配電理論及び配線設計
わが国では,いくつかの配電方式が採用されている。100 V 単相 2 線式,100/200 V 単相 3 線式といった配電方式の特徴,使用される電線の太さと許容電流の関係,幹線・分岐回路の設計,過電流保護及び地絡保護について,基礎理論や各種基準等に基づき,しっかり理解できていることが重要である。
配電方式から屋内配線の基本的な理論や配線設計に必要な知識・技術を学習して,一般用電気工作物の電気工事に対応できるようにしておく。
配電方式
単相 2 線式(single-phase two-wire system,1 φ 2 W)
単相 2 線式とは,電圧線 1 本,接地された無電圧の線 1 本,計 2 本の電線・ケーブルを用いて単相交流電力を供給する低圧配電方式である。
電灯や小型器具など,照明や電気機器は単相 2 線式 100 V である。効率的な配電を行うため,最近は単相 3 線式 100/200 V が主流である。
電圧降下(voltage drop)
電源電圧 $V_s$ [V] と負荷電圧 $V_r$ [V] の差が電圧降下であり,電線の抵抗 $r$ [Ω] による電圧降下(負荷電流を $I$ [A] とすれば,往路と復路で $2rI$ [V] )に等しい。
\[ v = V_s - V_r = 2Ir \text{ [V]} \](参考)送電端と受電端の添え字
送電端電圧の添え字は s,受電端の添え字は r とすることが多い。送電端の s は send (送る),受電端の r は receive (受ける)の頭文字である。
電力損失(power loss)
電力損失 $P_l$ [W] は電線の抵抗 $r$ [Ω] による損失である。負荷電流(線路を流れる電流と等しい)を $I$ [A] とすれば,電力損失は次式で表される。
\[ P_l = 2I^2 r \text{ [W]} \]
例題
図のように,電線のこう長 10 m の配線により,消費電力 1 500 W の抵抗負荷に電力を供給した結果,負荷の両端の電圧は 100 V であった。配線における電圧降下 [V] は。
ただし,電線の電気抵抗は長さ 1 000 m 当たり 5.0 Ω とする。

解答・解説
この回路に流れる電流は,1 500 W の抵抗負荷の両端電圧が 100 V であることから,15 A と計算される。
電線の抵抗は,次式で求められる。
よって,配線における電圧降下は,15 A × 0.1 Ω = 1.5 V と求まる。
過去問題
- 2019年度 上期 No. 6 単相 2 線式回路の電圧降下
- 平成30年度(2018年度) 下期 No. 6 単相 2 線式回路の電圧降下
- 平成30年度(2018年度) 上期 No. 6 単相 2 線式回路の電圧降下
- 平成25年度(2013年度) 上期 No. 6 単相 2 線式回路の電圧降下
単相 3 線式(1 φ 3 W)
単相 3 線式とは,3 本の電線・ケーブルを用いて単相交流電力を供給する低圧配電方式である。
配電用変圧器の二次側中性点を接地し,そこから中性点を引き出し,両外側の電圧線とともに 3 線で負荷に供給する方式で,低圧線の大部分に採用されている。この方式は,負荷が平衡していれば,電圧降下率と電力損失は単相 2 線式の 1/4 に減少する。しかし,負荷の不平衡や中性点断線故障などによって電圧不平衡が生じるおそれがある。このため,負荷の不平衡を是正し電線の接続を確実に実施するなど,断線,短絡故障の発生を極力少なくする必要がある。
電線相互間及び電線と大地間の電圧
単相 3 線式 100/200 V の屋内配線で,絶縁被覆の色が赤色,白色,黒色の 3 種類の電線が使用されていた。この屋内配線で電線相互間及び電線と大地間の電圧を測定したところ,測定値は下図のようになった。ただし,中性線は白色とする。

中性線に流れる電流
中性線(neutral conductor)に流れる電流 $I_N$ [A] はキルヒホッフの法則の第一法則(KCL:Kirchhoff's Current Law)より次式で表される。
\[ I_N = I_1 - I_2 \text{ [A]} \]上式からわかるように,$I_1 = I_2$ のとき,中性線に流れる電流 $I_N$ は 0 [A] となる。

(参考)キルヒホッフの法則の第一法則(KCL:Kirchhoff's Current Law)
電気回路の任意の接点において,流れ込む向きを正(または負)と統一するとき,各線の電流 $I_i$ の総和は 0 [A] となる。ドイツの物理学者グスタフ・ロベルト・キルヒホフ(1824 - 1887年)が 1845 年に発見した。
\[ \sum^N_{i=1}I_i = 0 \]
フリー百科事典『ウィキペディア』
例題
図のような単相 3 線式回路において,消費電力 125 W,500 W の 2 つの負荷はともに抵抗負荷である。
図中の × 印点で断線した場合,a-b 間の電圧 [V] は。
ただし,断線によって負荷の抵抗値は変化しないものとする。

解答・解説
直列に接続した 2 つの抵抗(80 Ω と 20 Ω)の両端に 200 V に印加されることから,この回路に流れる電流は 2 A となる。よって,a-b 間の電圧は,次式により 160 V と求まる。
過去問題
- 2019年度 下期 No. 6 単相 3 線式回路における断線
- 2019年度 上期 No. 7 単相 3 線式回路の電圧降下
- 2019年度 上期 No. 24 単相 3 線式回路における断線
- 平成30年度(2018年度) 下期 No. 7 単相 3 線式回路の電圧降下
- 平成30年度(2018年度) 下期 No. 25 単相 3 線式 100/200 V 屋内配線
- 平成30年度(2018年度) 下期 No. 27 単相 3 線式回路における断線
- 平成30年度(2018年度) 上期 No. 7 単相 3 線式回路の電圧降下
- 平成25年度(2013年度) 下期 No. 6 単相 3 線式回路の電圧降下
- 平成25年度(2013年度) 上期 No. 7 単相 3 線式回路の中性線
負荷が平衡した場合の電圧降下と電力損失
負荷が平衡した場合の電圧降下は電源電圧 $V_s$ [V] と負荷電圧 $V_r$ [V] の差分となる。負荷平衡時,中性線の電流 $I_N$ は 0 [A] となるため,電圧降下 $v$ [V] は,単相 3 線式では電線の 1 線当たりの抵抗を $r$ [Ω],負荷線の電流を $I$ [A] とすれば $Ir$ [V] となる。
\[ v = V_s - V_r = Ir \text{ [V]} \]このとき,電力損失 $P_l$ [W] は次式となる。
\[ P_l = 2I^2 r \text{ [W]} \]
三相 3 線式(three-phase three-wire system,3 φ 3 W)
三相 3 線式とは,3 本の電線・ケーブルを用いて三相交流電力を供給する配電方式である。
200 V 三相負荷への供給として主に採用されている方式であり,Δ 結線と Y 結線方式がある。柱上変圧器では変圧器 2 台による V 結線が主流である。
電圧降下(voltage drop)
三相 3 線式の電圧降下 $v$ [V] は線電流 $I$ [A] と 1 線当たりの線路抵抗 $r$ [Ω] に $\sqrt{3}$ を乗じたものである。
\[ v = V_s - V_r = \sqrt{3}Ir \text{ [V]} \]電力損失(power loss)
三相 3 線式の電力損失 $P_l$ [W] は 3 線分の線路抵抗による損失となる。
\[ P_l = 3I^2 r \text{ [W]} \]
過去問題
引込線
低圧引込線は,架空電線路の支持物から需要家の取り付け点に至る電線であり,架空引込線と連接引込線とに区分される。
電線には,ビニル絶縁電線(IV 電線 : Indoor Vinyl)や,電線をより合わせたり平行に仕上げたりした引込用ビニル絶縁電線(DV 線 : Drop wire Vinyl)が使用されている。
引込線の太さは,許容電流,電圧降下および機械的強度から決定されている。
電圧の種別
電圧は,次表のとおり低圧,高圧及び特別高圧に分類される。低圧となるのは直流で 750 V 以下,交流で 600 V 以下,特別高圧となるのは直流,交流いずれも 7,000 V 以上である。高圧については低圧,特別高圧のいずれにも分類されない範囲となる。
電圧の種類 | 直流(DC:direct current) | 交流(AC:alternate current) |
---|---|---|
低圧 | 750 V以下 | 600 V以下 |
高圧 | 750 Vを超え7,000 V以下 | 600 Vを超え7,000 V以下 |
特別高圧 | 7,000 Vを超えるもの |
電気設備に関する技術基準を定める省令 第二条 電圧の種別
電圧は、次の区分により低圧、高圧及び特別高圧の三種とする。
- 低圧
- 直流にあっては 750 V 以下、交流にあっては 600 V 以下のもの
- 高圧
- 直流にあっては 750 V を、交流にあっては 600 V を超え、7 000 V 以下のもの
- 特別高圧
- 7 000 V を超えるもの
過去問題
需要率・負荷率
需要率(demand factor)
需要家の実際に起こる最大電力は設備容量より小さいのが普通で,需要の種別・地域・期間などによって相違するが,それぞれある一定の割合となる。この最大需要電力と設備容量合計との百分率を需要率(demand factor)という。
この需要率は,一般電灯需要家では 50 〜 70 % 程度である。
負荷率(load factor)
電気の負荷の使い方は種別・地域・時刻・季節などによって違ってくる。この需要電力の変動の割合を負荷率(load factor)という。需要家・配電幹線あるいは変電所などである期間の平均需要電力と最大需要電力との割合で示す。
負荷率を表す期間のとり方によって日負荷率・月負荷率・年負荷率などがある。
配線
低圧電路に施設する過電流遮断器の性能等
低圧電路に施設する過電流遮断器(overcurrent circuit breaker)は,これを施設する箇所を通過する短絡電流を遮断する能力を有するものであること。
過電流遮断器として低圧電路に施設するヒューズは,水平に取り付けた場合において,次の各号に耐えること。

- 定格電流の 1.1 倍の電流に耐えること。
- 33-1表の左欄に掲げる定格電流の区分に応じ,定格電流の 1.6 倍及び 2 倍の電流を通じた場合において,それぞれ同表の右欄に掲げる時間内に溶断すること。
定格電流の区分 | 時間 | |
---|---|---|
定格電流の 1.6 倍の電流を通じた場合 | 定格電流の 2 倍の電流を通じた場合 | |
30 A 以下 | 60 分 | 2 分 |
30 A を超え 60 A 以下 | 60 分 | 4 分 |
60 A を超え 100 A 以下 | 120 分 | 6 分 |
100 A を超え 200 A 以下 | 120 分 | 8 分 |
200 A を超え 400 A 以下 | 180 分 | 10 分 |
400 A を超え 600 A 以下 | 240 分 | 12 分 |
600 A 超過 | 240 分 | 20 分 |
過電流遮断器として低圧電路に施設する配線用遮断器は,次の各号によるものであること。
- 定格電流の 1 倍の電流で自動的に動作しないこと。
- 33-2表の左欄に掲げる定格電流の区分に応じ,定格電流の 1.25 倍及び 2 倍の電流を通じた場合において,それぞれ同表の右欄に掲げる時間内に自動的に動作すること。

定格電流の区分 | 時間 | |
---|---|---|
定格電流の 1.25 倍の電流を通じた場合 | 定格電流の 2 倍の電流を通じた場合 | |
30 A 以下 | 60 分 | 2 分 |
30 A を超え 50 A 以下 | 60 分 | 4 分 |
50 A を超え 100 A 以下 | 120 分 | 6 分 |
100 A を超え 225 A 以下 | 120 分 | 8 分 |
225 A を超え 400 A 以下 | 120 分 | 10 分 |
400 A を超え 600 A 以下 | 120 分 | 12 分 |
過去問題
低圧配線に使用する電線
低圧配線は,直径 1.6 mm の軟銅線若しくはこれと同等以上の強さ及び太さのもの又は断面積が 1 mm² 以上の MI ケーブルであること。
低圧配線に使用する,600 V ビニル絶縁電線,600 V ポリエチレン絶縁電線,600 V ふっ素樹脂絶縁電線及び 600 V ゴム絶縁電線の許容電流は,次の各号によること。ただし,短時間の許容電流については,この限りでない。
- 単線(solid wire)にあっては,146-1表に,成形単線又はより線(stranded wire)にあっては146-2表にそれぞれ規定する許容電流に,第二号に規定する係数を乗じた値であること。
- 第一号の規定における係数は,次によること。
- 146-3表(掲載略)に規定する許容電流補正係数の計算式により計算した値であること。
- 絶縁電線を,合成樹脂管,金属管,金属可とう電線管又は金属線ぴに収めて使用する場合は,イの規定により計算した値に,更に146-4表に規定する電流減少係数を乗じた値であること。
電線の許容電流
許容電流とは,電線に流せる電流のことである。電線は太くなるほど,許容電流は大きくなる。電線が細い場合,電気抵抗が大きく,電気抵抗で発生する熱で,電線を被覆している被覆を焼損させやすいためである。
導体の直径 [mm] | 許容電流 [A] |
---|---|
軟銅線又は硬銅線 | |
1.0 以上 1.2 未満 | 16 |
1.2 以上 1.6 未満 | 19 |
1.6 以上 2.0 未満 | 27 |
2.0 以上 2.6 未満 | 35 |
2.6 以上 3.2 未満 | 48 |
3.2 以上 4.0 未満 | 62 |
4.0 以上 5.0 未満 | 81 |
5.0 | 107 |
導体の公称断面積 [mm²] | 許容電流 [A] |
---|---|
軟銅線又は硬銅線 | |
0.9 以上 1.25 未満 | 17 |
1.25 以上 2 未満 | 19 |
2 以上 3.5 未満 | 27 |
3.5 以上 5.5 未満 | 37 |
5.5 以上 8 未満 | 49 |
8 以上 14 未満 | 61 |
14 以上 22 未満 | 88 |
22 以上 30 未満 | 115 |
30 以上 38 未満 | 139 |
38 以上 50 未満 | 162 |
電流減少係数
電線管の中に複数の電線を収めた場合,放熱が悪くなるため許容電流を小さくする必要がある。この許容電流を制限するために,電流減少係数がある。
同一管内の電線数 | 電流減少係数 |
---|---|
3 以下 | 0.7 |
4 | 0.63 |
5 又は 6 | 0.56 |
7 以上 15以下 | 0.49 |
16 以上 40以下 | 0.43 |
41 以上 60 以下 | 0.39 |
61 以上 | 0.34 |
過去問題
- 2019年度 下期 No. 8 電線の許容電流
- 2019年度 上期 No. 8 金属管による低圧屋内配線工事
- 平成30年度(2018年度) 下期 No. 8 ケーブルの許容電流
- 平成30年度(2018年度) 下期 No. 23 電流減少係数
- 平成30年度(2018年度) 上期 No. 8 電線の許容電流
- 平成25年度(2013年度) 下期 No. 8 電線の許容電流
- 平成25年度(2013年度) 上期 No. 8 電線 1 本当たりの許容電流
低圧幹線の施設
低圧幹線は,次の各号によること。
- 損傷を受けるおそれがない場所に施設すること。
- 電線の許容電流は,低圧幹線の各部分ごとに,その部分を通じて供給される電気使用機械器具の定格電流の合計以上であること。ただし,当該低圧幹線に接続する負荷のうち,電動機又はこれに類する起動電流が大きい電気機械器具(以下,「電動機等」という。)の定格電流の合計が,他の電気使用機械器具の定格電流の合計より大きい場合は,他の電気使用機械器具の定格電流の合計に次の値を加えた値以上であること。
- 電動機等の定格電流の合計が 50 A 以下の場合は,その定格電流の合計の 1.25 倍
- 電動機等の定格電流の合計が 50 A を超える場合は,その定格電流の合計の 1.1 倍
- 前号の規定における電流値は,需要率,力率等が明らかな場合には,これらによって適当に修正した値とすることができる。
- 低圧幹線の電源側電路には,当該低圧幹線を保護する過電流遮断器を施設すること。ただし,次のいずれかに該当する場合は,この限りでない。
- 低圧幹線の許容電流が,当該低圧幹線の電源側に接続するほかの低圧幹線を保護する過電流遮断器の定格電流の 55 % 以上である場合
- 過電流遮断器に直接接続する低圧幹線又はイに掲げる低圧幹線に接続する長さ 8 m 以下の低圧幹線であって,当該低圧幹線の許容電流が,当該低圧幹線の電源側に接続する他の低圧幹線を保護する過電流遮断器の定格電流の 35 % 以上である場合
- 過電流遮断器に直接接続する低圧幹線又はイ若しくはロに掲げる低圧幹線に接続する長さ 3 m 以下の低圧幹線であって,当該低圧幹線の負荷側に他の低圧幹線を接続しない場合
- 低圧幹線に電気を供給する電源が太陽電池のみであって,当該低圧幹線の許容電流が,当該低圧幹線を通過する最大短絡電流以上である場合
- 前号の規定における「当該低圧幹線を保護する過電流遮断器」は,その定格電流が,当該低圧幹線の許容電流以下のものであること。ただし,低圧幹線に電動機等が接続される場合の定格電流は,次のいずれかによることができる。
- 電動機等の定格電流の合計の 3 倍に,他の電気使用機械器具の定格電流の合計を加えた値以下であること。
- イの規定による値が当該低圧幹線の許容電流を 2.5 倍した値を超える場合は,その許容電流を 2.5 倍した値以下であること。
- 当該低圧幹線の許容電流が 100 A を超える場合であって,イ又はロの規定による値が過電流遮断器の標準定格に該当しないときは,イ又はロの規定による値の直近上位の標準定格であること。
低圧幹線の許容電流と低圧幹線を保護する過電流遮断器の定格電流
幹線の許容電流を $I_W$,低圧幹線を保護する過電流遮断器の定格電流を $I_B$,電動機の定格電流の合計を $I_M$,他の電気使用機械器具の定格電流の合計を $I_H$ とする。

幹線の許容電流
電線の許容電流は,低圧幹線の各部分ごとに,その部分を通じて供給される電気使用機械器具の定格電流の合計以上であること。
原則($I_M \lt I_H$)
電線の許容電流は,低圧幹線の各部分ごとに,その部分を通じて供給される電気使用機械器具の定格電流の合計以上。
\[ I_W \ge I_M + I_H \]$I_M \gt I_H$ の場合で,$I_M \le 50$ [A] のとき
電動機等の定格電流の合計が 50 A 以下の場合は,その定格電流の合計の 1.25 倍に他の電気使用機械器具の定格電流の合計を加えたもの以上となる。
\[ I_W \ge 1.25 I_M + I_H \]$I_M \gt I_H$ の場合で,$I_M \gt 50$ [A] のとき
電動機等の定格電流の合計が 50 A を超える場合は,その定格電流の合計の 1.1 倍に他の電気使用機械器具の定格電流の合計を加えたもの以上となる。
\[ I_W \ge 1.1 I_M + I_H \]過去問題
低圧幹線を保護する過電流遮断器の定格電流
過電流遮断器の定格電流を $I_B$,幹線の許容電流を $I_W$,電動機の定格電流の合計を $I_M$,他の電気使用機械器具の定格電流の合計を $I_H$ とする。
電動機等が接続されない場合
当該低圧幹線の許容電流以下のものであること。
\[ I_B \le I_W \]電動機等が接続される場合
電動機等の定格電流の合計 $I_M$ の 3 倍に,他の電気使用機械器具の定格電流の合計 $I_H$ を加えた値以下であること。
\[ I_B \le 3 I_M + I_H \]上記の値が当該低圧幹線の許容電流 $I_W$ を 2.5 倍した値を超える場合は,その許容電流を 2.5 倍した値以下であること。
\[ I_B \le 2.5 I_W + I_H \]過去問題
低圧分岐回路等の施設
低圧分岐回路には,次の各号により過電流遮断器及び開閉器を施設すること。
- 低圧幹線との分岐点から電線の長さが 3 m 以下の箇所に,過電流遮断器を施設すること(下図 A)。ただし,分岐点から過電流遮断器までの電線が,次のいずれかに該当する場合は,分岐点から 3 m を超える箇所に施設することができる。
- 電線の許容電流が,その電線に接続する低圧幹線を保護する過電流遮断器の定格電流の 55 % 以上である場合(下図 B)
- 電線の長さが 8 m 以下であり,かつ,電線の許容電流がその電線に接続する低圧幹線を保護する過電流遮断器の定格電流の 35 % 以上であること(下図 C)。

過去問題
- 2019年度 下期 No. 9 過電流遮断器で保護された低圧屋内幹線から分岐回路
- 2019年度 上期 No. 9 過電流遮断器で保護された低圧屋内幹線から分岐回路
- 平成30年度(2018年度) 下期 No. 9 過電流遮断器で保護された低圧屋内幹線から分岐回路
- 平成30年度(2018年度) 上期 No. 9 過電流遮断器で保護された低圧屋内幹線から分岐回路
- 平成25年度(2013年度) 下期 No. 9 低圧屋内配線の分岐回路の設計
低圧分岐回路は,次のように施設すること。
分岐回路を保護する過電流遮断器の種類 | 軟銅線の太さ | コンセント |
---|---|---|
定格電流が 15 A 以下のもの | 直径 1.6 mm |
定格電流が 15 A 以下のもの |
定格電流が 15 A を超え 20 A 以下の配線用遮断器 | 定格電流が 20 A 以下のもの | |
定格電流が 15 A を超え 20 A 以下のもの(配線用遮断器を除く。) | 直径 2 mm |
定格電流が 20 A のもの(定格電流が 20 A 未満の差込みプラグが接続できるものを除く。) |
定格電流が 20 A を超え 30 A 以下のもの | 直径 2.6 mm |
定格電流が 20 A 以上 30 A 以下のもの(定格電流が 20 A 未満の差込みプラグが接続できるものを除く。) |
定格電流が 30 A を超え 40 A 以下のもの | 断面積 8 mm² |
定格電流が 30 A 以上 40 A 以下のもの |
定格電流が 40 A を超え 50 A 以下のもの | 断面積 14 mm² |
定格電流が 40 A 以上 50 A 以下のもの |
過去問題
- 2019年度 下期 No. 10 分岐回路の電線の太さと接続できるコンセント
- 2019年度 上期 No. 10 低圧屋内配線の分岐回路の設計
- 平成30年度(2018年度) 下期 No. 10 低圧屋内配線の分岐回路の設計
- 平成30年度(2018年度) 上期 No. 10 低圧屋内配線の分岐回路の設計
- 平成25年度(2013年度) 上期 No. 10 分岐回路の電線の太さと,接続できるコンセントの組合せ
配線器具の施設
低圧用の配線器具は,次のように施設する。
- 充電部分が露出しないように施設する。(ただし,取扱者以外の者が出入りできないように措置した場所に施設する場合は,この限りでない。)
- 湿気の多い場所又は水気のある場所に施設する場合は,防湿処置を施す。
- 配線器具に電線を接続する場合は,ねじ止めその他これと同等以上の効力のある方法により,堅ろうに,かつ,電気的に完全に接続するとともに,接続点に張力が加わらないようにする。
- 屋外において電気機械器具に施設する開閉器,接続器,点滅器その他の器具は,損傷を受けるおそれがある場合には,これに堅ろうな防護措置を施す。
電動機の過負荷保護装置の施設
屋内に施設する電動機には,電動機が焼損するおそれがある過電流を生じた場合に自動的にこれを阻止し,又はこれを警報する装置を設けること。ただし,次の各号のいずれかに該当する場合はこの限りでない。
- 電動機を運転中,常時,取扱者が監視できる位置に施設する場合
- 電動機の構造上又は負荷の性質上,その電動機の巻線に当該電動機を焼損する過電流を生じるおそれがない場合
- 電動機が単相のものであって,その電源側電路に施設する過電流遮断器の定格電流が 15 A (配線用遮断器にあっては, 20 A )以下の場合
- 電動機の出力が 0.2 kW 以下の場合
地絡遮断装置の施設
金属製外箱を有する使用電圧 60 V を超える低圧の機械器具に接続する電路には,電路に地絡を生じたときに自動的に電路を遮断する装置を施設すること。ただし,次の各号のいずれかに該当する場合はこの限りでない。
- 機械器具に簡易接触防護措置(金属製のものであって,防護措置を施す機械器具と電気的に接続するおそれがあるもので防護する方法を除く。)を施す場合
- 機械器具が次のいずれかの場所に施設する場合
- 発電所又は変電所,開閉所若しくはこれらに準ずる場所
- 乾燥した場所
- 機械器具の対地電圧が 150 V 以下の場合においては,水気のある場所以外の場所
- 機械器具が,次のいずれかに該当するものである場合
- 電気用品安全法の適用を受ける 2 重絶縁構造のもの
- ゴム,合成樹脂その他の絶縁物で被覆したもの
- 誘導電動機の 2 次側電路に接続されるもの
- 機械器具に施された C 種接地工事 又は D 種接地工事の接地抵抗が 3 Ω以下の場合
- 電路の系統電源側に絶縁変圧器(機械器具側の線間電圧が 300 V 以下のものに限る。)を施設するとともに,当該絶縁変圧器の機械器具側の電路を非接地とする場合
- 機械器具内に電気用品安全法の適用を受ける漏電遮断器を取り付け,かつ,電源引出部が損傷を受けるおそれがないように施設する場合
- 機械器具を太陽電池モジュールに接続する直流電路に施設し,かつ,当該電路が次に適合する場合
- 直流電路は,非接地であること。
- 直流電路に接続する逆変換装置の交流側に絶縁変圧器を施設すること。
- 直流電路の対地電圧は,450 V 以下であること。
- 電路が,管灯回路である場合
過去問題
電路の対地電圧の制限
住宅の屋内配線(電気機械器具内の電路を除く。)の対地電圧は,150 V 以下であること。ただし,次の各号のいずれかに該当する場合は,この限りでない。
- 定格消費電力が 2 kW 以上の電気機械器具及びこれに電気を供給する屋内配線を次により施設する場合
- 屋内配線は,当該電気機械器具のみに電気を供給するものであること。
- 電気機械器具の使用電圧及びこれに電気を供給する屋内配線の対地電圧は,300 V 以下であること。
- 屋内配線には,簡易接触防護措置を施すこと。
- 電気機械器具には,簡易接触防護措置を施すこと。
- 電気機械器具は,屋内配線と直接接続して施設すること。
- 電気機械器具に電気を供給する電路には,専用の開閉器及び過電流遮断器を施設すること。ただし,過電流遮断器が開閉機能を有するものである場合は,過電流遮断器のみとすることができる。
- 電気機械器具に電気を供給する電路には,電路に地絡が生じたときに自動的に電路を遮断する装置を施設すること。
- 当該住宅以外の場所に電気を供給するための屋内配線を次により施設する場合
- 屋内配線の対地電圧は,300 V 以下であること。
- 人が触れるおそれがない隠ぺい場所に合成樹脂管工事,金属管工事又はケーブル工事により施設すること。
参考
本稿の参考文献
- 一般財団法人 電気技術者試験センター,「第二種電気工事士学科試験 例題 2. 配電理論及び配線設計」
- 平山 博,大附 辰夫 著,「電気回路論[2 版改訂]」,電気学会
- 飯田 芳一 著,「図解 配電系統と太陽光発電-系統連系のしくみを理解する技術要件ガイドー」