平成29年度 第1回 線路及び設備管理

2019年6月7日作成,2021年1月2日更新

問1

(1) 光通信設備に用いられる光ファイバケーブルの構造,特徴など

光ファイバケーブルは,メタリックケーブルと比較して,低損失,広帯域,細径・軽量などの特徴を持ち,中継系光線路設備及びアクセス系光線路設備に幅広く用いられている。

中継系光線路設備に用いられる光ファイバケーブルには,4 心光ファイバテープ心線を用いたスロット構造を持ち,誘導対策を不要とするため,ケーブル部の構成材料全てをノンメタリック化した IF ケーブルがある。

一方,アクセス系光線路設備に用いられる光ファイバケーブルには,面的に広がる多くのユーザに光ファイバ心線を効率的に配線するため,高密度,かつ,多心であることが要求される。そのため,アクセス系光線路設備のうち,幹線系の地下区間においては,4 心光ファイバテープ心線又は 8 心光ファイバテープ心線を各スロットに積層して収容し,押さえ巻に吸水テープを施して水走り防止構造とした非ガス保守用の WB ケーブルが用いられている。

また,配線系の架空区間においては,光ファイバケーブルの中間後分岐やユーザ宅への引込みのための接続作業が頻繁に発生するため,光ファイバテープ心線を容易に取り出せる SZ 撚りのスロット構造を持つケーブルなどが用いられている。

さらに,光ファイバケーブルには,外的環境から光ファイバを保護するためにシースが施されている。屋外用のシースの一つとして,アルミテープとポリエチレン外被を一体化して機械的強度及び防水・防湿性能を高めた LAP シースがある。

通信ケーブルの種類・特性及び適用」参照

(2) 光通信システムに用いられる光デバイスの機能,特徴など

(ⅰ) 光受動デバイスの機能,特徴など

  1. アレイ導波路回折格子(AWG)は,長さの異なる複数の光導波路から構成され,多光速の干渉を利用するものであり,DWDM システムにおける光合分波器などに用いられている。(
  2. ファイバブラッググレーティング(FBG)は,光ファイバのコアの屈折率を周期的に変化させたものであり,光サーキュレータと組み合わせることで光合分波器を構成することができる。(
  3. 誘電体多層膜フィルタは,基板上に屈折率の異なる誘電体層を多段に積層し,層境界での反射光の干渉により特定の波長域の光を透過又は反射させるものであり,バンドパスフィルタなどに用いられている。(
  4. 光アイソレータは,電気光学効果による屈折率の変化を利用して,入力側から出力側には光が通過するが,その逆向きの光の通過を妨げるものであり,反射戻り光を遮断することにより光源を安定化させることができる。(

光アイソレータは,磁気光学効果(ファラデー効果)による光の偏光状態が回転する現象を利用して,入力側から出力側には光が通過するが,その逆向きの光の通過を妨げるものであり,反射戻り光を遮断することにより光源を安定化させることができる。

(ⅱ) 発光デバイスの構造及び特性

  1. 誘導放出を利用する発光素子である LED の発生光はコヒーレントであり,一方,自然放出を利用する発光素子である LD の発生光はインコヒーレントである。(
  2. 光通信システムにおいて,光源の発光スペクトル幅が広いほど符号間干渉が大きくなり,符号誤りが生じやすくなるため,高速光通信システムの光源には,一般に,LED と比較して発光スペクトル幅が狭い LD が用いられる。(
  3. ファブリペロー形 LD(FP-LD)は,2 枚の反射ミラーを対向させて構成する単一モードの発光素子であり,分布帰還形の発光素子(DFB-LD)は,活性層の近くに波状の回折格子を形成した多モードの発光素子である。(

誘導放出を利用する発光素子である LD の発生光はコヒーレントであり,一方,自然放出を利用する発光素子である LED の発生光はインコヒーレントである。

ファブリペロー形 LD(FP-LD)は,2 枚の反射ミラーを対向させて構成する多モードの発光素子であり,分布帰還形の発光素子(DFB-LD)は,活性層の近くに波状の回折格子を形成した単一モードの発光素子である。

(3) 光ファイバの光損失の要因と分散特性など

(ⅰ) 光ファイバの光損失の要因

  1. 光ファイバ中を伝わる光が外に漏れることとは別に,光ファイバ材料自身によって吸収され熱に変換されることにより生ずる損失は,吸収損失といわれ,吸収損失は光の波長に依存しない。(
  2. 光がその波長と比較してあまり大きくない物質に当たったときに,その光が様々な方向に進んでいく現象により生ずる損失は,レイリー散乱損失といわれ,レイリー散乱損失は波長の 2 乗に比例する。(
  3. 光ファイバの側方からの不均一な応力による光ファイバ軸の微小で不規則な曲がりによって生ずる損失は,マイクロベンディングロスといわれ,マイクロベンディングロスは光ファイバの軸方向の収縮に起因する変形によっても生ずる。(
  4. 曲げられた光ファイバ中において入射角が臨界角以上となる光が放射されるために生ずる損失は,曲げによる放射損失といわれ,曲げによる放射損失はコアとクラッドの比屈折率差が大きいほど大きい。(

光ファイバ中を伝わる光が外に漏れることとは別に,光ファイバ材料自身によって吸収され熱に変換されることにより生ずる損失は,吸収損失といわれ,吸収損失は光の波長に依存する

光がその波長と比較して小さい(1/10 ほど)物質に当たったときに,その光が様々な方向に進んでいく現象により生ずる損失は,レイリー散乱損失といわれ,レイリー散乱損失は波長の 4 乗に反比例する。

曲げられた光ファイバ中において入射角が臨界角以上となる光が放射されるために生ずる損失は,曲げによる放射損失といわれ,曲げによる放射損失はコアとクラッドの比屈折率差が大きいほど小さい

(ⅱ) 光ファイバの分散特性など

  1. 光ファイバに用いられる材料の波長に対する散乱係数が異なることにより生ずる分散は,材料分散といわれる。材料分散の値は,一般に,波長が長くなるほど小さくなる。(
  2. 構造分散と材料分散の和は波長分散といわれ,波長分散の値は光ファイバの構造及び材料によって決まる。構造分散の値は,光ファイバの屈折率分布の構造を変えることによって変化する。(
  3. シングルモード光ファイバの波長分散の値の単位としては,一般に,[ps/nm/km] が用いられる。例えば,10 [ps/nm/km] とは,スペクトル幅 1 [nm] の光が 10 [km] 伝搬したとき,パルス幅が 1 [ps] 広がることを意味する。(
  4. マルチモード光ファイバにおいて,各モードにおける群速度が異なることにより生ずる分散は,モード分散といわれる。モード分散の値は,一般に,材料分散や構造分散の値と比較して小さい。(

光ファイバに用いられる材料の波長に対する屈折率が異なることにより生ずる分散は,材料分散といわれる。材料分散の値は,一般に,波長が長くなるほど大きくなる

シングルモード光ファイバの波長分散の値の単位としては,一般に,[ps/nm/km] が用いられる。例えば,10 [ps/nm/km] とは,スペクトル幅 1 [nm] の光が 1 [km] 伝搬したとき,パルス幅が 10 [ps] 広がることを意味する。

マルチモード光ファイバにおいて,各モードにおける群速度が異なることにより生ずる分散は,モード分散といわれる。モード分散の値は,一般に,材料分散や構造分散の値と比較して大きい

問2

(1) 海底ケーブルの敷設工事

海底ケーブルの敷設においては,ケーブル故障を防止するために,海底ケーブルをサスペンションや過張力が生じないように海底面に沿って敷設することが重要である。海底面には陸上同様に上り,下り及びそれらが複合した斜面があり,それぞれの場所に応じた適切な長さのケーブルを敷設する必要がある。そのため,それぞれの海底地形に基づく適切な敷設ケーブル長をあらかじめ計算しておくことが必要であり,この計算は,一般に,スラック計算といわれる。

このスラック計算の結果に基づきケーブルルート上のそれぞれの海底地形に応じたケーブル船の敷設速度,ケーブル繰出速度などについての詳細な計画が立てられる。敷設工事では予定のケーブルルートに従ってケーブル船の敷設方向を制御し,同時に,この計画に基づいて敷設速度及びケーブル繰出速度の制御を行いながら,ケーブルを敷設する。

ケーブル船には,一般に,DPS(Dynamic Positioning System)が備えられており,これに D-GPS 又は GPS からの位置情報をパラメータとして入力することにより,ケーブル船のスクリュー,舵及びスラスタを自動調整して,ルート上の各位置で計画された敷設方向や敷設速度を高い精度で実現することが可能となっている。

長距離連続敷設の場合,一般に,ケーブル敷設中のケーブル繰出速度の制御には LCE(Linear Cable Engine)が用いられる。また,浅海部において,海底ケーブルを防護するための埋設工事を実施する場合に用いられる埋設機,ROV(Remotely Operated Vehicle)などは,ケーブル船に装備されている A フレームを使って吊り下げられて海底に設置される。

専門的分野・水底線路 対策ノート」参照

スラスタとは,船を横方向に動かす装置。

A フレームは,クレーンともいう。

(2) 通信土木設備の劣化,補修など

(ⅰ) マンホールの劣化とその対策

  1. 地中水に鉄やマンガン成分を含む臨界埋立地などに設置されるマンホールは,嫌気性バクテリアなどにより生成される硫化水素でコンクリート壁が浸食される場合がある。(
  2. マンホール内の金物の腐食には,異なる種類の金属材料が電気的に接触して生ずる異種金属接触腐食,狭い隙間の内部に生ずる隙間腐食などがある。(
  3. 車両が走行する際に生ずる衝撃によるマンホール鉄蓋の跳ね上がり,ガタツキ,蓋鳴りなどに対する防止策としては,テーパ型の鉄蓋と比較して,鉄蓋と受枠との間に隙間が生じにくい落とし込み型の鉄蓋を用いる方法がある。(
  4. マンホール躯体のひび割れ,破損などの補修には,ひび割れや破損した箇所を V 字形に斫り,無収縮急結セメントの充填及びエポキシ系樹脂の塗布により補修する方法がある。(

車両が走行する際に生ずる衝撃によるマンホール鉄蓋の跳ね上がり,ガタツキ,蓋鳴りなどに対する防止策としては,落とし込み型の鉄蓋と比較して,鉄蓋と受枠との間に隙間が生じにくいテーパ型の鉄蓋を用いる方法がある。

(ⅱ) 通信土木設備の診断,補修など

  1. コンクリートの劣化の程度を診断するためには,コンクリート構造物の劣化現象からその劣化機構を特定しなければならない。劣化機構の一つとして,本来アルカリ性であるコンクリートが外部環境を受けてアルカリ性を失う現象は,プリーディングといわれる。(
  2. 硬質ビニル管の扁平部を管路内から加熱溶融して除去するとともに,油圧を利用して熱硬化性樹脂の内管を管路内に引き込み,矯正・補強する方法をとるものは,ビニル管扁平矯正工法といわれる。(
  3. 錆腐食が進行して劣化した金属管路の内面に樹脂薄膜を形成することによって補修する方法をとるものは,管内面ライニング工法といわれる。(

コンクリートの劣化の程度を診断するためには,コンクリート構造物の劣化現象からその劣化機構を特定しなければならない。劣化機構の一つとして,本来アルカリ性であるコンクリートが外部環境を受けてアルカリ性を失う現象は,中性化といわれる。

硬質ビニル管の扁平部を管路内から加熱して軟らかくし,油圧を利用して,機械的に強制する方法をとるものは,ビニル管扁平矯正工法といわれる。

(ⅲ) 近接工事による通信土木設備の設備事故防止など

  1. 近接工事による設備事故を防止するためには工事情報の把握が重要であり,道路管理者に対する道路使用や警察署に対する道路占用などの許可申請書において,埋設物企業者の埋設物確認の証跡添付を許可条件とした埋設物確認制度が制度化されている。(
  2. 通信土木設備に近接して工事が実施される場合,道路交通法及び建設業施行令において現場立会が義務付けられている。(
  3. とう道設備に近接して掘削が行われる場合,事故が発生したときの復旧が難しいことから,管路設備の場合と異なり,近接工事の影響を定量化する影響解析を行うことなく防護対策を施し,その防護対策の効果を確認する計測管理のため,トランシットによる内空変位量などの計測が行われる。(
  4. 管路設備に近接して掘削が行われる場合の影響範囲は,掘削深さ,土の内部摩擦角及び離隔距離によって決まる。開削工事の場合には離隔距離によって防護対策を変えることとされている。(

近接工事による設備事故を防止するためには工事情報の把握が重要であり,道路管理者に対する道路占用や警察署に対する道路使用などの許可申請書において,埋設物企業者の埋設物確認の証跡添付を許可条件とした埋設物確認制度が制度化されている。

通信土木設備に近接して工事が実施される場合,道路工事公衆災害防止対策要綱及び道路法施行令において,工事を行う業者と埋設物の管理者との間で,施工に関する協議を行うことと定められている。

とう道設備に近接して掘削が行われる場合,事故が発生したときの復旧が難しいことから,管路設備の場合と異なり,近接工事の影響を定量化するための影響解析を行い,防護対策を施す。その防護対策の効果を確認する計測管理のため,パイプスケールによる内空変位量などの計測が行われる。

(ⅳ) 通信土木設備の埋設物探査方法など

  1. 電磁波レーダ法は,埋設管の電気特性が伝搬媒体である周辺の土と異なるものであれば,埋設管の材料は金属,非金属ともに探査可能である。(
  2. 電磁波レーダ法では,地表面に置かれた送信アンテナから地中に向けて電磁パルスを放射し,電気特性が異なる界面で発生する弾性波を受信アンテナでとらえることにより,弾性波の減衰量から埋設物の位置や深度が算出できる。(
  3. 電磁誘導法による探査は,周辺環境に起因する 2 次誘導が発生することはなく,他の金属管や誘導体の影響を受けないという特徴を有している。(
  4. 電磁誘導法による探査は,地中の金属媒体に誘導電流を流して金属媒体から発生する誘導磁界を地上から計測するものであり,一般に,地中の空洞も計測できる。(

電磁波レーダ法では,地表面に置かれた送信アンテナから地中に向けて電磁パルスを放射し,電気特性が異なる界面で発生する反射波を受信アンテナでとらえることにより,反射波の伝搬時間から埋設物の位置や深度が算出できる。

電磁誘導法による探査は,周辺の金属管や誘導体の影響を受け 2 次誘導が発生することがある

電磁誘導法による探査は,地中の金属媒体に誘導電流を流して金属媒体から発生する誘導磁界を地上から計測するものであり,一般に,地中の空洞の計測はできない

問3

(1) OTDR の機能と特徴

OTDR は,光ファイバにパルス光を入射し,入射端に戻ってくる微弱な光を検出することにより,光ファイバの伝送損失,光コネクタの接続損失や反射減衰量などを測定するものである。OTDR の測定波形は,横軸に距離,縦軸に損失をとり表示される。

光ファイバの伝送損失波形は,左上から右下に傾斜して表示される。また,光ファイバの両端及び光コネクタの接続箇所では,一般に,フレネル反射による尖頭パルス波形が観測される。

OTDR を用いた光ファイバの接続損失測定では,波形の段差により接続損失が表示されるが,接続された 2 本の光ファイバの後方散乱係数の違いにより真の接続損失と異なる見かけ上の接続損失が測定される場合がある。その場合,接続点の両側から OTDR 測定を行い,それぞれの接続損失の平均を求めることにより真の接続損失を得ることができる。

一方,OTDR の仕様において,一般に,光出射端近傍の後方散乱光レベルから SN 比が 1 となるノイズフロアまでの後方散乱光強度が測定できる範囲はダイナミックレンジといわれ,このダイナミックレンジを大きくするには,パルス光のパルス幅を広くすればよいが,パルス幅を広くするほど空間分解能が低下し,デッドゾーンが広がることから用途に応じてパルス幅を設定する必要がある。

通信ケーブル監視技術」参照

(2) 通信線路設備の劣化要因とその対策など

(ⅰ) 線路設備の腐食及び劣化の原因,それらの対策など

  1. 溶融亜鉛めっきが施されている装柱金物類は,塩害地や高濃度の硫化水素を生ずる温泉地に設置しても赤錆はほどんど発生することはなく,亜鉛めっきが消失し鉄素地の腐食や破断に至ることもないため,メンテナンスフリーが実現されている。(
  2. 強風地では,ケーブルの振動によって吊り線が吊架部で繰り返し曲げられ疲労破断することがある。対策としては,ラインガードやセパレータを用いる方法が有効である。(
  3. コンクリート柱では,コンクリート中に含まれる水分が凍結及び融解を繰り返すことでコンクリートが劣化し,表面に亀甲状のひびや縦ひび割れを生ずる場合がある。このような劣化現象は,一般に,クリーピングといわれる。(
  4. 腐食が激しい環境で使用する鋼管柱の腐食対策としては,ステンレス鋼板により補強された AE 鋼管柱などへ更改する方法があり,地際部の軽微な腐食に対しては,支線アンカに用いられるオーバクリート工法による補修方法がある。(

溶融亜鉛めっきが施されている装柱金物類は,塩害地や高濃度の硫化水素を生ずる温泉地に設置した場合,最初は亜鉛が影響を受け白錆が発生する。亜鉛が消失すると鉄が影響を受け赤錆が発生し腐食する。このため腐食状態は劣化限度見本を用いて管理する必要がある。

コンクリート柱では,コンクリート中に含まれる水分が凍結及び融解を繰り返すことでコンクリートが劣化し,表面に亀甲状のひびや縦ひび割れを生ずる場合がある。このような劣化現象は,一般に,凍害といわれる。

腐食が激しい環境で使用する鋼管柱の腐食対策としては,ステンレス鋼板により補強された AE 鋼管柱などへ更改する方法があり,地際部の軽微な腐食に対しては,引き上げ管に用いられるオーバクリート工法による補修方法がある。

(ⅱ) 線路設備に用いられる金属用品の腐食対策など

  1. 電食とは逆の現象,すなわち電流を金属に流入させることにより腐食を防止する方法は,電気防食といわれ,専用の電源装置を用いる方法と,亜鉛やマグネシウムなどの流電陽極を取り付けて金属間のイオン化傾向の差を利用する方法に大別される。(
  2. 高耐食性金属材料としては,ステンレス鋼やアルミニウムのようにイオン化傾向が低く本質的に腐食しにくいもの,のように不動態といわれる緻密な被膜を形成するものなどがある。(
  3. 有機溶剤や水などの溶媒を用いない粉末状の塗料により塗装を行う方法は,粉体塗装といわれ,塩害地などの高腐食環境下でも優れた防食性能を発揮する。亜鉛めっき鋼材に粉体塗装をする場合,一般に,工事現場でプリマー処理を施し,コーティング加工される。(

高耐食性金属材料としては,のようにイオン化傾向が低く本質的に腐食しにくいもの,ステンレス鋼やアルミニウムのように不動態といわれる緻密な被膜を形成するものなどがある。

有機溶剤や水などの溶媒を用いない粉末状の塗料により塗装を行う方法は,粉体塗装といわれ,塩害地などの高腐食環境下でも優れた防食性能を発揮する。亜鉛めっき鋼材に粉体塗装をする場合,一般に,工場においてコーティング加工される

(3) 通信線路設備の保守作業など

(ⅰ) 通信用架空ケーブルの地上高などの点検結果及びその判定

  1. 道路上で横断歩道橋のない箇所にある架空ケーブルの高さを点検したところ,路面からの高さは,5.5 [m] であった。点検結果より当該架空ケーブルは規定の高さを満たしていると判定できる。(
  2. 道路上にあり,かつ,横断歩道橋の上にある架空ケーブルの高さを点検したところ,横断歩道橋の路面からの高さは,2.5 [m] であった。点検結果より当該架空ケーブルは規定の高さを満たしていると判定できる。(
  3. 鉄道を横断している架空ケーブルの高さを点検したところ,軌条面からの高さは,6.5 [m] であった。点検結果より当該架空ケーブルは規定の高さを満たしていると判定できる。(
  4. 架空ケーブルを支持している電柱と当該電柱に架設されていない低圧の強電流電線(低圧電線)との間の離隔距離を点検したところ,0.5 [m] であった。点検結果より当該電柱と当該低圧電線との間の離隔距離は規定を満たしていると判定できる。(

道路上にあり,かつ,横断歩道橋の上にある架空ケーブルの高さを点検したところ,横断歩道橋の路面からの高さは,2.5 [m] であった。点検結果より当該架空ケーブルは規定の高さを満たしていないと判定できる。

有線電気通信設備令施行規則 第七条 架空電線の高さ

令第八条に規定する総務省令で定める架空電線の高さは、次の各号によらなければならない。

  1. 架空電線が道路上にあるときは、横断歩道橋の上にあるときを除き、路面から 5 m (交通に支障を及ぼすおそれが少ない場合で工事上やむを得ないときは、歩道と車道との区別がある道路の歩道上においては、2.5 m、その他の道路上においては、4.5 m)以上であること。
  2. 架空電線が横断歩道橋の上にあるときは、その路面から 3 m 以上であること。
  3. 架空電線が鉄道又は軌道を横断するときは、軌条面から 6 m (車両の運行に支障を及ぼすおそれがない高さが 6 m より低い場合は、その高さ)以上であること。
  4. 架空電線が河川を横断するときは、舟行に支障を及ぼすおそれがない高さであること。

(ⅱ) 高所での保守作業,足場金具の取付位置,建設工事における交通対策など

  1. 高さが 2 [m] 以上の箇所で作業を行う場合において,強風,大雨,大雪などの悪天候のため,当該作業の実施について危険が予想されるときは,想定される事態への注意喚起などを行い,安全帯などの保護具を使用して当該作業を行う。(
  2. 脚立を用いるときは,脚立の天板に乗って安全に作業ができることを確保するため,脚立の脚と水平面との角度は 85 度以下とすることとされている。(
  3. 架空ケーブルの支持物の周囲に取扱者以外の者が立ち入らないように,柵又は塀を設けている場合であっても,当該支持物には,取扱者が昇降に使用する足場金具を地表上 1.8 [m] 未満の高さに取り付けてはならない。(
  4. 建設工事公衆災害防止対策要綱では,道路の通行を制限する必要のある場合において,道路管理者及び所轄警察署長から特に指示がない場合であって,制限した後の道路の車線が 1 車線となるときは,その車道幅員は 3 [m] 以上とし,2 車線となるときは,その車道幅員は 5.5 [m] 以上としている。(

高さが 2 [m] 以上の箇所で作業を行う場合において,強風,大雨,大雪などの悪天候のため,当該作業の実施について危険が予想されるときは,作業を中止する

脚立を用いるときは,脚立の踏み面に乗って安全に作業ができることを確保するため,脚立の脚と水平面との角度は 75 度以下とすることとされている。

架空ケーブルの支持物の周囲に取扱者以外の者が立ち入らないように,柵又は塀を設けている場合であっても,当該支持物には,取扱者が昇降に使用する足場金具を地表上 1.8 [m] 未満の高さに取り付けてもよい

問4

(1) 電気通信事故に係る事故報告制度の概要

記述内容は,平成27年8月26日に総務省が公表した電気通信事故に係る電気通信事業法関係法令の適用に関するガイドライン(第 2 版)に基づいている。

電気通信事業者は,電気通信事業法の規定により電気通信業務の一部を停止したとき,又は電気通信業務に関し通信の秘密の漏えいその他総務省令で定める重大な事故が生じたときは,その旨をその理由又は原因とともに,遅滞なく,総務大臣に報告しなければならない。また,電気通信事業者は,詳細な報告を所定の様式により,その重大な事故の発生した日から 30 日以内に総務省に報告しなければならない。

報告を要する重大な事故は,電気通信役務の区分に応じ,その電気通信役務の提供を停止又は品質を低下させた事故を対象に,その影響を与えた利用者数(以下,影響利用者数という。)及び継続時間によって定められている。

例えば,緊急通報を取り扱う音声伝送役務では,影響利用者数が 3 万以上,かつ,継続時間が 1 時間以上の場合が該当する。また,緊急通報を取り扱わない 050-IP 電話などの音声伝送役務では,影響利用者数が 3 万以上,かつ,継続時間が 2 時間以上の場合,又は,影響利用者数が 10 万以上,かつ,継続時間が 1 時間以上の場合が該当する。

一方,総務大臣が電気通信役務の提供の停止を受けた利用者の数の把握が困難であると認めるときに適用する基準の一つとして,電気通信役務の停止に係る電気通信設備の伝送速度の総和が 200 万 キロビット毎秒を超えるものがある。また,携帯電話の役務については,当該電気通信役務の停止に係る基地局について,その停止の時間帯に当該基地局の電気通信役務の提供区域に存した利用者の数が 3 万以上の場合と規定されている。

安全・信頼性対策」参照

(2) JIS Z 8115 : 2000 ディペンダビリティ(信頼性)用語

(ⅰ) 管理に関する用語

  1. 信頼性実証とは,試験及びフィールドデータを基にしてアイテムの信頼性特性値を推定する行為をいう。(
  2. 信頼性改善とは,系統故障の原因除去,その他の故障発生確率の低減及びそれら両者を考慮した活動によって,信頼性を向上させるための明確な意図をもって行うプロセスをいう。(
  3. 信頼性・保全性サーベイランスとは,信頼性・保全性性能の要求事項が満足されることを保証するために行う,手続き,方法,条件,製品,工程及びサービス状況の継続的観察並びに記録類の継続的解析をいう。(
  4. 信頼性・保全性保証とは,アイテムが与えられた信頼性・保全性性能の要求事項を満たすという確証を得るのに必要な,適切で計画的,かつ,体系的な活動を実施する行為をいう。(

信頼性実証とは,アイテムに要求される信頼性特性値の実証をいう。

(ⅱ) 解析に関する用語

  1. 故障解析とは,故障メカニズム,故障原因及び故障が引き起こす結果を識別し,解析するために行う,故障したアイテムの論理的,かつ,体系的な調査検討をいう。(
  2. ストレスモデルとは,下位アイテムのフォールトモード,外部事象又はこれらの組合せのいずれかが,アイテムに与えられたフォールトモードを発生させることを示す論理図である。(
  3. ストレス解析とは,アイテムが与えられた条件の下で遭遇する物理的,化学的又はその他のストレスの種類とそれによる影響を決める行為をいう。(
  4. フォールト位置特定とは,ある保全実施単位のもとで,フォールトを発生している単数又は複数の下位アイテムの種類とその部位を特定する活動をいう。(

ストレスモデルとは,所定のストレスがアイテムの信頼性性能値,又はその他の特性に与える影響を説明する数学モデルをいう。

(3) 修理系装置の信頼性

装置は偶発故障期間にあるものとする。また,指数関数の値は,$e$ を自然対数の底とすると,$e^{0.1} = 1.11$,$e^{0.2} = 1.22$,$e^{0.4} = 1.49$,$e^{1} = 2.72$,$e^{2} = 7.39$,$e^{4} = 54.60$ とし,答えは,四捨五入により整数とする。

装置のある一定期間の稼働状況を調査したところ,10 回の故障があり,そのたびに修理を行った。また,この期間の動作時間の合計は 2,500 時間,故障による休止時間の合計は 200 時間であった。

(ⅰ) 信頼度

この装置の稼働開始後 100 時間経過時点における信頼度は,67 [%] である。

信頼度は次式で与えられる。

\[ R(t) = e^{-\lambda t} \]

ここで故障率 $\lambda$ = 10 [回] / 2,500 [時間],$t$ = 100 [時間] を代入する。

\[ R(t) = \exp{(-10/2500 \times 100)} = \frac{1}{e^{0.4}} = \frac{1}{1.49} = 0.671 \]

(ⅱ) 固有アベイラビリティ

この装置の固有アベイラビリティは,93 [%] である。

固有アベイラビリティ $A$ は,MTBF を MTBF とMTTR の和で除して求められる。まず,MTBF と MTTR を求められる。

平均故障動作時間 MTBF = 2,500 [時間] / 10 [回] = 250
平均修復時間 MTTR = 200 [時間] / 10 [回] = 20

次に,固有アベイラビリティ $A$ を求める。

固有アベイラビリティ $A$ = MTBF / (MTBF + MTTR) = 250 / (250 + 20) = 0.926

問5

(1) ログの管理

ログは,OS,サーバアプリケーション,通信機器など情報システムを構成している装置が出力する動作状況などに関する記録である。情報システムの重要度や取り扱うログ情報の秘密性を考慮して,ログ管理に関する方針を組織として定め,管理を行う必要がある。

どの装置でどのようなログを取得するかは,一般に,ログの利用目的で決める。取得するログには,利用者の ID や操作記録,プログラムの動作記録,ファイアウォールや IDS の通信記録などがある。

不正アクセスなどの原因究明は,一般に,複数の装置のログを突き合わせることによって行われる。装置間での時刻のずれをなくしスムーズな調査ができるようにするため NTP サーバを利用して組織内の情報システムの時刻を合わせておく必要がある。

ログの保存では,ログの保存場所をそれぞれの装置とするのか,syslog サーバを構築し,ログを一元管理するかなどを決める。また,ログの保存期間がどの程度必要であるかをあらかじめ決めておく。ログの保存には膨大な記憶容量を必要とするため,ログローテーションを行うことも考慮する。

その他の情報セキュリティ対策

syslog
システムの動作状況やメッセージなどの記録をとるプログラム。ネットワークを通じて他のコンピュータとログを送受信する機能。
ログローテーション(log rotation)
システムが残す時系列の記録データ(ログ)が際限なく増えることを防ぐために,一定の容量や期間ごとに古いログを削除したり新しいログで上書きすること。また,そのような機能。

(2) ISMS の要求事項を満たすための管理策

JIS Q 27001 : 2014 に規定されている,情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の要求事項を満たすための管理策

  1. 全ての種類の利用者について,全てのシステム及びサービスへのアクセス権を割り当てる又は無効化するために,利用者アクセスの提供についての正式なプロセスを実施しなければならない。(
  2. 情報及び情報処理施設に関連する資産を特定しなければならない。また,これらの資産の目録を,作成し,維持しなければならない。(
  3. 情報は,業務効率,価値,重要性,及び認可されていない開示又は変更に対して取扱いに慎重を要する度合いの観点から,分類しなければならない。(
  4. 利用者の活動,例外処理,過失及び情報セキュリティ事象を記録したイベントログを取得し,保持し,定期的にレビューしなければならない。(

情報は,法的要求事項,価値,重要性,及び認可されていない開示又は変更に対して取扱いに慎重を要する度合いの観点から,分類しなければならない。

(3) ID やパスワードの運用方法

サーバを共同利用する際におけるセキュリティ強化のために行うべき ID やパスワードの運用方法

  1. 特定グループの利用者に同じ権限を持たせるときは,一般に,発行する ID の数を可能な限り少なくするために,グループ内で利用する共通の ID を作ることが望ましい。(
  2. 使用していない ID の存在を避けるために,一般に,ID の管理を一元化し,定期的にこのような ID が存在していないかどうかをチェックすることが望ましい。(
  3. パスワードはその利用者各自が秘密に保持する必要があるが,パスワードリスト攻撃やブルートフォース攻撃などに備えて,一般に,定期的にパスワードを変更することが望ましい。(

特定グループの利用者に同じ権限を持たせるときは,一般に,そのグループで運営上必要な人数分の個人別 ID を作る

利用者アクセスを管理するときに意識するポイントには,次のようなものがある。

  1. Need-to-know(最小権限)の原則
  2. 1 人 1 アカウントの原則
  3. 責務の分離(各人の業務に必要な最低限の権限を与え,互いにチェックする体制を整えて相互牽制)
  4. 特権アカウント管理
  5. アカウントの変更管理を速やかに行う仕組み

(4) 酸素欠乏危険作業の安全管理など

通信線路設備工事における労働安全衛生に関する法令に基づく酸素欠乏危険作業の安全管理など

  1. 事業者は,第二種酸素欠乏危険作業に労働者を従事させる場合,当該作業を行う場所の空気中の酸素の濃度を 20 [%] 以上,かつ,一酸化炭素の濃度を 10 [ppm] 以下に保つように換気しなければならない。(
  2. 事業者は,第一種酸素欠乏危険作業に労働者を従事させる場合であって,作業の性質上換気することが著しく困難なときは,防塵マスクなどの濾過式の保護具を使用させなければならない。(
  3. 事業者は,第二種酸素欠乏危険作業において,酸素欠乏危険作業の特別な教育を受講した者のうちから,酸素欠乏危険作業主任者を選任しなければならない。(
  4. 事業者は,酸素欠乏危険作業に労働者を従事させる場合であって,労働者が酸素欠乏症等にかかって転落するおそれのあるときは,労働者に安全帯その他の命綱を使用させなければならない。(

事業者は,第二種酸素欠乏危険作業に労働者を従事させる場合,当該作業を行う場所の空気中の酸素の濃度を 18 [%] 以上,かつ,硫化水素の濃度を 10 [ppm] 以下に保つように換気しなければならない。

事業者は,第一種酸素欠乏危険作業に労働者を従事させる場合であって,作業の性質上換気することが著しく困難なときは,空気呼吸器等(空気呼吸器,酸素呼吸器又は送気マスクをいう。)を備え,労働者にこれを使用させなければならない。

事業者は,第二種酸素欠乏危険作業において,酸素欠乏・硫化水素作業主任者技能講習を修了した者のうちから,酸素欠乏危険作業主任者を選任しなければならない。

(5) 建設工事の請負契約など

  1. 請負人は,請負契約の履行に関し工事現場に現場代理人を置く場合においては,当該現場代理人の権限に関する事項及び当該現場代理人の行為についての注文者の請負人に対する意見の申出の方法を,書面により注文者に通知しなければならない。(
  2. 建設業者は,その請け負った工事を一括して他人に請け負わせてはならない。また,建設業を営む者は,建設業者からその建設業者の請け負った工事を一括して請け負ってはならない。ただし,民間工事及び公共工事のいずれにおいても,あらかじめ,発注者から書面による承諾を得た場合はこの限りでない。(
  3. 形式的には労働者派遣契約の方式をとっているが,実態は請負契約の形態で業務を行うことは,偽装請負といわれる。偽装請負の問題点としては,安全衛生などの責任があいまいになり,危険防止措置が十分に講じられないため,労働災害が生ずるおそれが高まることが挙げられる。(
  4. 請負事業者と発注者との請負契約による建設工事では,請負事業主と雇用関係にある労働者は,労働者派遣契約と異なり,一般に,発注者との間に指揮命令関係がある。(

建設業者は,その請け負った工事を一括して他人に請け負わせてはならない。また,建設業を営む者は,建設業者からその建設業者の請け負った工事を一括して請け負ってはならない。ただし,民間工事において,あらかじめ,発注者から書面による承諾を得た場合はこの限りでない。

形式的には請負契約の方式をとっているが,実態は労働者派遣契約の形態で業務を行うことは,偽装請負といわれる。偽装請負の問題点としては,安全衛生などの責任があいまいになり,危険防止措置が十分に講じられないため,労働災害が生ずるおそれが高まることが挙げられる。

請負事業者と発注者との請負契約による建設工事では,請負事業主と雇用関係にある労働者は,労働者派遣契約と異なり,一般に,発注者との間に指揮命令関係がない

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