平成30年度 第1回 線路及び設備管理
問1
(1) 通信ケーブル設備の概要
通信ケーブルは,心線の材料及び構造の違いにより,平衡対ケーブル,同軸ケーブル及び光ファイバケーブルに分類することができる。
平衡対ケーブルは,電気通信サービスの高速・広帯域化を実現する上で,損失と雑音の低減が大きな課題となる。設備センタとユーザ宅を結ぶアクセス系平衡対ケーブルの損失は,周波数が高くなるに従い増加する特性を示し,4 [kHz] 程度までは緩やかに増加し,100 [kHz] を超えると,表皮効果による抵抗の増加などにより,急激に増加する。さらに,アクセス系平衡対ケーブル設備では,メタリック心線の融通を確保するためのブリッジタップが存在すると,ブリッジタップの先端部分は開放されているため,反射が生じることから,特に,ADSL 回線では,損失が増加し,伝送速度が低下する要因となる場合がある。
また,平衡対ケーブルに生ずる雑音としては,高圧送電線などから受ける誘導雑音,束ねられた他の心線から電流が誘起され定常的に生ずる漏話雑音,手ひねり接続された部分の電気抵抗が振動などで変化することにより生ずる時々断に伴う雑音などがある。
一方,光ファイバケーブルは,平衡対ケーブル及び同軸ケーブルと比較して極めて低損失で高速・広帯域伝送に適しているため,アクセス系及び中継系ネットワークに広く用いられている。また,光ファイバケーブルでは,伝送媒体であるガラスが無誘導である特性を生かし,テンションメンバなどの構成材料を全てノンメタリック化した IF ケーブルが誘導対策用として用いられている。
「通信ケーブルの種類・特性及び適用」参照
(2) 光アクセス網形態の概要及び GE-PON システムに用いられる伝送技術
(ⅰ) 光アクセス網形態の概要
- 光アクセス網形態の一つである DS(Double Star)は,光ファイバをユーザごとに割り当てる SS(Single Star)に迂回ルートを設定したもので,SS と比較して高信頼性を実現した光アクセス網形態である。(誤)
- 設備センタとユーザ間に光/電気変換を行う能動素子を用いて,1 心の光ファイバに複数のユーザを収容する光アクセス網形態は,ADS といわれる。(正)
- 設備センタとユーザ間に受動素子である光スプリッタを用いて,1 心の光ファイバに複数のユーザを収容する光アクセス網形態は,PDS といわれる。(正)
- SS は,設備センタ側の装置とユーザ宅内側の装置を光ファイバで 1 対 1 にスター状に接続する構成であるため,OTDR を用いた設備センタ側からの各ユーザ区間における故障点探索は,PDS と比較して,一般に,容易である。(正)
DS は SS と比較して,信頼性に劣るが,経済性に優れる。
DS(Double Star)は,1 心の光ファイバの下部に受動素子であるスプリッタを設けて複数に分岐し下部も光ファイバを使う形式(PDS)と,能動素子であるリモートターミナルを設け,O/E 変換し下部を複数のメタルケーブルとしたもの(ADS)がある。どちらも経済性を重視したものである。
(ⅱ) GE-PON システムに用いられる伝送技術
- 設備センタ側からユーザ側への下り方向の通信には TDMA 方式が用いられ,ユーザ側から設備センタ側への上り方向の通信には TDM 方式が用いられている。(誤)
- 設備センタ側からユーザ側への下り方向の信号光の波長には 1.49 μm 帯が用いられ,ユーザ側から設備センタ側への上り方向の信号光の波長には 1.31 μm 帯が用いられている。(正)
- 上り帯域の利用効率を向上させるため,DBA 機能が用いられている。DBA 機能は,各ユーザ側から送信されるデータ量に応じて,設備センタ側で動的に帯域割当を行うものである。(正)
設備センタ側からユーザ側への下り方向の通信には TDM 方式(Time Division Multiplexing : 時分割多重化)が用いられ,ユーザ側から設備センタ側への上り方向の通信には TDMA 方式(Time Division Multiplex Access : 時分割多元接続)が用いられている。
(3) 線路設備に用いられるプラスチック材料の特性と用途,光クロージャの構造など
(ⅰ) 線路設備に用いられるプラスチック材料の特性と用途
- 硬質ポリ塩化ビニルは,耐水性や有機溶剤などに対する耐薬品性が良いため,ケーブル保護用硬質ビニル管,支線ガードなどに用いられる。(誤)
- 軟質ポリ塩化ビニルは,電気絶縁性が良く,また,可塑剤の添加により柔軟性も良いため,屋外線や屋内線の外被,保護用ビニルテープなどに用いられている。(正)
- ポリエチレンは,耐薬品性及び高周波電気特性が良く,低温でも割れにくいため,ケーブルなどの外被や絶縁体などに用いられている。また,ポリエチレンは,耐熱温度が高く,100 [°C] 以上の高温でも適用可能である。(誤)
- ポリプロピレンは,ポリエチレンと比較して機械的強度や耐熱性に劣るが,ポリエチレンと異なり塗装や接着が容易であるため,クロージャなどに用いられている。(誤)
硬質ポリ塩化ビニルは,耐水性,耐酸性,耐アルカリ性に優れるが,有機溶剤に弱い。
ポリエチレンは,耐熱温度が低く,70 [°C] 以上の高温では適用できない。
ポリプロピレンは,ポリエチレンと比較して機械的強度や耐熱性に優れるので,クロージャなどに用いられている。ポリエチレン同様に塗装や接着はできない。
(ⅱ) 光クロージャの構造など
- 架空用光クロージャの防水性能としては,一般に,経済性などの観点から,JIS 規格の保護等級 IPX4 を満たすタイプが適用され,光スプリッタを収納する場合は,保護等級 IPX7 を満たすタイプが適用される。(誤)
- 架空光ファイバケーブルとユーザ宅への引込み用のドロップ光ファイバケーブルとの接続箇所に用いられる架空用光クロージャは,心線の取り回しを柔軟にするため,心線を収容する収納トレイを具備しないことによりクロージャ内の空間を確保している。(誤)
- 地下用光クロージャは機械的な組立て構造を持ち,かしめ構造により防水性能が確保されており,架空用光クロージャには紫外線による劣化現象であるソルベントクラックを生じにくい材料が用いられている。(誤)
- 地下用光クロージャは,限られたスペース内での高密度な心線収納性が要求され,融着接続などによる光ファイバ心線接続部と必要な曲率半径に保持した状態での心線余長を収納できる構造となっており,1,000 心程度の光ファイバ心線を収容可能なものがある。(正)
架空用光クロージャの防水性能としては,一般に,経済性などの観点から,JIS 規格の保護等級 IPX4 を満たすタイプが適用され,高気密性が要求される地下用クロージャには,保護等級 IPX7 を満たすタイプが適用される。
第二特性数字 | 保護等級の要約 | 保護等級の定義 |
---|---|---|
0 | 無保護 | - |
1 | 鉛直に落下する水滴に対して保護する。 | 鉛直に落下する水滴によっても有害な影響を及ぼしてはならない。 |
2 | 15 度以内で傾斜しても鉛直に落下する水滴に対して保護する。 | 外郭が鉛直に対して両側に 15 度以内で傾斜したとき,鉛直に落下する水滴によっても有害な影響を及ぼしてはならない。 |
3 | 散水 (spraying water) に対して保護する。 | 鉛直から両側に 60 度までの角度で噴霧した水によっても有害な影響を及ぼしてはならない。 |
4 | 水の飛まつ (splashing water) に対して保護する。 | あらゆる方向からの水の飛まつによっても有害な影響を及ぼしてはならない。 |
5 | 噴流 (water jet) に対して保護する。 | あらゆる方向からのノズルによる噴流水によっても有害な影響を及ぼしてはならない。 |
6 | 暴噴流 (powerfull jet) に対して保護する。 | あらゆる方向からのノズルによる強力なジェット噴流水によっても有害な影響を及ぼしてはならない。 |
7 | 水に浸しても影響がないように保護する。 | 規定の圧力及び時間で外郭を一時的に水中に沈めたとき,有害な影響を生じる量の水の浸入があってはならない。 |
8 | 潜水状態での使用に対して保護する。 | 関係者間で取り決めた数字7より厳しい条件下で外郭を継続的に水中に沈めたとき,有害な影響を生じる量の水の浸入があってはならない。 |
架空光ファイバケーブルとユーザ宅への引込み用のドロップ光ファイバケーブルとの接続箇所に用いられる架空用光クロージャは,一般的に,収納トレイを具備しており,これにより光ファイバ心線を整理して収納している。
地下用光クロージャは機械的な組立て構造を持ち,ケーブル挿入部はネジ締結構造により防水性能が確保されており,架空用光クロージャには紫外線による劣化現象を防ぐため紫外線吸収剤が用いられている。
問2
(1) 通信土木設備の地下埋設物探査技術
通信土木設備に近接して他事業者の掘削工事などが実施される場合,近接工事による通信土木設備への影響の有無,設備への防護の必要性などについて検討するため,事前に非開削で埋設物を探知する埋設物探査が重要となっている。探査方法としては,一般に,電磁波レーダ法,電磁誘導法などが用いられる。
電磁レーダ法では,地表面に置いた送信アンテナから地中に向けて電磁波パルスを送信し,電気的定数である比誘電率が異なる媒体の界面で発生する反射波を受信アンテナで捉え,埋設物の位置を電磁波パルスの伝搬時間から算出する。探査能力は使用する電磁波の周波数によって異なるが,一般に,口径 25 [mm] ~ 1,000 [mm] までの埋設管の探知が可能である。また,探査深度についても土質,舗装条件などによって異なるが,一般に,1.5 [m] ~ 数 [m] までの探査が可能である。電磁波レーダ法の特徴は,電気特性が探査対象物の周辺の伝搬媒体である土と異なるものであれば,埋設管の材質は金属,非金属とも探査可能であり,埋設管の探査のほか,空洞の探査などにも利用できる。
一方,電磁誘導法は,地中に埋設された光ファイバケーブルの鋼心などに発信機から信号を送り,金属媒体から発生する誘導磁界を地上で測定することにより,埋設物の深度を探査する方法である。
「専門的分野・通信土木 対策ノート」参照
(2) 通信土木設備の概要
(ⅰ) マンホール設備
- マンホールの施工方法において,適当な大きさに分割したプレキャスト製品を現場に運搬して据え付ける方式は,現場打ち方式といわれる。(誤)
- マンホールの首部は,通常円形であり長さは 0.5 [m] であるが,既設埋設物との関係でマンホールの土被りが深くなり首部の長さが 1.0 [m] を超える場合は,現場打ちコンクリートによる角型の構造とする。(誤)
- レジンコンクリート製マンホールは,セメントコンクリート製マンホールと比較して,壁厚を薄くできるため軽量化が可能であり,耐火性にも優れている。(誤)
- 地震により液状化が予想される地域にマンホールを築造する場合は,一般に,セメントコンクリート製とし,その周辺にグラベルドレーンを施す。(正)
マンホールの施工方法において,適当な大きさに分割したプレキャスト製品を現場に運搬して据え付ける方式は,ブロック方式といわれる。
マンホールの首部は,通常円形であり長さは 0.5 [m] であるが,既設埋設物との関係でマンホールの土被りが深くなり首部の長さが 1.5 [m] を超える場合は,現場打ちコンクリートによる角型の構造とする。
レジンコンクリート製マンホールは,セメントコンクリート製マンホールと比較して,壁厚を薄くできるため軽量化が可能であり,耐火性は合成樹脂を含むためやや劣る。ちなみに,レジンコンクリートとは,セメントや水を一切使わず,熱硬化性樹脂(レジン)を結合剤として,砕石・砂・炭酸カルシウムを強固に固めたコンクリートである。
(ⅱ) 情報 BOX の概要
- 情報 BOX は,道路高度情報サービスの基盤設備として,道路情報の提供や ITS(高度道路交通システム)推進などの目的で,道路管理用光ファイバケーブルを収容するために道路管理者が設置している。(正)
- 情報 BOX へ入溝する事業者は,一般に,利用料として工事費のみを負担すればケーブルを入線することができるため,単独地中化の工事費と比較して,安価に管路ルートを確保することができる。(誤)
- 情報 BOX には,複数の光ファイバケーブルを布設することが可能なことから,道路管理者から占用許可を得れば,情報 BOX の空き管路は電気通信事業者なども利用することができる。(正)
情報 BOX へ入溝する事業者は,一般に,占用許可を受け占用料を払うことによりケーブルを入線することができるため,単独地中化の工事費と比較して,安価に管路ルートを確保することができる。
(3) 光海底ケーブルの埋設工事の概要
(ⅰ) 光海底ケーブルの埋設工法
- ROV 埋設工法は,最終接続点などの光海底ケーブル屈曲点の後埋設に使用し,加圧水をノズルから噴射し,光海底ケーブルを埋設することができるが,光海底中継器,ジョイントボックスなどの接続箇所を埋設することはできない。(誤)
- ウォータジェット埋設工法は,埋設機の掘削部に配置したジェットノズルから加圧水を噴射し,溝を掘る方法を用いており,掘削部にジェットノズルを縦に追加することにより,掘削深度を深くすることが可能である。(正)
- 鋤式埋設工法は,外洋における長距離光海底ケーブルの施設及び埋設が可能である。鋤式埋設機には,10 [m] のケーブル埋設深度を確保できるものが導入されており,適用水深も 2,000 [m] を超える深さまで可能なものがある。(誤)
- 光海底ケーブルの埋設工事は,ケーブル敷設との関係から,ケーブル敷設後埋設工事とケーブル敷設同時埋設工事に大別できる。鋤式埋設工法は,ケーブル敷設後埋設工事に適しており,ケーブル敷設同時埋設工事には不適である。(誤)
ROV(Remotely Operated Vehicle)埋設工法は,最終接続点などの光海底ケーブル屈曲点の後埋設に使用し,加圧水をノズルから噴射し,光海底ケーブルを埋設することができ,光海底中継器,ジョイントボックスなどの接続箇所を埋設することもできる。
鋤式埋設工法は,外洋における長距離光海底ケーブルの施設及び埋設が可能である。鋤式埋設機には,0.6 [m] のケーブル埋設深度を確保できるものが導入されており,適用水深も 200 [m] を超える深さまで可能なものがある。
光海底ケーブルの埋設工事は,ケーブル敷設との関係から,ケーブル敷設後埋設工事とケーブル敷設同時埋設工事に大別できる。鋤式埋設工法は,ケーブル敷設後埋設工事に適していないが,ケーブル敷設同時埋設工事には適している。
(ⅱ) ケーブル船による海底ケーブル敷設
図は,ケーブル船が海底ケーブルを保持している状態(A 点)から敷設を開始した直後の状態(B 点)までの敷設時の概念図である。図において,ケーブル船が A 点から B 点に移動する間にケーブル船が繰り出すケーブル長は,約 390 [m] である。ただし,必要に応じ,cos 10° = 0.98,cos 45° = 0.71,cos 80° = 0.17 及び tan 10° = 0.18 の値を用いること。
A 点におけるケーブル長を $L_1$ [m],B 点におけるケーブル長を $L_2$ [m] とすると,ケーブル船が A 点から B 点に移動する間にケーブル船が繰り出すケーブル長は次式で求められる。
\[ L_2 - L_1 = 1000/\cos{45^{\circ}} - 1000/\cos{10^{\circ}}=(1/0.71- 1/0.98) \times 1000 = (1.41 - 1.02) \times 1000 = 390 \text{ [m]} \]問3
(1) 光コネクタの種類と特徴など
単心光コネクタである SC コネクタや MU コネクタには,接続した光ファイバ端面における反射戻り光を抑制する方法として,凸球面上に研磨したフェルールの端面どうしを押圧して光ファイバを密着させるフィジカルコンタクト接続といわれる技術が用いられている。また,SC コネクタは,コネクタプラグがアダプタを介してかん合される構造を有しており,コネクタプラグとアダプタを挿抜するメカニズムとしてプッシュプル結合方式が採用されている。
多心光コネクタである MT コネクタは,多心光ファイバを固定したフェルールをガイドピンを用いて光ファイバの光軸の位置を合わせる構造であり,多心光ファイバケーブルの光ファイバテープ心線を一括して接続できる。また,MT コネクタは,接続端面間に屈折率整合剤を充填することにより低反射化を実現している。
FTTH 工事作業の効率化を目的とした現場組立光コネクタには,架空用クロージャ内の光ファイバを接続するための単心光コネクタである FAS コネクタがあり,コネクタプラグとコネクタソケットの 2 種類がある。
「通信ケーブルの敷設・接続方法」参照
(2) 通信線における誘導,雷サージ,雷害対策など
(ⅰ) 通信線(メタリックケーブル)が受ける誘導
- 高圧送電線などから通信線が受ける誘導には,静電誘導と電磁誘導の 2 種類がある。静電誘導は,電圧成分を誘導源とする現象であり,電磁誘導は,電流成分を誘導源とする現象である。(正)
- 電磁誘導を軽減するための対策の一つとして,誘導源となる高圧送電線などと通信線との離隔距離を十分にとる方法がある。また,やむを得ずお互いに交差する場合は,交差部をできる限り直角にすることが有効である。(正)
- 電磁誘導を軽減するための対策の一つとして,架空線路区間を地下化し,ケーブルを金属管路に収容することにより,遮蔽係数を大きくする方法がある。(誤)
- 電磁誘導を軽減するための対策の一つとして,通信線にアルミ被誘導遮蔽ケーブルを用いる方法があり,アルミ被に巻かれる磁性体テープには,遮蔽効果を上げるために透磁率の高い磁性材料を用いることが有効である。(正)
電磁誘導を軽減するための対策の一つとして,架空線路区間を地下化し,ケーブルを金属管路に収容することにより,遮蔽係数を小さくする方法がある。ちなみに遮蔽係数は次式で定義される。
(ⅱ) 雷サージ,雷害対策など
- 自己支持型光ファイバケーブルは,ケーブル部のテンションメンバが無誘導タイプであっても,金属である支持線に雷サージが誘導されるおそれがあるため,支持線の接地を適切に行う必要がある。(正)
- ユーザビルに設置される VDSL 集合装置の雷害対策としては,保安用接地,電源用接地及び通信用接地を等電位化する共通接地としないで,それぞれ個別接地とする方法,VDSL 集合装置の電源線とメタリックケーブルの通信線との間に雷サージのバイパスルートを設ける方法などが有効である。(誤)
- ユーザビルなどに設置される光アクセス装置は,光アクセス装置に接続される通信線に雷害対策が施されていても,光アクセス装置の電源線が屋外に配線されている場合,電源線から雷サージが侵入するおそれがある。(正)
ユーザビルに設置される VDSL 集合装置の雷害対策としては,保安用接地,電源用接地及び通信用接地を個別接地としないで等電位化する共通接地とする方法,VDSL 集合装置の電源線とメタリックケーブルの通信線との間に雷サージのバイパスルートを設ける方法などが有効である。
(3) 光ファイバケーブルの故障とその対策など
(ⅰ) アクセス系光ファイバケーブルの接続部における故障の要因とその対策など
- 光ファイバにおける接続損失の発生要因の一つとして,光ファイバ相互での軸ずれがある。光ファイバの屈折率分布がガウス分布に従う場合,接続損失値は,両光ファイバのコア径が 1/2 以上重なり合えば,軸ずれがない場合と同じである。(誤)
- 現場組立光コネクタの組立作業において,光ファイバを切断する際,表面に傷がある光ファイバは折り曲げるとそこに応力が集中して破断し,その破断面は凹凸となり,接続損失が増加することから,ニッパを用いて光ファイバを完全に切断する必要がある。(誤)
- 現場組立光コネクタの接続作業において,故障を防ぐために,ドロップ光ファイバケーブルの外被を除去する際に光ファイバ心線に傷をつけないようにニッパの刃先を光ファイバ心線に向けないこと,光ファイバ心線の被覆除去の前にメカニカルストリッパを清掃することなどが必要である。(正)
- メカニカルスプライスの不具合による故障の要因としては,光ファイバ端面の欠けやバリ,メカニカルスプライス内への異物混入などがあるが,光ファイバ端面相互の隙間は,V 溝上で光ファイバの端面どうしが正確に対向しているため,故障の要因に該当しない。(誤)
光ファイバの屈折率分布がガウス分布に従う場合,接続損失値は,両光ファイバのコア径が 1/2 以上重なり合えば,軸ずれがない場合より,約 1 [dB] の損失となる。
現場組立光コネクタの組立作業において,光ファイバを切断する際,表面に傷がある光ファイバは折り曲げるとそこに応力が集中して破断し,その破断面は凹凸となり,接続損失が増加することから,光ファイバカッタを用いて光ファイバを完全に切断する必要がある。
メカニカルスプライスの不具合による故障の要因としては,光ファイバ端面の欠けやバリ,メカニカルスプライス内への異物混入などがあるが,光ファイバ端面相互の隙間は,V 溝上で光ファイバの端面どうしが正確に対向したとしても,故障の要因に該当する。
(ⅱ) 光ファイバケーブルの不具合箇所の特定方法,融着接続部の補強など
- 地下光ファイバケーブルにおいて,曲げによるストレスが加わり,光損失が増加した箇所は,一般に,設備センタから OTDR を用いた光損失測定により推定でき,1.31 [μm] の測定波長による曲げ箇所の光損失測定値は,1.65 [μm] の測定波長による場合と比較して大きくなる。(誤)
- B-OTDR は,光ファイバ中の散乱現象であるブリルアン散乱による後方散乱光を検出する測定器である。ブルリアン散乱は,光ファイバへの応力付与によって散乱光が増幅する特性を有していることから,散乱光の増幅特性からひずみが加わっている箇所を確認することができる。(誤)
- 光クロージャ内での融着接続部を熱収縮スリーブを用いて補強する場合,光ファイバをねじれた状態で固定すると,応力が徐々に吸収されて強度が増すため,熱収縮スリーブを加熱する前にねじれを加える必要がある。(誤)
- 光ファイバは,長期にわたる信頼性を確保するため,製造過程において,スクリーニング試験が行われている。また,スクリーニング試験は,融着接続機による融着接続作業時にも実施されている。(正)
地下光ファイバケーブルにおいて,曲げによるストレスが加わり,光損失が増加した箇所は,一般に,設備センタから OTDR を用いた光損失測定により推定でき,1.65 [μm] の測定波長による曲げ箇所の光損失測定値は,1.31 [μm] の測定波長による場合と比較して大きくなる。
B-OTDR は,光ファイバ中の散乱現象であるブリルアン散乱による後方散乱光を検出する測定器である。ブルリアン散乱は,光ファイバへの応力付与によって散乱光の波長がシフトする特性を有していることから,散乱光の波長シフト量からひずみが加わっている箇所を確認することができる。
光クロージャ内での融着接続部を熱収縮スリーブを用いて補強する場合,光ファイバをねじれた状態で固定すると,応力が徐々に加わり破断することがあるため,熱収縮スリーブを加熱する前にねじれをなくす必要がある。
問4
(1) 労働安全衛生に関する法令に基づく安全管理体制など
労働安全の管理体制については,一定数以上の労働者を使用する事業場において,事業者は当該事業場での安全衛生業務全般を統括管理する責任を負う者として,その事業場の責任者を統括安全衛生管理者として選任しなければならない。
さらに,建設業や通信業などの業種で常時 50 人以上の労働者を使用する事業場においては,安全に係る技術的事項を管理する安全管理者を選任しなければならない。
一方,業種を問わず常時 50 人以上の労働者を使用する事業場では,労働者の意見を反映させるために,衛生委員会を設置することが義務付けられている。衛生委員会の運営方法として,開催回数は毎月 1 回以上で,重要な議事内容は記録し,3 年間保存しなければならない。
また,労働災害を防止するための管理を必要とするもので,政令で定めるものについては,その作業区分に応じて作業主任者を選任しなければならない。作業主任者は,作業に従事する労働者の指揮のほか,機械・安全装置の点検,器具・工具などの使用状況の監視などに関する職務を行うものであり,技能講習修了者や免許所有者の中から選任されるものである。例えば,酸素欠乏危険場所などにおける作業,つり足場,張出し足場又は高さ 5 [m] 以上の構造の足場組立て,解体又は変更の作業などの区分に応じて作業主任者の選任が必要となる。
建設機械による労働災害の防止の観点から,玉掛け作業を行う場合,一般に,玉掛け技能講習を修了した者が選任することが必要とされる。これは,制限荷重が 1 トン以上の揚貨装置又はつり上げ荷重が 1 トン以上のクレーン,移動式クレーン若しくはデリックの玉掛けの業務に就く者を制限しているものであり,荷物の重さにかかわらず,クレーンなどの能力が 1 トン以上の場合に当該資格者が必要とされる。
「安全管理」参照
(2) 信頼性に関する事項など
(ⅰ) 故障曲線の特徴など
- アイテムの使用期間中における故障率の時間的変化を示したものは,一般に,故障曲線又は障害曲線といわれ,アイテムの拡張性を評価するために有効である。(誤)
- 故障曲線の代表的なものにバスタブ曲線がある。バスタブ曲線は,修理形アイテムに限定した故障曲線として用いられる。(誤)
- バスタブ曲線の初期故障期間における故障率低減のための方策の一つにディレーティングがある。これは,アイテムを使用開始前又は使用開始後の初期に動作させることにより欠点を検出・除去し,是正することである。(誤)
- バスタブ曲線の磨耗故障期間は,アイテムの老朽化による故障が多く発生する期間である。そのため,この期間においては予防保全によるアイテムの取替えが効果的である。(正)
- バスタブ曲線の偶発故障期間は,故障率がほぼ一定とみなせる期間であり,アイテムの通常の使用期間に相当する。この期間の長さは,一般に,故障寿命といわれる。(誤)
アイテムの使用期間中における故障率の時間的変化を示したものは,一般に,故障曲線又は障害曲線といわれ,アイテムの信頼性を評価するために有効である。
故障曲線の代表的なものにバスタブ曲線がある。バスタブ曲線は,一般に非修理系アイテムの故障曲線として用いられる。
バスタブ曲線の初期故障期間における故障率低減のための方策の一つにスクリーニングがある。これは,アイテムを使用開始前又は使用開始後の初期に動作させることにより欠点を検出・除去し,是正することである。
ディレーティングとは,アイテムのストレス比の低減,信頼性を回復するために,計画的にストレスを定格値から軽減する行為。
バスタブ曲線の偶発故障期間は,故障率がほぼ一定とみなせる期間であり,アイテムの通常の使用期間に相当する。この期間の長さは,一般に,耐用寿命といわれる。
(ⅱ) 信頼性の評価指標など
- アイテムの信頼度 $R(t)$ は時間 $t$ の関数であり,$R(0) = 0$,$R(\infty) = 1$ となる性質を持っている。(誤)
- 修理系のアイテムにおいて,修理時間の期待値は,MTBF といわれる。(誤)
- アイテムがダウン状態にある時間の期待値は,MDT といわれる。(正)
- 修理系のアイテムにおいて,最初の故障が発生するまでの動作時間の期待値は,MTTF といわれる。(誤)
アイテムの信頼度 $R(t)$ は時間 $t$ の関数であり,$R(0)$ = 1,$R(\infty)$ = 0 となる性質を持っている。
修理系のアイテムにおいて,修理時間の期待値は,MTTR(Mean Time To Repair)といわれる。
修理系のアイテムにおいて,最初の故障が発生するまでの動作時間の期待値は,MTTFF(Mean Time To First Failure)といわれる。
MTBF(mean operating time between failures : 平均故障間動作時間)
故障間動作時間の期待値。平均故障隙間動作時間は,修理アイテムに対してだけ用いられる。ある特定期間中の MTBF は,その期間中の総動作時間を総故障数で除した値である。
MTTR(mean time to restoration : 平均修復時間)
修復時間の期待値。修理を完了するための平均時間を表し,アベイラビリティ $A$,保全度 $M$,修復率 $\mu$に関係する。
システムの信頼性
(ⅰ) $1/n$ 冗長システム
図に示すように,信頼度 0.7 である装置 A が,$n$ 台並列に接続されている $\displaystyle \frac{1}{n}$ 冗長システムにおいて,システム全体の信頼度を 0.999 以上にするためには,装置 A の台数である $n$ を少なくとも 6 以上とする必要がある。
各装置 A の信頼度 $R_A$ は 0.7 で等しいから,$n$ 台並列に接続されているシステムの信頼度 $R_S$ は,次式で表される。
\[ R_S = 1 - (1 - R_A)^n = 1 - (1 - 0.7)^n = 1 - 0.3^n \]$R_S$ を 0.999 以上とするためには,次式の $n$ を満たす必要がある。
\[ R_S = 0.999 \le 1 - 0.3^n \] \[ 0.3^n \le 0.001 \]両辺の対数をとる。
\[ \log_{10}{0.3^n} = n \log_{10}{0.3} = n(\log_{10}{3} - \log_{10}{10}) = n (0.477 - 1) = -0.523 n \] \[ \log_{10}{0.001} = -3 \] \[ -0.523 n \le -3 \] \[ 5.74 \le n \]したがって,システム全体の信頼度を 0.999 以上にするためには,装置 A の台数である $n$ を少なくとも 6 以上とする必要がある。
(ⅱ) 故障率
あるシステムのアベイラビリティ及び MTTR について,ある運用期間内において調査したところ,アベイラビリティが 99.6 [%],MTTR が 2 [時間] であった。このシステムの調査期間内の故障率は,2.01 × 10-3 [件/時間] である。ただし,答えは四捨五入し有効数字 3 桁とする。
アベイラビリティ $A$ は,MTBF,MTTR を用いて,次式で表される。
与えられた数値を代入し,MTBF を求める。
故障率は,次式で計算できる。
問5
(1) ISMS 適合性評価制度
ISMS 適合性評価制度は,組織における ISMS が認証基準に適合しているかを認証機関が審査し登録する制度である。適合性を評価するための認証基準は,国際標準 ISO/IEC 27001 を国内規格化して制定した JIS Q 27001 である。
ISMS 認証を希望する組織は,認定された認証機関の中から選んで申請し,申請が受理され審査に入れる状態になったら審査が開始される。認証の有効期間は,3 年間であり,認証登録後は通常 1 年ごとにサーベイランス審査が行われ,有効期限が切れる年には再認証審査を受ける必要がある。
ISMS の一般要求事項は,ISMS の確立,ISMS の導入及び運用,ISMS の監視及びレビュー,ISMS の維持及び改善という PDCA サイクルに従いまとめられており,組織は,ISMS にかかわる方針や記録を文書として作成,保管することが求められる。
「セキュリティ管理手法」参照
「サーベイランス審査」とは,「維持審査」のことである。
(2) サーバにおけるアクセス制御
- ファイルやシステム資源などの各所有者が,読取り,書込み,実行などのアクセス権を設定する方式は,一般に,強制アクセス制御といわれる。(誤)
- システムの管理者の決めた管理ポリシーに沿ったアクセス制御が全ユーザに適用される方式は,一般に,任意アクセス制御といわれる。(誤)
- ユーザの役割に応じてアクセス権限を設定することにより,必要なオブジェクトへのアクセスを可能とするよう制御する方式は,一般に,ロールベースアクセス制御といわれる。(正)
- ユーザやグループごとに,ファイルやシステム資源などに対して,何を許可し,何を拒絶するかなどのアクセス制御情報を記述したリストは,一般に,CRL といわれる。(誤)
ファイルやシステム資源などの各所有者が,読取り,書込み,実行などのアクセス権を設定する方式は,一般に,任意アクセス制御といわれる。
システムの管理者の決めた管理ポリシーに沿ったアクセス制御が全ユーザに適用される方式は,一般に,強制アクセス制御といわれる。
ユーザやグループごとに,ファイルやシステム資源などに対して,何を許可し,何を拒絶するかなどのアクセス制御情報を記述したリストは,一般に,ACL(Access Control List)といわれる。ちなみに CRL(Certificate Revocation List)とは,有効期限よりも前に失効させたデジタル証明書の一覧である。
(3) セキュリティホールなど
- CGI,PHP などを用いた Web アプリケーションにセキュリティホールがあると,サーバ上の読まれてはいけないファイルを読まれる,悪意のあるプログラムを埋め込まれて実行されるなどの被害を受けるおそれがある。(正)
- ネットワークを介してサーバの各ポートに順次アクセスして応答を確認していく行為は,スニッフィングといわれ,セキュリティホールを探す場合などに悪用されることがある。(誤)
- 製品出荷後に発見された OS やアプリケーションのセキュリティホールに対処するための修正プログラムは,セキュリティポリシーといわれ,OS やアプリケーションを安全に使用するためには,一般に,適用の安全性が確認されたセキュリティポリシーを速やかに適用する必要があるとされている。(誤)
ネットワークを介してサーバの各ポートに順次アクセスして応答を確認していく行為は,ポートスキャンといわれ,セキュリティホールを探す場合などに悪用されることがある。
製品出荷後に発見された OS やアプリケーションのセキュリティホールに対処するための修正プログラムは,パッチファイルといわれ,OS やアプリケーションを安全に使用するためには,一般に,適用の安全性が確認されたパッチファイルを速やかに適用する必要があるとされている。
(4) ネットワーク式工程表
図に示すネットワーク式工程表について述べた次の文章のうち,正しいものは。
- 結合点(イベント)番号 4 の最早結合点時刻は,5 日である。(誤)
- 結合点(イベント)番号 5 の最遅結合点時刻は,7 日である。(誤)
- 作業 B の所要日数を短縮することにより,クリティカルパスの所要日数を短縮することが可能である。(誤)
- 作業 E は,最早結合点時刻で作業を開始すれば,所要日数 4 日に対して 2 日遅れてもクリティカルパスの所要日数に影響を及ぼすことはない。(正)
- 作業 G のフリーフロートは,2 日である。(誤)
結合点(イベント)番号 4 の最早結合点時刻は,6 日である。
結合点(イベント)番号 5 の最遅結合点時刻は,8 日である。結合点(イベント番号) 6 の最早結合点時刻は 9 日で,作業 G の所要日数は 1 日であるため,8 日となる。
作業 B の所要日数を短縮することにより,クリティカルパスの所要日数を短縮することはできない。
作業 G のフリーフロートは,1 日である。
(5) 建設業法に定める施工体制台帳の作成など
- 特定建設業者は,発注者から直接請け負った建設工事の下請契約の請負代金の額が 4,000 万円(建築一式工事の場合は 6,000 万円)以上になるときは,建設工事の適正な施工を確保するため,施工体制台帳を作成しなければならない。(正)
- 施工体制台帳に基づき作成された施工体系図は,当該建設工事における各下請負人の作業工程表や請負代金の額などを表示したものであり,当該工事現場の見やすい場所に掲示されなければならない。(誤)
- 施工体制台帳の作成が義務付けられた建設工事における下請負人は,請け負った建設工事を更に再下請負とした場合,元請負人が作成する施工体制台帳に反映されるため,元請負人に対して変更施工計画書を提出しなければならない。(誤)
- 公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事で,工事 1 件の請負代金の額が 3,500 万円(建築一式工事の場合は 7,000 万円)以上のものについては,営業所ごとに専任の主任技術者又は監理技術者を置かなければならない。(誤)
施工体制台帳に基づき作成された施工体系図は,当該建設工事に係るすべての建設業者名,技術者名等を記載し工事現場における施工の分担関係を明示したものであり,当該工事現場の見やすい場所に掲示されなければならない。
施工体制台帳の作成が義務付けられた建設工事における下請負人は,請け負った建設工事を更に再下請負とした場合,元請負人が作成する施工体制台帳に反映されるため,元請負人に対して再下請負通知書を提出しなければならない。
公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な建設工事で,工事 1 件の請負代金の額が 3,500 万円(建築一式工事の場合は 7,000 万円)以上のものについては,工事現場ごとに専任の主任技術者又は監理技術者を置かなければならない。