT] である。また、この基板 A の使用開始後 500 時間以内に故障する確率は、5 [%] である。ただし、メモリ素子個々の故障率は同一値とする。

基板 A の故障率 $\lambda$ は,次式で求められる。

\[ \exp(-\lambda \times 100) = 0.99 \] \[ -100\lambda = \log_{e}{0.99}=-0.01 \] \[ \lambda=1\times10^{-4} \]

基板 A には 10,000 個のメモリ素子が組み込まれているので,メモリ素子 1 個の故障率は次式で求められる。

\[ \frac{\lambda}{10000}=1\times10^{-8}=10 \text{ [FIT]} \]

基板 A の使用開始後 500 時間以内に故障する確率は次式で求められる。

\[ 1-\exp(-1\times10^{-4}\times500)=1-\exp(-0.05)=1-0.95=0.05 \]

(3) あるシステムの信頼度

(ⅰ) 装置 2 台からなる二重化されたサブシステムの信頼度

装置 B 2 台からなる二重化されたサブシステム 1(1/2 冗長構成)の信頼度は、0.990 である。

装置 B 2 台からなる二重化されたサブシステム 1(1/2 冗長構成)の信頼度は,次式で求められる。

1 - (1-0.900) × (1-0.900) = 1 - 0.1 × 0.1 = 0.990

(ⅱ) 全体のシステムの信頼度

装置 B 2 台からなる二重化されたサブシステム 1(1/2 冗長構成)と装置 C 3 台からなるサブシステム 2(2/3 多数決冗長構成)を接続した全体のシステムの信頼度は、0.887 である。

装置 C 3 台からなるサブシステム 2(2/3 多数決冗長構成)の信頼度を求める。

まず,装置 C が 3 台正常である場合の信頼度は次式で求められる。

0.8 × 0.8 × 0.8 = 0.512

次に,装置 C が 2 台正常である場合の信頼度は次式で求められる。

3 × 0.8 × 0.8 × 0.2 = 0.384

よって,装置 C 3 台からなるサブシステム 2(2/3 多数決冗長構成)の信頼度は,0.896(= 0.512 + 0.384)である。

全体のシステムの信頼度は,次式で求められる。

0.990 × 0.896 = 0.88704

問5

(1) 電子メールの暗号化など

電子メールでは、その仕組み上、盗聴をはじめとしてその他複数の脅威が常に存在していることから、一般に、これらの脅威に対して、暗号化とデジタル署名を組み合わせることにより、セキュリティを確保することができる。

一般的に利用されている電子メールの暗号化の仕組みとしては、送信者が共通鍵暗号方式の共通鍵で暗号化したメール本文と、受信者の公開鍵を用いて暗号化した共通鍵とを、電子メールで一緒に受信者へ送信する。受信者は、暗号化された共通鍵を受信者の秘密鍵を用いて復号し、暗号化されたメール本文を復号することができる。また、デジタル署名の作成手順としては、最初に、ハッシュ関数を用いてメール本文からハッシュ値を計算する。次に、得られたハッシュ値は、送信者が保有する公開鍵暗号方式の秘密鍵で暗号化され、デジタル署名として暗号化していないメール本文に添付して、受信者へ送信される。受信者は、送られてきたメール本文からハッシュ関数を用いてハッシュ値を計算する。さらに、送られてきたデジタル署名送信者の秘密鍵を用いて復号し、得られたハッシュ値と比較する。これらが同一ならば、電子メール本文が改ざんされていないこと及び送信者が署名者本人であることが確認できる。

セキュリティ管理技術」参照

(2) 共通鍵暗号方式及び公開鍵暗号方式

  1. 共通鍵暗号方式の一つである AES 暗号は、DES 暗号の後継のブロック暗号である。AES 暗号は、鍵の長さとして 128 ビット、192 ビット及び 256 ビットが利用可能である。(
  2. 共通鍵暗号方式において、データを一定数のビット列からなるブロックに区切り、ブロックごとに暗号化・復号処理を行う暗号はブロック暗号といわれる。ブロック暗号の処理速度は、一般に、ストリーム暗号と比較して高速である。(
  3. 共通鍵暗号を用いる場合、安全性評価が行われた方式を選択して、一連のデータをやり取りするセッションごとに暗号鍵を変更するなどの安全性対策を採ることが望ましい。(
  4. 公開鍵暗号方式では、秘密に保持すべき鍵は自分の秘密鍵のみであるのに対して、共通鍵暗号方式では、異なる通信相手に同一の鍵を使用すると、通信を盗聴されて解読されるリスクが発生するため、秘密に保持すべき鍵は通信相手ごとに必要である。(

ストリーム暗号の処理速度は,一般に,ブロック暗号と比較して高速である。

(3) コンピュータウイルスの感染形態

  1. 拡張子が EXE や COM などの実行型ファイルの一部を書き換えて感染する形態は、ファイル感染型といわれる。(
  2. ハードディスクなどの起動時に使用されるシステム領域を感染対象とし、感染ディスクからコンピュータが起動されると感染する形態は、マクロ感染型といわれる。(
  3. Word や Excel などの文書に備わっている簡易プログラムに感染し、感染した簡易プログラムが実行されると他の文書やテンプレートに感染する形態は、ブートセクタ感染型といわれる。(

正しくは,B.「ブートセクタ感染型」,C.「マクロ感染型」である。

(4) Web サイトへの攻撃

  1. 悪意あるサイトが、脆弱性を持っているサイトを利用して、クライアントが意図しないスクリプトをブラウザ上で動作させることによって行われる攻撃は、クロスサイトスクリプティング攻撃といわれる。(
  2. クロスサイトスクリプティング攻撃により、HTML といわれるファイルが読み取られてしまうため、ユーザ情報が盗まれるという被害が発生している。(
  3. SQL インジェクション攻撃とは、不正なコマンドなどを SQL 文に埋め込むことにより、Web ブラウザを不正に操作することである。(
  4. SQL インジェクション攻撃により、データベース内のレコードに含まれる情報が改ざんされたり消去されたりすることがあるが、情報が漏洩することはない。(

正しくは,2.「クッキー」,3.「データベース」,4.「情報が漏えいすることがある」である。

(5) 個人情報の管理など

  1. 個人情報には、官報、職員録などに公表されている情報(本人の氏名など)及び防犯カメラに記録された本人が判別できる映像情報が含まれる。(
  2. 個人情報取扱事業者が、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用目的をできる限り具体的に特定しなければならない。(
  3. 個人情報取扱事業者が、個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合は、その委託先の名称を、本人に通知し、又は公表しなければならない。(
  4. 個人情報取扱事業者が、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。(
  5. 個人情報取扱事業者が、個人データを第三者に提供する場合は、原則として、あらかじめ本人の同意を得なければならない。(

個人情報取扱事業者は、個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合は、その取扱いを委託された個人データの安全管理が図られるよう、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。(個人情報保護に関する法律 第22条)

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