平成22年度 第2回 専門的能力・通信線路

2020年6月7日作成,2021年1月1日更新

問1

(1) メタリック伝送路における減衰量、無ひずみ伝送など

減衰量は、二次定数の一つである減衰定数 $\alpha$ の大小によって決定される。往復導体の単位長当たりの抵抗とインダクタンスをそれぞれ $R$ と $L$、往復導体間の単位長当たりの漏れコンダクタンスと静電容量をそれぞれ $G$ と $C$ とすると、$R$、$L$、$G$、$C$ は線路の一次定数といわれ、減衰定数 $\alpha $ は、これら一次定数から導かれる。

一般に、高周波(30 [kHz] 程度以上)の場合、減衰定数 $\alpha$ の近似式は、次式のように表すことができる。

\[ \alpha \approx \frac{R}{2}\sqrt{\frac{C}{L}}+\frac{G}{2}\sqrt{\frac{L}{C}} \]

この近似式において、減衰定数 $\alpha$ を最小にするためには $R=G=0$ としなければならないが、これは、全く減衰しないということであり実現することは不可能である。$RC=GL$ の関係にある場合、減衰定数 $\alpha$ に極小値が存在するが、実際の伝送路では、$RC=GL$ の減衰量最小条件を満足することは困難であり、一般に、一次定数の関係は、$\displaystyle \sqrt{\frac{L}{C}} \lt\lt \sqrt{\frac{R}{G}}$ となる。

また、無ひずみ伝送の成立する条件は、減衰量最小条件でもあり、特性インピーダンスが一定であること、減衰定数 $\alpha$ が一定であること及び位相定数が周波数に比例することである。

メタリックケーブル・同軸ケーブルの伝送理論」参照

(2) メタリック伝送線路の諸特性など

(ⅰ) 高周波領域における電気的諸特性

  1. 導体系では、周波数が高くなるに従って抵抗及び内部インダクタンスに変化が生ずる。これは、導体内部において、周波数が高くなるにつれて各部の電流が互いに作用を及ぼしあうことで電流分布が変化した結果であり、一般に、電気的特性として抵抗は増加し、内部インダクタンスは緩やかに減少する。(
  2. 近接して平行に並んでいる2本の導体に電流が流れたとき、それぞれの電流が同一方向であると電流が外側に押しやられ、反対方向であると内側に引き合うことで2本の導体の電流密度が変化する現象が生ずる。この現象は高周波において顕著となり、一般に、近接効果といわれる。(
  3. 漏れコンダクタンスは、心線間の絶縁物を通して流れる電流の割合を示し、漏れコンダクタンスが小さいほど漏洩する電流が大きく、一般的な平衡対ケーブルでは、周波数が高くなると急激に小さくなる。(
  4. 高周波では導体系の抵抗だけでなく、周囲の金属体中に誘起する渦電流によって電力損失を生ずることがあり、主なものにカッド損などがある。(

正しくは「小さく」「大きく」である。

(ⅱ) 伝送系のひずみの種類、特徴など

  1. 減衰ひずみは、伝送系の減衰量が周波数によって異なるために生ずるひずみであり、音声回線においては、その安定度を低下させるものである。(
  2. 位相ひずみは、伝送系の位相量が周波数に対して比例関係にあるために生ずるひずみであり、群伝搬時間が周波数により異なるために生ずることから、遅延ひずみともいわれ、データ伝送などにおいて大きな影響を及ぼす。(
  3. 非直線ひずみは、伝送系の入力と出力とが比例関係にないために生ずるひずみであり、波形ひずみの原因となる。搬送多重回線においては、非直線ひずみによる高調波及び混変調波の発生により、ある通話路からほかの通話路への漏話及び雑音の原因となる。(

正しくは「伝送品質に影響を及ぼす」である。

(ⅲ) 伝送系における雑音の種類、特徴など

  1. 熱雑音などの基本雑音は、信号レベルに比例して発生する雑音であり、信号レベルの高いところで問題となる。(
  2. 準漏話雑音は、位相ひずみを有する部分において高調波のほかに和及び差周波数の種々の組合せからなる相互変調積による結合波が発生し、各部分で発生したこれらのひずみが逐次累積されることにより発生する了解性漏話の一つである。(
  3. 多重漏話雑音は、平衡ケーブルと比較して、同軸ケーブルにおいて大きな影響を及ぼし、誘導回線が多数ある場合には同時に漏れてくる多重漏話は互いに干渉して了解性の雑音となる。(
  4. 漏話以外の雑音としては、紙絶縁ケーブルにおける手ひねり心線接続部が一時的に接触不良となった場合に発生するバースト状の雑音がある。(

正しくは,1.「の有無に関係のない」「低い」,2.「非了解性漏話」,3.「平衡ケーブルと同軸ケーブルが逆」「非了解性」である。

準漏話雑音(intermodulation noise, unintelligible crosstalk)
非直線性をもった伝送路で多重信号を伝送する場合生じる非了解性の雑音をいう。

同軸ケーブルで高周波伝送する場合,表皮効果の影響で外部とは電磁的にほぼ完全遮断されるので漏話は考えてなくても良い。

(ⅳ) 電圧反射係数

図1及び図2は、二つの一様線路 Ⅰ 及び Ⅱ を接続した場合を表したものである。図1の電圧反射係数を $a$、図2の電圧反射係数を $b$ としたとき、$a$ 及び $b$ の組み合わせで正しいものは、$\displaystyle a = \frac{V_r}{V_i}$,$b=0.2$ である。

電圧反射係数
図 電圧反射係数

図 2 の電圧反射係数 $b$ は次式で求められる。

\[ b=\frac{Z_2-Z_1}{Z_1+Z_2}=\frac{600 - 400}{400 + 600}=0.2 \]

問2

(1) SI 型の屈折率分布を持つ光ファイバの伝搬モード

コアとクラッドの境界面で全反射しながら伝搬する光は、その電界がコア内に閉じ込められている必要がある。すなわち、コアとクラッドの境界面においては、入射光と反射光との干渉により電界強度がゼロになる必要があり、この条件を満たすためには、コアの径方向に特定の電界強度分布を持った定在波が存在しなければならず、また、伝搬可能な光の反射角度は特定の離散的な反射角度に限られる。

この特定の電界強度分布は、コアの方向には変化せず一定となり、このような特定の反射角度を持ち、コア内に閉じ込められた特定な電界分布を持つ光の伝搬の仕方は、光の伝搬モードといわれる。

ただし、実際の光ファイバではコアとクラッドの境界面において電界成分はゼロにはならず、境界面からクラッド内に向けて指数関数的に小さくなっていく。

ここで光ファイバのコア径を $d$、伝搬する光の波長を $\lambda$、光がコアとクラッド間の境界面となす角度を $\theta$、伝搬モード数を $N$ とすると、$\displaystyle d\sin\theta = N\frac{\lambda}{2}$ が成り立ち、$N=1$ のときの伝搬モードは基本モード、$N=2$ 以上のときの伝搬モードは高次モードといわれる。最高次の伝搬モードは、コアとクラッドとの境界面に対する光の入射角が臨界角に近づいたときの反射角度に対応するものである。

光ファイバケーブルの伝送理論」参照

(2) 光ファイバ伝送など

(ⅰ) 光ファイバの損失など

  1. 石英ガラスの吸収損失には、紫外吸収、赤外吸収などがある。紫外吸収は SiO2 の電子のバンド間遷移による吸収であり、赤外吸収は SiO2 などの分子の振動による吸収である。(
  2. 光ファイバの製造時の高温状態時には密度の揺らぎ、すなわち屈折率の揺らぎが生ずるが、これが光ファイバに残留し、フレネル反射が起こる原因となる。フレネル反射は波長の 4 乗に反比例するため光の波長が長くなるほど小さくなる。(
  3. 石英ガラス系のガラス内の不純物である水酸イオンによって生ずる光の損失は、波長 0.94 [μm]、1.24 [μm],1.38 [μm] などにピークがある。(
  4. マイクロベンディングロスは、光ファイバに側面から不均一な圧力が加わって、光ファイバの軸がわずかに(数 μm 程度)曲がるために発生する損失をいう。また、光ファイバを曲げたときに生ずる損失は、曲げ損失又はマクロベンディングロスといわれる。(

正しくは「レイリー散乱」「比例」「大きく」である。

(ⅱ) 光ファイバ伝送における非線形現象など

  1. 高強度の短光パルスが光ファイバに入射されると、光の電界で光ファイバ物質中の電子の軌道が変化することによって屈折率が変化する現象は、ラマン効果といわれる。(
  2. 光パルス自身が誘起した屈折率変化により、その位相が急激に変化する現象は自己位相変調といわれ、光パルスは周波数変化(チャーピング)を伴う。(
  3. 二つの異なる波長の光信号を光ファイバに入射したとき、一方の光信号の強度変化によって生ずる屈折率変化により他方の光信号の位相変化が生ずる現象は、相互位相変調といわれる。(

正しくは「光カー効果」である。

(ⅲ) 光ファイバの分散特性など

  1. 材料分散は、光ファイバ材料の屈折率が波長に依存する特性を持っていることに起因する分散である。材料分散の単位としては、一般に、[ps/nm/km] が用いられ、例えば、10 [ps/nm/km] とは、スペクトル幅 1 [nm] の光が 10 [km] 伝搬したとき、パルス幅が 10 [ps] 広がることを意味する。(
  2. シングルモード光ファイバにおいて、光ファイバの構造に起因する分散を構造分散という。一般に、伝搬する光はコアだけでなくクラッドにまで光が染み出しているため、光の伝搬速度はコアのみを伝搬する速度とは異なり、伝搬する光の伝搬速度は電磁界分布の違いによって変化する。(
  3. シングルモード光ファイバにおいては、その軸対称性のため直交する2方向に偏波した二つのモードが存在する。光ファイバのコアが理想的な真円でない、又は材料が均質でないことにより、これら二つのモード間に群遅延差を生ずるが、これを導波路分散という。(
  4. 分散は、大きい順にモード分散、構造分散、材料分散である。マルチモード光ファイバにおいてはモード分散と構造分散が、シングルモード光ファイバにおいては構造分散と材料分散が、分散の大きさを決定する主な要因である。(

正しくは,1.「1 [km]」,3.「モード分散」,4.「大きい順にモード分散,材料分散,構造分散」である。

(ⅳ) 光ファイバの構造パラメータ

  1. 光ファイバの構造を決定するパラメータは、マルチモード光ファイバの場合は、モードフィールド直径、外径、開口数(NA)及び屈折率分布であり、シングルモード光ファイバの場合は、コア径、モードフィールド偏心量、外径及び遮断波長である。(
  2. モードフィールド直径とは、光ファイバの径方向の光強度分布がポアソン分布で近似できるとき、光強度が最大値に対して $\displaystyle \frac{1}{e^2}$($e$ は自然対数の底)となるところの直径をいう。(
  3. モードフィールド偏心量は、モードフィールド中心とクラッド中心との距離をいい、モードフィールドの中心とコアの中心は実質的には同じ場所になるので、モードフィールド偏心量は、コア径とクラッド径の差として測定される。(
  4. カットオフ波長とは、高次のモードを遮断する波長であり、例えば 1.3 [μm] で使用するシングルモード光ファイバにおいてはカットオフ波長は 1.3 [μm] よりも短くなければならない。カットオフ波長より長い波長領域ではシングルモードとなることが保証されるが、逆に短い波長領域ではマルチモードとなってしまう。(

正しくは,1.「下線部が逆」,2.「ガウス分布」,3.「コア中心とクラッド中心」である。

モードフィールド直径
図 モードフィールド直径

問3

(1) 光ファイバ増幅器の種類と特徴など

光ファイバ増幅器には、希土類添加光ファイバ増幅器とファイバラマン光増幅器がある。

希土類添加光ファイバ増幅器は、コア部に希土類イオンを添加した光ファイバを増幅媒体としており、光増幅可能な波長帯は添加する希土類元素に依存し、その増幅性能も添加元素により異なっている。添加元素としてネオジム(Nd)やプラセオジム(Pr)が用いられる波長 1.3 μm 帯の増幅器は、基底準位と増幅終準位が異なる 4 準位系である。

希土類添加光ファイバ増幅器の一種である EDFA は、数 10 [mW] 程度の励起パワーで 30 [dB] 以上の利得が得られ、ビットレート依存性が無く、異なる多数の波長を一括して増幅することが可能である。

ファイバラマン光増幅器は、光ファイバに高強度の励起光を入射することで光増幅を実現するもので、励起光は増幅媒体となる光ファイバ材料の分子の振動により散乱を受け、この光散乱現象を利用してラマン増幅が行われる。

光ファイバケーブルの伝送理論」参照

(2) 光伝送技術など

(ⅰ) 多重化伝送技術など

  1. 上り・下り信号で同じ波長を用い、光ファイバを伝搬する光の方向により上り・下り信号を識別する技術は、DDM (Directional Division Multiplexing) といわれ、一般に、光方向性結合器が用いられている。(
  2. 一つの波長で複数のデジタル信号を時間的に少しずつずらして規則的に配列し多重化する技術は、TDM(Time Division Multiplexing)といわれる。(
  3. 送信側でチャネルごとに異なる特有の符号を用いた信号を送信し、符号間の干渉がないようにして信号を伝送し、受信側では演算により必要とするチャネルを取り出すことにより同時に送受信を可能とする技術は、WDM(Wavelength DivisionMultiplexing)といわれる。(
  4. 上り・下り信号用にそれぞれ別の光ファイバを用い、上り・下り信号で同じ波長を用いることができる技術は、SDM(Space Division Multiplexing)といわれる。(

正しくは「CDM(Code Division Multiplexing)」である。

(ⅱ) WDM 伝送技術など

  1. ITU-T 勧告では、光アンプを用いたマルチチャネルインタフェースの中で WDM の周波数グリッドが規定され、193.10 [THz] を基準光周波数としている。(
  2. CWDM は、光周波数の有効利用を図るため、光周波数間隔が 12.5 [GHz]、25 [GHz]、50 [GHz]、100 [GHz] 及び 100 [GHz] の整数倍となるように発振波長を配置した WDM 方式である。(
  3. DWDM は、波長安定化の要求条件を緩和するため、波長間隔 20 [nm] の WDM 方式である。(

正しくは,B.「DWDM(Dense Wavelength Division Multiplexing : 密な波長多重)」,C.「CWDM(Coarse Wavelength Division Multiplexing : 疎な波長多重)」である。

(ⅲ) 発光素子の構造や特性など

  1. 活性層の上又は下に隣接するガイド層全体に屈折率の周期的な構造(グレーティング)を作製した LD は、分布ブラッグ反射 LD(DBR-LD)といわれる。(
  2. 活性層の片側又は両側の端面付近に屈折率の周期的な構造(グレーティング)を作製した LD は、分布帰還 LD(DFB-LD)といわれる。(
  3. 活性層の上下に形成された一対の反射器により共振器が構成され、基板と垂直方向にレーザ光が出射される LD は、面発光 LD(VCSEL)といわれる。(
  4. LD の発光スペクトルにおいて、ピークのパワーレベルとサイドモードのレベル差は、電圧定在波比(VSWR)といわれる。(

正しくは,1.「分布帰還 LD(DFB-LD)」,2.「分布ブラッグ反射 LD(DBR-LD)」,4.「サイトモード抑圧比」である。

(ⅳ) 受光素子の特性など

  1. APD は、内部に増倍機構を持つため、PIN-PD と比較して高い逆バイアス電圧を必要とする。また、増倍率は、逆バイアス電圧及び使用環境温度に依存する。(
  2. 受光素子に到着する LD 光の流れは、ランダムでありアーラン分布に従う。この光を受光すると、到着光の流れがランダムであるため平均電流の周りに揺らいだ電流が発生する。(
  3. APD は、半導体ショットキー接合になだれ降伏電圧近傍のバイアス電圧を印加した状態で光を入射すると、空乏層で発生した光キャリアが原子と衝突して電子・正孔対が次々に発生するなだれ増倍といわれる現象により増幅を行う。(
  4. 光子のエネルギーが、半導体の基礎吸収端における禁制帯幅よりも小さい場合、この光が半導体中に入射すると光子が吸収され、伝導帯に電子、価電子帯(充満帯)に正孔が励起される。電子・正孔対の数は入射光子数に反比例するので、この電子及び正孔を電流として外部回路に取り出すことにより、光強度を検出することができる。(

正しくは,2.「ポアソン」,3.「」,4.「比例」である。

問4

(1) 光ファイバの伝送特性の測定技術

光ファイバの伝送特性を示す主要なパラメータは、損失、伝送帯域、波長分散などであり、特に長距離伝送システムでは、偏波モード分散などの偏波依存特性を知ることが重要である。

光ファイバの損失特性の測定は、光の減衰量を直接測定する方法と、光パルスを入射したときに発生する後方散乱光強度の距離特性から測定する方法に分類される。

光の減衰量を直接測定する方法としては、カットバック法と挿入損失法があり、カットバック法は、主に製品検査など厳密な測定時に用いられ、測定誤差を少なくするには、光の入射時に励振される漏洩光がカットバック長で十分に減衰している必要がある。また、マルチモード光ファイバの光損失は、励振モード分布に大きく依存して変化する。

挿入損失法は、光ファイバを切断せずに測定できるため、カットバック法を適用することが難しい布設工事後の伝送路の光損失を測定する場合などに用いられる。

一方、光ファイバの伝送帯域は、モード分散、構造分散、材料分散などによって決定され、マルチモード光ファイバにおける伝送帯域測定法には、変調信号光を用いた周波数領域における方法と光パルスの時間領域の波形ひずみから測定する方法などがある。

通信ケーブル監視技術」参照

(2) 光ファイバの測定技術など

(ⅰ) 光パルス試験器(OTDR)

  1. OTDR は、光パルスを光ファイバに入射したときに、光ファイバ内で生ずる反射や散乱による戻り光を測定することによって、光ファイバの距離、損失値及び破断点の位置を特定することができる。(
  2. OTDR の測定波形は、一般に、横軸に距離、縦軸に損失が表示され、光ファイバの近端及び遠端並びに光コネクタで接続された場所は、フレネル反射が観測される。(
  3. 光パルスは、光カプラを通して被測定光ファイバに入射され、反射やレイリー散乱によって戻ってきた光は、光カプラを通じて APD に入射される。(
  4. パルス幅 100 [ns] で接続点、接続損失などを測定するとき、接続点間の距離が短いために判別が困難な場合は、パルス幅を 1 [μs] のように、より大きくすることで測定することができる。(

正しくは「パルス幅を 1 [nm] のように,より小さく」である。

(ⅱ) 光パワーメータの機能、特徴など

  1. 光電変換型光パワーメータは、一般的な光電変換素子をレーザのパワー測定に適用したもので、熱変換型光パワーメータと比較して、検出感度は高いが可搬性が悪いため現場作業で用いるには不向きである。(
  2. 熱変換型光パワーメータは、一般に、測定値の正確性が高いことから標準パワーメータとして用いられるが、光電変換型光パワーメータと比較して、外部温度の変化に影響を受けやすい。(
  3. 光ファイバ通信用の高性能な光パワーメータには、高い測定確度、狭い測定ダイナミックレンジ、高速測定、高偏光依存性などの機能や性能が求められる。(
  4. ホトダイオード(PD)を受光部に用いている光パワーメータは、PD に波長依存性がないため、一般に、測定時の値を補正する必要がない。(

正しくは,1.「検出感度は低いが可搬性が良いため現場作業で用いるに向いている」,3.「広い測定ダイナミックレンジ」,4.「PD に波長依存性があることから、一般に、測定時の値を補正するため、測定波長を入力する機能が具備されている」である。

(ⅲ) 光測定に用いる光源の特徴など

  1. LED 光源は、LD 光源と比較して、発生光は低コヒーレンス性であり、戻り光による影響を受けにくく出力変動が小さい特徴がある。(
  2. LD 光源は、LED 光源と比較して、発生光のスペクトル幅が狭く、温度変化によって光出力が変動しやすい特徴がある。(
  3. LD 光源は、LED 光源と比較して、光出力レベルが大きいので長距離の光ファイバの光損失測定に適している。(

(ⅳ) 光ファイバの心線対照技術

  1. 光ファイバ ID テスタは、光ファイバを曲げ部により湾曲させ、漏洩した 1 [GHz] 変調の対照光を受光素子で検知し、該当心線を対照することができる測定器である。(
  2. 光ファイバ ID テスタの送信部から送出される対照光は、現用回線の通信光で使用されている波長と同等若しくは、曲げ部から漏れやすい短波長の光を使用する。(
  3. 光ファイバ ID テスタは、光ファイバの損失測定、簡易な光レベル測定及び心線対照に使用できる測定器であり、L バンド(1.565~1.625 [μm])の長波長帯の通信光に対しても心線対照が可能である。(
  4. 光ファイバ ID テスタは、受光素子として InGaAs-PD に代わり Ge-PD を用いることで通信光に対する挿入損失を低減し、受光感度を向上させることが可能である。(

正しくは,1.「270 [Hz] 変調」,2.「より長い」,4.「下線部が逆」である。

問5

(1) アクセス設備における光ファイバケーブルの配線設計の概要

光ファイバケーブルの光損失設計は、伝送路光損失 $L$ が許容光損失値 $L_\text{max}$ 以下であることを保証するため実施するものであり、許容光損失値 $L_\text{max}$ は、適用する伝送装置の送受光レベル差から規定される。ここで、伝送路光損失 $L$ は、アクセス設備の構成を踏まえて、一般に、設備センタ内の配線区間損失(以下、所内区間損失という。)を $X$、設備センタからユーザとの分界点までの配線区間損失(以下、所外区間損失という。)を $Y$、構内配線区間損失を $Z$ とすると、次式で表すことができる。

\[ L_\text{max} \ge L = X+Y+Z \]

なお、上式における所外区間損失 $Y$ は、ユーザまでの距離や線路形態、接続点数などにより変動し、設計のためのパラメータとして光ファイバケーブルの損失、コネクト接続損失、融着接続損失及びマージンの関数で表され、一意的に決定される。

一方、張力設計の一例として、図に示す地下管路ルートに光ファイバケーブルを布設する場合においては、繰出し点における張力をゼロとするとき、直線区間(A-B区間)のB点における布設張力 $T_\alpha$ [N] は、$T_\alpha =$$\mu gLW$ となる。また、屈曲部(B点)直後における布設張力 $T_\beta$ [N] は、$T_\beta =$$T_\alpha e^{\mu \theta}$ となる。ただし、摩擦係数を $\mu$、単位長さ当たりのケーブル質量を $W$ [kg/m]、重力加速度を $g$ [m/s2]とし、$e$ は自然対数の底とする。

地下管路ルートに光ファイバケーブルを布設する場合
地下管路ルートに光ファイバケーブルを布設する場合

アクセス系線路の光ファイバケーブル設計」参照

(2) 通信線に対する誘導妨害の種類、誘導防止対策など

(ⅰ) メタリックケーブルにおける強電流施設からの誘導妨害の種類、誘導防止対策など

  1. 交流電気鉄道は、主な方式としてトランスの挿入方法の違いにより BT き電方式と AT き電方式がある。いずれの方式においても、通信線に生ずる誘導電圧としては、給電電流の基本波成分による常時誘導電圧と高調波成分による誘導雑音電圧がある。(
  2. 誘導防止対策には、通信回線の大地に対するインピーダンスを低くして平衡度の改善を図る、強電流施設との相互インダクタンスを増大させる、遮へい係数を大きくするなどの方法がある。(
  3. 通信線で行う誘導防止対策としては、アルミニウム被誘導遮へいケーブルを用いる方法があるが、遮へい体には、遮へい効果を上げるために透磁率の高い磁性材料を用いる。(
  4. 誘導雑音による伝送品質劣化には、電力線や電気鉄道などの強電流施設からの高調波成分の誘導妨害による音声回線の品質劣化などがある。(

正しくは「強電流施設との相互インダクタンスを減少させる」である。

(ⅱ) 誘導電圧の種類など

  1. 誘導雑音電圧は、通信回線を構成する 2 本の心線間に生ずる誘導電圧であり、通話妨害を引き起こすものである。これは、起誘導源に含まれるひずみ波と通信回線の大地に対する不平衡によって生ずる。(
  2. 常時誘導縦電圧は、送電線などの正常運転時に、誘導作用により通信線の長さ方向に生ずる誘導電圧である。(
  3. 異常時誘導縦電圧は、送電線などの事故発生時に、地絡電流により通信線の長さ方向に生ずる誘導電圧である。(

(ⅲ) ラジオ放送波による誘導妨害の発生の要因、誘導防止対策など

  1. ラジオ放送波による誘導妨害には、通信線に誘導された誘導縦電圧が電話機の内部回路にある半導体素子などで検波されて生ずるものがある。(
  2. 電話機におけるラジオ放送波からの誘導防止対策としては、電話機回路に音声周波数程度の低周波電圧をバイパスするコンデンサを挿入したり、機器入出力部にフィルタを挿入する方法が有効である。(
  3. ADSL などのデジタル回線は、伝送周波数がラジオ放送波周波数と重なる場合において、誘導電圧による回線の SN 比の低下や伝送速度の低下などの伝送品質の劣化は生じない。(
  4. ラジオ放送波による誘導電圧は、水平電界成分と垂直電界成分によるものがあるが、水平電界成分によるものが支配的である。(

下線部が逆か。

(ⅱ) 通信設備の雷害対策など

  1. 雷害対策には、通信線と電源線間に雷サージのバイパスルートの作成や通信装置と電源線間に絶縁トランスを設置して絶縁を強化するなどの方法がある。(
  2. 加入者保安器のアースを大地に接地しないで架空ケーブルの支持線に接続する形態では、通信線を経由して雷サージが通信機器などに侵入するおそれがあるので、加入者保安器のアースは大地に直接接地することが望ましい。(
  3. 光ファイバケーブルのテンションメンバを適切に成端しないと、雷サージによるテンションメンバからの放電により心線が損傷し、故障が発生することがある。この故障防止対策として、テンションメンバを屋外通信装置内の接地と連接する方法がある。(
  4. 雷サージに対する防護素子(アレスタ)の基本動作特性は、一般に、動作しないときには、低抵抗、低インピーダンスであり、動作したときは高抵抗となり、動作時間が非常に短時間であることなどが要求される。(

下線部が逆である。

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