平成31年度 第1回 専門的能力・通信線路

2020年5月10日作成,2021年1月13日更新

問1

(1) メタリックケーブルを用いたアナログ伝送系における雑音及びひずみの種類と特徴

メタリックケーブルを用いたアナログ伝送系における雑音は、一般に、伝送系内部で発生する雑音と外部から侵入する雑音に分けられる。さらに、伝送系内部で発生する雑音は、信号を伝送していない場合でも存在する基本雑音と信号伝送に伴って発生する準漏話雑音とに分けることができる。基本雑音は、通話の有無と無関係であることから、信号レベルの低いところで問題となる。この場合、大きな妨害になるものは、一般に、増幅器で発生する雑音であり、その主な成分の一つは、周波数に対して一様に分布している雑音である。

一方、伝送系の入力側に加えられた信号波形と出力側に現れる信号波形が異なる現象は、ひずみといわれる。このうち、位相ひずみは、伝送系の位相量が周波数に対して比例関係にないため、すなわち群伝搬時間が周波数により異なるために生ずるひずみであり、伝送品質に影響を及ぼす。

また、非直線ひずみは、伝送系の入力と出力が比例関係にないために生ずるひずみである。伝送路中の増幅器などの非直線ひずみによる高調波及び混変調波の発生は、雑音の原因となる。

メタリックケーブル・同軸ケーブルの伝送理論」参照

(2) 光の屈折,反射,入射,伝搬など

(ⅰ) 光の屈折,反射など

  1. 屈折率 $n_1$ の物質から屈折率 $n_2$ の物質に光が入射するとき、次の関係が成り立つ。(
  2. \[ \frac{\sin{\phi_1}}{\sin{\phi_2}} = \frac{n_1}{n_2} \]
  3. 屈折率 $n_1$ の物質から屈折率 $n_2$ の物質に光が入射するとき、$n_1 \lt n_2$ の場合、$\phi_2$ が 90 度となる角度 $\phi_1$ が存在し、そのときの $\phi_1$ を臨界角という。(
  4. 光ファイバのコアの屈折率を $n_1$、クラッドの屈折率を $n_2$、光ファイバの最大入射角を $\theta_{\text{max}}$ とすると、光源と光ファイバとの結合効率に影響する基本的なパラメータである開口数 $\text{NA}$ は、次式で表すことができる。(
  5. \[ \text{NA} = \sin{\theta_{\text{max}}} = \sqrt{n_1 - n_2} \]
  6. 屈折率 $n_1$ の物質から屈折率 $n_2$ の物質に、電界が入射面と平行な光(P 偏光)が入射するとき、$\phi_1 + \phi_2$ が 90 度で無反射になる現象が生じ、そのときの $\phi_1$ はブリュースター角といわれる。(

正しくは,1.「$\displaystyle \frac{\sin{\phi_1}}{\sin{\phi_2}} = \frac{n_2}{n_1} $」,2.「$n_1 \gt n_2$ の場合」,3.「$\displaystyle \text{NA} = \sin{\theta_{\text{max}}} = \sqrt{2\frac{n_1 - n_2}{n_1}}n_1$」である。

(ⅱ) 光の入射,伝搬など

  1. 光ファイバの比屈折率差は,コアとクラッドの屈折率の差を表し,コアの屈折率を $n_1$,クラッドの屈折率を $n_2$ とすると,比屈折率差は $\displaystyle \frac{n_2 - n_1}{n_2}$ で表され,比屈折率が大きいと受光可能な入射角も大きくなる。(
  2. 光ファイバへの光の入射点では、空気、コア及びクラッドの三つの屈折率の異なる媒質が接しており、空気とコア及びコアとクラッドのそれぞれの境界面での光の屈折及び反射においてファラデーの法則が成り立つ。(
  3. 光ファイバにおいて屈折率の異なる境界面で光が全反射しながら伝搬する場合、光の電界はコア内に閉じ込められており、境界面における電界の強さは入射光と反射光との干渉によりゼロになる。(
  4. SM 光ファイバ中を伝搬する光は,ある波長より短いとシングルモードにならない。このシングルモードとなるための最も短い波長を遮断波長($\lambda_\text{c}$)といい,コアの半径を $a$,コアの屈折率を $n_1$,クラッドの屈折率を $n_2$ とすると,$\lambda_\text{c}$ は次式で表すことができる。(
  5. \[ \lambda_\text{c} = \frac{2\pi a}{2.405}\sqrt{n_1 - n_2} \]

正しくは,1.「$\displaystyle \frac{n_1 - n_2}{n_1}$」,2.「スネルの法則」,4.「$\displaystyle \lambda_\text{c} = \frac{2\pi a}{2.405}\sqrt{{n_1}^2 - {n_2}^2}$」である。

(3) 石英系光ファイバの損失,特性など

(ⅰ) 石英系光ファイバの損失,劣化要因など

  1. 光ファイバに損失が発生する原因の一つとして、水素分子による光の吸収がある。この損失は、水素分子が光ファイバ中に存在することで生じ、水素分子を取り除くと減少する可逆的なものとされている。(
  2. 光ファイバにおける損失特性の温度依存性は小さく、一般に、通常の布設環境においては問題とならないが、ケーブル外被は、温泉などの熱水管に近接して設置された場合など熱的要因により劣化が早まり耐用年数が短くなることがある。ケーブル外被の耐用年数は、熱的要因のほか、化学的要因、紫外線などにも影響される。(
  3. 光ファイバを放射線下で使用すると、石英ガラスの構造欠陥が放射線によって生じた電子や正孔を捕捉し、光を吸収することで光損失が増加する。放射線による光損失は、一般に、放射線量が増加すると大きくなり、減少すると小さくなる。(

(ⅱ) SM 光ファイバの特性,ファイバヒューズ現象など

  1. SM 光ファイバは、光ファイバ中を伝搬可能な導波モードを一つだけに制限することによって、波長分散による光信号波形の劣化を防止した光ファイバである。(
  2. SM 光ファイバの屈折率分布は、一般に、ステップインデックス型であり、光ファイバの屈折率分布構造を表すパラメータには開口数、モードフィールド径などがある。(
  3. 光ファイバに入射する光のパワーが大きくなると、光ファイバのコア内の温度が上昇することによりプラズマ状態となり、放電現象が生じて、閃光が光ファイバの中を光源に向かって進むファイバヒューズが発生するおそれがある。(
  4. 光ファイバに強い光を入射すると、長い波長の光が短い波長の光より速く伝わる異常分散領域において、屈折率が変化する、光の位相がずれるなどの非線形光学効果といわれる現象が起きる。(

正しくは,1.「モード分散」,2.「モードフィールド径,モードフィールド偏心量,カットオフ波長」,4.「自己位相変調」である。

問2

(1) 光ファイバの分類

光ファイバを導波原理によって分類すると、全反射型及びブラッグ反射型に大別できる。全反射型の光ファイバは、コアとクラッドの屈折率差を利用した全反射によって光をコア内に閉じ込めている。ブラッグ反射型の光ファイバは、中空のコアとクラッド部に周期的に配列された空孔により形成される屈折率周期構造に光が透過して生ずるフォトニックバンドギャップを利用して光をコア内に閉じ込めている。

光ファイバに使用される誘電体の材料による分類では、石英系光ファイバ、プラスチック光ファイバなどがある。石英系光ファイバは低損失で伝送特性が優れているため、一般に、光アクセス系及び中継系の伝送路に用いられている。さらに、石英系光ファイバには波長分散の特性を制御した DCF、エルビウムを添加し光増幅媒体として利用される EDF などがある。

プラスチック光ファイバは、損失などの面で石英系光ファイバには及ばないが、一般に、耐屈曲性に優れ、光源と光ファイバの結合が容易な大口径の光ファイバを製造しやすいなどの特徴を持っており、LAN などの短距離通信、宅内配線などに用いられている。

通信ケーブルの種類・特性及び適用」参照

(2) MM 光ファイバのベースバンド周波数特性,光通信システムで用いられる中継器又は増幅器の特徴など

(ⅰ) MM 光ファイバのベースバンド周波数特性及び伝送帯域について

  1. ベースバンド周波数特性は、光ファイバがどこまで高い周波数の変調光信号を伝搬できるかを示すものであり、入射光信号と出射光信号の位相の差で表され、一般に、変調周波数が高くなるほど、また、距離が長くなるほど、チャーピングの影響により光信号波形は劣化する。(
  2. 伝送帯域は、ベースバンド周波数特性において、光信号を電気信号に変換した後の振幅が、変調周波数ゼロのときと比較して 6 dB 減衰するまでの周波数の範囲として求めることができる。(
  3. 伝送帯域特性は光ファイバのモードフィールド径に依存することから、GI 型光ファイバの伝送帯域特性は、一般に、その使用波長で伝送帯域が最大となるようにモードフィールド径が設計される。(
  4. GI 型光ファイバの伝送帯域はモード分散と波長分散によって制限され、光源に LD を使用する場合には波長分散が、また、LED を使用する場合にはモード分散が伝送帯域を制限する主な要因である。(

正しくは,1.「振幅比」,3.「屈折率分布形状(プロファイル)か」,4.「MM」「LED」「LD」である。

現在,光ファイバ通信で使用される伝送帯域とは,どれだけ高い周波数の信号で変調した光信号を伝送することが可能であるかを示す尺度として用いられており,定量的には光ファイバのベースバンド周波数特性における 6 dB 帯域幅という表現で示される。

ベースバンド周波数特性と 6 dB 帯域
図 ベースバンド周波数特性と 6 dB 帯域

(ⅱ) 光通信システムで用いられる中継器又は増幅器の特徴など

  1. 再生中継器を用いた光通信システムでは、3R といわれる機能を用いて信号を中継するため、一般に、各中継区間で発生する符号誤り、信号波形のひずみ及び雑音が累積することはない。(
  2. 波長多重された光信号の中継には、一般に、波長多重された光信号をそのまま増幅する線形中継器が用いられ、線形中継器は、光のまま 3R 機能のうち識別再生のみを行うことから、1R 中継器ともいわれる。(
  3. EDFA は、コア部分にエルビウムを添加した長さ数 km の SM 光ファイバを増幅媒体に用いた増幅器であり、一般に、高利得、広帯域、偏波無依存などの特徴を有している。(
  4. 光ファイバラマン増幅器は、光ファイバの非線形現象である誘導ラマン散乱を利用した増幅器であり、励起光の波長より約 100 nm 長い波長の光を増幅できるなどの特徴を有している。(

正しくは,1.「符号誤りは累積するが」,2.「増幅」,3.「下線部は不適」である。

再生中継方式において、符号間干渉や雑音などの振幅軸上の劣化要因と、タイミングジッタなどの時間軸上の劣化要因は、これを補正できない場合、信号の識別余裕度が低下し、最終的には符号誤り率の劣化を引き起こす原因となる。

EDFA は、光増幅可能な波長帯は添加する希土類元素に依存し、その増幅性能も添加元素により異なっている。

(ⅲ) 線形中継伝送方式

  1. 線形中継伝送方式において、信号光と線形中継器で生ずる自然放出光との間のビート雑音は、線形中継器の数に比例して増大し、自然放出光と自然放出光との間のビート雑音は、線形中継器の数の 2 乗に比例して増大する。(
  2. 線形中継伝送で用いられる NZDSF は、DSF のゼロ分散波長である 1.31 μm 帯より短波長側又は長波長側にずらした光ファイバであり、1.31 μm 帯における低分散と WDM 伝送における四光波混合の抑制を両立させている。(
  3. 線形中継器に用いられる光ファイバ増幅器は、一般に、希土類添加光ファイバ、励起用 LD 及び光電気変換回路で構成され、信頼性に優れているが、伝送路で生じたひずみや雑音が中継区間ごとに累積する特徴がある。(
  4. 光雑音電力の増加を抑え SN を改善するために光ファイバ増幅器の出力を上げると、光ファイバの屈折率が変化するチャーピングが発生して、信号波形が劣化する。(

正しくは,2.「1.55 μm 帯」,3.「」,4.「」である。

(ⅳ) 光ファイバ通信に使用される光デバイス(受発光器・光アイソレータ・光合分波器)など

  1. LD の光出力は、注入される電流がしきい値を超えると誘導放出現象が生じて急激に増大し、光出力は注入電流に対してほぼ直線的に増加する。この誘導放出により放出された光は、放射広がり角が狭く時間的、かつ空間的コヒーレンスの高い光である。(
  2. APD の電流増幅作用は、電界により加速されたキャリアが半導体結晶格子と衝突して、電子と正孔を生成し、それらが更に運動エネルギーを得ることによって、衝突によるイオン化が促進されて、自由キャリアの数が指数関数的に増大する現象である自己励磁現象を利用している。(
  3. LD から放出された光が反射されて光源に戻ってくると、LD の発振が不安定になる。LD と光ファイバとの結合部で生ずる反射光の帰還を阻止するために、LD を用いた光送信器には光アイソレータが組み込まれている。(
  4. 波長の異なる複数の光信号を 1 本の光ファイバに入射する光合波器や、光ファイバを伝搬してきた複数の異なる波長の光信号を分波する光分波器には、プリズム、干渉膜フィルタ、回折格子などが用いられている。(

正しくは「アバランシ効果(電子なだれ現象)」である。

問3

(1) 光ファイバ通信に用いられる光ファイバ増幅器の種類や特徴など

光ファイバ増幅器には、光ファイバのコアに添加した希土類イオンの状態を励起させ形成したエネルギー準位の反転分布による誘導放出を利用する希土類添加光ファイバ増幅器と、光ファイバ中の非線形散乱による誘導散乱を利用する光ファイバラマン増幅器がある。

希土類添加光ファイバ増幅器の一つである EDFA に用いられる増幅媒体である EDF において、励起光によって励起された状態にあるエルビウムイオンが入射した信号光と同位相で同じ波長の光を誘導放出し、信号光が増幅される。EDF は、伝送用光ファイバと同じ石英ガラスを主成分とする SM 光ファイバであり、そのクラッド径は 125 μm であるが、コア径を伝送用光ファイバより細くし、一般に、3 μm ~ 6 μm とすることにより増幅性能を向上させている。

光ファイバラマン増幅器は、伝送用光ファイバを増幅媒体として利用し、光ファイバに高強度の励起光を入射すると、励起光とは異なる波長のストークス光が成長して同じ帯域にある信号光を増幅する。光ファイバラマン増幅器は、EDFA と比較すると励起効率が悪く、数 W 以上の励起パワーを必要とする。

光ファイバケーブルの伝送理論」参照

(2) LD の制御,光の強度変調,光ファイバ増幅器の雑音特性など

(ⅰ) LD の波長制御,温度制御,強度制御など

  1. LD の発振波長は、用いられる半導体材料によって決まるが、波長可変 LD では、温度制御、電流注入制御などにより屈折率を変化させる方法、共振器長を変化させる方法などを用いて、発振波長を制御することができる。(
  2. 温度変化による発振波長の変動を補償する温度制御(ATC)は、抵抗値の温度依存性が大きいホトダイオード(PD)を LD 近傍に配置し、PD の抵抗値の変動を監視し、その変動量をフィードバックさせることにより、LD の温度を一定に保つものである。(
  3. 経年劣化などによる出力強度の低下を補償する強度制御(APC)は、LD の端面近傍にモニタ PD を配置し、モニタ PD の受光電流の変動を監視し、その変動量をフィードバックさせることにより、LD の出力強度を一定に保つものである。(
  4. 高い波長安定性が求められる WDM システムなどにおいては、一般に、ATC に加えて、波長制御(AFC)が行われる。AFC は、LD の出力光の波長変動を監視し、その変動量をフィードバックさせることにより、LD の出力波長を一定に保つものである。(

正しくは「サーミスタ」である。

(ⅱ) 光の強度変調方式

  1. IM/DD 方式では、送信側において光搬送波を強度変調して信号を載せ、受信側において APD などを用いて信号を直接検出している。この方式は、復調出力が、光搬送波の SN 比に影響されない特徴を有している。(
  2. 直接変調方式では、LD に印加するバイアス電流に情報が載った電気信号を重畳することによって、LD の出力光の強度を変化させている。この方式は、一般に、数 GHz 程度までの変調が可能であるが、さらに高速変調になると、チャーピング、消光比の劣化などのため、長距離通信には適さなくなる。(
  3. 外部変調方式では、LD の出力光を変調専用のデバイスである外部変調器に入力して光の強度を変化させている。この方式では、一般に、LD の出力は強度が一定の連続光であり、外部変調器において電気光学効果や電界吸収効果を利用して強度変調光を得ている。(

正しくは「光の位相揺らぎ」である。IM-DD 方式は、強度変調(Intensity modulation : IM)方式と直接検波(Direct detection : DM)方式を組み合わせたものであり、復調側において、光の位相揺らぎに影響されない、光の強度に比例した出力を得ることができる。

(ⅲ) 光ファイバ増幅器の雑音特性など

  1. EDFA には前方励起型、後方励起型及び双方向励起型があり、一般に、励起用 LD の波長として 0.98 μm を用いる前方励起型は出力特性に優れ、1.48 μm を用いる後方励起型は雑音特性に優れている。(
  2. 光ファイバ増幅器の雑音特性を表す指標として雑音指数(NF : Noise Figure)が用いられ、光ファイバ増幅器の入力端における信号対雑音比を SNRin 、出力端における信号対雑音比を SNRout とすると、次式で表すことができる。(
  3. NF = SNRout / SNRin
  4. 光ファイバ増幅器の利得が 1 より十分大きい場合には、信号光と自然放出光間のビート雑音及び自然放出光相互間のビート雑音が、NF の支配的要因となる。(
  5. 受光素子において光を検出する際に発生する雑音には、信号光のショット雑音、自然放出光のショット雑音、信号光と自然放出光間のビート雑音及び自然放出光相互間のビート雑音があり、光フィルタを挿入することにより、これらの雑音成分はいずれも除去することが可能である。(

正しくは,1.「」,2.「NF = SNRin / SNRout」,4.「」である。

(3) 光パワーメータの種類,特徴,測定方法など

  1. 光パワーメータは、測定原理の違いによって光電変換型及び熱変換型の 2 種類に大別され、光電変換型は熱変換型と比較して検出感度が高い、波長感度差が小さいなどの特徴を有している。(
  2. 熱変換型光パワーメータは、測定光を受光体に吸収させ、その温度上昇、又は温度上昇に伴う体積、圧力、抵抗などの変化量を測定して光パワーに換算するため、光電変換型光パワーメータと比較してダイナミックレンジが広いなどの特徴を有している。(
  3. 熱変換型光パワーメータには、温度変化に比例して、自発分極で生ずる起電力が変化する焦電効果といわれる現象を利用して測定するものがある。(
  4. 光電変換型光パワーメータを用いた WDM 伝送方式の光パワーの測定では、光源からの発振スペクトル線幅が狭いためコヒーレント長が短くなり、チャーピングにより測定値のばらつきが生じ、安定した測定ができなくなる。(

正しくは,1.「ダイナミックレンジが広い」,2.「狭い」,4.「」である。

問4

(1) 光ファイバケーブルの非ガス保守方式

非ガス保守方式では、ケーブル部に防水構造を有する光ファイバケーブル(WB ケーブル)を用いて無監視とし、開閉作業を伴う接続部内には浸水センサを設置して、OTDR により遠隔で浸水を監視している。

WB ケーブルは、水を吸うと膨張する WB テープがケーブル内に配置された構造を有している。浸水防止のメカニズムは、ケーブル外被が損傷して浸水すると、WB テープの接着剤が水に溶けて WB テープの不織布から吸水材が分離し、吸水して膨張した吸水材が、ケーブル内にゲル状の止水ダムを形成することにより水走りを抑制する。

浸水センサは、吸水材、可動体及び曲げ付与部で構成され、接続部の浸水を吸水して膨張した吸水材が、曲げ付与部の可動体を押し上げて光ファイバに曲げを加えることにより損失を発生させる構造を有している。OTDR を用いると、光パルスを入射した際に被測定系で生ずる微弱な後方散乱光レベルの変化を時間領域で測定が可能であり、浸水センサにより生ずる光ファイバの損失増加を検知することによって、浸水地点までの距離を測定することができる。

なお、浸水した光ファイバの破断確率は、浸水の無い乾燥状態の約 10 倍以上になることから、破断確率の上昇を抑制するために浸水期間を制限することが望ましいとされている。

通信ケーブル監視技術」参照

(2) 光ファイバケーブルの構造,機能など

  1. 光ファイバケーブルの構造において、ユニット型は、あらかじめ成型した溝型のスロット内にテープ心線を収容することで高密度の実装が可能な構造である。(
  2. 光ファイバケーブルの抗張力体の材料には、鋼線、FRP などが用いられており、鋼線は、FRP と比較して、ヤング率が大きい。(
  3. 自己支持形光ファイバケーブルは、光ケーブル部と吊り線が一体となっていることから、光ケーブル部は架渉後も常時伸びひずみを受けるため、光ファイバの破断確率が高くなる。このため、吊り線は、架渉張力、温度変化、風圧、着雪などによる光ファイバケーブルの伸びひずみを考慮したものが用いられる。(
  4. げっ歯類やコウモリガの幼虫などによる所外設備への生物被害の対策としては、防リスシート、防リステープ、又はシース内側にステンレスの層がある HS ケーブルで防護する方法がある。(

正しくは「テープスロット型」である。

(3) 地下ケーブルのクリーピング

  1. クリーピングによってケーブルが移動する方向は、傾斜、管路とケーブル間の摩擦力、車両進行方向などのケーブルの設置環境によって異なり、クリーピングは光ファイバケーブルのみに発生する。(
  2. 橋梁に添架されたケーブルでは、車両通行に加えてケーブル自体の温度伸縮もクリーピングの原因になる。また、軟弱地盤で大型車両が通行するところや、路面が平坦な直線道路では特にクリーピングが発生しやすい。(
  3. クリーピングの対策として、機械的にケーブル移動を止める方法がある。この機械的にケーブル移動を止める装置はケーブル移動防止金物といわれ、ゴムスリーブを用いてケーブルを締め付けて固定することにより移動を止めるものがある。(
  4. 橋梁に添架されたケーブルの温度伸縮による移動対策としては、移動量に相当する余長(スラック)を設けることが有効である。スラックは、一般に、橋梁添架管路の中間部に設けられる。(

正しくは,1.「光ファイバケーブルは,一般に,メタリックケーブルと比較して,クリーピングが発生しやすい」,2.「路面の凹凸が著しい」,4.「橋詰マンホールの水平部」である。

(4) 光コネクタの端面研磨技術,メカニカルスプライス接続技術など

(ⅰ) 光コネクタの端面研磨技術

  1. フェルールの端面を平面に研磨するフラット研磨では、一般に、光ファイバの端面がフェルールの端面よりも内側になるため、光ファイバ接続点の隙間において反射が生じ、接続損失及び反射量が増加する場合がある。(
  2. フェルールの端面を凸球面状に研磨する PC 研磨では、一般に、光ファイバの先端が理想球面より削られてくぼんだ状態になるが、コネクタ接続時にフェルールが押されることで先端部が弾性変形し、光ファイバの端面どうしが直接接触するため、フラット研磨と比較して、反射を抑えた安定した接続が可能である。(
  3. フェルールの端面を斜め 8 度で凸球面状に研磨する斜め PC 研磨では、一般に、接続点で発生する反射光を光ファイバのコア方向に反射させることから、PC 研磨と比較して、反射による影響を小さくすることができる。(

正しくは「クラッド方向」である。

(ⅱ) 光ファイバのメカニカルスプライス接続技術

  1. メカニカルスプライス接続法は、一般に、V 溝などを用いて光ファイバ端面を突き合わせるとともに、押さえ部材により光ファイバを押し付けて固定することにより軸合わせを行う永久接続法の一つである。(
  2. メカニカルスプライス接続で用いられるメカニカルスプライス素子は、小型・軽量で構造が簡単、多数の V 溝を設けることにより多心接続が可能などの特徴があり、マンホール内での幹線系光ファイバケーブルの接続に広く用いられている。(
  3. メカニカルスプライス接続などで用いられる屈折率整合剤は、クラッドと同等の屈折率を持ち、接続する光ファイバ端面間の空気層を排除して接続部のバリ、異物などによる光損失を抑制する目的で用いられる。(

正しくは,B.「地下では,屈折率整合剤が水分により流れ出てしまうおそれがあるため,メカニカルスプライス接続は用いられない」,C.「コア」「下線部は不要」である。

問5

(1) 雷害とその対策

雷サージには、電磁誘導現象により通信線や電力線に生ずる誘導雷サージと、ビルやケーブルなどに直接落雷して発生する電流が通信線などへ流入する直撃雷サージがある。

誘導雷サージに対する地下区間の光ファイバケーブルの対策として、接続部においてテンションメンバなどの金属部を電気的に接続して接地することにより誘導電圧を抑制する方法やノンメタリック光ファイバケーブルを用いる方法がある。

ノンメタリック光ファイバケーブルは無誘導な材料のみで構成されており、一般に、テンションメンバの材料としては FRP が用いられ、ケーブルシースの材料としては、PE が用いられている。

一方、直撃雷サージは、地下区間・架空区間いずれの設置環境でも発生し、一般に、その電気的なエネルギー量は誘導雷サージと比較して大きいが、ケーブルをノンメタリック化したり接地を施したりすることにより人的被害の軽減と設備の損傷を防止することができる。さらに雷害対策としては、埋設されている接地線と装置間の接地端子を連結して等電位化する方法がある。

雷害対策」参照

(2) 架空構造物に作用する力と地盤支持力など

  1. 甲種風圧荷重は、鉄筋コンクリート柱の場合、その垂直投影面に 780 Pa の風圧が加わるものとして計算した荷重とすることが総務省令で定められている。(
  2. 積雪地帯では、積雪に埋もれた部分に隆起する力が加わり、支線に働く張力が増加して電柱が傾いたり下部支線が浮き上がったりする現象が生ずることがあるため、支線取付け角度を小さくして隆起する力の影響を低減している。(
  3. 電柱を支持する基礎地盤が堅固で、電柱の許容曲げモーメントが水平荷重により生ずる曲げモーメントより小さいときは、一般に、電柱が折損し、また、基礎地盤が弱く電柱の支点反力としての曲げモーメントを基礎地盤が受けきれないときは、電柱が傾斜若しくは転倒する。(
  4. 電柱に作用する水平荷重により生ずる回転の中心に作用するモーメントには、基礎地盤の支持力による許容抵抗モーメントで抵抗し、許容抵抗モーメントは、根入れ部が同一の土質であれば、電柱の根入れ長が深いほど大きくなる。(

正しくは「沈降力」である。

(3) 光ファイバの融着接続技術

  1. 融着接続機の加熱方式として採用されている高周波トリガ方式は、高周波でアーク放電を行う際、放電開始時のみ必要な高電圧をトリガ的に加えることにより、少ない消費電力で光ファイバ端面を加熱溶融することができる。(
  2. 融着接続は、光ファイバ端面を約 2,000 °C で溶融し、表面張力による自己調心作用を利用して軸合わせを行うため、接続する光ファイバの端面のカケ、リップ、傾斜などがある状態で接続しても、長期にわたり良好な伝送品質を得ることができる。(
  3. 多心融着接続機の光ファイバの調心方法には、一般に、融着接続する光ファイバを V 溝上に整列させ、光ファイバ端面を加熱・溶融し、光ファイバの表面張力による自己調心作用を利用して軸合わせを行う外径調心法が採用されている。(

正しくは「接続する光ファイバの端面のカケ、リップ、傾斜などがない状態で接続すれば」である。

(4) 光アクセス網の配線方式など

  1. アクセス網の配線法は、需要動向、需要密度、管路設備の有無、保守性、信頼性、経済性などを総合的に勘案して決定され、一般に、管路設備が放射状に構築されているエリアではループ配線法が、メッシュ状に構築されているエリアでは既設の管路設備を使用して配線する場合はスター配線法が適しているとされている。(
  2. スター無逓減配線法は、一般に、通信土木設備の制約などによってループ無逓減配線法の適用が困難なエリアに適しており、設備センタから最遠端のユーザまで心線を逓減することなく配線していることから、スター逓減配線法と比較して需要変動に対応できる配線法とされている。(
  3. スター逓減配線法は、一般に、需要が広範囲にわたって散在し、かつ、需要変動が小さいエリアに適しており、突発的な需要の発生に対しては心線の融通を図ることが難しく即応性に欠ける配線法であるが、ケーブル故障時の救済が容易である、分散収容が可能であるなど、ループ無逓減配線法と比較して、信頼性の高い配線法とされている。(
  4. ループ無逓減配線法は、一般に、高速、広帯域サービス需要が面的に発生している都市部のビジネスエリアなどに適しており、心線の後分岐は行えないが、心線の融通性が高い配線法とされている。(

正しくは,1.「下線部が逆」,3.「」,4.「心線の後分岐が可能であることから」である。

(5) 傾斜した電柱区間モデル

図に示すような傾斜した電柱区間モデルにおいて,以下に示す条件で丸形ケーブルを架設するとき,T 点における牽引張力は 915 [N] である。ただし,重力加速度は 10 [m/s2],cos 20 ° は 0.94,sin 20 ° は 0.34 とする。

(条件)
  1. 単位長さ当たりのケーブル質量:0.65 [kg/m]
  2. 傾斜角 $\theta$:20 度
  3. 傾斜部分の長さ $L$:150 [m]
  4. 牽引時の摩擦係数:0.2
  5. $T_0$ 点の直前の張力:400 [N]
傾斜した電柱区間モデル
傾斜した電柱区間モデル

丸形ケーブルを傾斜地で牽引する場合の張力は,次式で求められる。

400 [N] + 10 [m/s2] × 0.65 [kg/m] × 150 [m] × ($\sin{\theta}$ + 0.2 × $\cos{\theta}$) = 914.8 [N]
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