平成30年度 第1回 専門的能力・通信線路

2019年6月30日作成,2020年12月29日更新

問1

(1) 2 本の平行導体からなる一様線路

伝送線路として最も基本的な 2 本の平行導体からなる一様線路においては,抵抗,インダクタンス,静電容量などが線路に沿って一様に存在していると考えられ,このような線路を分布定数回路として扱うことができる。

線路上の任意の点 $x$ における電圧 $V(x)$ 及び電流 $I(x)$ は,自然対数の底を $e$,特性インピーダンスを $Z_0$,端末条件により定まる積分定数を $A$ 及び $B$ とすれば,次式で表すことができる。

\[ V(x) = A e^{-\gamma x} + B e^{\gamma x} \] \[ I(x) = \frac{1}{Z_0}(A e^{-\gamma x} - B e^{\gamma x}) \]

ここで,$\gamma$ は伝搬定数といわれる。$\gamma$ は一般に複素数であり,減衰定数を $\alpha$,位相定数を $\beta$,虚数記号を $\text{j}$ とすると,$\gamma = \alpha + \text{j}\beta$ と表すことができる。

正弦波が線路上を進行していく場合,角速度を $\omega$,任意の点 $x$ の任意の時間 $t$ における電圧と電流をそれぞれ $v(x,t)$ 及び $i(x,t)$ とすると,

\[ v(x,t) = A e^{-\alpha x + \text{j}(\omega t - \beta x)} + B e^{\alpha x + \text{j}(\omega t + \beta x)} \] \[ i(x,t) = \frac{1}{Z_0}\{A e^{-\alpha x + \text{j}(\omega t - \beta x)} + B e^{\alpha x + \text{j}(\omega t + \beta x)}\} \]

となり,位相が $x$,$t$ の関数となっていることを示しており,同一位相の点が進む速度を $u$ とすれば,$u$ = $\displaystyle \frac{\omega}{\beta}$ であり,$u$ は位相速度といわれる。

また,特性インピーダンス $Z_0$ の線路をインピーダンス $Z$ で終端したとき,終端点における電圧反射係数 $\Gamma$ は,$\Gamma$ = $\displaystyle \frac{Z-Z_0}{Z+Z_0}$ となる。

メタリックケーブル・同軸ケーブルの伝送理論」を参照

(2) 光の位相速度及び群速度,光ファイバの添加物の種類,光カプラの構造と特性,光パッシブデバイスなど

(ⅰ) 光ファイバ中を伝搬する光の位相速度及び群速度など

  1. 真空中の光の速度を $c$,媒質の屈折率を $n$ とすると,媒質中を伝わる光の速度は,$\displaystyle \frac{c}{n}$ となり,この速度は,光の位相が伝わる速さである。一方,周波数が異なる複数の波の集まりである波速が伝わる速度,すなわちパルス包絡線が伝える速度は,群速度といわれる。(
  2. 光ファイバ中を伝搬する光の群速度を $V_\text{g}$ とすると,以下の関係が成り立つ。ただし,$\beta$ は伝搬速度,$\omega$ は角速度,$n$ は屈折率,$c$ は真空中の光の速度とする。(
  3. $\displaystyle \frac{1}{V_\text{g}} = \frac{\text{d}\beta}{\text{d}\omega}$,$\displaystyle \beta = \frac{\omega n}{c}$
  4. 最も基本的なモードとなる LP01 モードは,周波数が低くなると,電磁界が広がりクラッドの影響を受けて位相速度が速くなる。逆に,周波数が高くなると,電磁界がコアに集中して位相速度は遅くなり,コアの屈折率で決まる速度に収束する。(
  5. 光の平面波が均一な媒質中を伝搬する場合には,一般に,光信号の群速度は光の伝搬速度の 2 乗に比例し,群速度と位相速度との積は媒質中の光の伝搬速度と等しい。(

正しくは「ほぼ等しく」「の 2 乗に比例する」である。

光ファイバ中を伝搬する光の位相速度を $V_\text{c}$,群速度を $V_\text{g}$ とすると,それぞれ以下の関係が成り立つ。ただし,$\beta$ は伝搬定数,$\omega$ は角速度,$n$ は屈折率,$c$ は真空中の光の速度とする。

\[ \frac{1}{V_\text{c}} = \frac{\beta}{\omega} , \frac{1}{V_\text{g}} = \frac{\text{d}\beta}{\text{d}\omega} , \beta = \frac{\omega n}{c} \]

(ⅱ) 光ファイバの添加物の種類とその役割など

  1. 希土類添加光ファイバのコアには,屈折率分布形成用及び増幅動作用のための添加物のほかに,雑音指数向上のためにアルミニウムが添架されているものがある。(
  2. 希土類添加光ファイバのコアには,増幅する波長帯に応じて異なる希土類元素が添加され,主な添加物として,1.55 μm 帯用にはエルビウム,1.4 μm 帯用にはツリウム,また,1.3 μm 帯用にはプラセオジムなどが用いられる。(
  3. 石英系光ファイバでは,コアとクラッドの屈折率差をより大きくするため,一般に,コアやクラッドに添加物を加えることにより屈折率を制御している。(
  4. 石英系光ファイバでは,一般に,コアの屈折率を上げる添加物としてゲルマニウム,リンなどが用いられ,クラッドの屈折率を下げる添加物としてホウ素,フッ素などが用いられる。(

希土類添加光ファイバのコアには,屈折率分布形成用及び増幅動作用のための添加物のほかに,雑音指数向上のためにエルビウムが添架されているものがある。

(ⅲ) 光カプラの構造と特性など

  1. 光信号を結合又は分岐するための基本デバイスである光カプラは,一般に,バルク型,プレーナ光波回路型及びファイバ型に分類される。プレーナ光波回路型カプラは,レンズ,ミラーなどにより構成され,安定性の点で,バルク型やファイバ型と比較して劣るが,フィルタなどの光デバイスを挿入し,高機能化を図ることが容易である。(
  2. プレーナ光波回路型の 2 入力 2 出力光カプラは,光信号の結合又は分岐の機能を持つ最も基本的な光デバイスであり,2 本の光導波路は数 [μm] の間隔にまで近接しており,光導波路中の光信号は相互に作用しながら伝搬する。結合比は,2 本の光導波路の結合部の間隔と長さの設計により,調整が可能である。(
  3. ファイバ型光カプラには研磨型と融着延伸型があり,いずれの型も 2 本のファイバのコアを近接させてコアを伝搬する光波の磁界の共鳴を利用することにより光信号を結合又は分岐している。(
  4. 融着延伸型光カプラは,複数本の光ファイバを並べて融着及び延伸して双円錐状のテーパを形成したものである。テーパ部はコア径が細くなっているため,入射した光の閉じ込めが強くなり,他方の光ファイバに光パワーが移行して伝搬モード間に結合が生じ,結合比は入射光のパワーによって変化する。(

光信号を結合又は分岐するための基本デバイスである光カプラは,一般に,バルク型,プレーナ光波回路型及びファイバ型に分類される。バルク型カプラは,レンズ,ミラーなどにより構成され,安定性の点で,プレーナ光波回路型やファイバ型と比較して劣るが,フィルタなどの光デバイスを挿入し,高機能化を図ることが容易である。

ファイバ型光カプラには研磨型と融着延伸型があり,いずれの型も 2 本のファイバのコアを近接させてコアを伝搬する光波のモード結合を利用することにより光信号を結合又は分岐している。

融着延伸型光カプラは,複数本の光ファイバを並べて融着及び延伸して双円錐状のテーパを形成したものである。融着部はコア径が細くなっているため,入射した光の閉じ込めが強くなり,他方の光ファイバに光パワーが移行して伝搬モード間に結合が生じ,結合比は入射光のパワーによって変化する。

(ⅳ) 光アイソレータの特性など

  1. 光アイソレータは,光を一方向にのみ透過させることができる光デバイスであり,半導体レーザ(LD)モジュールにおいて,戻り光による雑音増加を抑えて発振を安定させるために用いられる。(
  2. 光ファイバ増幅器の内部や外部での反射による発振を抑止し ASE 雑音の増大を防止するために用いられる光アイソレータは,一般に,光ファイバ増幅器の入出力端に配置される。(
  3. 光アイソレータの能力は,光の伝搬と逆方向における透過損失と,順方向における挿入損失の差であるアイソレーションによって表され,アイソレーションが小さいほどアイソレータとしての能力は高い。(

光アイソレータの能力は,光の伝搬と逆方向における透過損失と,順方向における挿入損失の差であるアイソレーションによって表され,アイソレーションが大きいほどアイソレータとしての能力は高い。

(アイソレーション)=(光の伝搬と逆方向における透過損失)−(順方向における挿入損失)

問2

(1) 光の性質など

光の基本的性質には,屈折,回折,干渉,偏光,非線形光学効果などがあり,これらの性質は,幾何光学,波動光学などを用いて説明することができる。

光ファイバ中などにおける光の屈折は,スネルの法則によって説明され,屈折率の大きい媒質ほど,光の速度が遅くなる。スネルの法則は,媒質中を進む光は最短時間で進めるような経路をとるというフェルマーの原理を言い換えているものである。

光が波動であることを可視的に説明したのがヤングの干渉実験である。これは一段目に配したスリットを通過した光が回折して放射状に広がり,二段目に配した二つのスリットを通過した光が互いに干渉し合うことにより,三段目に配したスクリーン上に干渉縞を映すものであり,光が波の性質を持つことを示している。

干渉縞が鮮明に映し出されるためには,干渉し合う光の位相がそろっている必要があり,このような光の干渉を利用した光フィルタには,マッハツェンダ干渉計型などがある。また,LD の出射光のように位相のそろった光は,コヒーレントな光であるといわれる。

光ファイバケーブルの伝送理論」参照

(2) 光ファイバの特性,光ファイバの特徴,発光デバイス,受光デバイスなど

(ⅰ) シングルモード光ファイバの特性,ファイバヒューズ現象など

  1. SM 光ファイバの屈折率分布は,一般に,ステップインデックス型であり,光ファイバの屈折率分布構造を表すパラメータには開口数,モードフィールド径などがある。(
  2. SM 光ファイバにおけるモードフィールド径は,光強度分布がガウス型で近似できるとき,光強度(光パワー)が最大値の $\displaystyle \log_{10}\frac{1}{e^2}$ ($e$ は自然対数の底)になるところの直径をいう。(
  3. 光ファイバに強い光を入射すると,長い波長の光が短い波長の光より速く伝わる異常分散領域において,屈折率が変化する,光の位相がずれるなどの非線形光学効果といわれる現象が起きる。(
  4. 光ファイバに入射する光のパワーが大きくなると,光ファイバのコア内の温度が上昇することによりプラズマ状態となり,放電現象が生じて,閃光が光ファイバの中を光源に向かって進むファイバヒューズが発生するおそれがある。(

モードフィールド径は,光ファイバの屈折率分布構造を表すパラメータではない。

SM 光ファイバにおけるモードフィールド径は,光強度分布がガウス型で近似できるとき,光強度(光パワー)が最大値の $1/e^2$ ($e$ は自然対数の底)になるところの直径をいう。

モードフィールド直径
図 モードフィールド直径

光ファイバに強い光を入射すると,長い波長の光が短い波長の光より速く伝わる異常分散領域において,屈折率が変化する,光の位相がずれるなどの自己位相変調といわれる現象が起きる。

近年,WDM 光ファイバ伝送システムの多チャンネル化や分布ラマン増幅技術の導入,或いは CATV 用のクラッド励起型高出力光ファイバ増幅器の導入等により,光伝送出力の増大が進んでいる。このため,高パワー入射時に,例えば端面が汚れた光コネクタ端面等を起点として,光ファイバ内で青白い閃光が発生し,この閃光が光源に向かって比較的ゆっくりと進む。この現象は光ファイバヒューズと呼ばれている。光ファイバヒューズが発生すると伝送用光ファイバの破損や光通信用部品の損傷を誘起すると共に,それによって引き起こされる漏れ光による人体損傷や火災の危険性が強く懸念されている。

(ⅱ) 光ファイバの特徴など

  1. 屈折率分布構造は,光ファイバの寸法や分類の定義に用いられ,光学特性や伝送特性を決定する重要なパラメータでもある。NZ-DS 光ファイバの屈折率分布構造には,グレーデッドインデックス型が用いられている。(
  2. 光ファイバの特徴の一つに,同軸ケーブルと比較して高い周波数が伝送できる広帯域性がある。光ファイバ通信に使用される波長帯域は,一般に,1.55 μm 帯の S バンドといわれ,数 [THz] の周波数帯域幅を有する。(
  3. 偏波モード分散は,理想的な真円構造を保った SM 光ファイバでは生ずることがない。しかし,実際の SM 光ファイバではコア形状に僅かなゆがみが存在することから偏波モード分散が生じ,高速かつ長距離伝送の場合には伝送品質に影響を及ぼすことがある。(
  4. 光ファイバ通信に使用される単心の石英系光ファイバは,一般に,クラッド外径が約 0.3 [mm],被覆を含めても 1 [mm] 以下と細径であり,石英ガラスの密度は銅の約 1/4 である。(

正しくは,1.「セグメントコア型」,2.「C バンド」,4.「クラッド外径が 125 [μm],被覆を含めても 3 [mm] 程度」である。

なお,石英ガラスの密度は 2.196 g/cm3,銅の密度は 8.94 g/cm3 である(石英ガラスの密度は銅の約 1/4)。

表 各バンドと波長
バンド(略称) バンド 波長 [nm]
T-band Thousand-band 1 000 - 1 260
O-band Original-band 1 260 - 1 360
E-band Extended-band 1 360 - 1 460
S-band Short-wavelength-band 1 460 - 1 530
C-band Conventional-band 1 530 - 1 565
L-band Long-wavelength-band 1 565 - 1 625
U-band Ultralong-wavelength-band 1 625 - 1 675

(ⅲ) 発光デバイスの原理,特性など

  1. LED においては,半導体の pn 接合に逆方向電圧を印加することにより,p 型半導体領域に電子が,n 型半導体領域に正孔が注入され,伝導帯にある電子と価電子帯にある正孔が再結合して自然放出光が発生する。(
  2. LD は誘導放出を利用しており,ある波長の光を入射すると同じ波長の光が誘導放出されると同時に一部が吸収される。誘導放出が吸収を上回るようにするには,pn 接合に一定以上の逆方向電圧を加えて反転分布状態にする必要がある。(
  3. LD の駆動電流を変化させることにより LD の出力光強度を直接変調することが可能であるが,数 [GHz] 以上の高速変調を行うと,一般に,LD は多モードで発振し,発光スペクトルが広がり,これが伝送距離を制限する要因の一つとなる。(
  4. 半導体結晶では,その構成原子の内部エネルギーは量子化された準位をとり,禁制帯を挟んで低いエネルギー領域の伝導帯と高いエネルギー領域の価電子帯に分布する。(

正しくは,1.「下線部が逆」,2.「」,4.「下線部が逆」である。

発光ダイオードの模式図
図 発光ダイオードの模式図
(出典)フリー百科事典『ウィキペディア』

(ⅳ) 受光デバイスの原理,特性など

  1. PD においては,入射光が禁制帯で吸収されることにより,伝導帯に電子が,価電子帯には正孔が励起される。これら電子と正孔は電界によってドリフトし,光電流として外部回路に取り出すことができる。(
  2. APD は,pn 接合に印加する逆バイアス電圧がある値を超えると,僅かなキャリアの移動によって次々にキャリアが生成され,加速度的に電流が増大するアバランシ効果による電流増幅作用を利用している。(
  3. PD の応答特性を高めるためには空乏層を広げることが必要である。空乏層を広げるためには,順バイアス電圧を印加する方法や,p 層と n 層の間に不純物濃度の高い抵抗層を挟む方法がある。(
  4. PD で検出可能な光の波長領域は使用する半導体材料によって決まり,半導体材料としては,一般に,0.8 [μm] 以下の短波長領域では Ge が,1.0 [μm] 以上の長波長領域では Si が使用される。(

正しくは,1.「空乏層」,3.「空乏層を広げると応答速度は低下する」,4.「下線部が逆」である。

問3

(1) 光ファイバの分散補償技術など

分散補償技術には,非線形光学効果を利用して位相共役波,ソリトンなどを発生させる,又は外部位相変調器を利用してプリチャーピングを行うなどの能動型のものと,DCF,PLC,FBG などの光デバイスを利用する受動型のものがある。

DCF は,一般に,伝送路として使われる 1.55 μm 帯での波長分散がゼロではない光ファイバの前又は後ろに接続することにより,EDFA が使用可能な 1.55 μm 帯で使用可能とするものであり,伝送路として使われる SM 光ファイバが有する波長分散値を,短い長さで補償するために絶対値が大きくかつ正負が逆の波長分散値を持つことが要求される。

PLC を利用した分散補償器は,平面導波路基板の上にマッハツェンダ干渉回路を多段に接続して形成され,分散スロープを補償する特性を持たせることもできる。

DWDM システムで使用する波長帯域の拡張に伴い,光ファイバの波長分散だけではなく分散スロープを補償することが求められる。分散スロープも含めた分散補償の観点から分散スロープと波長分散の比で表される RDS といわれるパラメータが,光ファイバの分散スロープ補償率の指標として使われている。

中継系線路の光ファイバケーブル設計」参照

DCF(分散補償ファイバモジュール),PLC(Planar Lightwave Circuit : PLC),FBG(Fiber Bragg Grating)。

(2) 光ファイバの分散,光強度変調方式など

(ⅰ) 石英系光ファイバの分散など

  1. コアの両側のクラッド部内に円形の応力付与部を配置し,二つの偏波モードの結合を抑制した光ファイバは偏波保持光ファイバといわれ,光増幅器における偏波分離合成器などの光デバイスに使用される。(
  2. 光通信システムで伝送される信号の品質は,SN 比と波形ひずみにより影響される。SN 比の劣化と波形ひずみの要因は,通信用光ファイバケーブルの分散と損失であり,一般に,SN 比は分散により劣化し,波形ひずみは損失により増大する。(
  3. 比屈折率差や屈折率分布を調整することで材料分散を変化させ,石英系ガラスの伝送損失が最小となる 1.55 μm 帯において構造分散がゼロとなる SM 光ファイバは,DS 光ファイバといわれる。(
  4. 光ファイバの分散パラメータは,光ファイバの単位長さと光スペクトルの単位波長範囲に対する群遅延の広がりをいい,群速度の分散パラメータが正の場合を異常分散,負の場合を正常分散という。(

正しくは,2.「下線部が逆」,3.「NZ-DSF」,4.「下線部が逆」である。

(ⅱ) 光ファイバ通信に使用される光強度変調方式など

  1. LD の駆動電流を変化させて電気信号を光強度に変換する直接変調は,変調器の小型化が可能であるが,数 [GHz] 以上の高速変調では,発振周波数が変化するショット雑音により光スペクトルが信号帯域以上に広がり,波形の劣化を生じる。(
  2. 外部変調は,LD に直流駆動電流のみを流して出力される無変調光を,電気光学効果などを利用して変調するため,チャーピングの少ない強度変調が可能である。(
  3. LN 変調器は,ポッケルス効果を利用して位相変調,強度変調及び偏波変調が可能であり,位相変調の原理は,加えた電圧によって生ずるブラッグ反射を利用して,導波路を伝搬する光の位相を変化させるものである。(
  4. EA 変調器は,半導体の導波路における光の吸収量(損失)の波長依存性が,印加する電圧で変化する性質を利用したものであり,LN 変調器と比較して,一般に,大型で動作電圧が高く LD との集積が困難である。(

正しくは,1.「波長チャーピングに伴う分散」,3.「ポッケルス効果」,4.「小型で動作電圧が低く LD との集積が容易」である。

(3) 光ファイバの測定技術など

(ⅰ) OTDR による測定など

  1. OTDR は,光パルスを光ファイバに入射したときに,光ファイバ内で生ずる反射や散乱による戻り光を測定することによって,光ファイバの長さ,損失値及び破断点の位置を特定することができる。(
  2. OTDR の測定波形は,一般に,横軸に距離,縦軸に損失が表示され,光ファイバの近端及び遠端並びに光コネクタで接続された場所は,フレネル反射が観測される。(
  3. 光パルスは,光カプラを通して被測定光ファイバに入射され,反射やレイリー散乱によって戻ってきた光は,光カプラを通じて APD に入射される。(
  4. 光パルス幅 100 [nm] で接続点,接続損失などを測定するとき,接続点間の距離が短いために判別が困難な場合は,光パルス幅を 1 [μs] のように,より大きくすることで測定することができる。(

正しくは「光負パルス幅を 1 [nm] のように,より小さくする」である。

(ⅱ) OTDR の機能と特徴

  1. OTDR を用いた光ファイバケーブルの損失測定では,一般に,得られる後方散乱光パワーが非常に微弱であるため,光ファイバケーブルが往復する時間よりも短い周期で繰り返し光パルスを送出し,受信信号(後方散乱光強度信号)を相乗平均することで,SN 比の良い信号強度を検出する手段が採られる。(
  2. OTDR の仕様において,一般に,光出射端近傍の反射光(後方散乱光)レベルから SN 比が 2 のノイズフロアまでの後方散乱光強度が測定できる範囲はダイナミックレンジといわれ,ダイナミックレンジが狭い OTDR ほど長い光ファイバの光損失を測定できる性能を有している。(
  3. OTDR による測定では,光コネクタなどで生ずる反射光及びその反射光で生ずる受信波形の裾引きによって,引き続く接続点などの位置や損失などが測定不能となる距離の範囲が存在し,この範囲はデッドゾーンといわれる。(
  4. OTDR の仕様において,デッドゾーンには,反射測定デッドゾーンと測定損失デッドゾーンがある。反射測定デッドゾーンとは,反射光のピークレベルから 3.0 [dB] 低下する範囲をいう。(

正しくは,1.「相加平均」,2.「1」と「広い」,4.「1.5 [dB]」である。

問4

(1) 線路設備を構成する架空構造物である支線,電柱など

架空線路構造物の設計では,風雪や温度といった気象条件,地盤,地形などの設置条件を考慮して架渉するケーブルの種別に適した吊り線や支持線などの強度を決定する。

さらに,架渉するケーブルの種別及び条数により電柱の強度を決定し,併せて電柱に加わる不平衡荷重に対してバランスがとれる支線の強度を決定する。

支線は,不平衡荷重により電柱が傾斜及び倒壊することを防止するため,支線取付け角度を 35 ~ 45 度の範囲で大きくとり,やむを得ない場合であっても支線取付け角度は 25 度以上とする。

また,電柱には地際部が支点となって曲げモーメントが作用するため,最も強度が要求される箇所は地際部であるが,電柱の製造工程において,地際部の強度を電柱全体に求めることは不経済となるため,末口を元口より細くしてテーパを付けることにより電柱全体としての強度を確保している。電柱の平均テーパ $\alpha$ は,末口直径を $D$,元口直径を $D'$,長さを $L$ とすれば,$\alpha$ = $\displaystyle \frac{D' - D}{L}$ で求められ,一般に,コンクリート柱と鋼管柱の平均テーパの値は 1/75 で同じである

架空線路構造物の種類・特性及び適用」参照

(2) 架空線路設備に作用する荷重の分担,ダンシングなど

(ⅰ) 電線と支線の荷重分担割合,地盤耐力など

  1. 支線が取り付けられた電柱に加わる水平荷重は電柱と支線によって分担され,電柱が 90 [%],支線が 10 [%] の割合で負担し,支線の代わりに支柱を用いた電柱の場合であっても,負担の割合は同じである。(
  2. 電柱に作用する水平荷重による曲げモーメントについては,地盤の抵抗モーメントに対して安全率を考慮した設計が必要であり,地盤の抵抗モーメントは土質によって違いがあることから,現場の土質種別を考慮した設計を行っている。(
  3. 支線取付け角度は,支線の必要強度を満足し支線素材使用量を最も少なく済むように設計するが,積雪地帯では,積雪に埋もれた部分に沈降力が加わり,支線に働く張力が増加して電柱が傾いたり下部支線が浮き上がる現象が生ずることがあるため,支線取付け角度を小さくして沈降力の影響を低減している。(

正しくは「電柱が 10 [%],支線が 90 [%] の割合で負担」である。

(ⅱ) ダンシングの原因とその対策など

  1. SS ケーブルのダンシング防止策として,ケーブルに捻回を入れる方法がある。捻回を入れると,上昇力が働く場所と下降力が働く場所ができ,1 スパン全体として上昇力と下降力が平衡し,ダンシングの発生を抑えることができ,また,ケーブルにかかる水平風圧荷重も減少させることができる。(
  2. SS ケーブルは丸形ケーブルと比較して,受風面積が大きいため,強風にさらされるところではダンシングが起きやすい。また,ケーブル重量が重く弛度が小さいほどダンシングが起きやすい。(
  3. SS ケーブルを架渉する際に自然捻回が入ると,各スパンの捻回数を均等にすることが困難になるため,ケーブルの架渉時には,一般に,先端にプーリングアイを取り付けることにより自然捻回が入ることを防止している。(
  4. SS ケーブルには,支持線とケーブル本体を同一のシースで成形した SSF 型,支持線とケーブル本体をつなぐ首部に窓を開けた SSD 型などがある。SSD 型は,首部の窓から風を逃がす構造で揚力を低減できるため,SSF 型と比較して,ダンシングが起きにくいとされている。(

正しくは,2.「ケーブル重量が軽く弛度が大きい」,3.「撚り返し金物・捻回防止器」,4.「SSF 型 → SSD 型」「SSD 型 → SSW 型」である。

プーリングアイは,光ファイバケーブルの端末に取り付け,気密の保持を行うと共に,地下管路などに敷設する際のけん引に用いられる。(参考)現場用プーリングアイ|白山商事株式会社

(3) 光コネクタの接続技術,光ファイバの心線対照など

(ⅰ) 光コネクタ接続技術

  1. 光コネクタ接続においては,接続するフェルールどうしを正確に軸合わせし,所定の方法以外では外れないようにするために,アダプタが用いられる。光コネクタ用のアダプタは,接続するフェルールどうしを,V 溝基板及びファイバクランプにより位置ずれなく結合し固定する構造となっている。(
  2. 光コネクタ接続において,光ファイバは,光軸を一致させるため強化ガラスやプラスチック製のフェルールの内部で精密に位置決めされ固定されている。強化ガラスは,耐久性に優れ,精密加工ができる硬さと現場での研磨が可能な軟らかさを兼ね備えた部材である。(
  3. 光コネクタ接続では,光ファイバの接続端面間の間隙をなくし,これを再現性良く実現することが要求されているため,一般に,光ファイバ端面間を直接接触させる PC 接続が採用されている。(
  4. 光コネクタでは,光ファイバは接着剤によりフェルールの内部に固定されているため,温度や湿度が変動しても,光ファイバの端面がフェルールの端面より引っ込む又は突き出す現象が発生することはない。(

正しくは,1.「」,2.「ジルコニア」,4.「」である。

(ⅱ) 光ファイバの心線対照技術

  1. 光ファイバ ID テスタは,光ファイバを湾曲させ,漏洩した 1 GHz 変調の対照光を受光素子で検知し,該当心線を対照することができる。(
  2. 光ファイバ ID テスタの送信部から送出される対照光としては,現用回線の通信光で使用されている波長と同等若しくは,湾曲させた光ファイバから漏れやすい短波長の光を使用する。(
  3. 光ファイバ ID テスタは,光ファイバの損失測定,簡易な光レベル測定及び心線対照に使用できる測定器であり,L バンドの長波長帯の通信光に対しても心線対照が可能である。(
  4. 光ファイバコードの被覆が厚く光が漏れにくいため,光ファイバ ID テスタは,受光素子に InGaAs - PD に代わり Ge - PD を用いることで,受光感度を向上させている。(

正しくは,1.「270 Hz」,2.「現用通信光より長い波長の 1.65 [μm] の光」,4.「下線部が逆」である。

光ファイバ ID テスタ」(NTT アクセスサービスシステム研究所)参照

問5

(1) 架空光ファイバケーブルの許容伸び率と弛度

自己支持形光ファイバケーブルは,ケーブル本体である光ファイバケーブル部と支持線を一体とした構造を有している。ケーブル架渉後には常時ケーブルに張力が加わるため,光ファイバ自体も常時伸びひずみを受けることになる。さらに,温度変化,風圧,着雪などの影響が加わることにより光ファイバの破断確率が高くなるおそれがある。

光ファイバケーブルは,一般に,信頼性の観点から張力に対する伸び率を 0.2 [%] 以下となるように設計される。この条件を満足させるため,支持線は,温度変化,風圧荷重条件などによる光ファイバケーブルの伸びひずみを考慮して設計される。

光ファイバケーブルに風圧荷重が作用すると,ケーブルの実効重量は自重と風圧荷重のベクトル和となる。ここで弛度 $d$ [m] は,実効重量を $W$ [N/m],スパン長を $S$ [m],張力を $T$ [N] とすると,$d$ = $\displaystyle \frac{WS^2}{8T}$ で表される。また,ケーブルの伸び率 $\Sigma$ は,支持線の断面積を $A$ [mm2],支持線の弾性係数を $E$ [N/mm2] とすると,$\displaystyle \Sigma = \frac{T}{AE}$ で表され,ケーブルの伸び率 $\Sigma$ は許容伸び率より小さくすることが求められる。支持線は温度変化により伸縮するため,一般に,最低温度における張力で設計される。

アクセス系線路の光ファイバケーブル設計」参照

(2) 地下線路設備における金属の腐食防止方法,光ファイバの接続部の保護など

(ⅰ) 地下線路設備における金属の腐食防止方法

  1. 排流方式の一つである選択排流方式は,埋設金属体と電気鉄道のレールなどの迷走電流発生源の帰線との間に電流逆流防止装置を取り付けて双方を電気的に接続し,埋設金属体に流入した迷走電流を大地に流出させずレール又は変電所に直接帰還させる方式である。(
  2. 外部電源方式は,直流電源を用いて,プラス側を埋設金属体に,マイナス側を不溶性の接地電極に接続し防食電流を流す方式であり,電食と自然腐食のいずれにも有効である。(
  3. 流動陽極方式は,イオン化傾向の大きい金属(流電陽極)を埋設金属体に接続し,異種金属間の電位差により防食電流を得る方式であり,流電陽極には亜鉛,アルミニウム,マグネシウムなどが用いられる。(

正しくは「下線部が逆」である。

(ⅱ) 光ファイバの接続部の保護,収容技術

  1. 光ファイバ用クロージャは,光ファイバケーブルの心線接続点に設置され,光ファイバの接続部と心線余長を収容するものであり,架空用クロージャは赤外線による劣化を受けにくい材質で構成され,地下用クロージャは簡単かつ機械的な組立機構により機密性能が得られる構造となっている。(
  2. 光ファイバ用クロージャ内のプラスチック又は金属製のトレイの中に接続部を固定し,余長心線を収納する方法がある。中継用伝送路では,一般に,光ファイバ心線を直径 60 [mm] 以上に巻いてトレイ内のガイドに沿って整然と収容する。(
  3. 光ファイバ用クロージャ内の薄いプラスチックシートを折り曲げて光ファイバ心線を収納する方法がある。収納したシートを重ねて軽く圧縮すれば体積を小さくすることができ多数の心線を収納できるが,薄いシートを使用しているため心線を収納する際に乱暴に扱うと他の心線に影響を及ぼすおそれがある。(
  4. 光ファイバ用中間後分岐型クロージャは,既に布設されている光ファイバケーブルの途中から,分岐したい光ファイバ心線のみを取り出してドロップケーブルなどと接続するために用いられる。(

正しくは「防水性能」である。

(ⅲ) 光通信システムにおける損失など

  1. EDFA などを用いた線形中継方式の光通信システムでは,一般に,中継区間で発生する損失は補償されて信号光レベルは回復するが,SN 比は劣化する。SN 比の劣化は,主に,光増幅器で発生する自然放出光と信号光によるビート雑音に起因して生ずるものである。(
  2. 光通信システムにおいて,送出光レベルが 2 [dBm],最低受光レベルが -30 [dBm],光ファイバケーブル損失が 0.2 [dB/km],最大伝送距離が 150 [km] であるとき,その他の光損失を考慮しないとすると,損失マージンは,3 [dB] 見込まれている。(
  3. 光通信システムの中継間隔は,送信側の出力光パワーと受信側の受光感度が定まれば,主に,光ファイバの損失と伝送帯域によって決まる。光ファイバの損失は伝搬モードの種類に関係なく開口数により,また,伝送帯域はコアとクラッドの屈折率差により決まる。(

正しくは,B.「2 [dB]」,C.「」である。

送出光レベルを $P_\text{s}$ [dBm],最低受光レベルを $P_\text{r}$ [dBm],光ファイバケーブル損失を $\alpha$ [dB/km],最大伝送距離を $L$ [km],損失マージンを $P_\text{m}$ [dB] とすると,次式が成り立つ。

\[ L =\frac{(P_\text{s}-P_\text{r})-P_\text{m}}{\alpha} \] \[ 150 =\frac{(2-(-30))-P_\text{m}}{0.2} \] \[ P_\text{m}=2 \text{ [dB]} \]

(ⅳ) 平面線形が直線の管路区間モデル

図に示すような平面線形が直線の管路区間モデルにおいて,以下に示す条件で X 点から Y 点へ光ファイバケーブルを布設する場合,Y 点での張力は,1,950 [N] である。ただし,重力加速度 $g$ は 10 [m/s2] とする。

(条件)
  1. X 点直前の張力 $T_0$ : 1,500 [N]
  2. 区間長 $L$ : 150 [m]
  3. ケーブル質量 $W$ : 0.6 [kg/m]
  4. 摩擦係数 $\mu$ : 0.5
  5. 光ファイバケーブルの布設ルートに高低差はないものとする。
平面線形が直線の管路区間モデル
図 平面線形が直線の管路区間モデル

Y 点での張力は次式で求められる。

\[ T_0 + g\mu WL = 1,500 + 10 \times 0.5 \times 0.6 \times 150 = 1,500 + 450 = 1,950 \text{ [N]} \]
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